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私は、この星の総統になるんだ!!  作者: メメロン
第一章 忘却界編
6/7

6 門の先、道開く!


ーーーーーー



「え、メロンだったのか?てっきりメーロンかと。」

「いや、もうメーロンでいいよ。私の耳がそっちで聞き馴染んだ。」

「い、言い訳させてくれ。メーロンっていうのは勇者って意味を持つんだ!だからてっきり名前じゃなくて、ほら、実験台も買って出てくれたから!本当に悪い意味じゃなくて!」

「分かってるよ。ウミにもメーちゃんって呼ばせてるし。」


今、メロン達はメロンの要望でこの地域の端を見に行く為、改造車を飛ばしていた。運転はリュウで、ミノルは鍛錬、ウミは医療機械をこの場で作っている。


「ねえ、ここってこっちの方が使いやすい?」


メロンがコスモと話している所にウミがやって来て医療機器についてコスモの意見を聞く。コスモはその問いに別の問いで返す。


「そうだよ、ウミは未来の総統をなんでメーちゃんなんて呼んでるんだ?」

「私が呼んでって言ったの。かわいいでしょ?」

「総統には威厳も必要じゃないか?」

「そんなこと、」

「メーちゃんの威厳はそれくらいで崩れない!メーちゃんの存在はまさに旱天慈雨!コスモもそう思うでしょう?」


コスモがウミにした質問をメロンが返して、コスモがメロンにした質問にはウミが返した。メロンはカンテンジウという言葉が分からずに頭を傾げるが、コスモは知っているらしく、それもそうだなと納得している。


「おい、次から難しい熟語を使っての会話禁止だ!私の頭の出来を舐めるな。」


メロンは四字熟語の説明を求めるのではなくそれ自体の禁止を指示する。鼻から解ろうとしない姿勢はよろしくないだろうが、メロンは自身の頭の容量を知っているのでそうするしかない。メロンの地頭は頗る悪かった。


「え〜、いや、まあ分かった。」

「メーちゃん、普通に賢いと思うけど。」

「いいから!いざの伝達で困るから!」


「メロン君、見えてきたぞ。」



3人での言い合いはリュウの声で幕が閉じた。メロンが運転席の方に移動すると、確かに川が見えている。横幅の広い川は海のように広大で向こう岸が見えない。ついでに川の中も見えない…真っ黒で何も見えないのだ。


「川……といってもドス黒いな。生物なんて住めたものじゃないだろう。」


リュウの考察は正しい。メロンはこの川を死川(しせん)と呼んでいる。だが、メロンはそれを告げる事なく、頷いた。


「うん。ありがとう。門へ行こうか。」

「もういいのか?用があったんじゃないのか?」

「うん。もういい。」


メロンは川に近づく前に、引き返すことをリュウに指示する。リュウは明らかに疑問な顔をしたが、それでもメロンの指示通りにする。メロンはリュウに心の中で感謝した。


RTAにおいてこの行動はデメリットでしかない。それでもメロンは、旅の始まりであるこの川を見て行きたかった。私のエゴに付き合わせてごめんねとメロンは口に出さずに謝り、そして宣言する。


私、総統になる。



メロンはもう1人ではなくなった。自分を総統にしてくれる頼もしい仲間が4人もいる。ミノルも、リュウも、ウミも、コスモも、大切な大切なメロンの仲間だ。

これからも仲間を集める。でも、それは先の話。メロンはこのメンバーで忘却界を出る事を決めた。


ごめんね、忘却界、一旦お別れ。こいつらは悪いけど連れていくからな!!


メロンは心中で故郷に叫びながら、仲間を連れて、忘却界を出るために門へと行くのであった。




ーーーーーー




「お、見えた!忘却界と下界を繋ぐ門…って長いな。あの門って名前あったりする?」

「上界の連中は正義執行門(ジャスティカ)って呼んでるらしいが、俺は全く気に入ってない。門の名前はメロン君が決めればいい。」

「えー、私ネーミングセンスないのにー。」



相変わらず砂漠を車で爆走して幾ばくか、双眼鏡で絶えず前方を眺めていたメロンが声を上げた。その声に全員が運転席に集合する。


運転をしていたリュウは、助手席のメロンの問いにそう答えたが、メロンはいい名前が思いつかないようだ。すると、集合した皆が意見を出し始めた。


「普通に忘却門でどう?」


案を出すミノルにウミとコスモは首を振る。


「ただの"門"でいいよ。呼び名なんてなくていい。大した門じゃないから。自分達の都合の悪い人をゴミとして扱って、臭い物に蓋をする門だよ?寧ろ壊そう。」

「ウミに一票。風通しよくしよう。」

「あー、その意見がありなら俺もそれに賛成。」

「俺も。でもそれなら門だけじゃなくて壁こど邪魔だよ。メロンもそう思うでしょ?」


4人の意見が一致した。メロンは会話をする仲間達を見て安心を覚えながら話を先に進める。


「よし、なら暫定で忘却門。私が総統になった暁には壁ごと門も破壊する方針で。」


メロンの決定に意義なしと全員の声が揃う。その後、運転手をウミへと交代してリュウは紙とペンを取り出した。


「メロン君、忘却門に着く前に門番の説明をさせてくれ。」

「ああ、リュウが強いと認める2人か。」

「そうだ。間違いなく人類最強決定戦になる。メロン君も一度に2人は厳しいだろう。」

「私、大抵の奴複数人相手に出来るけど…リュウがそういうなら。話を続けて。」



メロンに促され、リュウは絵で説明をいれながら話を続ける。


まず、忘却門の前には何キロにも渡って地雷地帯があるらしい。有刺鉄線も張り巡らされていて、中には電流が流れるものもあるとか。


「だが、ウミの改造車でこれらの罠は乗り切るつもりだ。」

「だから燃料補給の度にフロントとか改造してたのか。」


成程と今更ながらに道中の改造を振り返るメロンを置いて、リュウの話は進む。



門番の辺りには罠は一切ない。だから門番とは文字通りの力勝負になるとのこと。どちらも身長3メートルの筋肉ゴリラで、1人は1トンある大斧を、1人は5メートルある鎌を持っているらしい。


「おー!倒し甲斐ありそー!」


誰もが同じ人類か疑う情報を出すリュウに、メロンは目を輝かせてそう言う。メロンの反応はリュウの想像通りだったが、それでも一切怯みのない姿勢にリュウの方がたじろいだ。


「…メロン君にはいちいち驚かされるな。で、俺的には皆で鎌を引きつけている内にメロン君に斧を倒して貰って、メロン君が鎌の方に来たら俺達は退散。あとはメロン君がもう1人も倒すという算段でいるが。」

「ちゃんと引きつけれる?ミノルは大分強くなったの知ってるけど、ウミとコスモは戦える?」

「私の作った武器は一級品だってメーちゃんも認めてくれてるでしょ?」

「それに引きつけるだけだ。こんなナリしてるけど俺だって男だ。戦うよ。」


2人の闘志を見たメロンはこの作戦に同意した。


「オッケーだよ、リュウ。」

「メロン君、不満はないのか?結局どっちの門番も倒すのはメロン君だが。」

「ないね。勝つから見とけよ。」

「…ああ。本当に頼もしい。」


この150センチ位の少女は3メートルを相手に勝つらしい。その戦いを間近で見れることにリュウは興奮する。それはウミもコスモもミノルも同じだ。


「じゃあ、もう行くか。」

「や、流石にここらで車を止めて、体調万全で臨もう。」

「了解。」


だが興奮しているのと理性は別だ。足早にももう忘却門へと行こうとしたメロンをリュウは一旦咎める。メロンはそれに素直に従った。


ーーーー



「ミノル。起きてる?」

「なに?」


車で一晩全員で寝る事になった。いつも燃料補給以外で止まる事のない車なので止まった状態で寝る事が落ち着かないメロンは小さな声で近くにいるミノルに声をかける。起きていたミノルから返ってきた声は暗闇に冷たく響く。メロンはミノルの調子が悪いのかと思って上半身を起こすと、ミノルも同じ様に上半身を起こしてきた。上に服を着ていないので上半身が丸分かりで、そんなミノルをみて変わったな、とメロンは思う。


前は骨と皮みたいだった体に見て分かる力瘤がついた。腹筋だって薄ら割れている。カールの地域で見た時も確かに逞しくなったと思ったがここまでだっただろうか。この門に辿り着く道中で無理な努力をしたようだとメロンは悟る。だがメロンが知っているミノルの鍛錬は腹筋背筋などの基礎トレーニング、あと食べ物に困る事が無くなったことで出来る食事での身体作り、最近はコスモに助言されてもっと効率のいいトレーニングもしているとか。

本当にそれでこの体になるか?出会ってまだ1ヶ月も経っていないミノルの成長速度にメロンは粟立つ。


「メロン?」


ミノルは何も言わないメロンを見つめる。その目が相変わらずメロンのことを慕っている様だったので、体調や機嫌が悪い訳でなく、ただ声を小さくした結果声が冷たく聞こえたのだとメロンは気づいた。


「なんでもない。頼りにしてるよ、ミノル。」

「やっとだ。今まで戦えなかったけど、やっと今回メロンの役に立てる。」


ミノルは声のトーンを落としてそう言ったあと、寝転がって小さないびきをかいた。


「…え?もしかして今までの寝言か?」


どうやらそうらしい。寝ていても私の声に反応するに口笛を吹いたメロンは、今度こそ眠りについた。



ーーーーーーーーーー


以下、コスモと仲間達の初対面邂逅



「あら、いたわ、緑髪さん。お名前は?」

「コスモ……お前がウミか、美人だな。」

「そうよ。でも貴方も美人よ。ね、ミノル、リュウ?」

「うん。本当に綺麗なお姉さん。あ、俺ミノル。」

「俺がリュウだ。女医さん俺達は何を手伝えばいい?」

「……おい、声聞いて分からねーか?俺は男だ。」

「「「………ウソだろ???」」」


「1人残らず固まるな!驚愕の顔でこっちを見るな!!ああクソなんでいつもこうなるんだ!?なんで女に間違われるんだ!?いや、むしろメーロン!なんで俺が男って分かったか教えてくれ、男らしさを教えてくれーーーー!!!」


ーーーー


以下、道中会話 リュウとメロン



「ねえリュウ、他に早い移動手段ない?」

「あーー、そうだな。飛行機とかか?」

「何それ。」

「空を飛ぶ移動手段だ。まあ、上界の者しか使えないが。」

「そら!とぶ!凄い凄い!え、なんで上界専用なの?」

「領空権を上界の奴らしか持ってないからだ。自分の国を我が物顔で飛び回る上界の人間を見た時は吐き気がしたよ。あっちは旅行気分なんだろうけどな。」

「?空は平等に皆のものだよ?」

「……ああ、そうだな。そう思うよ。メロン君が総統になった暁にはそうしてくれ。」

「うん!だってこの星を一つの国にするから!この澄み渡った空に境界線なんて引かせない!」

「……よろしくな、メロン君。俺も全力で働くよ。」



ーーーー



決戦の日、体調万全の仲間達にメロンの号令は響く。


「いっくぞーーー!!」

「「「「おーーー!!」」」」


気合い十分の仲間達の掛け声がメロンを熱くさせる。


「ウミ!」

「うん!」


メロンがウミの名を呼ぶと、運転席のウミがペダルを踏んだ。忘却界最後の戦いが始まった。


まずは地雷地帯、本来爆発するはずの地雷が全く反応しない。スルスルとここを突破する。


「さすがウミ!!この星一の天才技術士ウミ!」

「ありがとう!メーちゃん!」


どうやらどう走っても地雷に接触しないようなタイヤ作りにしたらしい。色々説明されても分からないメロンは兎に角素晴らしいタイヤにしたことだけ把握した。


次は有刺鉄線。逃亡者の無いよう頑丈に作られた鉄のトゲトゲだが、これまた綺麗に車の先端部で次々切れていく。


「フロント部分がロボみたいでかっこいいんだよなぁ!」

「ミノルもありがとう!ウミお姉さん感激しちゃう!」


ミノルのいう通り車の前方にはドリルのようなものがついている。切れ味のいい刀を高速回転させている感じと言われて、メロンはよく分からないが納得したふりをした。


次に電気線だが、これはもとより大丈夫だ。だって車でぶち抜いているんだから!!とメロンが心中で言うのと同時に電気線も切れた。


「斧右!鎌左!」


双眼鏡を持つミノルが敵位置を知らせる。


「右ね。了解!」


メロンは門番が見えると止まらない車から華麗に降り立った。車はそこから左へと行くが、それを見送る余裕はなく眼前から一撃飛んでくる。空気が唸り、えげつない轟音がする。


「〜〜〜〜!おっも!これが1トンの力!!」

「あ゛?ガキ1人?他に何人かいただろう?」

「そいつらは全員向こう!貴方は私が相手だ!」

「あ゛あ゛?舐め腐りやがって!殺す!!」

「舐めてないよ!なんたって!!私はこの星の未来の総統だからだ!!!」

「寝惚けたこと抜かしてんなぁ!!!!」



斧男が斧を再び振り下ろす。普通なら初撃でこの世からおさらばするところ、メロンは初撃を盾で受けてみせた。斧男はならばと2撃目を横から入れる。メロンはこれを飛んで躱わす。


「飛んだらこっちのもんだ!」


斧男は斧から片手を離し、メロン自身を掴みにかかる。メロンはその前に盾を斧男の顔面目掛けて投げつけた。


「うっ!」

「いや〜、ウミ凄いわ。私が武器苦手って言ったら盾くれたんだ。能無しの私でも盾なら使えるっていう証明になったかな?まあ、投げちゃったけど。」

「っ、まだ戦いは!」

「終わりだよ。」



メロンは斧男の腕を逆に折る。斧男はギャァと大声で叫んだ。メロンはその悲鳴を感知することなく逆の腕と両足も折る。斧男はその度に悲鳴を上げた。


「っ、あ、あ、」


斧男は苦痛に声も出せなくなったらしい。喘ぎ声を出しながらメロンを見て涙を流す。


「あくま、」

「いや、私はメロン。未来の総統だよ。」


悪魔呼ばわりされてむっときたメロンは、それでも急いでいるので、訂正だけ入れて逆サイドへと走った。



鎌男が見えたメロンは周囲にいる仲間達の様子に胸を痛めた。満身創痍が遠目で分かる。それでも、仲間達は懸命に戦っていた。

リュウの強さは元から知っている。あからさまなヘイト稼ぎで攻撃を出来る限り自分に集め、来た攻撃を身体や剣で躱わし続けているリュウは流石だと思う。

ウミもコスモも共に武器性能で食らいついている。鎌男の脛めがけて攻撃しているが、それを鎌男は蹴りで避けているようだ。これは鎌男が一段上をいっている。

見違えたのはやはりミノル。事前に身体付きが違うのは分かっていたが、身体の使い方も様になっている。背後背後をつくように動き回りつつも銃で相手の急所を撃つ。銃の反動を片手で受け止めるミノルに、もう泣き虫ミノルはおさらばかと少しだけメロンは寂しく思った。



「皆交代!下がっとけ〜〜!!」


メロンの叫びに皆からは歓喜の声が上がる。


「メロン!すごい!もう斧男倒したの!?」

「さすがだ!メロン君!おい皆退くぞ!」

「きぁああああ!未来の総統様素敵!メーちゃん万歳!!!!」

「ウソだろ5分経ってねーぞ、怪我もねーし、バケモンかよあいつ。」


口々に歓喜しながら仲間達は逃げる。それを仕留めようとする鎌男は巨大な鎌を超高速で振ってみせた。メロンはその鎌を素手で掴む。


「な!我の鎌が見えたのか!!」

「成程向こうが力ならこっちは速さで勝負って訳か。悪いがどっちも得意分野だ!!」


メロンは握っている鎌をぼきりと折ってみせる。鎌男は負けじと鎌を放り投げ拳を打ってくるがメロンは片手でそれを止める。


「な、な、な!お前、何者だ!」


鎌男は、あり得ない光景を目の前に怯えをみせた。自分の拳が自分から見て赤ちゃんサイズ程度の手に抑えられている。先程から斧男の姿も見えずに鎌男はメロン相手に震えた。


「未来の総統メロンだ!覚えとけ!!」


その後、メロンは渾身の一撃で鎌男を一発KOしてみせたのだった。





ーーーー



「ただいまー」


「すごい!あんな巨人を2人も相手してピンピンしてる!メロンカッコいい!総統最高!」

「本当に手当必要じゃないのか…。メーロン、実験体といい俺はお前の方が人間か疑わしいぜ。」

「メーちゃん!車のメンテナンス終わったよ!」

「メロン君、お疲れ様!こっちは全員治療済みだ!このあとどうする?」



総統の無事の帰還の声に一同は一斉にメロンに寄って来てそれぞれが話したいことを話す。纏まりがないのは巨人戦の興奮のせいかな、とメロンは心中で結論づけた。先程までは満身創痍もいいところだったのに、私が鎌男と対峙している間にもう復活したらしい、皆元気でなによりだとメロンは微笑む。


「ミノル、ありがとう。お前も遠目で見たけどよく戦えていたよ。コスモ治療お疲れ様、うん、私斧男に悪魔って呼ばれちゃった失礼しちゃうわ。ウミ、車と盾ありがとう。メンテナンスもお疲れ様。リュウ、段取りありがとう。なら、早速だけど、行こうか!」

「行くのか、下界に。」


メロンは仲間達一人一人に丁寧に労いの言葉をかけるが、休ませるつもりはないらしい。リュウが行先を確認すると、戦闘後とはとても思えない明るい声が仲間達に向かって発せられた。



「うん、行くよ。下界を、もう下界と区分させないために!!」


仲間達はメロンを見た。キラキラと輝く太陽のような少女、唯一無二に最強な少女、そして誰よりも、きっとこの世の誰よりも心優しい少女。


メロンは、総統になる人だ。


皆の心は一つになる。


「行こう!」

「うん!メロン!」

「ああ、メロン君。」

「了解、メーちゃん!」

「おう、メーロン。」


「門を開いて道を開けろ!!忘却界からの下剋上だーーーーーー!!!!」



メロン達の戦いは、下界へと移行する。



ーーーーーーー



プルプルプル、プルプルプル。ある少年の緊急電話が動く。


「忘却界の門が壊された…?!」


少年は、すぐに旅支度を始めた。



ーーーー



プルプルプルプルプルプル、時を同じくして上界の電話も鳴っていた。


正義執行門(ジャスティカ)が破壊されました。』

「ああ、なんと、正義執行門(ジャスティカ)が。ゴミ箱からゴミが出て来てしまいましたか。自分の存在を恥じ大人しくいることも出来ないなんて。ああ、嘆かわしい事態です。」

『どう致しますか。』

「そうですねぇ……しかし、出てきたといっても所詮は下界です。こちらから何もしなくても戦争に巻き込まれ死に絶えます。まあ、穢らわしき忘却界人にはいずれそれ相応の裁きが下るでしょう。一応、注視しておきなさい。それと、あとは分かりますね?」

『畏まりました。』

「ほほほ。よろしいわ。」


それだけ。たったそれだけのやり取りで、もう上界は通常運転だ。まだ幼さを残した声が畏まるのを当然に受け、上界人は電話を切ると、面白そうに笑い始めた。


「ふふっ、どんな死に様かしら。今から楽しみね。」


上界人の高笑いはまだ止まない。


ーーーーーーーーーー





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