049. 俺らと、続・南の森
作中7日目、金曜日です。
◇
ジンジュです。ログインしたら、晴れた午後の東の街でした。
すぐ狼獣人・森人と合流して、行き先とか相談してます。
今日は兎らが北西の草原、スライムらがイース川におるらしい。
んで、街の南、「鬼族の種族スタート地点」の話振ってみた。
即、ボーゼが食いついた。俺の肩に掴みかかりそうな勢いで。
「おま……んな面白い話、何で黙っとってん?」
「や〜スマン、完っ全忘せとったわ。『スキルどないしよ?』とかって話のほうが、俺には大事やったからな〜……」
「あー、そらそーかー……」
昨日街出るとき、門番さんに
「里帰り?」
とか聞かれんかったら、多分忘れっ放しやったやろな〜。危な危な……
ドーモ、皆=サン。アホゴブリンです。
んで、そのアホに、えすとが聞いてくる。
「でー、どこまで行ったん?」
「ボスの手前〜。 ……その間、特に何もなかった」
「あーそっか、ボスまだやったかー……毒消し足らんなぁ、買わな」
……毒消し、やと?
そんなん要るってことは、何か毒持っとる敵が出てくるんやな。何やろ……?
蜂か毛虫か。それとも蛇とか蜥蜴とか?
……全部嫌やな〜。俺、町の子やし。
とか思とったら、ボーゼが答え教えてくれた。
「あそこのボス、バカでかい鳥のくせに毒吐きよんよな」
「『ボケェ〜 !! 』とか言うて?」
「せやな、そっちの毒も吐きよったわ」
「マジか〜……」
人様のボケ潰しよったぞ? このボス鳥。
許すまじ……
「そーそー。あとあの辺、デカい蟻さんも出てくるからなー」
「デカい、てどん位〜?」
「んー、50cm位?」
「デカ……」
うちの兎やスライムらよりデカいやんけ。勘弁してぇな……
「あ~せや、蟻酸て毒扱いなん?」
「ゲームによる。ここは違うな、中和剤が別にある」
これな、これ〜……て感じで、ボーゼが小瓶出してきて、振りよる。
ていうても、中身は透明な液体や。違いが分からん。
「まぁ基本、狼か鶏や。んな気にせんでええ」
「さよか〜」
とか何とか、喋りながら歩きだした。
目的の店は街の西側、やて。
◇
イース市の都心:中公園から歩くこと、10分弱。
「着いたー!」
「喧しッ」
急に原始人みたいな奇声を上げるえすと。その口を、ボーゼが慌てて塞ぎにかかる。
すいやせん、今ちょっとビビりやした……
さておき、目的地らしき薬局に着いた。
ていうても、外からそうとは分からん。看板とか一切ないからな。
「OPEN」
て書いた板切れすら見当たらん。
大通りから1本入った所で、家にしては開放的――1階が丸見え――すぎるから、ギリギリ
「あ、何かのお店なんや?」
て分かるレベル。
……極端やな〜。もうちょい何とかなれへん?
「よし、今日はおってやな」
中覗いたえすとが、引き戸を開ける。建て付け悪いんか、ギィ〜ガタガタ……て音しよる。
「「「こんにちはー!」」」
「お? 何だい今日は」
椅子にどっかと腰掛けて、テーブルにもたれかかっとる爺ちゃんが、面倒くさそうに訊いてくる。
店主さんらしい。
この人物凄い気ぃ難しそうやな〜……。
小柄で皺だらけやけど、目つきは鋭い。んで、声低うて早口。
これが噂の、“職人肌”てやつ……?
格好ええな〜!
いやちょっと怖いけど。身近におれへんタイプやし。
「お前口から先生まれたんけ?」
「ヘラヘラすなボケぇ!」
とか何とか、す〜ぐ言われるんが、ウチの親戚筋やからな。
……で。そんな店主さんに、えすとは普通に話しかけよる。
「おっちゃん、毒消しと蟻酸の中和剤あるー?」
「左の棚でぇ。1本50万な」
「50万かー……」
え~っと……初級MP回復薬が1本0.8マニ、やったよな。
1本50万マニてことは……
……待って? おっちゃんそのノリ通じるタイプなん ?? その雰囲気で ???
「ほなこれでー」
えすとが小瓶5本持って、テーブルへ。んで250マニ出して、その横に添えた。
おっちゃんがニヤリと笑ろて、一言。
「南か?」
「はい」
「そうか、気をつけてな。毎度あり」
通 じ た ァ 〜 ッ !!
「「「ありがとうございましたー !! 」」」
お礼言うて、店出た。
ほな行こか、南の森〜!
◇
薬局から歩くこと、30分ちょい。
イース市の南総門で検問クリアして、草原に出た。
「【ソード・スラッシュ】!」
「【火の魔球】」
例のごとく、兎を狩る異人らが十数組。
それと何かを爆発させる一団が…… 爆 発 ぅ ???
草原の中ほどで、橙色の火柱が上がった。んで、ちょい遅れて「ドゥオーン!」みたいな重低音と、生温い風が届く。
うわァ……腹に響く〜!
「えっ、今の何?」
「は? 爆ぜた ?? 何が ??? 」
爆発音に驚いた人らが戸惑い、兎らが逃げ惑う。
んで、火柱上がった辺り見た。煙ん中から、何か橙色の光が見える。
風の加減か、煙が切れる瞬間があって。橙色に光っとんは、何かデロデロした物みたいや。
「あ゛~? 溶岩…… ?? 」
いや、溶岩で火柱は……あとまず、どこからどないして持ってってん、て話やし。
ほな融けるほど熱々の金属、やとして……金属……爆発…………
「あ! テルミット反応か?」
「「なんそれ ?? 」」
「鉄とアルミ粉々にして、火ぃ点けたら爆ぜる……てやつ」
「「なんそれ…… ??? 」」
「いや~……それ以上は俺も知らん」
友達が「なんそれ?」botと化したんで、説明を打ち切る。
テルミット反応を使うと、
「純度の高い鉄が手に入る」
「超高温で、電子機器の記憶領域を確実に潰せる」
とかって聞くんやけど。
……うん。もし今のがテルミット反応やったとして、
「やから何? 何がしたいん ?? 」
て話やな〜。
どんだけこの「ファンフリ」世界がふざけとって、
「中世ヨーロッパ風の異世界のあちこちに、現代日本っぽさが漏れ出してる」
ていうても、さすがにPCとか携帯電話まである……とは思えんし。
ほら、その前に銃とか電車とかが出てくるやろ? 普通は。
あと、「純度の高い鉄」は硬うて脆いから、使い物にならんねんて。
昭和か平成ぐらいの、大昔のアニメに
「鉄に混ぜ物しねぇど、丈夫になんねぇだ!」
とかって台詞あるぐらい、らしい。
アッハッハ、分から〜ん! 何も分から〜ん !!
何やこの、気色悪い爆発ぅ〜 !!?
「……とりあえず、兎ら呼んでええかー?」
「「お願いしま〜す」」
「了解」
まあ、いつまでも知らん人ら気にしたって仕方ないか〜……
俺らは先へ行く。眠いのさ。
◇
俺ら3人に、兎2羽、鼠1匹、スライム6匹。いつもの12名が揃た。
爆発のショックから立ち直れんと、まだワタワタしとる野良の兎らを尻目に、俺らは草原を突っ切った。
あっさり着いた森から、早速お客さんが駆けてくる。
「¿Qué? ケーッ !! 」
跳ねたり走ったり、落ち着きのn……妙に足腰強そうな鶏さんや。
……おっ通知。
《「トウケイ(♂)」1羽と交戦中です》
……やっぱ闘鶏、なんかな〜? 名前的に。
んで、いっつも通り先頭俺なんやわ。
「嫌〜ね〜……【鑑定】、【火の魔球】」
とりあえず【鑑定】かけて、火魔法でビビらせとく。
んで、ウチの兎とスライムに指示出そうとしたら……
「ふんす!」
「【鑑定】、【水の魔球】〜」
もう動いとった、という。
―――――
トウケイ(♂) Lv.21[交戦中]
(分類)魔物/動物型
野生化した鶏、もしくはその子孫。進化を経て、さらに勇敢かつ頑健になっている。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。特に蹴りと、嘴を活かした突進に要警戒。
HP:99% MP:―
―――――
能書きは後にして。
「ゲッ、 ケ゛ェ゛ー゛ッ゛!」
俺らの魔法食ろて、鶏さんは後ろに跳ねた。
そこへとがのが飛びかかる。
「ふす、ふんす!」
「ケェーッ !? 」
鶏さんの、咄嗟の蹴りを躱しながら、前脚2本で着地して。
そのまんま体捻って、回し蹴り。
「ふすぇあッ !! 」
「ゲェーッ !!! 」
とがのの後ろ足が、鶏さんの首ら辺を捉えて……「CRITICAL!」、頂きました。
《「トウケイ(♂)」1羽を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《従者「とがの」の〈蹴り〉がLv.10になりました。技【膝蹴り】を取得》
《従者「はっさく」の〈水魔法〉がLv.6になりました》
ほな手ぇ合わせて。なむなむ……
「……待て〜、【膝蹴り】?? 兎の膝どこよ ??? 」
「ツッコむなツッコむな」
「そーそー、先に鶏さん解体したれ」
「あっハイ……」
せや、忘せとった。短刀出して……
《以下のアイテムを入手しました。
・トウケイの肉(小)×2
・トウケイの羽根(極小)×54
・トウケイの頭部(小)
・トウケイの魔石(極小)》
「ま〜た生首ぃ〜! もうええて !! 」
変な声出た。けどしゃあないよな〜、これは。
……とか思とったら、ボーゼが生首見ながら一言。
「強く生きるんやで」
「もう死んでるー」
「首に何言うとん……?」
安定の不謹慎。
「でー、それどないするん?」
「どないしよ? 昨日の所埋めたろかな〜……」
「さよか。ほな行くコ」
「「あ~い」」
◇
昨日と同し獣道辿って、森の中を進む。
ていうても、昨日とは全然雰囲気が違う。
「ウオ〜〜〜ン」
「ケッケッ、ケー」
狼の遠吠えが聞こえたり、渋い鶏さんが数匹、その辺飛んどったり。生気に満ちあふれとる。
……ちょお待て、コケイさん飛んどるど〜!
いや低いけど。滞空時間5秒とかやけど。
「んー? 鶏て空飛べたっけ……」
「聞いたことない。家畜になる前は飛べたらしいけどな〜」
「……先祖返り、てやつー?」
「かもな〜、知らんけど」
気になる。【鑑定】させてほしい。
けど無理そうなんよな〜。めっちゃ警戒されとるし。
「きゅいきゅい……」
「ケ゛ー゛ッ゛!」
「「「ケ゛ッ゛ケ゛ッ゛!! 」」」
はっさくがぴょこぴょこ近づこうとしたら、近くの茂みにバッと隠れよる。
「きゅい、きゅい〜……」
「Oh……災難やったな……」
甘えるように飛びついてきたはっさくを、撫でながら思う。
この子であの反応か〜……ほな、俺らの手には負えんな。残念。
「おー、置いてくぞー? 何しとんねん ?? 」
「すまん、今行く〜」
先行こうとしとった友達らを追う。道が緩〜く右に曲がりよる所や。
「野良の鶏と仲良うする手ぇ、ない〜?」
「ある。けど俺らには無理」
「言い切った !? 何で……?」
「ファンフリの鳥、全体にプライド高いみたいでな。最初に仲間にせな懐かへんらしい。
知り合いに『それがいいんだよ!』とか吐かすド変態おるけど……はった違う、他の奴な。そいつが延々手ぇ啄かれとるん見せられてな。
いたたまれんで、アレは」
……ひぃ。
まあ多分、
「卵から育てたら懐く」
とかあるんやろうけど。
そ こ ま で す る 手 間 暇 は 、 な〜……
もうちょい他のことに使いたいな〜、俺は。自己中心的ですから。
◇
一旦安全地帯通り過ぎて。出てきた狼の群れを、えすとらに任せて。
鶏の生首持て余した俺らは、昨日の茂みに穴追加しよるとこや。
えすとに借りたシャベル、大活躍。
「これが〜、文明の利器……!」
「どっちか言うたら鈍器やろ」
「ツッコミありがと〜」
んで。
途中、黒猫が鶏の首盗りに来た。見張ってくれとったボーゼが、すぐ反応した。
そこまではよかってん。
「あ」
「あ゛?」
味噌汁に髪の毛でも浮いとったんか? て感じの、間抜けな呻き声が聞こえた。
「……首が増えたよ。やったねジンちゃん!」
「 し ば く ど ??? 」
「ふす……」
とがのも そうだそうだ と いっています。
「……すみませんでした」
結局、予定狂てもて。
俺らが猫の首埋めよる間に、狼の群れがリポップして。えすとらはまた、狼と戦う羽目になりましたとさ。
でめたしでめたし……
ありがとうねぇ。
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は3/1(日)頃の予定です。ジンジュくん、南のボス鳥に挑む!
感想・リアクション等ありがとうございます〜!!
【追記】一部修正しました
(2026/02/26)




