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【偽典】関西人とツッコむ! VRMMO ~この辺、“鬼”がよぉ育つ~  作者: あいお明
[序章]“ファンフリ” を 知ろう !
8/42

006. 特訓と、方向性(後編:えすとの魔法塾)



 2時間目ぇ、魔法!

 ……てなわけで、先生役がボーゼからえすとっきゅーに代わった。

 “脳筋魔法使い:えすとの魔法塾”てとこかな?


 さっそく講義開始、ぱちぱちぱちぱち~。


「魔法の使い方は超簡単。使いたい技を意識すると、それで使う分、MPゲージが灰色になる。 ……ちょっと俺の頭の上見てみ?」


 えすとの頭の上に、▽名前、レベル、2本の横棒が表示されとる。

 上下にならぶ2本の下、水色の横棒の右端が、水色から灰色、そして黒に変わった。


「灰色んとこが無くなって、MPゲージの動きが止まったら準備完了。あとは、技名を言うたら発動する。たとえば……【風の破魔矢(ウインド・アロー)】・2射(ダブル)!」


 えすとの目の前に、緑色に光る半透明の矢が、2本出てきた。

 ……あ、片っぽ消えた。


「ここで満足すると消えるんで注意。最後まで責任を持って動かそう。あと、動かすんにもMPが要ります」


 彼が言い終わると同時に、残った矢が飛びだして、木人に命中した。お見事!

 ……以上、通販のお時間でした。これはツッコまんぞ~?


 ちなみにボーゼは白目()いとった。これが……ツッコミ不在の恐怖 !!

 ほな実践編、の前に……


「攻撃魔法のオススメはこれ、【火の魔球(ファイア・ボール)】!  魔物が一番……は言い過ぎか。弱点属性の次に怖がるからな」

「それ、魚とかもビビるん……?」

「意外とビビる。ダメージは半分とかやけど」

「へぇ~……ほな虫は?」

「全然ビビらへん。けど弱点やし、めっちゃ効く。ダメージ4倍」


 飛んで火に()るなんとやら……


「そ~なんや……ほな早速」


 はい待て~、今MPめっちゃ減ったで~ ??  灰色だけでゲージの半分あるやん!

 しかも遅い、時間要(ヒマい)るな~……!


「……19、20、21……準備終わるまでで22秒 !? 」

「「お、おう」」


 実用性なさそうな数字やな~? でも使(つこ)てレベル上げな、マシにはならんし……

 ん~……難しい話は後や。


「【火の魔球】……うわ小っちゃ!」

 半透明で赤い、ピンポン玉みたいなんが出た。

 まっすぐ木人に飛ばしてみたら……超安全運転(おじいちゃん)自転車(チャリ)ぐらいの速さか~。


(トロ)~……」

「Oh……狼獣人(おれ)より酷い……」

「あっちゃー、一番威力出る〈火魔法〉でこれかー……」


 当たるだけマシやけど、ミニゴブリンの“魔法が苦手”、結構ヤバいな?

 2人の反応にも納得しかない……。


「1回撃つんに30秒、MPはあと2割ちょい。いや~、きついわ~……」

「やろなー……」


 これは使う(とこ)、ちゃんと考えとかなな~……。


「でも他も気になるやろ?」

「そらな~、魔法やで~?」



 とりあえず、MPが足らん。前話(さっき)MP回復薬(マナ・ポーション)を、1本貰(もろ)て~……


「……オ~、マズ~イ……モ~イッポ~ン!!」

「やから何でカタコトなん……?」


 口の中いっぱいに広がる、酸味と塩分。鼻に抜ける香り。

 ……そんな昔ながらの梅干し風味で、MPが5割分回復した。変な(もん)(こさ)えたな~……?


「その反応やったら……」


 ん? 通知でっか ??


《異人「えすとっきゅー」から、「中級(?)MP回復薬」28本が送られました》


 合わせて31本……。


 さすがに「ゴミやし無料(タダ)でええでー」てわけにはいかんから、10マニ渡しといた。

 これでも市販の半額以下らしい。たしか1本0.8マニやったか……


《所持金残高:470マニ》


 お、そうそう。今の日本人でも梅干し味は「微妙……」て言われがち、なんやて。

 まして、剣と魔法の世界の一般人には……ま~そら売れんわな……。



 で、【火の魔球】以外も試してみた。〈火魔法〉の【篝火(トーチ)】と、〈生活魔法〉の【着火(バーン)】とか【飲水(ワター)】とか。


 威力は知れとる。けどその分、気軽に使えそうやな。

 あと、〈生活魔法〉は1回|使とくと、他の魔法を使うだけでもレベルが上がるんやて。


「せや、魔法言うたら……回復技てどんな感じなん?」

「なかなか深いで。属性ごとに効果がちょっと(ちご)たり、属性どうしで相性のええ悪いがあったりしてな。たとえば……【風の癒し(ウインド・ヒール)】」

「あだだだだだッ !? 」


 緑色の淡い光に包まれた……と(おも)たら、すぐ背中に寒気を感じた。

 次の瞬間、全身が(しび)れて、HPが減りだした。痛覚2割で、かろうじて立てる……てレベルやった。


「……こんな感じで、弱点属性は回復技でも危ない。気ぃつけてなー」

「“気ぃつけてなー”ちゃうねん、先言うてぇな……」

「すまんすまん……【光の癒し(ライト・ヒール)】! ……あとジンジュ、ちょっとその辺ぐるーっと走ってみて」


 言われた通り、走ってみた。


「【風属性付与(ウインド・エンチャント)】、10秒間(テン・カウント)!」

「……んおぉ~っ !! 」


 後ろにずっこけた。前に出した足を、引っ張られたかのように。

 がちゃーん! て、えらい音したな……。


「……急に動き速なったぁ !? ……あぁ、今度は遅なったぁ~。何これぇ~……?」

「これがバフ。効果が切れたら、反動でデバフになる……てクセ強い仕様やけど」


 ……あ、戻った。


「……するとどうなる?」


 ボーゼが割り込んできた。


「知らんのか? アホが “自分に10倍のバフを!” とかやって自滅する」

「ざまあ草。ラノベ主人公気取りか」


 それお前が言うんか、ボーゼ……


「あとマジレスするとさー、バフは敵に、デバフは味方に掛けるようになる」


 ……うん?


「普通逆じゃね~ ?? 」

「せやな」

「そうそう。やから付与術師(バッファー)希望者は、“俺TUEEE(つえー)出来ないクソゲー”てキレとるわー」

「お前の(へき)は知らんわ~……」

「「辛辣なコメント」」


 渋い顔されました。


「で~、さっき俺は何されたん?」

「本来は“10秒間、敏捷値を5上げる”て物や。けど、“弱点4倍”で敏捷値が20ぐらい上がったみたいやなー」

「で、10秒()ったら反動で、“10秒間、敏捷値が20下がる”になった、てとこ」

「へぇ~……()ぁ悪かったらああなるんか、付与術師さん大変そう……」

「せやな。〈付与魔法〉まで取って、本格的にやっとぉ人ヤバいで。変態の領域」


 そこまで言われるんか……。


「同感やなー。 ……あ、そうそう、さっきの逆もできる。【風属性付与】・マイナス・10秒間!」

「…あれぇ~? 声がぁ……遅れてぇ……聞こえて、くるよぉ ?? 」

「腹話術下手(ヘタ)か」

「そもそもやってないわ……」



 閑話休題。



 ◇


 とかやっとったら、貸し出し期限の5分前やった。

 そろそろ撤収(てっしゅう)やね。


「いや~、お疲れさんでした……【オレノマケダ!】」

「何でラップ調なん……?」


 とりあえず降参。結果はいかに……?


《【決闘モード】終了。以下の条件が満たされています》

《Lv.2になりました》

《スキル〈受け流し〉〈体力強化〉が、それぞれLv.2になりました》

《称号〈果敢な挑戦者〉〈生還者〉を獲得しました》

《〈物理抵抗〉〈根性〉〈挑戦者(チャレンジャー)〉以上3スキルが開放されました。それぞれSP:3と交換で取得できます》


 おいおい多い多いおおい……ゲームでも通知爆撃とかあるんかい。


「おー? 通知爆撃か?」

「何で分かるん?」

「何回か見たからな、ボーゼが(おんな)し顔しとるん。あと、某SNS(リム)でスタンプ爆撃食ろたお前も」

「アレやったんお前やろ、他人事(ひとごと)か~?」

「アッハハ、過去は振り返らん主義でさー」

「「5秒で矛盾すな」」



 ……とりあえず、ステータス画面を確認。

 始めて数時間で、こんなに称号とか(もろ)てもて、ええんかな……?


 ま~、貰えるもんは貰とこ。あざ~っす。

 で……アンポン○~ン、新しい称号よ!


―――――

〈果敢な挑戦者〉

 レベル差が「10以上かつ倍以上」の、格上の相手に挑み、敗れた。

 同条件を満たす相手と戦う際、全ステータス値が1%増加する。

 また、人類NPC、および同族NPCからの信頼度が上がる。

〈生還者〉

 格上の相手からの攻撃を、HP残り1、または1%未満で耐えた。

 HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。

 また、成功時に居合わせた味方NPCからの信頼度が微増する。

―――――


 ちょっとだけ、用語の説明。

 格上・格下はレベル差5以上。微増・微減は1%未満の増減なんやて。


「もしかして……この称号、あんま意味ない?」

「「せやな」」

「んえ~、ケチ! て言いたいとこやけど、俺負けたしな~……」

「それはそう、“勝ってから言え”感」

「あとこのゲーム、称号より“スキルが大事”てのが売りやからなー」

「おっと、そろそろ時間やな。出よか」

「「は~い」」



 ◇


 受付で、鍵を返す。


「「「ありがとうございました~ !! 」」」

「どういたしまして。またのご利用、お待ちしております」


 ではお待ちかね、狩りの時間(レッツ・ハンティング)! ……の前に、組合を出ましょう。


「「……うわぁ !? 」」


 組合の正面玄関で、右からぬるっと2人が出てきた。前歩いとる同士、お互いにビックリした。


「「あ、ども」」


 実話怪談? いえいえ、仕様です。

 混雑防止の鯖ふりかけ……やない、サーバー振り分けやな。


 ……いや、ちゃうねん。そこまでビビりやない。

 理屈は分かっとっても、実際に出くわしたら面食らう……て、よ~ある話やろ?



 そんなわけで……帰ってったで、中央広場!

 この時間になったら、さすがに人減ったな~。小柄な今の俺にも、街並みがよ~見えるわ。


 んで……地味に多いな、猫と鳥。



 ……てなわけで、“始まりの街” アインツ。

 欧州(ヨーロッパ)の旧市街にありがちな、石造りの街……て感じやな。


 ドイツっぽい名前の割に、それらしき赤屋根は見当たらん。むしろ白っぽい街並みやから、イタリアとかギリシャっぽい……?


 いやまあ……行ったことないから、地図帳とかの受け売りやけど。


「適当言うただけやのに、割と当たっとったんかい……」

「「何の話 ?? 」」


 で、この中央広場は、噴水を中心に広がる円形広場や。

 広場の周りには、8方向に延びる大通りと、役所、教会、冒険者組合などなど……街の主要施設が集まっとるらしい。


 噴水のおさらい。真っ白で立派な、石造りの噴水や。

 で、そのど真ん中に、シトリー様の石膏像。あのベーシスト女神様な。


 また(おが)む……んはやり過ぎか。気をつけ~、礼! ありがとうございま~す !!


 放射状に、8方向へと延びる大通りの先には、それぞれ城門が見える。小っちゃく、やけどな。


 デカい街やな~。しかも城塞(じょうさい)都市(とし)、ってか?

 街の周りが高~い石壁で囲まれとるやつ。



「よし、ほなこっち行こか」


 ボーゼは南側の大通りを指差した。


「「りょ~か~い」」



 ◇


 大通りをまっすぐ南へ、小走りで約30分。“アインツの南大門”に、着いた~ッ !!


「うわ~、また並んどるな~……」

「ほんまやなー……」


 そそりたつ城壁に、ぽっかり()いた四角い穴。

 ……そんな門の両脇に、おっちゃんが1人ずつ立っとる。門番さんやな。

 顔だけ出した全身鎧(フルプレート)に、両手用のデカい槍で、いかにも……て感じや。


 で、左に見えるおっちゃんのほうに、列ができとる。

 検問か~。てことは……


 おっちゃんのさらに左に、城壁と一体化した建物がある。それが詰所(つめしょ)、てとこかな?


「問題なし、通ってよし!」


 威勢のええ声がしたけど、どっちのおっちゃんでもなかった。門の向こう側にもおってなんかな?


 ……あ、そうみたいや。商人さんご一行が門をくぐってきた。


「しばらくかかりそうやなー」

「せやな……ほなジンジュ、スキル埋めとけ」

「……ほえ?」


 急に言われても困る……。


「オススメある~?」

「「ん~……」」


 考え込むボーゼとえすと。


「〈顕示(アピール)〉〈解体〉〈器用強化〉〈筋力強化〉〈挑戦者〉あたりか?」

「全部は無理~」

「やろな」

「俺からは〈従魔法(テイム)〉と〈精神強化〉もオススメしとく。魔法が苦手? ほな得意なヤツにぶん投げろ! ……てのもアリかと」

「そんな都合のええ子、近場におるん……?」

「……まー、当分先の話やな」


 ん~……ほなこの組み合わせで。


《〈従魔法〉〈解体〉〈筋力強化〉以上3スキルを取得しました》

《条件が満たされたため、〈鑑定〉の技【目利き】を取得しました》

《初期スキル10枠が確定したため、残りの初期スキルが取得不可となりました。なお、条件を満たして開放し、必要なSPを消費することで、それぞれ取得できます》

《種族スキル〈土魔法〉が開放されました。SP:2で取得できます》

《条件が満たされたため、〈刀剣〉〈水魔法〉〈顕示〉など7スキルが再び開放されました。それぞれSP:3で取得できます》


 通知爆撃、再び。

 ……はい、ほな行きましょ~。



 お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m

 次回更新は8/1(木)頃、掲示板回の予定です。


 ※あくまで予定です、ご注意ください……



【追記】一部修正しました

(2025/06/27)



――【おまけ】ジンジュくんの現状――

ジンジュ Lv.2

 種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男

 属性:土

 職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―

 所持金:470マニ

 SP:3

 HP:100%

 MP:100%

 状態:正常


 スキル:8

 〈鈍器 Lv.1〉〈防御 Lv.1〉〈受け流し Lv.2〉〈火魔法 Lv.1〉

 〈生活魔法 Lv.1〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.1〉〈鑑定 Lv.1〉

(控え:3)

 〈危機察知 Lv.1〉〈体力強化 Lv.2〉〈筋力強化 Lv.1〉

(種族:2)

 〈投石 Lv.1〉〈幼鬼〉


 称号:4

 〈駆けだしの冒険者〉

  住民からの信頼度が微増する。

 〈副神シトリーの祝福〉

  幸運のステータス値が微増する。

  また、知力と精神の取得経験値が微増する。

 〈果敢な挑戦者〉

  レベル差が「10以上かつ倍以上」の、格上の相手と戦う際、全ステータス値が1%増加する。

 〈生還者〉

  HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。



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