039. 俺らと、蝶と、変な人
◇
「は〜、興味深かった……」
「「第一声それ !? 」」
ジンジュです。地下墓地の入口付近まで戻ってきました。
洩らした感想が率直すぎて、友達2人にツッコまれた所です。
「仕方ない。変な敵とか進化とか床抜けたとか、色々あり過ぎてな〜。肝試しとか吹っ飛んでまうわ、アッハハハ……!」
「せやった、コイツ大分不謹慎なんやった」
「笑い方うっざー」
「そら勘弁してぇな〜……」
まあ、俺の話はええねん。問題は……
「ぴすぴす……?」
「……チュピ」
「「きゅえーい……」」
兎2羽、鼠1匹、スライム6匹。合わせて9匹が、俺らの足元でへたり込んどる。
ま〜、無理もない。不慣れな所に、無理矢理連れてったからな。
「で〜、この子らどないしよ?」
「「さぁな……?」」
ゆっくり休ませたらな……やけど、まだや。今から始まりの街戻って、冒険者組合に報告せなアカンからな。
「これをやっておかないと湯婆b……無賃働きになってしまうんです〜」
「誰に何言うとんのー?」
ほんで、最寄りの転移地点は、行きしなに通った安全地帯。
女神像が2体あって、なんかバンドが
「アー」
とか歌とった、あそこや。
バカ正直に、街まで小1時間歩かんでもええ。けどあそこまでは戻らなアカンよな〜。
え〜っと、何分かかったっけ……?
……とか思とったら、さいでらさんがボーゼに訊きよってや。
「ボーゼくん、この後は〜?」
「街戻ろかな、て思てます。でも先に昼飯ですかね?」
「そっか〜、ほな一旦解散やね」
あ〜、もうそんな時間やったか。
ほな、うちの子らに一言……
「こんな所ですまんけど、ちょっと向こう戻らなアカンみたいで。お留守番頼んでええ?」
「ふんす!」
「きゅいきゅい……」
「ありがとうねぇ。ゆっくり休みや〜」
言い終わるか終わらんかぐらいのタイミングで、はっさくの体がでろ〜んて緩んだ。
寝落ちみたい。お休み〜……
「せやせや、その前に友達登録せぇへん?」
「了解っす」
………
……
…
◇
「ん〜……腹が、減った」
はい、現実に戻りやした〜。
さいでらさんら「ぞんび〜ず +α」の皆さんと友達登録し合うて。それから一旦解散、休憩や。
体伸ばしながら、思わず時計見た。たしかに昼前やな。
あと何となく、窓の外も見た。最高気温43℃予想の今日も、よぉ〜晴れとる。
うわぁ~……暑そ〜…………
トイレ行って、弟妹、母と4人で飯食って。
弟妹に質問されるなど……
「昨夜のボーゼCh.見たけどさ……兄貴何しとんの?」
「そらお前、こっちで出来へん愚行やろ〜」
「あんな悪目立ちして大丈夫け? 身元割れとか」
「これで割ってくるヤツおったら、も〜降参やわ。打てる手ぇ全部打っとぉし、学校では一切バラしてないし……」
「「「出たな妖怪“外面ヨシ”……」」」
……うん。学校でゲームの話はしてないし、ゲームで趣味の話もしてない。
いや、読書はバレとるか。でも音楽はバラしてない。
虫捕りは学校でも伏せとるし。
楽器始めたんとか、あとソリ●ィアで1日潰した話とかは、友達2人にすら言うてない。
まあ2人の場合は“知っとるけどわざわざ言わん”だけかも、やけどな。
でもさ、言う必要ないやん? 趣味って独りでも楽しいもんやし。
それとも、
「話せる友達がいないなんて趣味じゃない!」
とか思とる?
それホンマに趣味か……?
いや、思うんは勝手やけどな。
全部共有しようとか、それはそれでしんどいやろ?
あと、他所様は他所様や。そんな都合よく“話せる人”おってでもないから。
「あなたとは違うんです」
やで?
あ、妖怪呼ばわりは放置で。もう
「私人間ですねん!」
てツッコむんも飽きた……
◇
VRの三方よし(雑)とか、やることやって、ファンフリに再ログイン。
《異人「ボーゼ」がレイドPT「やったね!墓荒らし……なむなむ」を解消しました》
今さら通知来た……
で、先に来とったえすとが一言。
「お帰りー」
「ただいま〜……ボーゼは?」
「まだー」
「さよか〜」
ふ〜ん、珍しな〜。
「ま〜たネットニュースでも見とんか〜?」
「かもなー、知らんけど」
いっつも通り“呼ぶより謗れ”を実行しといたら、すぐ本人が来た。
「待たせたな」
「おーっす」
「お疲れ〜、何かあった?」
「関東またゲリラ雷雨やとよ。今日は面白いもん見れるかもな」
「「さよかー」」
何かまた、碌でもない笑顔しとるわコイツ。あんま期待せんとこ……
「ほな行くコ?」
「「あ〜い」」
地下墓地の建物出て、なんとなく振り返って、一礼。
で、斜め前の茂みに突っ込んで、獣道を戻る。
「さ〜て、と……帰って報告するまでが、ホンマのクエストっ言うもんですよ〜」
「「謎の上から目線やめい!」」
地下でウダウダしとるうちに、日は高〜く昇っとった。
行きしなは夜明け前やったから、同し道でも全然違う。木洩れ日の、まぁ〜明るいこと。
でも、俺ら以外誰もおれへん。
虫1匹出て来えへん。たま〜に南風がそよ〜……て吹いて、草木がわさわさ揺れとるだけ。
「せや。森ん中て、何やかや涼しいんやな〜……」
「そーそー、一応こっちも夏やからな?」
「あ〜、季節あるんやこのゲーム」
えすとと2人、喋りながらボーゼを気にする。
さっきから妙に静かでさ……あっ溜め息。
「敵出えへんか。おもろな」
「「お前マジか」」
「いや、撮れ高がさ」
「「勘弁してぇな……」」
いや、何となくそんな気ぃした。気ぃしたけど、戦闘狂すぎる。
とか言うとったら、風に乗って蝶が1匹、飛んできた。
特徴的な黄色い翅と、翅から伸びる突起。キアゲハかな?
いやでも、あらゆる長さがリアルの2倍に見える。体積は2の3乗で……8倍?
「きゅい! きゅいきゅい……」
んで、それ見たはっさくが、立ち止まって触手を伸ばす。俺の腰の収納袋を漁って、「スライムグミ」を十数粒取り出した。
ちょと待てぇい !?
何それ? てかいつの間に、そんなん集めたん ???
後で要確認やな……
で、はっさくは触手引っ込めて、頭の上に出し直した。
触手が木の枝みたいな形に変わって、先端に花が……蜜柑かこれ?
そこに蝶が止まって、口元のぐるぐるを伸ばして……
「スライムて蜜出すんや……?」
「ツッコむとこそっち !? HPゴリゴリ減っとぉで ?? 放っといてええんかアr……あ! それでスライムグミなんか !! 賢い !!! 」
「急に自己完結すな」
えすとにツッコまれとったはずが……何でツッコんどんねん俺は?
さておき、えすとの実況した通りや。
蝶が蜜? 吸うたら、はっさくのHPが減る。その分スライムグミ食って、回復しとるみたい。
でも慌てとんのは、えすとと、兎のとがのぐらい。
蝶もはっさくも、あと5匹のスライムらも、
「自然の営みですが、何か?」
みたいな態度や。
「……チュ……チュピ……」
「……ぴすぅ」
鼠のダイスくんは、ご主人様の腕の中で熟睡中。
兎のレティシアさんは、ご主人様の背後で大欠伸。
「…… This is history! Right here! Right now! ……」
ほんでボーゼは、ボソボソ英語で呟きながら、録画しとるみたい。
怖い……
◇
「お、終わった……そこ止まんの〜?」
蜜吸い終わった蝶は、俺の左肩に飛び移って止まっとる。
「いや、ええ物撮れた! ほな行くコ !! 」
「はいはい、お前そればっかりやなー」
「ぴすぴす……」
興奮気味のボーゼに言われたまんま、俺らは歩きだした。
えすとレティシアさんはドン引きしながらやけど。放置で。
「ふす !? ふす !!? 」
「きゅいきゅい〜」
心配そうに駆け寄るとがのと、平然としとるはっさく。
すまんけど放置で。かける言葉が見つからん……
もうちょっとで転移地点、て辺りで、蝶は飛んでった。
「元気でな〜」
「きゅいきゅい〜!」
「あ、せや。【鑑定】〜」
「「 出 た な い つ も の 」」
―――――
ザ・スワローテール(♀) Lv.21
(分類)魔物/虫型
北の大陸で最も一般的な揚羽蝶。草原や畑でよく見られる。
身軽で打たれ弱い。花の蜜を好む。
HP:100% MP:100%
―――――
結果は後で見よ〜……とか思いながら見送っとったら、後ろの茂みがガサガサ鳴る。
振り返ったら、茶狼2匹、女性2人、茶狼がもう2匹……て順番で出てきた。
「兎とスライム……見つけた! 貴方が悪徳ゴブリンね?」
「……はい?」
知らん人に、知らん悪口言われとる。
何これ?
「『抑、魔物は愛玩動物を飼ってはならない』、聖なる書物にもそう書かれています。まして貴方は餌も与えず、野放しにする外道!」
「不届き者には罰を。僭越ながら神に代わって、私どもが裁きを……」
あの〜……アンタら誰?
何で交互に喋っとってなん ?? どっちか1人で良うない ???
てか“聖なる書物”て何 !?
しかもいきなり“裁き”やて !?? 俺らの言い分、聞いてくれへんの !!?
「「お前たち、やっておしま」」
……あれ? 固まった。
「バウ?」
「ガウガウ !? 」
狼らも困っとるな……いや待て !??
この人ら、急に青白く光るサイコロに変わりだしたで?
あ、あぁ……消えた。
……ごめん、もう無理。もう限界や。
ちょっと叫ばしてくれ。
「 は゛ぁ゛〜゛ッ゛!!? 何゛と゛い゛や゛コ゛レ゛ェ゛〜゛ッ゛!! 」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は10/20(月)頃の予定です。帰るまでがクエスト、帰るまでがクエスト……
ジンジュくんって、よく分からない子ですね。運がいいのか悪いのか……?
※そんな彼に痛い所突かれる系作者()
【追記】
・一部修正しました
(2026/02/01)
・サブタイトルを追加し、大幅に修正しました
(2025/10/23)




