043. 俺らと、ヌシと、野良イムたち
……来年はオ◯シスの水戸◯門を観まくろう(何か見た
あ、連載再開です!
お待たせしました〜 m(_ _)m
◇
釣り竿が、ぐいぐいて揺れとる。
魚か何かが掛かって、暴れとるらしい。
「おぉ、そこそこデカそうやな !! 」
友達のボーゼが、興奮気味に言う。竿持って、リール――取っ手みたいなやつ――を、キリキリ回しながら。
「ぴすぴす!」
「きゅう……」
「きゅお! きゅお !! 」
黒い兎や、水色と青紫のスライムらに応援されながら。
やがて、イース川の水面近くに、銀色の丸い影が見えてきた。
それをボーゼは、一気に引き上げた。
「ッシャア、一丁上がり! ……何じゃこれェ !? 」
「あ痛っ」
「おぉスマン!」
勢いつけすぎて、俺の頭に当たった。陣笠越しに、硬い物同士がぶつかる音と衝撃を食ろた。
何被っとっても、痛い物は痛いな……
で、当たったんは魚やない。ドブみたいな臭いするし、硬すぎるし角張りすぎや。
鈍〜く銀色に光るそれは、金属製のバケツやった。
しかも中古品みたいで、白い錆が目立つ。軽〜く3か所は凹んどるし、あと泥とか藻とか、色々絡まっとる。
「うーわ汚っ! ゴミやん……」
「誰じゃこんなん捨てよったん !!? 針潰れるやんけ◯すど ??? 」
「えぇ~……どないすんの? それ」
えすとはドン引き、ボーゼは激怒。ほんで俺は困惑中……
とりあえず、ボーゼが釣り針から外して、
「【洗浄】……アカンな、臭い取れへん。没」
……あっさり諦めた。
さっきの“謎のまな板”の隣に置いて、戻ってきて一言。
「はぁ……続きやろか」
「「あ〜い」」
◇
仕切り直して、また当たり待っとる。
ふと空見たら、雲の隙間から青空が見えたり、日ぃ射したりしとる。こっちは晴れてくるみたいや。
雲間から射す光、あれ何て言うたっけ?
「あれ光芒〜?」
「薄明光線やろ」
「はい?」
「えっ」
ホンマかボーゼ、そんな言い方あるん……?
て思とったら、横からえすとが言う。
「グ◯った。どっちも正解やてー、てかアレ名前あるんや……」
「ないと困るやろ、天気予報とか」
「そうか? 聞いたことないけどなー」
「……きゅお?」
「きゅう、きゅうきゅう!」
とか言うとったら、スライムらが騒ぎだした。
そっち見たら、ボーゼの釣り竿がまた揺れとる。ぐわんぐわわん……て、さっきよりもデカく、不規則に。
「ん? おっ来たか! 今度はどないや !? 」
喜び勇んでリールを巻きだしたボーゼ。と思いきや、リールから急に手ぇ離した。
釣り糸を魚に引っ張られて、リールがぐりぐり逆回転しとる。
「重っ! こらデカいな、しかも元気や。バテるまで泳がしたろ」
とか言いつつ、時々思い出したようにリールを回しては、また手ぇ離して……を繰り返して。
待つこと十数分。水中の、泥で濁った辺りに、魚の影が見えてきた。鯰らしき丸みを帯びたそれが、濁りとともにだんだん近づいてk……
「いやデカ〜 !? 何mあるん !?? 」
「4m弱、かなー」
「魚影〜」
「そらお前、ここらのヌシやぞ? チビやと困るやろ」
「知ら〜ん、てかそれ誰の都合……?」
とか言うとる間にも、暴れる魚影がどんどん上がってくる。髭の形が見えてきた所で、ボーゼが一言。
「ジンジュ、土魔法用意しといて」
「了解」
いつでも放れるように、てことらしい。一応大盾も持っといて。
で、ついに水面から顔出したから……
「今や!」
「【土の魔球】!」
目ぇ狙て一発。外れたけど、鼻先? には当たった。
「ス゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!? 」
鯰が鳴き声っぽい音を立てた所で、通知が1つ。
《「ジャイアント・キャットフィッシュ(♀)」1尾と交戦中です》
「【鑑定】【テイム】! おら出てこいや、勝負じゃボケぇ !! 」
んで、ボーゼの抜かりない挑発に乗るように、水面から飛び跳ねてきた。
ボーゼに飛びかかる気やったみたいやけど、釣り糸その他のせい? で、横向いたまんまこっちに……
あっヤバ !! 間に合わん !!!
「【ガード】! ……き゛あ゛ァ゛〜゛ッ゛!!! 」
横滑りする巨大鯰が、盾ごと俺に乗り上げて。
全身に重圧と激痛が走って、嫌な音がした。何かが砕けて、別の何かが潰れるような、嫌な音が。
《HPが失われ、行動不能になりました。10秒以内に蘇生が確認できない場合、復活転移を始めます》
「「ジンジュー !! 」」
「ふす !? 」
「きゅい〜 !! 」
例のごとく幽体離脱した俺は、慌てて周りを見回した。
鯰は土手から草原へ、そのまんま滑り落ちたっぽい。そういう地べたの抉れ方しとる。
「「「きゅや〜ッ !? 」」」
「きゅよ! きゅよきゅよ !! 」
ほんで、野良のスライムらが、下で騒いどるんも聞こえる。
味方は無事……やないな。兎2羽と、スライム3匹が撥ね飛ばされとる。
ただ、打撃に強いスライムらと、彼らが緩衝材代わりになったらしい兎らは、ちょっとHPが減るぐらいで済んどる。
……つまりこれ、咄嗟に受け止めようとした俺がアホ、Death!
「またやってもたァ〜 !! 」
《蘇生が確認できません。「イース市・中公園」への復活転移を始めます》
◇
ドーモ、皆=サン。雑魚ゴブリンです。
いや〜、戦闘って難しいですよね。だからスローライフしたいんですけど。
でもスローライフするには、独りで生きてけるぐらい強くならなきゃ、って話でして。
強く生きるんやで……(他人事)
てなわけで、また死にました。3日ぶり3度目。
イースの街中に戻りまして、変な目で見られてます。
しかも手元に盾がありません。あと陣笠も……あっ通知。
《「イース市・中公園」への復活転移を完了しました。以下の変更点があります》
《装備品のうち「初めての陣笠」および「初めての大盾」を紛失しました》
《冥加金として:202マニを頂戴いたしました。所持金残高:203マニ》
何 や と ???
お金取られとる! いつの間に !?
いや、取扱説明書に書いてあったけどさ。いざやられたらキツいっすね〜……
《従者「はっさく」が「ジャイアント・キャットフィッシュ(♀)」1尾の【召喚】に失敗しました》
《「はっさく」が抵抗に失敗しました》
《「はっさく」が抵抗に成功しました》
《異人「えすとっきゅー」からPT通話に呼ばれています。通話に参加しますか?》
あっえすとや。出よ。
『ご愁傷さまです。 ……召喚してええかー?』
「はい、お願いしま~す」
『了解。【召喚】、ジンジュ!』
《異人「えすとっきゅー」に【召喚】されました……》
ほなまた……
◇
帰ってきたよ、土手の上。ドブ臭いな〜。
んで、えすとと兎2羽、小鼠1匹がおる。
「ふすぇ……」
えすと以外は、時々えずきながら。臭いがアカンらしい。
「ありがと〜な、えすと」
「どーもー」
「で、皆どこ?」
「土手の下」
えすとの指す方見たら、巨大鯰の周りに数十匹のスライムが集まっとった。
うち6匹はウチの子ら、なんやろけど。あとは野良のスライムみたい。略して野良イム。
この距離で区別つかんはずやのに、なぜか「はっさく」だけは分かる。何でやろな……?
あ。鯰の右目を、触手でしつこく叩いとる彼です。はい。
「きゅい! きゅいきゅい !! 」
さておき。
巨大鯰の、あの滑々の身体に。彼らは張り付いたり、触手絡めたりして、足止めしとる。
「きゅや、きゅやきゅや!」
「きゅきゅ!」
「ス゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛!! 」
もちろん、鯰のほうも抵抗しとる。跳ねたり身を捩ったり、水魔法放ったりして。
「きゅよ?」
「「「「きゅえ〜い」」」」
けど、スライムらには効いてないみたい。何せ「水分で超回復」やからな。
ただ、スライムらはスライムらで、決め手がないっぽい。
まぁ、あの軟体で物理攻撃は無理があるし、出来ても鯰の滑りが邪魔や。
「……クソッ、通らん!」
短刀片手に跳梁するボーゼが、ご機嫌斜めなぐらいやし。
あと鯰は鯰で、水魔法効かんやろな〜。
で、
「土魔法とか、俺の風魔法は効く。けどスライムにも効くんよなー」
「あ〜、巻き込んだらえらいこっちゃな……」
……そんな感じで、誰も迂闊に手ぇ出せん。
鯰のHPはじわじわ減っとるけど、まだ6割近く残っとる。しぶとい。
さて、どないしたもんか……あぁせや!
「盾と陣笠! ……あった〜 !! 」
よかった、まだ使える! ありがてぇ〜 !!
ほな巨大鯰さんは……とりあえず、邪魔したろ〜。
「【鑑定】、【テイム】! ……とがのもお願い」
「ふんす、【鑑定】!」
「俺らもやるかー、【鑑定】」
「【鑑定】」
―――――
ジャイアント・キャットフィッシュ(♀) Lv.28 [交戦中]
(分類)魔物/魚型
巨大なナマズ。肉食性の淡水魚。
水底の泥に潜み、獲物を待ち伏せする。大きな口と鋭い歯に要注意。
HP:58% MP:37%
―――――
《「ジャイアント・キャットフィッシュ(♀)」1尾の【テイム】に失敗しました》
結果は後で読む。
それより、1個気ぃついてんけど……
「あのボーゼが、野良イムらを敵に回してない…… !? 」
「言い方ぁー」
「そら失礼。で、レイドとか組んだん?」
「いやまだやn……それやー!」
「落ち着け野球部ぅ……」
えすとの大声はさておき。
敵の敵は、味方につけたらええんやった。危な……
んで、「味方同士ならノーダメージ」て設定でけたよな〜!
えすとが大きく息を吸い込む。兎らに声かけとこ。
「耳伏せとき」
「ぴすぴす!」
ほな耳塞いで……
「ボーゼぇー! レイド組めレイドぉー !! 」
ボーゼが両腕挙げて、大きく「◯」描いた。
んで、周りのスライムらに声かけよる。
あ、はっさくが鯰の目ぇ叩くんやめた。周りに声かけよるみたいやな。
《異人「ボーゼ」がレイドPT名を変更しました:「ボーゼとボウズども」》
《従者「はっさく」が、「スライム」3匹と「レッサーソイルスライム」1匹を招待しました》
「◯してやる……◯してやるぞヌシ鯰ー!」
「また知らんネタや〜……やれやれやで」
ツッコミ所の粗製濫造? 勘弁してぇな……。
◇
で。
スライム6匹の触手と、ボーゼの腕。合わせて7つの「◯」が出揃ったとこで。
「ほな行こかー」
「了解〜」
兎らと、土手を駆け下りる。また【土の魔球】を用意しといて。
「狙うは鯰の目ぇ、ただ1〜つ!」
「2つあるやろー !? 」
ツッコミありがとう。まぁやること変わらんけど。
はっさくに倣て、右目に【土の魔球】突っ込んだろ。
ほんでまぁ、近くで見た鯰のデカいこと。
頭から尻尾の先まで、長さ4m弱。これはリアルでもおるらしい。
でも横幅・高さが2m超え。それは聞いたことない。太 !?
ええなぁ〜、何食うたらそんなデカなるん……?
「ス゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ゛ !! 」
つまりパッと見、リアルな大鯰ていうよりは、イラストとかの丸っこい鯰のほうなんやわ。
そう思たら可愛いね……とはならん。デカすぎて。
とにかく遠巻きに、鯰の横に回り込んでから近づく。
「【鑑定】!」
お? 野良イムが【鑑定】使とる。賢いな〜。
……とか思いながら、ボーゼらと合流。
「お、来た来た」
「きゅきゅ!」
「「お待たせ〜」」
ほなそろそろ、俺らもやるか〜!
「【五重詠唱】、【風属性付与】! 【強化】3倍・【風の破魔槍】!」
えすとが唱えたら、まずボーゼの短刀が光りだした。薄い緑色に。
次に半透明の光る槍が出てきて、鯰の口ん中に突っ込んだ。
「ス゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛!? 」
HPが1割分、一気に減って。残り4割弱。
効いとる効いとる〜。
ほな俺は、石1個出して〜……
「【土の魔球】、フンッ!」
目ぇ狙て放った。
「ス゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛!! 」
目ぇ違うけど当たった。
んで、鯰のHPは3割強。
弱点突いたら効くな〜!
「きゅきゅ!」
「【光の魔球】〜!」
「【闇の魔球】!」
周りのスライムらも、それぞれ石とか魔法とか放りよる。
「【土の魔球】ー!」
「【風の魔球】〜」
……ちょお待てよ? 野良イムの土魔法に風魔法 ??
例の青紫の闇魔法もやけど、生まれ持ってるレアキャラなんかな?
はっさくは火、水、光の3属性しか選べんかったで……
「……ッシャアあと1割……全員跳べ !! 」
「ふす !? 」
「マジかー!」
要らんこと考えとるうちに、巨大鯰が跳びはねとった。
ボーゼの警告で、慌てて俺も跳ぶ。
一足先に、鯰が着地して。近くに雷落ちたみたいな、エグい地響きが。
あと、地面に割れ目入っとる……
「きゅやー !? 」
「きゅお?」
んで、避けきれんかったスライムらが動けんなって、ダメージ食ろとる。
あでも、全員生きとるっぽいな。
で、鯰=サンも動けんなっとる。ほなどうなるか?
「おら動けるヤツー! 今や、ボコれぇーッ !! 」
「「「「きゅえーい !!! 」」」」
はい、みんなでタコ殴りにしました。“CRITICAL!”が出るまで、な。
呆気ない最期であった。なむなむ……
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は12/30(火)頃の予定です。ナマズ倒したら何くれる?
【追記】一部修正しました
(2025/12/29)




