034. これ、後でファーベルさんらが困るやつ……(地下2階)
予告通り、前話の番外編(7/7更新分)を掲載終了としました。
あしからずご了承ください m(_ _)m
◆
「こちらジンジュ。地下墓地の地下2階を潜行中」
「誰に何言うとんねん?」
「何や、映画の観すぎかー?」
しもた、声に出とった! 友達2人にツッコまれたやんけ~ !!
……てネタはさておき。
9人と9匹の集団の、一番後ろからコンニチハ!
次の階段への途中、3つある安全地帯の3つ目を出た所……まで来てもた。
何がヤバいって、とがのが進化してからここまで、敵らしい敵が出て来てないんよな~。
「ふす……?」
……いや、ハイゾンビ・ファーベルさんらが作業しとったし、ハイゾンビ・ジョガーさんらにも追い越されたり、すれ違たりしたで?
けど、
「お早うございま~す」
「お疲れ様で~す」
とか言うとったら、あっさり通れたし。
鼠とか、普通のハイゾンビとかは出て来えへんかった。
◇
そんな感じで、いよいよ次の階段室が近い。あと2回、右に曲がったら……なんやて。
「これ、後が怖いやつ……?」
「「せやな」」
ボーゼとえすとっきゅー――すぐ前を行く友達2人――に聞いたら、答えが食い気味に返ってきた。
いや、何があるん……?
「ここの突き当たり曲がった所が、まぁーヤバい。用心しとけよー」
「せやせや、あの辺どっちから行っても面倒くさいしな」
「え~……何かあるん?」
「「そら内緒」」
「鬼ッ !! 」
鬼はお前やろ、てツッコミは無しでお願いします。
「とりあえず、いっつも通り盾は出しとけ」
「は~い」
借りとった伐採斧は、礼言うてボーゼに返した。やっぱ刃物は性に合わん。
右手に石、左手に大盾持っといて……。
◇
問題の角を曲がって……5歩進んだ所で、通知が来た。
《「レッサーレベナント(♂)」1体と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「はっさく」が抵抗に成功しました》
《従者「とがの」が抵抗に失敗しました。状態異常【恐怖】が付与されます》
「ぴす! ぴすぴすぴす !! 」
「ふす……ふす……」
「ぷうぷう!」
兎らが前見て、一斉に震えだした。
な、何かおる~ !?
「を゛ー? 【鑑定】」
《抵抗に失敗しました》
《従者「とがの」「はっさく」が、それぞれ抵抗に失敗しました》
……ん、見えた。アイツか!
ほぼ人間、て感じのゾンビ系魔物さんや。顔色が悪うて、ちょっと動き遅いだけ。
ほんで、何か力湧いてきたな。〈下剋上〉スキルの出番か?
とりあえず、やられたらやり返そか~。
「【鑑定】……とがの、またお願い」
「ふ、ふす……【鑑定】!」
ありがとうねぇ。
んで、結果は~……
―――――
レッサーレベナント(♂) Lv.28 ピッチャー[交戦中]
(分類)魔物/人型
進化を重ねた、人型の腐乱死体。彷徨う亡者の一種。
力強くしぶとい。が、まだまだ動きは遅い。
HP:100% MP:―
―――――
わぁ、レベル高ぁい……
しかも動きも早い、今までの敵ゾンビよりは。
でも、俺より早よ動けるわけやないみたい。
あとMPなし。つまり魔法は使えん!
……逆転の目はあるな?
「う゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛!!!!!」
「来るで! 構えとき !! 」
「「「『はいッ !!! 』」」」
ピッチャーさんが雄叫びを上げると同時に、さいでらさんの指示が飛ぶ。
で、両側の壁がミシミシ言うて、ヒビ入りだした。2、4、6、8、と……
「う~わ、マジか……!」
「ふす、ふす!」
呆気にとられとったら、さいでらさんやボーゼらの叫び声が聞こえてきた。
「上から来るで~ !! 」
「床にもヒビ入りよぉ、気ぃつけェ!」
「マジぃ !? そんなん聞いてない !! 」
うわホンマや……上から3体、下から2体出てきた!
ここまで来たら、嫌でも分かる。
《「レッサーレベナント」6体、および「ハイゾンビ」14体と交戦中です》
《従者「とがの」が抵抗に成功しました。状態異常が解除されます》
敵の包囲網を脱け出せ。
なお、〈下剋上〉スキルは使えるものとする。
「さよか。ほなやったらァ~!」
「ふんす !! 」
◇
さて……「包囲網」て言うてもたけど、正確にはちょっと違う。
なぜか? 上と後ろがガラ空きやからや。
後ろ空いとるんは「嫌なら帰れば?」て所かな?
一方、上については“天井高い”んがミソや。
体の大きい種族でも通れるように、この地下墓地は天井が高うなっとる。
けど、俺らも敵も基本人間や。身長2mもあれへん。やから俺らの頭上には、1mちょいの空間がある。
ほんで今、敵も味方も梯子は持ってない。天井にへばりついとる奴もおらん。
でもへばりつける奴らはおる。ここに策がある。
「ほな頼むで、はっさく~」
「きゅい~」
「……フンッ !! 」
俺らはまず、6匹おる味方のスライムらを、天井に放り上げた。
「きゅお」
「「きゅえーい」」
「きゅい!」
彼らは触手を伸ばして、器用に天井に取りついた。
そこなら敵の手は届かん。ゾンビは空飛べんし、壁も登れん。あと魔法も使えんからな。
せいぜい、放り投げた石が当たるかどうか? や。
「を゛を゛を゛を゛を゛を゛!!」
……とか言うとったら、さっきの“レッサーレベナント・ピッチャー”さんが一石を投じた(物理)
これは当たるか……?
「……きゅい~、きゅいきゅい」
「きゅきゅ、きゅン゛ッ゛ !! 」
はっさく、ナイスキャッチ! で、石渡されたブンタンくん――リーダー格の子――が放り返す。
「ん゛を゛ッ゛!?!?」
んで、さっきの“ピッチャーさん”に直撃。死球というか、ピッチャー返しというか……
いやエグ……
「きゅ、きゅきゅ!」
「きゅお! 【火の魔球】」
「【光の魔球】~」
さらにスライムらが、魔法を放りよる。
「「う゛を゛を゛を゛ッ゛!?」」
食ろたピッチャーさんら2体が倒れ……へんな。
さすが格上、しぶとい……
「【光の癒し】×2」
「「う゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛~゛ッ゛!!!」」
あっ倒れた。【光の癒し】で倒れた。容赦ねぇ……
「う゛を゛、う゛を゛!!」
「「「『を゛~!!!』」」」
「……しもた、ボ~ッと見とった~ !! 」
前のほうで、別のレッサーレベナントが声を出す。指示役さんや。
んで、残り17体の敵ゾンビが動きだした。
「殴り合いやぁ~ !! 」
「「「『応~ッ !!! 』」」」
さいでらさん率いる“ざ・ぞんび~ず +α”。気合い入れよる6人に、敵7体が向かう。
「きゅ、きゅきゅ!」
「「きゅえ~い」」
天井のスライムらを狙う敵7体。投げた石、お仲間にも当たっとるけど…… !!
「……チッ、【ガード】!」
うわウッッザ! こっちにも飛んでくる !!
で、俺らのほうに来る敵は8体。ハイゾンビ6体と、下から来たレッサーレベナント2体や。
合わせて22体と、いざ勝負 !!
……おい待てや、またしれっと増えとぉぞ?
◇
6体は手ぶら、2体は両手剣、釘バット……
「釘バットぉ~ !? 漫画か !!! 」
「「ツッコむなツッコむな」」
「を゛?」
あれ避けたほうがええよな?
……とか思とったら、なんか釘バットの人に凄まれた。腹立つ。
「あ゛ァ゛~゛? 何どいやワレ ?? 潰すど ??? 」
「「「『柄悪っ……』」」」
「を゛を゛を゛を゛を゛~゛ッ゛!!!」
味方のツッコミはさておき。敵来たからやる。
挑発は準備のあとで。播州紳士の作法です。
「【鑑定】、【着火】! ……よっと」
「「を゛!? 」」
突っ込んできたレッサーレベナント2体をかわして、後ろに回り込む。
あと、火付けもお忘れなく。物理的にも、精神的にもね。
ここで一句。
気をつけろ ゾンビは急に 止まれない
ジンジュ
「……あーすまん、【光属性付与】・ダブル」
「あざ~っす。 ……フンッ!」
えすとの呪文で白く光りだした石を、遅れてきたハイゾンビの足元に放る。足止め。
で、白く光る大盾を横に倒して、両手に持ち替える。
「どぉら去ねやァ゛ッ゛!! 」
両手剣と釘バットの、背中に【叩きつけ】た。
……「CRITICAL!」2体分、いただきました。
「嘘ぉ……マジで?」
「弱点4倍、不意打ち、〈下剋上〉……まあ行けるかー」
えすともちょいビックリしとった。
……いや、違うねん。ぶつかったのにびくともせぇへんからさ~。
そんな効いとったんや……
いやいや、雑談は後や。ハイゾンビは?
「ぴすぴす!」
「ふすぇい!」
兎らに翻弄されとる。動き追っついてないもん。
でも兎らは兎らで、トドメ刺せてない。まあガタイと筋力の差は埋めれんよな~。
あとなんか、とがのから聞いたことない鼻息が……今する話ちゃうな。
「【光の破魔矢】」
「【光の破魔槍】×2……クソッ、ギリ耐えよったー!」
ボーゼとえすとは、新手のレッサーレベナント2体に魔法を浴びせとる。
けど強敵やな。串刺しでも、一発では倒れへんか~……
待て待て、倒したそばから増えんな !!
《「レッサーレベナント」7体、「ハイゾンビ」12体、および「ゾンビ」1体と交戦中です》
「あ゛ー」
「上から来るぞ!」
「「「『マジか !! 』」」」
なんか上の階っぽいゾンビまでおる! もう無茶苦茶やな……
しゃ~ない、1体1体相手してこか。まずは目の前のハイゾンビを……
「【着火】、【受け流し】、よいさ~ッ!」
受け流した所で、異変に気ぃついた――
◇
今、俺の周りは音に満ちとる。
ドチャ、グチャ……みたいな打撃音から、空を切るヒュンヒュン、魔法絡みのグツグツ、パチンて音まで。
そん中に、聞き慣れんのが混ざっとる。ドゥンドゥンドゥン……て、低うて小っちゃい音や。
まあでも、さっきのハイゾンビが先や。
「【叩きつけ】、であ~ッ !! 」
とりあえず、【受け流し】たハイゾンビに、大盾ごと突っ込んだ。
……「CRITICAL!」、いただきました。
ほんで、低音のほうは……なんかドンドンドン、て。ちょっとデカなった?
「……ん? 何の音 ?? 」
「え、何か聞こえる?」
「はい。何かドンドンドン、て。低く小っちゃいのが」
「そ~そ~、さっきからしてる!」
えすととさいでらさんも気ぃついたみたいや。
「……お前分かる?」
「うん、ちょっとずつデカなりよぉかも~」
「マジか、全然分からん……」
ボーゼには分からんみたい。まあ、ゲーマーは耳悪なる……て聞くし。
……とか思とったら、
「きゅう !? きゅうきゅう !! 」
「「きゅえ~ !!? 」」
スライムらが騒ぎだして、
「音に合わせて揺れだしたで~ !? これ何~ ?? 」
音が地響きに変わってきた。
「を゛? を゛?? 」
戦うどころやない雰囲気になってきた所で、次は兎らが騒ぎだす。
「んぷう !? 」
「ふす! ふす!」
「ぴすぴす !? 」
「ん? 何で中華料理……?」
ボーゼ、急に何言うt……あ、
「何か匂う~?」
「せやな。今、腐臭にナントカ醤っぽいのが混ざりだしてな」
「さよか…………ん~、そっちは分からん……」
あっヤバい。ズシンズシン揺れて、もう立っとれん……
「姫゛ッ゛、 姫゛~゛ッ゛!! どこにおられるので……む、そちらか !? 」
下、の階か……? 何か声するぞ ??
何かこっちに近づいてtt……
ミシミシミシ……
ドゴォンッ !!
「「「『どぅわあぁぁぁァ !?!!? 』」」」
床に開いた穴を、大きく広げて。
土煙の中から、ゾンビの巨人? が姿を現した。
「姫様、よくぞご無事で…………いや
誰?」
「「「『こっちのセリフ !!!!! 』」」」
彼と目ぇ合うとんのは、俺や。
いやいやいや何なにナニ怖い怖い怖い!
今度は何に巻き込まれるん、俺…… ???
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は8/8(金)頃の予定です。ついに……ついに主人公の進kいやなんか来たぁ!!?
【追記】
・一部修正しました
(2025/07/20)
・サブタイトルを追加しました
(2025/07/20)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.9
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:420マニ
SP:7
HP:78%
MP:86%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.6〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.3〉
〈生活魔法 Lv.5〉〈従魔法 Lv.5〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.4〉
〈敏捷強化 Lv.3〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:3)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.10
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:67% MP:―
はっさく Lv.10
スライム(下位粘体族) ♂
HP:92% MP:43%