047. 俺ら、南の森にて……
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◇
ジンジュです。東の街の南の森……の、手前まで来ました。
先を行く連れの兎が、幽霊狼に襲われかけたとこで。
俺と連れのスライムで魔法ぶち込んで、引っ剥がしにかかる。
「ワ゛ォ゛ア゛ア゛!!? 」
狙た通り、こっちに来る幽霊狼。宙を滑るように、水平方向に向かってくるそれは……
薄茶色で、とがのより一回り小っちゃい石でした〜。
「 い゛や゛石゛ぃ゛!? 狼違うやんけ !! 」
「きゅい?」
あれ? でも「ゴーストウルフ・ブラウン」て名前(?)出とるよな。
んで、狼っぽい悲鳴も上げとった。
ほな、これって……
「あ~ッ !! バグっとぉ !!? 」
マジか〜……
戦いながら運営さんに通報、とか無理〜。とっとと倒そ。
「【着火】」
「【光の癒し】〜」
「ワ゛オ゛ゥ゛ウ゛!!? 」
もう一発ずつ魔法使たったら、幽霊石(?)はあっさり地面に倒れて。「CRITICAL!」、いただきました。
ほな手ぇ合わせて。なむなむ……
《「ゴーストウルフ・ブラウン(♂)」1頭を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《従者「とがの」の状態異常【恐怖】が解消されました》
《従者「はっさく」の〈精神強化〉がLv.5になりました》
通知来た。と同時に、薄茶色の石が崩れはじめた。
脚と尻尾の先から順番に、白く光るサイコロの集まりに変わる。やがてポリゴンは解れて、空高く消えていった。
んで、掌サイズの青黒い石が、1個だけ残っとる。
……また通知?
《「ブラウンウルフの魔石」1個を入手しました》
せやせや、魔石や。これ冒険者組合に持ってくと、魔物討伐の証拠になるんやったな。
ほな、ありがたく貰とこ〜。
ん? 【解体】なしか。
しかも魔石だけ……。
いや、幽霊【解体】して素材採れるほうがおかしいけどさ〜。
持ち物とか、特にないんやな。へぇ~……
◇
「さて、どないしよ……」
バグっぽい物見てもた以上、さっさと通報すべき。 ……なんやけど、その前に安全確保しときたい。
やから森入って、すぐの茂みに隠れる。
とりあえず、今すぐ何かに襲われる……て状況やなさそう。
ほな2択や。とがのとはっさくに聞いてみよ〜。
「東の街に戻るか、森ん中の安全地帯を探すか。お前らどうしたい?」
「きゅいきゅい〜?」
「ふす……ふすふす!」
触手伸ばして、左手の親指(?)で後ろを指すはっさく。街戻りたいらしい。
対するとがのは、森の奥へ進みたがっとる。
何かの匂いを気にして、ずっと嗅ぎ回りながら。
意見割れてもたな〜。
「ん~……せっかくやし、もうちょい森行ってみよかな」
「ふす!」
「あ〜でも、やばかったら即引き返すから。 ……てことでええ?」
「きゅいきゅい」
ほな行こか〜!
安全地帯、あったらええな〜……。
◇
早速茂みを出て。
まっすぐ続く獣道を、南へ。
「ん〜……何か気色悪いな……」
「きゅいきゅい……」
森ん中やから、人通り少ないんは分かる。
けど、それにしても静かすぎる。生き物の気配もないし、木の葉が風に揺れる音もせぇへん。
何でこんな、空気淀んどんねやろ……?
「……きゅい? きゅいきゅい」
「え? 東の空 ?? 」
はっさくに言われて、左を見る。木々の隙間から、真っ赤っかの月が見える。
こっちを覗き込むかのように。
「気色悪ぅ……何やアレ ??? 」
「きゅい……?」
分っかんね……
「ふす? ふすふす……」
んで、とがのは全部無視して、ひたすらその辺|嗅ぎ回っとる。
「ふす !? 」
と思たら、急に顔上げて右見た。
……ん !? 何か光っとる。
白く光っとる……蝶? こっち飛んできょるな〜。
「きゅい! きゅいきゅい……」
んで、はっさくが立ち止まって、触手を伸ばす。また俺の収納袋を漁って、十数粒の「スライムグミ」を出しよる。
で、はっさくは触手引っ込めて、頭の上に出し直した。
触手が木の枝みたいな形に変わって、先端に花が……今度は菜の花やな?
そこに蝶が止まって、口元のぐるぐるを伸ばして……
「 き゛ゅ゛い゛い゛い゛!!? 」
吸い始める前に、はっさくのHPが減りよる。体を波打たせて悶える彼……の反応に驚いたか、蝶は飛び立った。
この間、約3秒。HPが3割弱、MPもちょっと減った。
「ふす !? 」
「ちょ、大丈夫か !! 」
「きゅいきゅい……」
思わず駆け寄ったら、はっさくは触手2本伸ばしてきた。
収納袋から「スライムグミ」を一気に20個ぐらい掬って、まんま口に放り込みよる。
大丈夫は大丈夫らしい。
で、蝶のほうは……あっ逃げよる!
「【鑑定】!」
「【鑑定】」
……チッ、逃げたか。ほな茂みに隠れて、【鑑定】結果見たろ。
―――――
ゴーストバタフライ・ホワイティ(♂) Lv.14
(分類)魔物/虫型
草原や畑に現れる、蝶の亡霊。彷徨う亡者の一種。
生前よりも身軽だが、その分打たれ弱い。花の蜜を好む。
HP:98% MP:82%
―――――
何で光っとるんやろ? て思たら、幽霊でした。
マジか、全然気ぃつかんかった……
んで、幽霊は闇属性、はっさくの弱点突いてくる属性や。
やから触れただけでああなった……んかな?
知らんけど。
「……ふんす?」
「きゅいきゅい」
「お〜スマン、お待たせしました〜」
……何も出て来ぇへんな、ヨシ!
ほな進もか〜
◇
南にまっすぐ伸びとった獣道が、急に右へ曲がりだした。
安全地帯に行きたいから、道なりに右へ進む。何もないとこに道はつかんからな。
……知らんけど。
十数秒歩いたら、道はまたまっすぐになった。角度的には西南西ぐらいかな?
で、道の奥に人影が見える。高〜い台の上に乗っとって、1mmも動きそうにない。
多分、女神像や。つまりあの辺が安全地帯……と見た。
……うん、薄らドーム状の結界みたいなん見えるわ。
「もうちょいや、行くぞお前ら〜 !! 」
とか言いたなるんを、ぐっと堪える。こういう時こそ慎重に。
もしPKerとかおったら、ええカモやからな!
「ふすふす……」
相変わらず、とがのはその辺嗅ぎ回っとる。いやでも、さっきまでに比べて、まっすぐ道なりに動きよるんよな〜。
匂いの大元が近づいてったんか? 俺には何も分からんけど……
「……ふす! ふすふんす !! 」
「きゅい〜?」
「ふすふす」
何かに気ぃついたらしいとがの。で、はっさくが触手伸ばして、安全地帯のほうを指す。
……やっぱ何かあるな〜?
「ほななるべく静かに、な」
「ふす」
「きゅい」
速さはそのまんまで、なるべく音立てんように歩く。
て言うても、鎧着て盾持っとったら、どないしても音するんやけどな。
そないして辿り着いた、安全地帯の前。中には女神像1体と、別の人影が1つ。
黒い服の、どっかで見た女せ……ヤバい、短剣掴んでこっち来る!
「駆け込め〜ッ!」
言いながら、女神像めがけて全力で走る。女性とすれ違うより3秒先に、安全地帯に入れた。
それを見た女性――たしか「ザいけ」さん、やったか――は、短剣引っ込めて、そのまんま走ってく。
足音が一定の速度で遠ざかり、消えた。
芝居やなかったら、もうこの辺にはおらん。
……え?
「何で見てないん?」
やて?
そら俺も、仕返ししたいで。
少なくとも【鑑定】ぐらいはさせて貰わな、やられ損やしな〜。
でもお前、石像にぶつかって死にたいか ??
急に止まって、ショック死したいか ???
「いくらゲームやからって、俺は嫌やな〜……んなしょ〜もない死に方するん」
やからやめといた。
嗤いたければ嗤え、以上や。
◇
息が整うまで、女神像の周りをぐるぐる歩いて。
落ち着いたとこで、「お問い合わせ」する。さっきの幽霊狼バグっとったやつな。
やから、とがのとはっさくには
「休むなり遊ぶなり、好きにしとき。 ……あ、呼んで聞こえる所おってな〜?」
「ふんす」
「きゅい〜」
て言うてんけど。
「ふすふす」
「きゅいきゅい?」
「ふす……」
安全地帯のすぐ外で、草の味見したり、小っちゃい花とかキノコとか見たりしとる。
お楽しみ中に悪いけど、そろそろ呼び戻そか〜。
「終わったぞ〜、次どうしよ〜?」
……わざと大声で、標準語で。変なんおれへんか、ついでに確認したろ。
「ふすふす」
「きゅい〜」
2匹が戻ってきた。
何やら満足げなとがのと、そわそわしとるはっさく。
「どないしよ? 街戻る? それとももうちょい歩いてみる?」
「ふす、ふすふす」
「きゅい〜」
聞いてみたら、また意見分かれた。
とがのは後ろ足を上げて、街のほう向けとる。戻りたいらしい。
一方、はっさくは左手の人差し指(?)で、前方を指す。もうちょっと先まで行ってみたいんやて。
「……さっきと逆やんけ?」
「ふす」
「きゅいきゅい」
閑話休題。
「ん~……ほな、もうちょい先行ってみよか」
「きゅいきゅい!」
「あ〜でも、何かあったらすぐ街戻るで。ここ経由で。 ……てことでええ?」
「ふんす!」
とか言いながら周り見て、1個気ぃついた。
行こうとする獣道の先に、白い光の壁が見える。
んで、その手前に何やら動く骨が1体。あれ何だ?
「【鑑定】〜」
……あれ、通知?
《【鑑定】対象が遠すぎます》
マジか! 距離的には問題ないはずやのに。
……やっぱ横着したらアカンなぁ、往生しまっせ〜!
教訓。安全地帯の外の敵は、安全地帯の外で挑発しましょう。
……そらせやな !!
◇
装備よし、HP・MPよし。あとは石出して〜……
他に何もおれへんのを確認して、安全地帯の結界の外へ。
「【土の魔球】、【鑑定】〜、フンッ!」
魔法放って、骨がこっち向いたん見てから、石も放る。
【鑑定】結果はあとで。石当たれ〜……
―――――
コッケイ(♂) Lv.17
(分類)魔物/動物型
草原や森に現れる、鶏の亡霊。彷徨う亡者の一種。
生前よりも身軽だが、その分打たれ弱い。雑食。
HP:89% MP:95%
―――――
「O que〜 !?? 」
ッシャア、当たった〜 !! ……あっ通知。
《「コッケイ(♂)」1体と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「とがの」「はっさく」が抵抗に成功しました》
あい。ほなサクッと逝んでもらおか〜。
……て言う間もなく、とがのが骨鶏に突っ込んどる。
「ふすぇあッ !! 」
「O que...!」
あ、「CRITICAL!」いただきました〜……。
《「コッケイ(♂)」1体を討伐しました。以下の条件が……》
《〈投石〉がLv.4になりました》
《従者「とがの」の〈噛みつき〉がLv.6になりました》
《以下のアイテムを入手しました。
◯コケイの全身骨格
◯コケイの魔石 》
どうもジンジュです。気の済むまでツッコむ機械やりま〜す。
骨鶏の生前は、渋い鶏らしい。 ……駄洒落か?
んで全身骨格……要ら〜ん!
「てか昨日のダツの頭とか、まだ持っとったな〜。どないしよ……」
あと、とがのの攻撃。噛みつきて言うより体当たりやったぞ? そのスキル扱いでええんすか ??
まぁ貰ときますけど、ありがたく……
あ! あと1つだけ。
骨鶏の肺とか声帯とか、見当たりませ〜ん !!
と゛こ゛か゛ら゛声゛出゛し゛て゛鳴゛い゛と゛っ゛て゛ん゛ワ゛レ゛ぇ゛〜゛!!?
急なホラー展開やめろぉ !!!
◇
思い立ったが……ならぬ、思い出したが吉日。てなわけで。
近くの茂みに穴、3つ掘って。牛の頭、ダツの頭、骨鶏を埋めます。
でもスコップとかシャベルとか、んな文明の利器、ありません。
石ととがの前脚で頑張りました。あ〜しんど……
「鳥葬なう」
ボケをしても1人。ジンジュ。
「あなたをこちらの好きに、お埋めします。オ〜ッホッホッホ……」
し~ん……
埋め終わったら石乗せて。3か所全部終わったとこで、手ぇ合わせる。
「なむなむ……」
「ふす……」
「きゅいきゅい……」
ほな戻るか〜、さっきの安全地帯……
「ふあぁ〜……俺は街へ帰る。眠いのサ」
「ふす」
「きゅい、きゅいきゅい」
とがのもはっさくも異議なし……らしい。
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は2/10(火)頃の予定です。イース市に戻る3匹(?)
ゴブリンの倫理観が分からん系作者です。
にんげんだもの……
【追記】一部加筆/修正しました
(2026/02/02)




