028. 俺らと、暗闇に棲む者と
お待たせしました。連載再開です m(_ _)m
◆
階段降りたら、地下墓地の地下1階。通称“B1”。
あ! やせい の ゾンビ が あらわれた !!
「う゛~」
……動き遅。しかも獲物を探す不審者のそれ。
ほな血眼か? と思いきや、むしろ目は虚ろ。
何や気味悪いな~……
とりあえず、いっつも通り【鑑定】さしてもらおか~……
《「ゾンビ」1体と交戦中です》
え?
いきなり[交戦中]やて? やる気満々やな、おい。
勘弁してぇな……
しゃ~ない、大盾構えて、ボーゼに借りた伐採斧持って……ゾンビのけ反った !?
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~!」
「「げぇ !? 」」
「ヤバい、仲間呼ばれた!」
奥の十字路から、足音が近づいてくる。10体ぐらい敵の応援が……来るよ……
「あ゛ー」
「う゛ー」
「「「『あ゛ー』」」」
……嫌~ね~、先頭俺やねんけど?
◇
またまた、時を戻そう。
ジンジュです。友達に連れられて、兎やらスライムやらと地下墓地に突っ込みました。
寄り道しすぎて最後尾。通常運転やね……
入ってすぐ階段。下りよったら、下からバサバサ~、て羽音がする。
「ぴす !? 」
「「きゅえ !? 」」
前を行く兎やスライムらを驚かしながら、音は近づいてった。複数の黒い影と一緒に。
一応立ち止まる。何や? て思たら、コウモリやった。“▽リトル・バット Lv.4”やて。
「キャウ !? 」
……1匹当たった! フニャッと、おでこのど真ん中に。
まんま飛んでったから、良かったけどさ~。
「大丈夫け? 鈍臭いな~……俺自転車違うのに」
「お前なー、まず自分の心配せぇや」
「あ、ホンマやな」
文句垂れたら即、横の森人にツッコまれた。友達その①、えすとっきゅー。略してえすと。
ん~……異常はなさそう。ケガとか毒とか。
ほな、てことで、階段下りる。踊り場があって……
「え? 左曲がるん ?? 普通右やろ~…… ??? 」
「そうか? 冒険者組合とか図書館と同し、時計回りに上がる階段やけど」
「あ、たしかに。 ……でも何か気色悪いな~」
「そうなんや。気にしたことなかったなー」
ボーゼの反論に納得、はした。けど何か、スッキリせぇへんな~……
はい、階段下りて地下1階。
真っ暗やね。目ぇ慣らさな……てとこで、ゾンビ系異人:“さいでら”さんが一言。
「あ、ここ階段バラバラでな。真っ直ぐ行った突き当たりに、次の階段が」
「「「早い早い」」」
「「見えへん見えへん」」
異人5人でツッコんだ。
全員、【暗視】て技持っとる。けど「一瞬で視界確保!」て便利な物ちゃう。
そういやここ、人間族おれへんのか。
いや、1人遅れて来るらしいけど。いつになるやら……?
◇
よし、慣れた~! てことで、周りを見てみる。
今おるんは、階段室の一番下。そこからまっすぐ、土壁で囲まれた一本道が見える。下への階段はこの先らしい。
途中、交差点が3か所……いや、ここ出てすぐ十字路やから4か所か。
「順番どないする?」
「きゅ?」
「ほな2個目まで俺ら、3個目まではスライムら、あとは皆さんで」
「りょーかい!」
「きゅ、きゅきゅ!」
さいでらさんとブンタンくん――スライム6匹のリーダー格――と喋っとる狼獣人。彼がボーゼ、友達その②や。
なんかこう、複数PTがこういう所行く時、「1区画ごとに先頭代われ」てマナーがあるみたいで。その順番決めとった。
て、いきなり俺先頭?
お、ボーゼこっち来た。
「ジンジュ、先頭よろしく」
「やっぱり。嫌~ね~」
「まーまー、俺らもおるし」
「ぴすぴす!」
「ふんす!」
「ぷう……」
えすとに続いて、レティさん、ダイスくん、とがのの兎3羽も声? かけてきた。
頼もしな~。
「ありがとうねぇ~、頑張るわ」
無理はしない、やるなら無茶まで。 ……それが俺らの方向性や。
◇
スライムらはスライムらで、ゾンビ系の皆さんはゾンビ系で、それぞれ打合せしとってやな。
……ん? はっさくとあまなつさんが喋っとる。
「きゅう、きゅうきゅう」
「きゅいきゅい。 ……きゅい~?」
《従者「はっさく」が〈光魔法〉を取得しました。残りSP:1》
な に ご と ???
え? 俺な~んもしてないで ??
今何がどう……あ、もしかして“技の教え合い”とかするんかな? 仲間内で。
「きゅお? きゅおきゅお!」
「きゅう……きゅうきゅう、きゅう」
「きゅい、きゅいきゅい~」
2匹の横から、さらにこなつさんが割り込んで……
「ハァ? 〈調合〉?? 何でお前まで ??? 」
「きゅお!」
ご主人のボーゼにツッコまれとる。
……うん。教え合い、あると思います。詳しい条件とかは知らんけど。
まあええやん、そのほうが面白いし。
……おっとアカンアカン、それより今は地下墓地や。
◇
「ほな行くコ !! 」
「「「『応~ッ!』」」」
もろもろ決めて、円陣組んで。通知が来た。
《異人「ボーゼ」がレイドPT名を変更しました。
「やったね!墓荒らし!! ……なむなむ」》
「おま……適当言うただけやのに~!」
「面白いこと言うやつが悪い」
まあええわ、早よ行こ。
先頭誰~? 俺 !! あととがの。
で、すぐ後ろにボーゼ、えすとと兎2羽。
さらに後ろにスライム6匹、最後尾はさいでらさんらの「ぞんび~ず」5人。
えすとの光魔法で、前を照らして貰て……ほな行ってきま~す。
階段室を出た途端、道の奥で影が動く。
あ! やせい の ゾンビ が あらわれた !!
「う゛~」
……動き遅。しかも獲物を探す不審者のそれ。
ほな血眼かと思いきや、むしろ目は虚ろ。何や気味悪いな~……
とりあえず、いっつも通り……
「【鑑定】~」
「【鑑定】」
《「ゾンビ」1体と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「とがの」「はっさく」が抵抗に成功しました》
―――――
ゾンビ(♂) Lv.7 [交戦中]
(分類)魔物/人型
徘徊する、人型の腐乱死体。彷徨う亡者の一種。
生前より力強くしぶとい。だが動きは遅い。
HP:100% MP:―
―――――
ゑ?
いきなり[交戦中]やて ?? こっちから【鑑定】する前に ???
やる気満々やなおい、勘弁してぇな……
しゃ~ない、大盾構えて、ボーゼの伐採斧持って……ゾンビのけ反った !?
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~!」
「「げぇ !? 」」
「ヤバい、仲間呼ばれた!」
奥の十字路から、足音が近づいてくる。10体ぐらい敵の応援が……来るよ……
「あ゛ー」
「う゛ー」
「「「『あ゛ー』」」」
《「ゾンビ」11体と交戦中です》
ご丁寧に通知まで。いや多いわ間抜け野郎!
んで、近づいてくるゾンビの皆さん、結構グロい。さいでらさん等より、さらに顔色が悪い……どころか、体のあちこち光らせとる人おるやん。
「お~……世界が光に満ちておる」
一見きれいやねんけど、嫌な予感が……
「「「『……ハッ! “グロフィルター:全年齢”』」」」
なるほど、グロフィルター。やっぱあるんや、そういうの。
つまりその下は「見せられないよ!」てか。
どう見てもOUTです。本当にありがとうございました。
で、光ってない所もボロッボロ。足の指とか明後日のほう向いとる人おるで。5人ぐらい。
……どうして歩けてるんですか?
昔読んだ怪談本に、“人の形したボロ雑巾”とか書いてあってビックリしたけど、ホンマにそんな感じ。
……嫌~ね~、先頭俺やねんけど?
「【光の破魔矢】、ゾンたんインしたお!」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「「喧しいわクソ犬ぅ~」」
「ちょ、俺味方 !! 」
小ネタは置いといて。
最初のゾンビは、光魔法が当たった所から溶けるように消えてった。汚い高音を発しながら。
弱点4倍てやつか。結構効くんやな~。
「よし、火魔法と光魔法ぶち撒けたれ!」
「きゅ、きゅきゅ!」
「おっけー、【増幅】・4倍……」
ボーゼの指示で、えすとが魔法を撒きにかかる。
で、ブンタンくんが他のスライムらに指示出しよる。
ほな、ゾンビと当たる前に、俺も魔法を1発。
「【光の魔球】」
「【光の魔球】~」
「【火の魔球】……う~わ、めっちゃ燃えるやん !? 」
「生ゴミの割に?」
「「こらこらコラ」」
さいでらさん、まさかの失言。
さておき、敵ゾンビは大炎上。メラァ、みたいな音した。初めて聞くわ、そんなん。
ほんで鼻をつく、焦げ臭いそよ風。
……あ、燃え尽きた。
“CRITICAL!”、いただきました。なむなむ……
ほな次!
◇
《「ゾンビ」12体と交戦中です》
「う゛ー」
「あ゛ー」
「「「『う゛ー』」」」
「倒したのに増えたーッ !! 」
「「喧っしゃ野球部ぅ……」」
7体も増えた。面倒くさ……
ただ、ここの敵ゾンビに“連携”て概念はないらしい。同族やられてもお構いなく、こっちに来よる。
そろそろ大盾で受けなアカンぐらいまで、な。
……うん。燃えるんボーッと見とったん、悪手やったね。
やっちまったぜ !!
「これ【ガード】? 【受け流し】?? 」
「なるべく【受け流し】。猪ぐらい重たいからな!」
「りょ~か~い」
「おー、せやせや、【光属性付与】」
「あざ~っす」
ボーゼの助言とえすとのバフで、準備はばっちり! ……たぶんな。
っしゃ~、来いやぁ~!
目の前のゾンビが、右腕を大きく振りかぶって……
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~ッ !! 」
「ふす!」
「【鑑定】、【受け流し】、どぅおぉ~!」
……重た !? ホンマに猪の突進みたいな威力やな!
それで折れてない、右腕がヤバい。頑丈すぎやぞゾンビ~ !!
で、当のゾンビはずっ転けて、兎3羽にボコられとる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~ !! 」
「ぴすぅ !? 」
「ふんす……」
まあでも、元の筋力が全然ちゃうからな~……あっさり吹っ飛ばされた。
しゃ~ない。起き上がろうとする、ゾンビの後ろ頭を狙て、伐採斧を……
「【叩きつけ】、でぇ~ッ !! 」
「あ゛~ !? 」
ぬぅ。“CRITICAL!”出えへん。人の急所とかないんか?
……とか思とったら、横から青緑色の塊が飛んでって、ゾンビの頭に覆い被さった。
「ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~ !? 」
「きゅお!」
くぐもった悲鳴を上げながら、ゾンビの頭は輝きはじめ、やがて形を失った。
それでもなお暴れ続けるゾンビの体から、じわじわ首が失われていく。
「……きゅお♥️」
「えぇ~……」
「ふす……」
ご 満 悦 。
体小っちゃいから、正直舐めとったけど。
こなつさん、うちのスライム6匹で一番ヤバいな?
「きゅい !? 」
「きゅ、きゅう……」
「「「きゅえぇ……」」」
他の子らの反応も、よろしくない。森の掃除屋は何でも食えるけど、やから何でも食う……わけやないらしい。
こなつさん? 踊り食いしとるそれ、人様の死体やからな ?? 将来が不安すぎる。
……まさか、昨日のデカブツにでもなる気か? あの
「てけり、り~」
とか言うとった蛍光グリーンに。
「おいジンジュ、何見とん……」
さすがのボーゼも固まった。
……あ、せやった! まだ敵ゾンビ途中やん。
「すまん、話は後や。先そっち終わらせよか」
「おぉ、せやった」
◇
え~と、敵ゾンビはあと5体。うち2体がこっちに来よる。虚ろな視線の先は、首から上を失った同胞。
……ん !? 右手も無うなった! こなつさん ???
「う゛ー」
「あ゛ー」
ヤバいヤバい、言うとる場合やなかった。斧置いて、足元狙て……
「【鑑定】、【受け流……いや【叩きつけ】、らぁッ !! 」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」
「ふんす、ふんふん!」
「……ぷう」
2体まとめて転かした所に、とがのとダイスが飛びかかる。
「「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 」」
2羽が振り払われて、飛び退いた所で……
「【光の魔球】」
「【火の魔球】」
とどめの魔法……あっクソ、俺のギリ足らん!
「【着火】!」
“CRITICAL!”、いただきました。なむなむ……
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
ヤバい子が出てきましたね……()
次回更新は4/30(水)頃、番外編の予定です。
本編は5/5(月/祝)頃更新となる見込みです。ゆるゆるお待ちください……
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/29)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.7
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:420マニ
SP:5
HP:82%
MP:7%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.4〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.2〉
〈生活魔法 Lv.3〉〈従魔法 Lv.3〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.3〉
〈敏捷強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:3)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
〈水玉の主〉
現在は無効。物理攻撃、および水属性の被ダメージが微減する。
従者:2名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.8
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:87% MP:―
はっさく Lv.8
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:95% MP:65%