032. ……地獄か? それともギャグか?(地下2階)
ブクマ・評価に……リアクション増えてる!
ありがとうございます !! m(_ _)m
本編また短めです(当社比)
◇
地下1階から地下2階、通称“B2”へ。墓地の階段を下りる。
また踊り場があって、左に曲がるんか~。
ん~……慣れねぇ!
で、上の階段室と違て、コウモリとかはおれへんみたいや。
「とてもしずか」
「せやな」
あとなんか、湿度がさらに上がった気がする。
下りたらすぐ、階段室の出入口。
その両脇の壁にまた、女神像の彫刻。始まりの街の大聖堂で見た、知らんほうのお二方や。
……よぉ見たら、獣人と森人?
人間の耳やないな。例のベーシストさんや東の街の人と違て。
向かって左、獣人っぽい人の頭には、狼とか犬みたいな耳がある。何かを警戒するように、伏せとってやけど。
一方、右の森人っぽい人の耳は長い。左の人より背が高そうにも見える。
で、またお2人とも、頭上に看板を掲げとる。「安全地帯」の標識やない。
左の人のは菱形、右の人のは丸い看板や。え~と、たしかその柄は……
「『動物注意』、『警笛鳴らせ』」
「罠やんけ」
声に出とった。んで、ボーゼのツッコミも飛んできた。
……まあせやな。死んだとはいえ人間を動物扱いすんなや。
あと、音に敏感な相手に「警笛鳴らせ」も、ちょっとなぁ……
「誰かのせいにしたいけど、自分の顔しか浮かばん……」
「節子、それ警笛やない。名物司会者や」
約2名、元ネタのありそうな話をしとってや。俺には何も分からんけど。
◇
さておき、出入口から顔出して、向こうを覗いてみる。
左右に延びる一本道や。何もおれへん。
とても静か。
んで、左の道は、突き当たりで左に曲がっとる。
反対側、右の道は、突き当たりで右に曲がっとる。
……これ、俺らの背後に“墓地の地下2階”が広がっとる感じやな。
たぶん。知らんけど。
顔引っ込めて、階段のほうに戻る。
「おってかー?」
「いや~、全然」
「やろな。曲がってからが本番やし」
えすとに聞かれて一言。言い切る前に、ボーゼが割り込んできた。稀によぉある。
「で、右左どっち行く? 左のが次の階段近いし、敵も多いけど」
「ほな右で~」
「即答 !! 」
いや……敵多いんを、しれっと利点みたいに言うな。
俺初心者やし、5レベ上出てくるかも知れんやろ? 〈下剋上〉スキルがある! ったって、万能やないんやし。
……まったくこれだから最近のゲーマーは。
「……なんやそうです」
「OK、ほな順番決めよ!」
「きゅ、きゅきゅ!」
ボーゼ、さいでらさん、ブンタンくんを中心に、また打ち合わせが始まった。
で、何で俺の意見聞いたか? ていうと……
「また先頭か~、嫌~ね~……」
「頑張れ、骨は拾たる」
「「○す気かー?」」
……はい、そんな感じです。
ボーゼの言い種には、えすとと2人でツッコんどく。
ほんでや。
この階段室出て、次の階段室までの間に3か所、安全地帯があるそうで。
1つ目までは俺らが先頭。そっから2つ目まではスライムら、後半はさいでらさんらに交代……て話になった。
とりあえず、右手に伐採斧、左手に大盾持って。
……まあ、ぼちぼち行きましょ。墓地だけに。
◇
階段室出て、右に曲がる。
「センター、レフト……【魔の照明】」
「ありがと~」
「ふすふす」
またえすとの〈光魔法〉で、足元照らしてもろて。
野球部らしいボケにツッコミむか否か、迷ったその瞬間。
ササササ……と、目の前を右から左へ、黒い影が横切った。小兎より一回り小っちゃい影や。
「【鑑定】」
「チュピ !? ピィ !! 」
影が高い声で鳴いて、一瞬立ち止まった……かと思たら、脇目も振らんと行ってもた。
で、【鑑定】結果は……
―――――
マウス(♀) Lv.12
(分類)魔物/動物型
街中から森の奥まで、どこにでもいる小型の魔物。雑食。
リトルマウスから進化した個体が多く、生態もほぼ同じ。
HP:100% MP:―
―――――
鼠か。なんかここ、地味に色々おるな~。
「何か出た?」
「鼠です」
「マジか。良かった~バレんかって……」
PTチャットで、ボーゼとさいでらさんが喋っとる。
「アイツら齧りに来るねん……」
「マジか……放っといてええんすか?」
「こっち来えへんなら別に」
「了解っす」
……そうか、色々あるんやな。
ま、次行こ。あそこの角曲がってからが本番、て話やったな。
◇
曲がり角に近づいたら、てちてち、てちてち……て音が聞こえてくる。
道の真ん中を、堂々と曲がる。
……やっぱり。向かって右側の壁に、1人おってや。「ハイゾンビ(♂) Lv.19 ファーベル」さん。今度は茶髪のおっちゃんや。
「ん゛~?」
一旦手ぇ止めて、こっち向いた。
顔の半分ぐらいある、火傷っぽい傷痕と、もっふもふの茶髪と髭が印象的やな。
「お早うございま~す!」
「ふす、ふすふす!」
「……ん゛。」
はきはき挨拶したからか? それとも後ろから、同族が来たからか?
……いや、両方かな~?
とにかく、ファーベルさんは一礼して、作業に戻ったった。
「お邪魔しまーす!」
「……ぷう」
「お勤め、ご苦労様です!」
「ぴすぴす!」
…………………
……………
……
後ろの皆さんも、はきはき挨拶しよってみたいや。
まあ、そんなことしとったら当然、声がよお響く。やから途中で、
「を゛ー」
て声がして、通知が来た。
《「ハイゾンビ(♂)」1体と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「はっさく」が抵抗に成功しました》
《従者「とがの」が抵抗に失敗しました。状態異常【恐怖】が付与されます》
「ふ、ふす! ふす !! 」
「落ち着けとがの……ここ窓ないから」
とか言うとるうちに、
「……を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛を゛!! 」
仲間呼んどってやった。
んで、最後尾のさいでらさん・あだしのさんが
「「いつもありがとうございます~」」
て言い終わったら、また通知が来た。
《「ハイゾンビ」5体と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「とがの」が抵抗に成功しました。状態異常が解除されます》
「「を゛ー」」
「「ゐ゛ー」」
で、俺らの前には4体。5人目はさっきのファーベルさん、てわけや。
「ノンアクやね、リンクしてるけど」
「は~そっか~、挨拶したらよかったんや……」
後ろは大丈夫そう。ほな、ファーベルさんには作業続けてもろて。
「やられる前にやるど、前4体」
「了解」
◇
ハイゾンビ4人、レベルは15から17。しぶといけど遅い。
一方、俺はレベル9やから、ギリ〈下剋上〉スキルが使えん。とがのやダイスくんらもそうみたい。
頭数と手数の有利を生かして、確実に倒しませう。まずは挑発から……
「【挑発】!」
「【鑑定】」
「「を゛ー?」」
「【鑑定】、【着火】~」
「ゐ゛ー !? 」
ん~……よお燃えとるけど、さっきほどやないな。やっぱ湿気とるから?
あと、なんか上の階と違うな、呻き声も。
ゾンビにもあるんかな~、方言とか……?
「……【挑発】」
「ゐ゛ー……?」
あと、明らかにやる気なさげな組み合わせが……いや集中。
【着火】、もう消えそうやn……
「ほ~ら、消えた」
「落語か? 余裕やな ?? 」
「お? ほな【光属性付与】要らんなー ??? 」
「すいませんでした要りますお願いします~!」
◇
てなわけで……
「【五重詠唱】、【光属性付与】!」
えすとが言い終わると同時に、5か所が白く光りだした。
伐採斧、ボーゼの短剣に、兎3羽の後ろ足や。
「ほなやるコ」
そない言うて、ボーゼはハイゾンビ4体の間を飛び回りだした。
4体のHPが、じわじわ減っとる。チクチク切りつけて回っとるらしい。
いや怖……
「ぴすぴす!」
「ふんす!」
で、そこに兎3羽が飛び掛かって、1対1で殴る蹴るなどの暴行を加える。
俺は残る1体を叩けばええ、と。さっき【着火】で焦がした相手を。
ほな大盾置いといて……
「【スイング】、うりゃァ~ッ !! 」
新技の名前を叫びながら、伐採斧を振りかぶる。斧の刃先が、向こうの首に当たって……“CRITICAL!”
「……ゑ? 1発 !? 」
とか言うとったら、他の3体も倒された。
《「ハイゾンビ」2体を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《Lv.9になりました》
《〈鈍器〉〈生活魔法〉〈従魔法〉以上3スキルのレベルが上がりました》
《〈生活魔法〉の新技【洗浄】を取得しました》
《〈従魔法〉の新技【調教】を取得しました》
《従者「とがの」がLv.10になりました。進化できます》
《従者「とがの」の〈蹴り〉〈敏捷強化〉両スキルのレベルが上がりました》
ほな手ぇ合わせて。なむなむ……
◇
そのまんま道なりに歩いて、左、右、左て曲がったら、小っちゃい安全地帯に着いた。
3つあるうちの、最初らしい。
「こんな“ファーベルさん”ばっかりやったっけ……?」
誰かがボソッと言うとった。
よお知らんけど、たしかに変や。後が怖いね……
ほんで入口の両脇に、また2柱の女神の彫刻。
「お邪魔しま~す」
「ふすふす」
小っちゃい、て言うても広い。30人ぐらいは余裕で座れそう。
で、明かりはないみたいや。薄暗い。
奥のほうに適当に座ったら、横にえすとが来た。
「お疲れーっす……お、安全地帯の自動回復で行けそうやな」
「さよか~」
……コイツ特製の回復薬飲まんでええんは、ありがたいかも。
「……何か失礼なこと考えてない?」
「いや~? 味噌汁飲みたいな~、としか」
「あそう、そら失礼」
雑談はさておき。
とがのと、あとポンカン・デコポンのスライムコンビが、今進化できるらしい。
「あんま皆さん待たせてもなー」
「せやな。早速やってもらおか~」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は7/1(火)頃の予定です。また進化回……を眺める主人公。
???「ああ、窓に! マ□ニー !! 」
【追記】
・一部加筆/修正しました
(2025/07/15)
・サブタイトルを変更しました
(2025/07/20)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.9
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:420マニ
SP:7
HP:99%
MP:86%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.6〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.3〉
〈生活魔法 Lv.5〉〈従魔法 Lv.5〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.4〉
〈敏捷強化 Lv.3〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:3)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.10 【進化できます】
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:98% MP:―
はっさく Lv.10
スライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%