030. 俺らと、……ギャグか?(地下1階)
今回短めです(当社比) m(_ _)m
???「下ノ墓地ニ居リマス」
ジンジュです。まだまだ、地下墓地の地下1階です。
ゾンビいっぱい倒した……と思たら、どっかにまだ1体おるらしい。
そこに、ボーゼの知り合い「ひゃくまんべ」さんが来た。なんか無言のお爺ちゃんゾンビに、付きまとわれながら。
謎ンビさん、うねうねした長い白髪に、彫りの深い顔立ちや。ほんで特徴的なT字の姿勢。
なんか、有名な昔の絵っぽいねん。たしかダ・ヴィンチの……思い出した!
「ウィトルウィウス的人体図やん!」
「何それ? てか何の話 ?? 」
えすとが眉をひそめる。
……せやった、一応[交戦中]やったわ。
「通報した」
「通報した」
「通報した」
んでボーゼ、さいでらさん、トリベノさんが順に告げる、あまりにも簡潔な報告。
誰に、何をどないせぇと……?
とか思とったら、謎ンビさんの奥に魔法陣が浮かび上がって、人影を映し出した。
その背格好は……
ほんで光が消えたら、黒っぽいスーツの男っぽく見える。と、ほぼ同時に、彼が喋りだした。
「皆さんはじめまして。私、GMの“ぶるダイコン”と申しま」
「「いや早い早い」」
「顔見えませんよ? ホンマにご本人ですか ?? 」
「辛辣ぅ……」
はい、ぶるダイさんでした。お久し振りで~す。
んでボーゼ・トリベノさん、さいでらさんにツッコまれて、ちょっと引いとってや……
「ほなちょっと失礼しまして……ばぁ!」
「「「『わぁ !!? 』」」」
カチッ、て音と一緒に、ぶるダイさんの顔が浮かび上がる。ビビった~……!
土の下にも、懐中電灯の候ぞ……
で、この人すぐボケる。
何で顎の下から光当てとってなんすかね~? もうちょい横からでええやろ……
「この顔にピン! と来たら」
「110番ッ!」
「もしもし、お巡りさんこの人です~」
「すんませんでした。 ……本題入ってよろしいですかね?」
結局ボーゼ、トリベノさん、さいでらさんにイジられて、土下座するぶるダイさんやった。
何の時間やねん、これ……
「すいません早よしてください」
静まり返った地下墓地で、ひゃくまんべさんの一言が、妙に響いとった。
◇
「んー、なるほど…………彼ねぇ、すぐこうなるみたいで。何回か直してるんですけど」
よその誰か――プログラマーさんかな?――と連絡を取りながら、俺らにそう話すぶるダイさん。
そんな彼の目の前で、両腕を広げ、T字の姿勢のまんまの謎ンビさん。
“人型の立体CG作るときの、最初の姿勢のまんま”てバグらしい。
そのまんま宙に浮いとったんが、さっきやっと着地した。色々あるんやな~
……あ、パタンて腕閉じて、腰が曲がった。で、背筋とか腕とか、微調整しよってみたいや。
「あー、爺ちゃんゾンビて感じになったなー」
「ホンマやな~」
えすとと2人、呑気な感想を漏らしとった。
……ら、急に通知来た。
《「ゾンビ」4体を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《Lv.9になりました》
《〈鈍器〉〈筋力強化〉両スキルのレベルが上がりました》
《〈鈍器〉の新技【スイング】を取得しました》
《従者「とがの」の〈蹴り〉〈危機察知〉両スキルのレベルが上がり……》
《従者「はっさく」がLv.10になりました。進化できます》
《「はっさく」の〈光魔法〉〈生活魔法〉〈精神強化〉以上3スキルのレベルが上がりました》
うわ、めっちゃ来た。てことは戦闘終了か。
お疲れ様で~す。なむなむ……
「お、皆さん通知来ました?」
「「「『はーい !! 』」」」
「あとは大丈夫そうですね。 ……ほな、楽しんでってや~」
「「「『ありがとうございましたー !!! 』」」」
そない言うて、踵を返したぶるダイさんが……
「……うおぁ危な !? 」
すぐそこの曲がり角でのけ反った。
で、その角の向こうから、勢いよく人影が飛び出してきた。
「……シュッシュッ、フッフッ、……」
若い男ゾンビ? て思いながら、彼の頭の上を見た。「▽ハイゾンビ・ジョガー(♀) Lv.11」やて。
女の人でした、すんません。
で、ジョギングする人、ね……
「ゾンビてジョギングするんや……へぇ~」
感心しとったら、横からボーゼが一言。
「俺も初めて見たわ」
「……マジで?」
意外な反応。
で、さらに横から、“ぞんび~ず”の異人「あだしの」さんが言う。
「ウチは2~3回見たで?」
「ホンマですか。ほな“2陣開放に合わせて実装”、とかなんすかね?」
「なんちゃう? 知らんけどね」
ほぇ~、色々あるんやな……
◇
とか何とか喋っとるうちに、ぶるダイさんも走るゾンビさんも行ってもた。
んで、ふと謎ンビさんを探してみた。ほないつの間にやら、土壁を直しよってや。
どこから出てったんか分からん工具を手に、黙々(もくもく)と。
「あ~、この音やったんか!」
壁を叩く“てちてち”て音に、さいでらさんが反応しとってや。
あと、カーラ・ハルトの姉弟と、6匹のプチスライムらが、横からじーっと作業を見とる。
あ、そうそう。謎ンビさんの頭上には、「▽ハイゾンビ・ファーベル(♂) Lv.12」て文字列が。
ファーベルて何やっけ~。職人さん……?
あと、通知のほうやけど……やっぱLv.10で1回進化できるみたいや。
はっさくのは、あとで見れそう。私、気になります。
……え? とがのと俺 ??
知らん。今日中にできるかな~……?
さて。ほなそろそろ行きましょか~、奥の階段室。
全員揃た。持つ物持った。ここで、いつものボーゼや。
「よし、ほな行くコ」
「「「『はーい !! 』」」」
◇
地下墓地入って、約30分。
空いとる街中やったら10分も要らんやろ、て距離をやっと歩ききって、下の階への階段室に着いた。
先頭を行く“ぞんび~ず”の皆さんが中に入る瞬間、薄暗かった室内が急に明るなった。
「わっ眩し !! 」
「分かる~」
「何回通っても慣れませんよね、ここ」
白っぽい光やし、焦げ臭くもないから、たぶん光魔法。火やない。
お、順番来た。
「お邪魔しま~す」
入り口の両側の壁に、また女神様がおってみたいやな。
けど今度は像やない。壁画風の彫刻や。
左がシトリー様、右が東の街の人。
んで、お2人が頭上に掲げる、「安全地帯」の標識……
「またか」
「ふす?」
まあええわ。
それより中広いな~。さっき通った、上からの階段室と変わらん。
……とか何とか、ボーッと考えとったんがアカンかった。
ニヤけ顔で、えすとが近づいてくる。
「あーらお帰りジンジュくーん、進化にする? 回復にする ?? それともア・タ・シ ??? 」
「はぁ~……去にさらせ、気色悪い…………」
「やーん、ジンジュ厳ーしー……ヒュッ」
ため息ついて下向くまでは良かった。内輪のノリで言い過ぎた。
急にえすとが静かになったから、顔上げたら……
ボーゼとえすと以外、全員が俺を見て、ドン引きしとってや。
で、ボーゼは頭抱えて沈黙。
えすとはこっち向いて、「どないすんの、これ?」と言わんばかり。
まあそら、墓地で「逝にさらせ」、つまり「○ね」と取れる物言いしたらアカンわな。
ほな答えは1つ。ジンジュ~! 土下座だ~ッ !!
「すみません取り消します! 不適切でした~ッ !! 」
「いいよ~」
…… ズ コ ~ ッ !!!
◆
トリベノさんのまさかの一言で、なんか許されたみたいです。以後気をつけます。
……うん。ゲーム中の俺ですらこれや。調子乗って何するか分からん。
ましてリアルで肝試しする奴らなんか、人生狂って当然やな。
「心霊スポット行こうぜー!」
て、何も考えんと言える人らやで?
んな生ぬるい人らが、その先全問正解で生き残れる、とでも?
それに死人といえども、人は人や。
なんなら、「まだ生きて~る」て思とる人すらおるやろな。
それを怒らせて、ただで済むと思うか?
俺は思わん。
生身の人間ですら、その辺面倒くさいんやから――――
◇
「【聖なる癒し】ー!」
「「あざ~っす」」
とりあえず、えすとにHPを回復してもろてから、いつものMP回復薬を呷る。
「お゛あ゛ぁ゛~゛……きっつ!」
「メチャ酸ッパ !! 」
「「何でカタコトやねん」」
てかボーゼがそのボケやるんや。珍し……
で、えすとは兎らの回復に回った。
「【闇の癒し】!」
「【水の癒し】!」
スライムらと“ぞんび~ず”の皆さんは、ある程度自分で回復技使えるそうで。
ほな次は、はっさくの進化か~。
どないなるんやろ? 楽しみやな~……!
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は6/6(金)頃の予定です。進化回……を眺める主人公回。
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/30)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.9
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:420マニ
SP:7
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.5〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.3〉
〈生活魔法 Lv.4〉〈従魔法 Lv.4〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.4〉
〈敏捷強化 Lv.3〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:3)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.9
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
はっさく Lv.10 【進化できます】
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%