ep.11 LoHi参入戦記者会見
9月23日(祝)
颯太はベッドに寝転び、スマホを横に構えて画面を食い入るように見ていた。
「……始まった」
画面の中、記者会見の会場はすでにフラッシュの嵐。
「カシャッ!カシャッ!」と鳴り止まないシャッター音。
ざわつく記者たちの声。
空気が張り詰めているのが、画面越しにも伝わってきた。
壇上に立つのは烏森芸能の烏森雅社長と、アポロプロの朝日陽翔社長。
その存在感だけで、会場が一気に静まる。
「最終的に、参入バトルへ挑むのは――6社です」
低い声がマイクから響いた瞬間、会場はどよめきに包まれた。
「6社?」「5社じゃなかったのか?」
記者たちがざわめき、フラッシュが一層激しくなる。
スクリーンに映し出される名前を、颯太は息をのんで追った。
キャラランド
江ノ島プロモーション
KMエンターテインメントジャパン(KMEP)
杵築芸能
芸能事務所「能」
そして――
「……五つ星プロジェクト?」
初めて聞く名前。会社?団体?誰も正体を知らない。
まるでベールに包まれた影のような存在に、記者たちも困惑している。
「詳細は未公表ですが、新進気鋭の組織として名乗りを上げました」
朝日社長がさらりと補足するが、謎は深まるばかりだった。
颯太は唾を飲み込む。
(マジかよ……なんだよ、五つ星って)
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同じころ、キャラランド事務所。
モニター前に集まったスタッフたちも、息を詰めて会見を見守っていた。
「……ついに動き出したわね」
腕を組んだ椿社長が静かに言う。声は落ち着いていたが、その瞳は獲物を狙う猛禽みたいに鋭い。
「五つ星プロジェクト……なんだかRPGの隠しボスみたいな名前ですね」
岡マネージャーが肩をすくめる。
雨野チーフは真顔で眼鏡を押し上げた。
「どんな相手でも条件は同じだ。来春の一発勝負……勝算は十分にある!」
「La♪Ra・RISE!(ララライズ)なら大丈夫です!私、信じてますから!」
猫沢マネージャーは両手をぎゅっと握って、目を輝かせていた。
「……頼もしいです!」
椿社長は微笑む。
「大切なのは、私たちが勝つという未来を信じて準備すること。それだけです!!」
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記者会見の配信が終わったあとも、颯太はしばらくスマホを握ったまま動けなかった。
「……負けたら終わり」
その言葉が胸の奥で繰り返される。
アイドルとして前に立つのはみんなだ。
ぼくはその背中を押す人間として何ができるだろう。
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翌日。
まだ朝日が差し込む前のスタジオに、颯太はひとりで足を踏み入れた。
「よし、今日も準備ばっちりだ!」
予約確認を済ませ、空調と照明を点け、鏡の汚れを拭き取る。
みんなが来る頃には、スタジオはすでに練習が始められる状態になっている。
誰も気づかない小さな準備。
でも、それで一秒でも多く練習できるなら意味がある。
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練習が終わり、床に散らばったタオルを集め、スピーカーのケーブルを巻き直し、汗で曇った鏡を再び拭く。
静まり返ったスタジオに、布を滑らせる音だけが響いた。
――みんながベストを出せるように。
――少しでも楽に前を向けるように。
颯太は、誰も見ていない場所で拳を握る。
「ぼくは裏方かもしれない。でも、この小さな積み重ねがきっとLa♪Ra・RISE!(ララライズ)を強くする。必ず、勝ちに繋げてみせる」
薄暗いスタジオに、自分だけの誓いが静かに響いた。
*La♪Ra・RISE!キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




