041. イース市と、川と、濃ゆ〜い桃色
作中5日目、水曜日です
◇
ジンジュです。
昼飯食ってログインしたら、いきなり右目に水入りましたぁ!
「 ア ッ メ ッ マ ッ !! 」
……いやいや、変な声出しとる場合違うわ!
雨や、濡れる。どっか屋根ある所〜……
《異人「ボーゼ」が、次のご神託を有効にしました》
『異人「ボーゼ」率いるレイドPT「やったね!墓荒らし!! ……なむなむ」が、アインツ北郊「忘れられし地下墓地」を踏破しました』
《従者「とがの」の〈引っ掻き〉がLv.3になりました》
《従者「はっさく」の〈調合〉がLv.4になりました》
《異人「ボーゼ」より、伝言が届いています。伝言を見ますか?》
《抵抗に失敗しました》
《抵抗に成功しました》
だぁ~、通知邪魔〜ッ !!
◇
……てなわけで、冒険者組合イース出張所からこんにちは〜。
いや〜参った、ここ軒下て概念ないんやな。雨避けには建物の中入るしかない。
ほな自動的にここや。俺ここしか、イースの建物知らんからな〜。
で〜、皆さん考えることは一緒みたいで。混んどるけど、受付は空いとる。
依頼掲示板は見えん。前に人多すぎる。
けど、依頼見んと喋っとっての人ばっかりや。
「で、今日どうしよ?」
「そうだなぁ……」
「今どこなの?」
その場で話し込んどる人らと、おれへん誰かと喋っとる人らがおる。PTチャットか何かかな……?
「うわ、なんか暑くね?」
「ホントだ」
今入ってきた知らん異人さんのやり取りに、思わず頷く。
せやねん。ここ、何か蒸し暑い !! 混んどるから……?
◇
ん〜、まずは伝言見るか〜。
『今どこ?』
『組合出張所の中入っとけ
雨やし 』
同し事考えたっぽい。
んで、相っ変わらず反応が早い。俺がログインして即、伝言2件も送ってきとる。
いやまあ、
「お前が遅すぎるだけやろ」
て言われたら、その通りやねんけどな。
オ〜、打鍵難シイネ〜!
まして音声入力とか、思考入力とか、ねぇ……
◆
あ、小学校の校外学習で、AI技術博物館て所に行った時、
「OK, Butler. TV消して〜」
「畏まりました、照明をOFFにいたします」
「「「『うわぁ !!? 』」」」
てなった話は……別に要らんな。
◇
とりあえず返信〜。
「組合の建物入った
お待ちしており申す」
……っと。
そこでちょうど、入口の戸がまた開いて。友達2人が入ってきた。
「お、おったおったー」
こっち見て、顔が明るなった森人と、なんか首を90度傾げた狼獣人の2人が。
「よぉ〜……お前どないしたん?」
「パチ●コでスった……」
「「おい未成年」」
ボーゼの笑えん冗談に、えすとと2人でツッコむ。
真似をしてはいけない。危なすぎる。
んで、本人はお構いなしに、自分の懐探っとる。
「で〜、何か事件?」
「魅了スライムて魔物がおってな……あ、これこれ」
ボーゼが紙1枚見せてきた。どれどれ……
―――――
冒険者組合アインツ総支部
聖暦1XXX/XX/XX
冒険者各位
[継続クエスト]チャームスライム を 保護 しよう !
(※桃色のスライムの正面、左側面、背面が描かれている)
冒険者組合(以下「本組合」)では、特定希少魔物の個体数管理を行っております。
つきましては、特定希少魔物「チャームスライム」(以下「本種」)の保護にご協力
いただきたく存じます。
本種は胞子を撒き散らし、吸い込んだ生物を誘引・捕食する危険生物です。このため、
アウストル東方共和国においては「指定外来種」として、見つかり次第捕獲されています。
一方、他の大陸4か国では希少な在来種として「絶滅危惧種」に指定され、保護対象に
もなっています。
組合では以上の5か国より、本種の保護等の業務を受託しております。保護した個体に
は、発信器を装着して見守る形を取っています。
しかし、まれに発信器を紛失、または破損した個体や、発信器を持たない新個体が出現
します。
そのような個体を見かけた際には、最寄りの本組合施設にご報告の上、保護業務に
ご協力ください。
詳細は組合各施設の受付まで。
記
1.受付日時 毎週月曜日〜風曜日 06:00〜18:00
2.受付場所 本組合各施設(アインツ総支部、および各支部・出張所等
(一部の国・地域を除く)
以上
―――――
「お役所でしょうか? いいえ、誰でも」
「「金子み◯ゞそんなこと言わんねん!」」
ボケが通じた。僕嬉しいだ。
……ネタはさておき。
「ほんで〜? これが何……」
「見つけて即連れてったら、バチクソ怒られてん。『密閉容器に入れましょ、って言いましたよね !? 』て」
はは〜ん。午前中1人ん時に、調子乗ってやらかしたんか。素晴らしいボーゼっぷりやな。
「んで、こちらが件のチャームスライムでございます」
「「ワオ! 出た !! 」」
『きゅゆ !? 』
思とった以上に濃ゆ〜い桃色や。どピンクのスライムが、透明な飼育ケースの中で波打っとr……ちょと待てぇ〜い!
「異世界て、んな飼育ケースまであるん……?」
「なー、ビックリするよなー」
「大丈夫。明◯の板チョコとか、2Hの鉛筆とかもある」
「待てボーゼ、それ何て現代日本?」
「てか2H !? 異世界人丈夫すぎん ?? 」
でぇ〜い、ツッコミ追っつかん!
「まあ『魔法は偉大なり』てことで。あとは運営に言うて、俺に言われても困る」
「「そらせやな……」」
や〜しっかし、魔法は便利ていうか、都合が良すぎるていうか……
……いやいや、そんな話しに来たん違う。
どピンクの【鑑定】結果も気になるけど、もう収納袋の中。
そろそろ本題、聞かしてもらおか〜。
「ほんでボーゼ=サン? 今日は何したいんやっけ ?? ここで延々駄弁っとってええんか〜 ??? 」
「お、せやせや。イース川で主釣るんやったわ」
「えー、また釣りかーい……」
ボーゼの答えに、えすとがめっちゃ嫌っそ〜な顔しとる。彼は“長時間黙って待つ”んが苦痛やからな。
それより、問題はお天気。
「ええの? 当分雨っぽいけど〜」
「大丈夫、確認は取っとぉ。“主に雨は関係ない”てな」
「アッメッマッ !! 」
「喧しわ。 ……あと、雨やと途中の敵も少ないからな。絶好の釣り日和!」
「「釣り日和とは」」
あ、そうそう。ボーゼは海釣り派や。彼の島に、川らしい川はないんやて。
……てことは、結構歩くんかな〜?
嫌〜ね〜、現実は「夕方から雷雨」らしいのに。
早よ帰れたらええな〜……。
◇
てなわけで、イース市の「東総門」を出た。街や農地を覆う、外側の土手の出入口や。
ここまで歩いて20分ぐらい。検問はすぐ終わったわ〜。
で〜、今俺は足軽装備の、あの藁の蓑を羽織っとる。
結局雨で濡れるんやけど、ないより大分マシやな! 舐めとったわ……
友達2人はフード付きの外套や。高そう……
ほんで今、えすとが【召喚】しよる。仲間のスライムらを、街のほぼ反対側から。
「ほな動くなよー……【召喚】・“ブンタン”!」
えすとの足元に魔法陣が浮かび上がって、水色のスライムらが出てきた。
【召喚】が使えるブンタン、あまなつ、はっさくの3匹や。
んで、3匹がさらに他のスライムや兎らを呼ぶ、と。
「【召喚】・“ポンカン”“デコポン”!」
「【召喚】・“こなつ”“レティシア”!」
「【召喚】・“とがの”〜」
1匹だけ名前呼ばれんかった橙色の鼠……もおるn、あら通知。
《従者「はっさく」が、従者「とがの」ら2名の【召喚】に成功しました》
「よし、全員揃たな?」
「きゅ!」
「持つ物持ったな ?? 」
「ぴすぴす!」
「ほな行くコ !! 」
「「あ~い」」
小鬼を先頭に、狼獣人や森人、兎2羽、鼠1匹、スライム6匹……敬称略。
合わせて12名の珍道中で、街道を東へ。
ウチの♀陣――兎2羽とスライム2匹――が、ボーゼの背負とる収納袋をめっちゃ気にしながら。
「……きゅゆ !? きゅゆきゅゆ !!! 」
いや、もう1匹おったわ。
しかも声漏れとるし。そら気にするわ……
◇
イース市の東には、草原が広がっとる。東にはしばらく何もなさそう。
あ、街道と、奥に見える土手以外は。
アインツ市と違て、イースには広い農地がある。大量の水を確保しとる証拠や。
つまり近場に、デカい川か湖がある。
んで、ボーゼは
「イース川で釣り」
とか言うとった。
ほなあの土手が、イース川の堤防……なんかな?
あと南に森、北に台地が見える。それぞれが東へ、延々続いとるように見える。
「あ~はいはい……なるほど。これが大陸か〜! 理解した」
「「んな大げさな……」」
これって、私の感想ですよね? 何故睨むんです !?
さておき、今日は人も魔物も少なめらしい。
街の周りには、彩り豊かな兎十数羽が。
その先の草原には数十匹のスライムが、それぞれ点在しとる。
いや、よぉ見たら点在するスライムの中に、数頭の馬の群れが混ざっとんな?
でも雨のせいか、元気そうなスライムらに囲まれて、めっちゃ居心地悪そう。
んで、空暗いな〜。まだまだ雨降りそう……
「あ〜……ホンマに景色変わらへんな〜」
「おー? 後ろ見てみ」
えすとにツッコまれて、思わず振り返る。
イース市を囲う土手が、ふた周りぐらい小っちゃく見える。
確実に東へ、進んどるんやな〜……。
◇
イースの組合から歩くこと、小一時間。街道が坂に差し掛かる。
土手に上がるらしい。
坂上がって、その土手の上に出た。目の前は橋、その下はデカい川や。
幅広うて深い。底が見えん。隣町の加◯川よりデカそう。
いや知らんけど。
「◯古川の人帰られへん」
「「は?」」
えすとがボケよった?
何それ ?? 野球ネタ ???
分かんね……
ネタはともかく。
予想通り、この川が目的の「イース川」や。左右両側の、石造りの橋の端っこに、こう書いた銘板が取り付けてある。
左が
「The Greater Bridge of Eath
イース大橋 」
で、右が
「 Eath River
イース川 」
やて。
英語なんや? ふ~ん……
◇
俺らは街道から右に逸れて、土手道を下流へ。
「お、この辺やったな。そろそろ放したろか」
ボーゼが背中の収納袋を下ろして、その場にしゃがむ。
袋から出した飼育ケースの中には、あのチャームスライムと、底に薄ら積もった薄茶色の粉末が……
「きゅゆ! きゅゆきゅゆッ !! 」
「おっとぉ……」
チャームくん(仮称)は跳ねとる。地団駄踏むみたいに、ぴょんぴょん、て。
薄茶色の粉末が、ぶわぶわ舞い上がる。
ケースを押さえながら、ボーゼが言う。
「マスク要るな。あまなつ・こなつ、これ押さえといて」
「きゅおきゅお!」
「きゅう」
ケースに寄ってきたスライムらのうち、2匹が呼ばれた。
青紫のほうが「待ってました!」とばかりに、ケースの上に飛び乗る。
水色のほうは淡々と、ケースの一角に張り付いた。
でもチャームくん(仮)は諦めない。
「きゅゆ !? きゅゆきゅゆ〜 !?? 」
ますます激しく暴れる彼(性別不明)を見て、牛柄の兎が動く。
ケースの前に駆け寄って、例の仁王立ちしながら一言。
「【鑑定】?」
「きゅ、きゅゆ……」
一発で黙らせた。怖……
「きゅゆゆ……きゅゆ……」
いやアカンわ。チャームくん、めっちゃ粉出しよるぅ。
ストレス感じたら胞子飛ばすタイプか。
難儀やな〜……
「はいこれマスク」
「お、あざーっす!」
「ありがと〜。 ……ところで【鑑定】〜」
「「ひどい」」
ボーゼにマスク渡されて、即つけて。
喧しい彼を【鑑定】してみた。結果は〜……?
―――――
チャームスライム(♀) Lv.21
(分類)魔物/??型
自然界の掃除屋。雑食。
空腹・恐怖などのストレスが溜まると、多量の胞子を出す。吸い込んだ者を魅了し惑わせて、捕食や逃走を図る。
HP:100% MP:100%
―――――
元気な♀です! そら失礼〜。
ほんでレベル高いし、胞子は厄介やし……
戦わんと済んでよかった〜 !!
ほんで、ボーゼが飼育ケースを開けて、チャームちゃん(仮)を土手道に下ろした。
「森へお帰り」
「「元気でなー……いや森どこ?」」
南に見えとるで? 見えとるけど、ちょ〜っと遠いな〜。
で、チャームちゃんのほうは……
「きゅゆー !! きゅゆきゅきゅゆきゅゆゆーッ !!! 」
ブッチブチにキレ散らかして、その辺に胞子を撒き散らしながら、川に飛び込んだ。
迷惑ぅ〜……
んで、浮いてきたと思たら、水面すれすれを飛ぶかのように動きだした。
「あの胞子さ〜、川の水まで魅了するん?」
「「無理無理」」
「やんな〜」
ほなアレか、【◯の魔球】の上に乗っとるやつやな。一昨日も見た。
あと、チャームちゃんはそのまんま川渡って、向こう岸の土手を越えてった。
スライムて、こんなデカい川渡れるんや。初めて見た――――
「加◯川の人帰れたなー」
「「さっきから何なんそれ?」」
胞子集めながら、謎に呟くえすと。
彼にツッコミ入れながら、俺らは釣りの準備に取りかかる。さ〜て、何釣れるん〜?
てかその胞子、何に使うんやろ ?? 媚薬とか…… ???
お読みいただき、ありがとうございます〜 m(_ _)m
次回更新は11/20(木)頃の予定です。ジンジュくん、川のヌシとご対面……?
あとお時間があれば、スマホの画面を時々横にして読んでみてください。
(PC等の人はすみません……)
【追記】
一部加筆/修正しました
(2025/12/30)




