025. 俺らと、小鳥と、猫と……あと図書館
ブクマに……リ、リアクション!
ありがとうございます !! m(_ _)m
◆
ジンジュです。
ちょっとだけ、標準語で失礼しますわ~。
ありのまま、今起きたことを話すぜぇ……
俺ら3人、アインツ市立図書館に来た。兎3羽とスライム6匹連れてな。
入館手続きして、中庭でボーッとしてたんだ。そしたらボーゼのコーヒーに、真っ白い何かが飛び込んできたんだ。
「はぁー !? 」
「何や何や~ ?? 」
とか言って見たらよぉ、小っちぇえ鳥だ。
何を言っているか分からねぇだろうが、大丈夫だ。俺にもさっぱり分からねぇ……
「ぴぃ~や」
しかも変な鳴き声してやがるぜ。何だァこいつ?
……おっと、話はそこで終わらねぇ。
さらに視界を黒い影が横切r……いや上から下へ落ちてったんだ。
思わずそっち見たら、そいつ黒猫だったんだよ。図書館の屋根の上から飛び降りたみてぇだ。
「あらすみません、ウチの小鳥がご迷惑を……」
おい嘘だろ !? こいつ喋んのかよ !!
◇
少々、時を戻そう。
図書館の前にまず、冒険者組合・アインツ総支部に寄るとこから。
ボーゼ、えすと、俺、兎3羽、スライム6匹で歩く。
今日は空いとる(当社比)、ヤッター! ……とか思いながら扉開けてん。ほな鼻を突く、化学的な匂い。
「きゅお、きゅお」
「きゅい~~……」
んで、スライムらが入るん嫌がっとる。身を捩ったり波打たせたり……
「きゅう……」
「「き゛ゅ゛え゛え゛え゛え゛え゛」」
「きゅ、きゅきゅ !? 」
吐 い た 。
ポンカンとデコポン、スライム2匹がゲボ吐いた。
脇におったブンタンくん――ウチのスライムのリーダー格――が、ふらふらな2匹を支える。とっさに触手伸ばして。
ほんで、3匹に駆け寄る主人。
「だっ、大丈夫かー !? 」
「きゅきゅ、きゅきゅ !! 」
……を横目に、ボーゼが一言。
「1回戻るど!」
「了解」
とりあえず、噴水へ引き返す。
ブンタンくん含め、他の子らも“まだ吐いてないだけ”やから。建物から離れたほうがええ。
「ぴす、ぴす……!」
「ふんふんす!」
一方で、レティシア・ダイス・とがのの兎3羽は、調子悪そうには見えん。
薬臭いんを嫌がってか、後ろ足で地団駄踏んどるけど。
……この感じ、虫除けならぬ“スライム除け”か?
◇
広場に出て、噴水まで戻った。噴水池で、スライムらが水飲んどる。
「「きゅえーい」」
「きゅお」
6匹の中でも弟分・妹分らしいポンカン、デコポン、こなつ。3匹は水に浸かっとる……というより浮いとる。
気持ちよさそうで、何より……
「きゅきゅ」
「きゅう……」
「きゅい~」
残るブンタン、あまなつ、はっさくの3匹。噴水池を縁取る石の上で、彼らは体を休めとった。ぐで~っ、て蕩けとる。
で、それぞれ触手を伸ばして、噴水池の水を吸い上げとる。
こっちも大丈夫そやな、よかった~……
で、ボーゼが一言。
「すまん! スライム除けしとってなん忘せとったわ」
「あ~、やっぱり」
ボーゼが一同に謝る。
ここアインツやと、“スライムの大移動”は夏の風物詩なんやて。毎年1回必ず来る、と。
で、“森の掃除屋”なスライムらは、街もきれいにしてくれるらしい。街の人、結構歓迎しとる。
やからって、ホイホイ家に上がり込まれても困るわな。
やからスライム除け。薬品使て、“この先立ち入り禁止!”て教えとくわけや。
……なるほど、理屈は分かる。けど組合までそれやるんか。公共施設やろうに。
難儀やな~……
「ほな行くコ……?」
「ぴすぴぃす!」
「ふす」
呼びかけたボーゼに返事するけど、動かへん兎ら。
スライムらと一緒に、噴水で待っとくつもりらしい。
「ほな、ちゃちゃっと行ってくるわー」
「きゅきゅ!」
◇
はい、てなわけで明日の予定、決めてきました。
前から気になっとった、“地下墓地の探索・浄化”て依頼に挑戦しま~す。目的の地下墓地は、アインツの北北西にあるそうです。
16歳、真夏の大冒険。
肝 試 し で っ せ ェ ~ !!
「クソーッ!!」
「ジンジュに喋らすんやなかった……!」
組合出て早々、えすととボーゼが頭抱えとる。
う~ん……「今さら悔やんでももう遅い」とか言うたらええんかな? こんな時。
「ったく、こいつ言わせておけばー」
「そらお前、言わせるからやぞ~? 坊主」
「少年が聖職者を“坊主”呼ばわりするの図」
「……とか言われてまっせ~?」
「彼は“ぼうず”ですか?」
「いいえ、ボーゼで~す」
……言い切ってから、3人顔を見合わせて一言。
「「「何言うとんねん俺らは……」」」
またつまらぬ茶番を演ってしまった……
閑話休題。図書館行こ図書館。
◇
アインツの中央広場から北北西へ。市立図書館です。
石造りの立派な建物入って、入館手続き……て言うても、まだ昨日の今日や。冒険者組合員証を魔水晶に翳すだけ。
わぁ眩しい! 以外は楽でええわ~。
あとはぞろぞろ引き連れて中庭へ。これ大丈夫なんや……ありがたや~!
「ほあ~……拙者特に何もしてないけど、今日もお疲れ~……」
「「早い早い早い」」
……せやな、まだ目的の本も見てない。けどログインして十数分のうちに、2回も気絶させりたらさ~……やる気無うなるわ。
やのにうっかり座ってもた……
「あ゛~動きたない…………本棚が来いや……」
「ファンタジーかホラーかどっちやー?」
「ほんまそどぅおぉぉい !? 」
でろでろ駄弁っとったら、ボーゼのコーヒーに、真っ白い何かが飛び込んできてん。
「はぁー !? 」
「何や何や~ ?? 」
とか言うて見たらさ、小っちゃい鳥や。
マグカップから出てきて、軽く水分飛ばしてから、鳥さん一言。
「ぴぃ~や、D'you know what I mean?」
「キェアアア喋ッタアアアアア !? 」
「「喧しいわ」」
ネット民の悪い癖が出とるっぽい、ボーゼにツッコみつつ。
この鳥さん、今英語かなんか喋ったったよな? 異人でっか ??
……とか言うとったら、今度は視界を黒い影が横切r……いや上から下へ落ちてった。
思わずそっち見たら、黒猫……?
「あらすみません、ウチの小鳥がご迷惑を」
「「「ゑ……?」」」
二足歩行やと……?
何なにナニ怖い! アンタも喋るんか !?
「ボーゼさんと、えすとっきゅーさんですよね? 申し遅れました。私、“そばぎり”と申します」
一礼する黒猫さん。なんか蕎麦にこだわってそうやね。
“蕎麦切り”言うんは、蕎麦麺の別の言い方や。蕎麦湯とか蕎麦ボーロとかと区別して、そない言う時がある。
……ん? そういやボーゼのライバル“県北の人”て、たしかそb……
「で、こちらの鳥が“そばがき”、私の兄です」
「「「……んん !!? 」」」
マジで? 県北のめっちゃゲーム上手い人 ?? ホンマに ???
「嘘やろ、このチビが ?? マジで ??? 」
「D'you know what you mean?」
「Of course I know. ……腹立つなこいつ !! 」
“アンタ何言ったか分かってる?”“もちろん分かってる”
……標準語に訳したら、多分こんな感じ。つまりボーゼと「そばがき」さん(推定)は……
「「ケンカすな、仲ええのぉ?」」
「兄さん、煽りすぎです。挨拶が先でしょう?」
「「はい……」」
出会い頭に、互いをおちょくり合ってました。
何しとんねん……
◇
それより気になるんが2点。
まず、そばがきさんの喋り方。ミュージカルみたいな、妙な節回しがついとるんやけど?
ほんでもう1個は……
「あのー、すんませんけど……何かこう、本人確認みたいなもんは……?」
えすとが今訊いたこれ。ホンマに本人か?
いや、そもそも俺は話でしか知らん人やから、確認もクソもないけど。
「ぴぃ……あ。“ファンフリ”に、よぉ来んさった」
「ありがとうございます。 ……ガチの但馬弁や」
そばがきさん確定、やて。
んで、標準語に訳したら「よく来なさった」てとこか。へぇ~……
俺らやと「よぉ来たったな~」とかって言い方になる。同し県内やけど。
あと、そばぎりさんの喋り方。俺らとか大阪の人よりも、岡山とか名古屋の人に似とる。けど別物……て印象やな。
俺らと同し県内やけど。奥が深いなぁ……
「そちらの方は“初めまして”ですよね……?」
「おっと失礼しました。ジンジュです、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
そばぎりさんが話しかけてきたから、丁寧な標準語発動。ほんで一礼。
俺らより年下らしいけど、しっかりしとってやな~。
……とか思とったら、横からえすとが一言。
「せや、猫やからって語尾に“ニャ”とかつかへんねんなー?」
「そんなことないですニャ~ン」
「「取ってつけたように……」」
……ん !?
待て、ボーゼとそばがきさんは……
「ほんで? 元気しとったかチビっ子 ?? 」
「元気元気~、西と南を行ったり来たりだよ。で? 鉄砲玉こそ何してんの ?? 」
早くも不穏。茶番やろうけど酷い。
これが煽り愛、いや煽り合いか……
「誘とった友達来たからさ、レベル上げ。ついでに仲間が増えたよ、やったねガキちゃん!」
「それが小鬼、小兎、プチスラ……一揆でも起こすのかお前?」
「普通に冒険するだけやけど ?? そんなん煽って何がおもろいねん……」
「じゃあ赤穂浪士?」
「赤穂義士て言え、怒られるど ??? 」
播州人のイメージ悪すぎひん? んないちいち反乱起こさへんて。
少なくとも俺は体制の犬やし。わんわん。
いやホンマに。「熊がかわいそう」とか、んな怖いことよう言わん……
あと、赤穂の人に“赤穂浪士”て言うんはマジでアカン。困ったときは「赤穂義士」。
覚えてや、テストには出えへんけど。
「んな話どうでもええわ。お前何なん、その歌劇みたいな喋り方 ?? 」
「仕様だってさ、鳥系異人の。 ……運営の意地悪! 僕知らないもん !! 」
「突然の幼児退行……」
ボーゼはツッコんだ。必ず、あのチビ鳥の謎を解き明かさねばならぬと決意した。ボーゼには遠慮が分からぬ。だが(※自主規制)には、人一倍敏感であった」
「「聞こえてますよジンジュくん ??? 」」
急に、ボーゼとそばがきさんがこっち見て、一言。笑顔て怖いんやな~……
「あれ~ !? 声に出とった ?? 」
「おいおい逝んだわアイツ……」
「合掌……」
この後俺は、一発ずつどつかれました。えすともそばぎりさんも、特に助けてくれんかった。
やむなし。眩む凡人は、かぷかぷ笑ったよ。
「まあええねん、図書館でケンカする奴がおれへんならそれで」
「嫌味か。もっと普通に止めんかい」
はい、ですね。
◇
「で? お前ら結局何しに来てん ?? 」
ボーゼにツッコまれたんは、俺と小鳥。順番に答える。
「俺は昨日の続き。『基礎魔法学概説』を読みに来てん。駄弁りすぎただけや」
「僕は“知り合いいないかな~?”と思って。この体、本借りるどころじゃないからね。あわよくば見せてもらおう、と」
てなわけで、時間の許す限り読んどいた。途中までやけど。
分厚いし、図鑑も見直したからな。
《日刊クエスト「本を読もう!」をクリアしました》
《従者「とがの」「はっさく」が『アインツ公国動物図鑑』を読破しました。以下の条件が満たされて……》
《「とがの」「はっさく」の〈動物知識〉が開放されました。それぞれSP:3で取得できます》
《「はっさく」の〈人類共通語〉がLv.2になりました》
ほな帰ろか。
明日たのしみやな~……
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は3/1(土)頃の予定です。肝試しでっせェ~!!
空を飛べるかわりに、喋りが半強制歌劇になる。
でなければ「ぴーちくぱーちく」、それが「ファンフリ」の鳥族です。
(異議は認める)
【追記】
・一部加筆/修正しました(2025/08/18)
・下記【おまけ】を差し替えました(2025/02/24)
危ねぇ、忘れてたぜ……
――【おまけ】――
レイドPT「お化けとは何か? その答えを求め文字数」の現状
【PT「お城と……横顔新○線や~」メンバー】
○リーダー
ボーゼ Lv.23
ウルフ・ビースター(狼獣人/獣人族) 男
HP:100% MP:100%
備考:長音(「ー」、「~」など)を端折りがち
従者:1名が所属
レティシア Lv.13
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
備考:鳴き声は「ぴすぴす!」など
○副リーダー
えすとっきゅー Lv.22
エルフ(森人族) 男
HP:100% MP:100%
備考:長音は「ー」
従者:1名が所属
ダイス Lv.8
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♂
HP:100% MP:―
備考:鳴き声は「ぷう」など
○その他のメンバー
ジンジュ Lv.7
ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
HP:100% MP:100%
備考:長音は「~」
従者:1名が所属
とがの Lv.8
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
備考:鳴き声は「ふす」など
以上6名/定員7
【PT「きゅきゅきゅーきゅ・きゅーきゅきゅ」メンバー】
○リーダー
ブンタン Lv.8
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%
※異人「えすとっきゅー」の従者
備考:鳴き声は「きゅきゅ!」など
○副リーダー
あまなつ Lv.8
プチスライム(下位粘体族) ♀
HP:100% MP:100%
※異人「ボーゼ」の従者
備考:鳴き声は「きゅう」など
○その他のメンバー
はっさく Lv.8
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%
※異人「ジンジュ」の従者
備考:鳴き声は「きゅい~」など
ポンカン Lv.7
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%
※異人「えすとっきゅー」の従者
備考:鳴き声は「きゅえーい」など
デコポン Lv.7
プチスライム(下位粘体族) ♂
HP:100% MP:100%
※異人「えすとっきゅー」の従者
備考:鳴き声は「きゅえーい」など
こなつ Lv.7
プチスライム(下位粘体族) ♀
HP:100% MP:100%
※異人「ボーゼ」の従者
備考:鳴き声は「きゅお」など
以上6名/定員7
○その他のメンバー
(該当なし)
計12名/定員25