040. 帰路と、よその狼と
◇
ジンジュです。地下墓地出て、始まりの街に戻るとこです。
なんか急に、狼連れた人らに絡まれたな〜……と思たら、その2人が急に蒸発しまして。
何これ?
……ごめん、もう無理。もう限界や。
今日は色々ありすぎた。
ちょっと叫ばして。
「 は゛ぁ゛〜゛!!? 何゛と゛い゛や゛コ゛レ゛ェ゛〜゛ッ゛!! 」
……ふう。
叫んだらスッキリするもんやな〜。
ほんで、残響が消えるん見計らって、ボーゼとえすとが喋りだした。
「お? 東京で落雷、からの停電やて!」
「……どの辺?」
「23区西部」
「あー、もしかして……」
2人が口揃える。
「「停電で強制ログアウト?」」
あ、せやせや。今朝の天気予報で
「関東・東海では昼ごろから、局地的に激しい雷雨のおそれが……」
とか言うとってやった。
あとたしか、ゲーム機本体の取扱説明書にも、
「荒天時・災害時にはプレイをお控えください。ゲームが正常に動作しないおそれがあります」
とか書いてあった……と、思うんやけどな〜。
◇
「ゲーマーてさ、お天気も取説も見いひんの〜?」
「失礼な、俺は見とぉからな?」
でしょうね。
俺の愚問に顔をしかめるボーゼ。迫力満点の狼獣人っぷりや。
「まあまあ。ナンボかはおるやろー」
そのボーゼを宥めるえすとっきゅー。こちらは頼れる森人感がすごい。
あ、俺? ドーモ、皆=サン。カスのゴブリンです。
「でもさっきの人ら、ゲーマー違うと思うでー」
「あ〜、やっぱり?」
「同感やな。あのぎこちなさ、“VRには慣れとるけど、戦闘とかゲームには慣れてない”て感じ半端ないわ」
「お前そんなんよぉ見とぉな〜……」
こういう、ちょっと見ただけで分かるとことか、すぐ言語化できるとこも、ボーゼの強みや。
ボーゼの速さって、動作の話だけやないで?
「あとなんか“背伸びしとぉ子ども”感もあった。VRサロンにでも出入りしとんかな?」
「なんや金持ちかよー、うっざー……」
「そら分からん、演技かもしれんし。ほら、『やっておしまい』とか、妙に芝居がかった言い方やん?」
「分析して畳み掛けるんやめたれや〜、可哀想に……」
「「お前が一番酷いわ」」
チッ、バレたか〜。中立のフリして貶す、カスの所業が。
諸行無常、色即是空……
さておき。
「あの人ら、臭うわ。面倒くさい大人と繋がってそう」
「だぁ~マジか、難儀やな〜……」
何が難儀て、俺らが
「舐められたらコ□す」
「先に仕掛けたお前らが悪い」
て態度取ったら怒られる、ってとこ。
は〜、うっざ……
やからって、やられっ放しで黙っとくんも腹立つ。
まぁ、今ここでグダグダしとっても仕方ないか。次行こ。
……て話やねんけど。
あの人らが連れてきた茶狼が4頭、チラチラこっち見て来るんよな〜……
「ヴ〜……」
「ふんす?」
牛柄の兎と睨み合いしながら、やけどな。
「で、あの子らどないしよー?」
「連れてけ、ってか? 邪魔やな」
「え〜置いてくん? 何かあったら嫌やで〜俺は」
「そんなん『舐められたら●す』でええやろ?」
「「それでええんはお前ぐらいや」」
や〜、早すぎるんも考え物やね……
「ほなどないせえと?」
「そこの安全地帯までは連れてかへん? ほな『最低限の仁義は通した。あとは知らん!』て言い訳立つし〜」
「賛成。何かあっても、『勝手に抜け出したやつが悪い』構文も使えるしー」
「お前らなぁ……悪いネットに染まりすぎやぞ?」
「「どの口が言うとんねん ??? 」」
他人事のように溜め息つくボーゼが、諸悪の根源……て言うてもええと思う。
俺ら3人の中では真っ先にネットを知って、どっぷり嵌まった奴やからな。
コイツから聞かんかったら、俺とえすとが知らんと済んだ言葉、ナンボあるやら……
そんなんどうでもええか。
で、ボーゼが狼らに話しかける。
「お前らどないする? 来るか?」
「「「「バウ!」」」」
「分かった。ほなついて来い、肉ぐらいは分けたらぁ」
男前を威嚇しながら即答、か〜。器用やね。
ま〜でも、それでええわ。
肉食獣と馴れ合うて、ええことはない。喰われる確率上がるだけやし。
◇
「「「ヴ〜」」」
「ふんす……?」
「「きゅえーい?」」
後ろからついて来る狼を、始終警戒しながら。
俺らはあっさり、目的の安全地帯に着いた。
俺ら以外には、他の異人さんが3人おるだけ。とても静か。
で、ボーゼが収納袋を1つ出して、狼らの前に放る。
「ほなこれ、約束の肉や」
「バウ!」
4頭のリーダーと思しき、先頭の茶狼が返事した。
「【バウバウ、バウ】!」
続けて、彼がもう1回吠えたら、空中に白い光輪が浮かび上がった。小っちゃい魔法陣らしい。
んで、リーダーくん(?)は袋咥えて、その中に押し込んだ。
光輪を境に、袋は姿を消す。
それを確認したリーダーくん(?)は、左前足を光輪に突っ込んだ。
小っちゃい毛皮を1枚ずつ、4枚取り出して、仲間に分けよる。
小兎の毛皮っぽい。
「ぴすぴす……!」
「ふすぅ〜……」
匂いで気ぃついたか? 兎2羽が地団駄踏んで、狼らを威嚇する。
でも4頭はガン無視。女神像のほうへ歩み去った。
「あれお供えして、街戻る気ぃか。賢〜……」
「フン。一丁前に芸仕込んどんか。小賢しのぉ」
「なー。あれでも『愛は本物』っぽいんが厄介やんなー……」
あれぇ〜……?
狼らを褒めたら、飼い主の悪口のお時間になったで ?? どうしてかな〜 ???
あとなんか、スライムらが騒がしい。
「きゅおきゅお、きゅおー?」
「きゅえきゅえ、きゅえー……」
「【きゅえきゅえ、きゅえ】ーい……きゅえ !? 」
……あ〜なるほど。さっきのリーダーくん(?)の真似しよるんか。
こなつ、ポンカン、デコポンの3匹――ウチのスライムらのやんちゃ組――が挑戦して、今デコポンくんが成功させたとこや。
丸い小石を出したり戻したりしとる。かわいい。
「【きゅえきゅえ、きゅえ】ー……きゅえ!」
「きゅえー」
続いてポンカンくんも成功。
白い碁石を出したり戻したr……碁石?
「『尼五段、尼五段! どこへ行こうというのかね !? 』
足らぬ舌で問う殿下に、尼君はこう答えます。
『決まっているでしょう? 波の下の都よ !! 』
こうして二人は、果てなき世界へと飛び込んだのでございます〜……」
「ネタバレやめい」
「『呆家物語』はもうええてー……」
……はっ !? 俺は一体何を……?
とか言うとる間に、兎2羽も挑戦しとった。
「……ぴすぅ?」
「ふす? ふす ?? 」
まだまだ先は長そうやね……
で、こなつさんのほうは、
「【きゅおきゅお、きゅお】! ……きゅお! きゅおきゅお〜 !! 」
「きゅえー?」
「きゅえー……?」
「「「きゅえ〜い」」」
出来たみたい。3匹で大喜びしとる。
1匹だけ青紫色のスライムが、錆だらけの五寸釘を出し入れしながら……
「「いや危な !? 」」
「お前らそれ、次から人前でやるなよ?」
「きゅお!」
「「きゅえーい……」」
驚くジンジュとえすとに水差されて、ボーゼには釘刺されたけど。
それでも喜びを隠せんこなつさんと、やる気ダダ下がりの2匹の、温度差よ……
……ん !?
「『人前でやるな』て、何がアカンの?」
「ん? あぁ……ゲーム内の住民が言うには、『収納魔法は稀少スキル。異人は神にドシドシ感謝すべし!』らしいからな」
「そーそー。収納袋とか噛まして、『スキル違います、魔道具のおかげです!』て言うといたほうがな、後々楽……」
わぁ……色々面倒くさいんやな〜。
とか思とったら、ボーゼの失言タイムが来た。
「はぁ、おもろな。せっかく灰狼の肉やったのに、即しまいよった……」
「「嫌がらせやんけ!」」
狼に狼肉やる、て……
「共食いしろ」
ってか?
それとも、
「次要らんことしたら、狼4頭肉になるで?」
て脅しとんか ?? 飼い主を ???
いや、たしかに「肉ぐらい分け」とるけどさ……狼獣人ホンマ……ホンマ…………。
◇
とりあえず、俺らも女神像にお祈りして、始まりの街に戻った。
《「アインツ市・中央広場」に転移しました》
また冒険者組合行って、報告して。
《通常クエスト「地下墓地を探索・浄化しよう!」をクリアしました。報酬として25マニを獲得》
《日刊クエスト「複数の魔物を狩ろう!」をクリアしました。クリアボーナス:5マニを獲得》
《所持金残高:450マニ》
で、八百屋で買い物して。
《所持金残高:405マニ》
また中央広場に戻って、女神像にお祈りして。
《「イース市・中公園」に転移しました》
思わずボーゼに訊く。
「……何で?」
「明日ちょっとやりたいことあってな。こっちからのが近いねん」
「さよか〜。明日昼からやっけ?」
「せやなー、俺ら部活やし」
「OK. ほなまた」
「「あ〜い」」
▶️▶️▶️ [第3章]へ つづく! ▶️▶️▶️
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新は11/1(土)頃、番外編の予定です。
本編は11/11(火)頃を予定しています。よろしくお願いします m(_ _)m
【追記】
・一部加筆/修正しました
(2026/02/01)
・サブタイトルを追加しました
(2025/10/23)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.10
種族:ゴブリン (小鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:405マニ
SP:4
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.7〉〈防御 Lv.4〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.4〉
〈生活魔法 Lv.5〉〈従魔法 Lv.5〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:6)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.4〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.4〉
〈敏捷強化 Lv.3〉〈人類共通語 Lv.1〉
(種族:3)
〈投石 Lv.3〉〈採取 Lv.1〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物どもを喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:4)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
〈地下墓地の踏破者〉
記念称号。異人で初めて、「アインツ北郊・忘れられし地下墓地」を踏破した。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.10
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
はっさく Lv.11
スライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%




