050. 俺らと、うるさい森のヌシ
◆
低うて大きい羽音が、こっち来ょる。
白い光の壁すり抜けて、この森の主が、姿を現す。
高さ2mぐらいある、茶色い巨鳥や。
《アインツ南郊・“鳥の森”の主「レッサー・ジャイアントホーク」と交戦中です》
「 ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
早速、嘴上に向けて。
ありがた〜いお言葉を聞かせてくれました。
さすがボス、耳痛いぐらいの最大音量や! 太っ腹〜 !!
もっと聞かせて !!! その悪口♡
「……ぶっ殺いたるからな〜」
◇
ジンジュです。南の森からこんにちは〜。
その辺で獲れた鶏と黒猫の生首を埋めたって、安全地帯で一休みしてます。
友達2人と俺、兎、スライムら12名で、な。
「よりによって黒猫ー? 縁起悪ぅ」
「ほんまそれ〜」
「首パクられるほうが験悪いやろ、仕方ない」
「て言われてもー……」
「な〜……」
えすとと2人、首を傾げる。自慢の友達の、割り切りの早さに。
「てか待って? それ猫の体はー」
「あ? ホンマや !? 」
えすとに言われて、今更気ぃついた。たしかに、どこ行った……?
「そらお前、非常食1択やろ」
「マジか……不味そー」
「てか食うて大丈夫なん? それ……」
「まぁ何とかなるやろ」
「「胡散くさ……」」
当分、こいつからは肉貰わんとこ……
でも今一番嫌なんは、青紫色のスライムが物欲しそうに、こっち見とるとこなんよな〜。
「……きゅお?」
「お前にはやらん」
「きゅお〜……」
可愛らしく、ご主人に甘えとるけど……渡したら何するか分からん。
この子、趣味悪いからな〜。いつかのゾンビみたいに、溶かして食うだけやったらええんやけど……。
「で? 回復終わっとんねやったら疾っとと行くど。それともまた狼殺るコ ?? 」
「要らん要らん要らーん」
「も〜ええわ……」
ほな、ちゃっちゃとボス殺ろか〜 !!
◇
狼の群れがリポップする前に、獣道を駆け抜ける。
んで、白い光の壁に触れたら、通知が来た。東のボス猪ん時みたいに。
《アインツ南郊・“鳥の森”のボスエリアです。ボスと戦いますか?
▶️戦う
やめておく
※ボスに勝てば、この先へ進めます》
「“戦う”でええやんな?」
「そーそー」
決定〜!
……ん !? また通知 ??
《1PT・最大7名ずつでの挑戦となります。現在のPT編成で戦いますか?
▶️戦う
PTを組み直す
やめておく 》
「せやった。俺らはともかく、スライムだけやと分ぅ悪いな」
「あー、移動がなー……」
「ほな“組み直す”やな〜?」
「OK!」
んで、ボーゼが指示して。えすと、橙色の鼠と、スライム3匹が交代した。
つまり、“副リーダーがえすとからスライムに代わった”て話で。
「きゅうきゅう、きゅう……!」
「こちらこそよろしゅう〜」
この水色の子のほうが、1メンバーの俺より偉い! てことになる。
気楽でええわ〜。
「ふんす!」
「きゅお〜?」
何せこっちは、殺人兎と死体喰いスライム――ウチの問題児コンビ――が、両方おるからな〜。
……いやいや、んな話どうでもええわ。とっととボス鳥倒そか〜!
「「「ほな後でー」」」
◇
大盾と石を用意して、白い光の壁をすり抜ける。
「お邪魔しまんにゃわ」
入ってすぐ、低うて大きい羽音が、こっち来ょるんが聞こえる。
……ん !? またや、また体が勝手に歩いていくよ!
10秒ほどで足が止まって、また体動かせるようになった。
「やから制御取る前に予告せぇて、運営ェ……」
横で愚痴垂れるボーゼはさておき。
羽音が光の壁すり抜けて、この森の主が姿を現した。
高さ2mぐらいある、茶色い巨鳥や。
《アインツ南郊・“鳥の森”の主「レッサー・ジャイアントホーク(♂)」と交戦中です》
言われてみたら、確かに猛禽て感じや。鳥ん中でも引き締まった顔つきに、鋭い嘴と、足の爪。
でもそのデカさで、鷲やのうて鷹なんや……へぇ~。
「 ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
んで、ボス鳥さんは早速。
嘴を上に向けて、ありがた〜いお言葉を聞かせてくれました。
さすがや、耳痛いぐらいの最大音量! いよッ、太っ腹〜 !!
もっと聞かせて〜、その悪口 !!!
「……ぶっ殺いたるからな〜」
高い所でギャーギャー喚くやつ、引きずり堕として黙らせたい――――ていうんが、ホンマの庶民感覚や。
ボスにはそんなん、分からんやろけど。
―――――
レッサー・ジャイアントホーク(♂) Lv.18 [交戦中]
(分類)魔物/動物型
アインツ南郊・“鳥の森”の主。異常に成長した巨鳥。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。毒を吐き、空中戦を得意とする。
HP:100% MP:99%
―――――
色々思とったら、ボスの【鑑定】結果が来た。
またや。まだ【鑑定】してないのに……
てか待て〜、俺のHP減っとぉぞ !? ちよっとだけやけど。
何でや? いつの間に……いや、「MP:99%」! それにこの、斜め上からのそよ風は……
「コイツ〈風魔法〉使とんか!」
「せやな、気ぃつけぇ」
パッと見、スライム3匹のHPもちょっと減っとる。ボーゼと兎2羽は大丈夫。
……おっと、能書きはここまでやな!
「ベッ、 ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!! ベッ」
「ふすぇ !? 」
「【ガード】」
「【ガード】! ……うわ汚〜っ !! 」
ボス鳥さん、緑色した液体の塊吐きよる。これが毒液か。
ボーゼと2人、大盾でしっかり止める。毒消しあるったって、食らわんほうがええからな。
でも例外はある。
「きゅお〜?」
飛び散った毒液に、青紫色のスライムが触手伸ばしよる。(物理)
「きゅお! きゅおきゅお〜」
そのまんま突っついてみたり、ひと口舐めてみたり……HP減るどころか、なんか愉しんどる。
こなつさん、毒も平気なんや……へぇ~。
「 キ゛ョ゛ヱ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!? 」
ボス鳥さんがまた鳴き喚いとる。想定外の反応やったらしい。
「ケ゛ェ゛ー゛ッ゛!! ベッ、ベッ」
「「【ガード】!」」
「きゅお? ……きゅおきゅお! きゅお〜」
ボス鳥さん、今度は紫色の塊吐いた。大盾やら地面やらに当たって飛び散ったこれも、毒液らしい。
まぁでも、こなつさんには効いてない。むしろ礼言われてない?
「ケーッ、 ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
とうとうキレたボス鳥さんが、一旦上に飛んだかと思ったら、こっち向かって急降下してきた。
…… 待 っ て た よ 。
「【テイム】、【火の魔球】……堕ちろ、フンッ!」
キレて攻撃しに来た奴って、意外と隙だらけよな。
……てわけで、【テイム】でさらに煽った顔面に、火魔法と石放り込んどく。
「 キ゛ョ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!? 」
《「レッサー・ジャイアントホーク(♂)」の【テイム】に失敗しました》
よし、狙た通り!
さらにウチのスライムらが、追い打ちかけよる。
「【水の魔球】〜!」
「【火の魔球】……!」
「【闇の魔球】〜」
「ゲッ、グエェェェ、 ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
青、赤、透明の光球を、顔面に食ろたボス鳥。ドッジボール違うからセウト!
んで、姿勢崩れたまんま、ついに墜ちる。
ここで一句。
気をつけろ 落下は急には 止まらない
ジンジュ
「跳べェッ !!! 」
「おおっとぉ〜 !? 」
ボーゼの怒鳴り声で、慌てて跳ねる俺ら。ボス鳥墜落の衝撃を、全員で躱せた。
……て思とったら、突風と砂埃が。
ボス鳥、重た過ぎ〜 !!
「ミ°!」
咄嗟に目ぇ閉じて、右腕の肘で口元を覆ってみる。
……なんとかやり過ごせたな〜。
んで、ボス鳥のHPはあと半分ぐらい。やけど起き上がって来ぇへん。
「どうした、頭でも打ったか?」
「どうやらそのようだな」
ネタは置いといて。ほな、やることは1つ。
急所を一突き、やない。
「おら羽根毟れ! 二度飛ばすなァ !! 」
「ぴすぴす!」
「長い羽根〜、長い羽根から潰せ〜ッ !! 」
「きゅい〜?」
全員でボス鳥に飛びかかる。狙うは風切羽。
翼の外側から後ろ側にかけて生えとる羽根や。
見た目がええから、昔は羽根ペンとか矢羽とかに使とったらしい。
九官鳥飼うとっての、現実のご近所さんに聞いてんけど。
ペットの鳥はだいたい風切羽切られとるねんて。ほなその鳥、飛べる距離とか高さとかがグッと狭まって、逃げられへんなるんやとか。
「まぁゲームやし、魔法で飛ばれたら一緒やけどな」
「さよか〜」
何とな〜く、左翼の付け根ら辺から順番に、風切羽毟っとる俺らと。
右翼の外側から毟るスライム3匹。
「ぴすぴす!」
「ふんす、ふすぇあッ!」
翼をガン無視して、左右の目ぇ叩く・蹴る・引っ掻くなどの暴行を加える兎2羽。
「全員味方でよかったですね〜。はあぁ〜い」
「情緒不安定か」
◇
風切羽を3分の1ぐらい切り落としたあたりで、ボス鳥の体が震えだした。
「退避っ、退避ーッ!」
「了解」
「きゅお!」
ボーゼの指示で、俺らはその場から距離取った。
大盾構え直してから、そっち見たら……
「キエェェェッ……グエッ !? キエッ、キエッ……グエッ !?? …… ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
ボス鳥が起きとった。
起きて羽ばたいて、数m飛んで落ちて。もう1回ちょっと飛んで、また落ちとった。
痛そ〜……
「【テイム】〜。あとお前ら、【鑑定】お願い」
「【鑑定】」
「きゅい、【鑑定】〜」
「人の心とかないんか?」
とがの・はっさくと一緒に挑発しよったら、ボーゼにツッコまれた。
返事はあとで。結果は……
《「レッサー・ジャイアントホーク(♂)」1羽の【テイム】に失敗しました》
《抵抗に失敗しました》
《従者「とがの」「はっさく」が、それぞれ抵抗に失敗しました》
うお寒 !? 【鑑定】返しか……?
「ふす !? 」
「きゅい〜?」
……みたいやな。とがのらもびっくりしとる。
「ケーッ、【風の魔球】!」
お、ボス鳥さんが緑色の光球を……間に合え!
「【火の癒し】!」
待って。【風の魔球】が【火の癒し】で消されよる!
そんなんアリなん !?
「 ホ゛ケ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛!!! 」
「ありがと〜」
「きゅうきゅう……」
また想定外にキレよるらしい、ボス鳥を尻目に。
あまなつさんにお礼言うとく。頼れる副リーダーや……
んで、その間にもボス鳥は飛んで墜ちてを繰り返しとった。彼のHPは残り1割ちょい。
ほな石出して〜。そろそろ、逝んでもらいま。
「【着火】……ん? あっ、【ガード】!」
危な、アイツ羽根飛ばしてくるんか! 左目やられるとこやったわ〜。
しかも火ぃ点いたん。いや、点けたんは俺やけど。
んでボス鳥さん、飛べんから割り切って、翼で風起こしよる。抜けた羽根やら砂やらが混ざって、まぁ〜鬱陶しい!
……お、止んだ?
「今や、ボッコボコにしたれ!」
「っしゃア〜 !! 」
全員で殴りかかって。「CRITICAL!」、いただきました〜。
なむなむ……
《アインツ南郊・“鳥の森”の主「レッサー・ジャイアントホーク」を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《“鳥の森”以南との行き来が可能になりました》
《討伐報酬として、SP:3を獲得しました》
《Lv.11になりました》
《〈防御〉〈体力強化〉両スキルのレベルが上がりました》
《従者「とがの」がLv.12になりました》
《「とがの」の〈体力強化〉〈敏捷強化〉両スキルのレベルが上がりました》
《従者「はっさく」がLv.12になりました》
《「はっさく」の〈水魔法〉がLv.6になりました》
ヒェ〜、通知山盛り〜……
「よっしゃ! ほな行くコ」
「……え?」
「きゅう……?」
待てぇボーゼ。ボス鳥の死体引きずって、どこへ行こうというのかね?
「お前、それ解体したほうが楽やろ?」
「……1ぺん確かめてみたかったんよな、ボスの死体て増やせるんかどうか」
「それ今やないとアカン〜 ??? 」
「ふす……」
……てわけで、早速白い光の壁から出た。
んで、40秒ほど遅れて、えすとらも出てきた。
えすととスライム3匹で、あのボス鳥担ぎながら。
「あ゛ー゛重゛っ゛た゛! 急に無茶言いよって……」
「お疲れ〜っす」
「おぉ、増えた。ボスが増えた……!」
「「お前もっと他に言うことあるやろ」」
能書きはさておき。なむなむ……。
んで、2体に増えたボス鳥さんを、それぞれで【自動解体】した。結果は……
《以下のアイテムを入手しました。
◯レッサー・ジャイアントホークの肉(中)×3
◯レッサー・ジャイアントホークの羽根(小)×34
◯レッサー・ジャイアントホークの頭部(中)
◯レッサー・ジャイアントホークの魔石(小)》
「……何か要るー?」
「いや〜、特には」
「首とかどうよ?」
「要ら〜んッ!」
とりあえずボーゼが全部預かって、後日売っ払ったお代を山分け……するんやて。
ほな、先行こか〜。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新は3/10(火)頃、番外編の予定です。
本編は3/20(金)頃に更新予定です。よろしくお願いします m(_ _)m
【追記】一部加筆/修正しました
(2026/03/06)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.11
種族:ゴブリン(小鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:228マニ
SP:6
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.7〉〈防御 Lv.5〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.4〉
〈生活魔法 Lv.6〉〈従魔法 Lv.6〉〈解体 Lv.4〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:6)
〈危機察知 Lv.3〉〈下剋上 Lv.5〉〈体力強化 Lv.5〉〈筋力強化 Lv.4〉
〈敏捷強化 Lv.3〉〈人類共通語 Lv.2〉
(種族:4)
〈投石 Lv.4〉〈土魔法 Lv.2〉〈採取 Lv.1〉〈小鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物どもを喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:4)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
〈地下墓地の踏破者〉
記念称号。異人で初めてアインツ北郊・“忘れられし地下墓地”を踏破した。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.12
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
はっさく Lv.12
スライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%




