037.
◇
はいど~も、ジンジュです。
地下墓地で敵のゾンビとかハイゾンビとか倒しとるうちに、進化しました。
ミニゴブリンからゴブリンに、な。
身長はリアル(人間)の9割ぐらい。ここのゴブリン、結構デカいよな~。
他所やとそんなにデカないらしい。所によっては“人間の赤ちゃんぐらい”とかやねんて……?
で、この階段下りたら地下墓地の底、なんやて。地下3階。
準備でけたし、ほな行こか~ !!
◆
ベドルジヒさんが言うには、
「詳しくは道中ご説明いたしますので、私についてきていただきたいのですが……」
とのこと。
そんな彼を先頭に、ボーゼ・俺・えすとと兎ら3匹、スライム6匹、さいでらさんら「ぞんび~ず」6人の順番で進む。
「露払いしましょか?」
てボーゼの提案に、
「ありがとうございます。【影の捕縛】使えるのでしたら是非」
「すんません無理です」
てやり取りがあって、こうなった。
秒で頭を下げるイケメン獣人。自慢の友達です。
◇
《「レッサーレベナント」3体と交戦中です》
「【影の捕縛】×3」
「お゛っ゛ !? 」
「「お゛あ゛っ゛ !? 」 」
早速向こてくる、レッサー敵ナント−−敵のレッサーレベナント−−さんら。
魔法で縛られて、地面に転がる敵ナントさんらを、ベドルジヒさんは無視して突き進む。
……て言うても、ゆっくりやけどな。ゾンビ系やし。
「【光の破魔矢】」
「【光の癒し】」
「「お゛お゛お゛お゛お゛ !? 」」
「【火の魔球】……あ、こんちは~!」
「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー゛ッ゛!」
すれ違いざまに、レッサー敵ナントさんらに魔法をぶつけながら。
行き交う“レッサーレベナント・ファーベル”さんや“レッサーキョンシー・ポーター”さんらに挨拶する俺ら。
……ん !?
「待てェ! しれっと僵尸おるゥ~ !? 」
「お゛ー゛ん゛?」
思わず足止めて、振り返って大声出した。すると向こうも足止めて振り返る。
もはや病的、ていえる青白い顔に、切れ長の目……以上に目ぇ引くんが、その恰好や。
いやその前に……しもた、呼び止めてもた!
まず頭下げよ……。
「失礼しました! 驚いただけです……」
「お゛ー゛ん゛……」
ガッサガサやけど、やっぱ女の人の高い声や。女装家さんやないみたい。
ほんで、用がないて分かったらすぐ走り去った。土嚢を背負たまんま。
ミニスカ長袖チャイナ服? て感じの、真っ黒なドレスを着とってやった。
頭の上には爆弾おにぎり……やないな。お顔の半分ぐらいありそうな、巨大お団子ヘアーやったわ。
重そう……
んで、その結び目ら辺から黒い紐――いや縄か?――が延びとった。先に付いとるんは、お札1枚。
ん~……すごい東洋感。
何で「中世ヨーロッパ風の世界」に、そんな人おってなんやろな〜?
大丈夫 ?? 世界観バッキバキに壊れてない ???
いや別にええけどさ〜……
「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!! 」
急にした、レッサー敵ナントさんの声にびっくりして、そっち向く。
倒れた、と思とった1体が起き上がっとる。俺が【火の魔球】ぶつけた奴やな……
ほんで、えすとが魔法を放る。
「【光の破魔槍】! おい誰じゃ、残心忘せとったボケぇー !!? 」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ー゛ッ゛!! 」
白い光の棒に胸元を貫かれて、敵ナントさんは溶けていく。
その断末魔が止むんを待って、返事を一言。
「私だ」
「お前だったのか……ほな仕方ないなー」
「「「『ええんやそれ…………?』」」」
ボーゼ、さいでらさんらが首捻っとる。
……いや、良うないんですけどね。まあ不慣れなもんで。
気ぃ散る要素が多すぎた……
「「「お゛〜゛」」」
「皆様、次来ますよ……?」
んで、“我関せず”なレッサー敵ナントさんらと、ベドルジヒさんやった。
《「レッサーレベナント」4体と交戦中です》
閑話休題。
◇
十数体のレッサーレベナントを倒し、敵が出て来えへんなった辺りで。
ベドルジヒさんが話しだした。
「実は私、主を探しておりまして……」
彼は生前、ある王国の魔法使いやったらしい。
“村で1番頭がいいから”と勧誘されて、とんとん拍子に出世したったそうで。
ほんで任されたんが、末っ子のお姫様の護衛。
「お恥ずかしいことに、ジンジュ殿の気配が主のものとよく似ておりまして。先程はお騒がせいたしました」
「いえいえ、お気遣いなく……」
ん〜、おっちゃん丁寧すぎる。やりにく〜い!
死後とはいえ偉いさんやで? 俺みたいな庶民のクソガキ、呼び捨てされても「しゃ〜ないな……」としか思わんのに。
やのに“さん”付けやない、“殿”付けや。困るわ〜……。
「すんません、せめて“さん”付けでお願いします……」
とも言いにくいし。
気まず〜 !!
……まあ、そんなん置いといて、や。
「何でや? 何で俺こんな、女子に間違われるんや…… ?? 」
「どんまーい。てかいっそ開き直ってさ、女装でもしてみたらー?」
「よ〜えすと、一遍逝んでみる〜?」
「アリやなー、だが断る」
「チッ……」
ここ、ゲームん中やから……機械にまで性別間違われたん、初めて。
流石にそらないやろ、て思とったのにな〜。
あ〜……この心のモヤモヤ、どないした物やろ…………?
「で、お姫様を探してる、というのはどういうことで?」
ボーゼが訊く。容赦ないな〜……。
「主はこの先の個室で眠っておられたのですが、ある日から急にお見えにならず……」
ベドルジヒさんの答えに、「ぞんび〜ず」の皆さんがざわつく。
「例の隠し部屋か?」
「かもね〜」
「もしかして、お嬢がお召しにならはったんて……」
「あー、あるかもっすね……」
んで、しばらく大人しかった「ひゃくまんべ」さん−−今ここで唯一の人間族−−が動いた。
懐から紙1枚出して、ベドルジヒさんに見せよる。
「ベドルジヒさん、この顔ピンと来ませんか?」
「「「警察のポスターか!」」」
ボーゼ、さいでら、トリベノ(敬称略)の3人が即ツッコむ。
街中でたま〜に見るよな、「この顔にピンと来たら!」て貼り紙。
え? 「そんなの見たことない」?
さよか、治安ええみたいで何より……
「いえ、特には……」
「そうですか。実はですね……」
「…………う、嘘だぁ !? そ、そんなことが……許されていいんだぁ !? 」
ちょと待てぇい!
ベドルジヒさん、キャラ崩れすぎ〜 !! 何聞いたったん……?
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は9/20(土)頃の予定です。
※街中のポスターについて
治安悪すぎて貼られてない可能性もあります。
私は何の補足してるんだろ……?
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/09/09)