021. 報告と、イースと、アインツ市
あけましておめでとうございます(出遅れ)
今年も本作をよろしくお願いします! m(_ _)m
冒険者組合・イース出張所の中へ。アインツ総支部ほどやないけど、デカい建物やな~。
中入ったら、ここも木造の酒場風。アインツより一回り小っちゃいけど……あれ? その声は ??
「……所長、トロルです」
「何ぃ !? また異人かよ !! もう勘弁してくれ……」
受付から響く、低~い男女の声。女性のほうは……できる受付の人! できる受付の人やん !?
お勤めご苦労様です。てか何でこんな所に……?
とか思とったら、はったさんが話しかけてきた。
「……ビックリしただろ? 年子の17人姉妹らしい」
「えっ? 何すかその~……ど~いうこと ?? 」
知らんで、よそ様の家庭事情とか。
「Surprise! ……あの人もアインツの人も、組合の偉いさんの娘さんなんやて」
「そうそう、たしかアインツの人が長女でー、4大国の首都に次女から5女、間の12都市にもそれぞれおってらしい。でー、ここの人は8女やったかな」
「へ、へぇ~。そうなんや……」
ボーゼとえすとが補足してくれたけど……姉妹多すぎん? 怖……
てか、えすとさ~ん、詳しすぎひん? 珍しなオイ……
あと、どっかで聞いたことありそうな話やな。気のせい?
◇
とりあえず、報告してきました~。
《継続クエスト「小兎を狩ろう!」他3題の報酬として、合計:30マニを獲得しました》
《日刊クエスト「複数の魔物を狩ろう!」をクリアしました。クリアボーナス:5マニを獲得》
《所持金残高:420マニ》
……いや~、怖かったわ~。受付の、例の8女?さん。
双子とかクローンとかってレベルやない。マジで同一人物かと思た、アインツの人と。
で、それがあと15人……?
そして私は、考えるのをやめた。
……いや、受付の人の話はもうええわ。それより金や。
本日のおこづかい、35マニやて。これ、大体3500円ぐらいらしい。大金……は言いすぎか。
けど結構貰たな~、て思う。リアルの俺のおこづかい、月5000円やからな。
……「えっ少な !! 」やて? Барчонок……
あと、うちの高校、原則アルバイト禁止やし。進学校やから学業最優先や。
公立はそういうとこ多いんちゃう? 知らんけど。
お、ついでに言うとこ。ボーゼのゲーム配信も、学校の許可貰てやっとる。
部活の一環、て建前やけど、それでも書類出せとか役所行けとかちょっと寄付せぇやとか、色々面倒くさいらしいで~。
俺は絶対やらん……
手続き終わったボーゼが、
「“配信者は国の宝”ぁ? ア○が要らんことぬかしよって……」
てぼやいとった。
ごめん、俺知らん。それ前の総理に言うて……
◇
あい、話戻しま~す。毎度すんまへんな~。
せっかく“よその冒険者組合”来たんや。出る前に見とこか~、ここの依頼掲示板。
“魔物の討伐”は当然として……“街道の草むしり”から“沼地の探索”、“人捜し”……やっぱ何でも屋やんな~。
……ん? “地下墓地の探索・浄化”がないな。代わりに“廃都市の探索・浄化”……いきなり規模デカすぎん ??
お、今組合の人が来て、1枚足してった。
え~と……“【緊急】獣の森の呪具捜索・アンデッド討伐”やて。まだ続いとんか~。
てか「呪具使とる?」て疑われとる……ザいけさん、コ□しすぎ~ !!
I hate you……
「……よぉーし。クロウ、夜の部行くぞ」
「クァクァ」
はったさんとクロウくん、やる気満々や。
で、“討ち取るべき魔物”のほうは……
―――――
【新人~】小兎
【初級~】鶏、灰狼、白豚、黒牛etc……
【中級~】闘猪、小土人形、巨鳥etc……
―――――
おぉ……アインツと色々違うな~。
とりあえず、小鬼とか闘鬼はなさそうで一安心。
んで、新人向けから“茶狼”が消えた。おれへんのか~。
小兎ばっかり狩ってもしゃ~ないしな。それも小兎連れて。
で、他の魔物は、10レベ超えとる強いんばっかりやて。
意外と〈下剋上〉のおかげで戦えるけど、連戦は無理。反動きっついし。
あとあれや……
「ふす~……」
いっつも通り、草食っとるとがの……やけど、ご機嫌斜め。
アインツ周辺と同し、「ウィード」て草。イースの畦道で取りよってんけど、どうも味が気に入らんみたい。
「ん~……アインツ戻るか~」
「そうか、そりゃ残念だな」
◇
組合の建物出て、イースの街中に戻る。
組合前の行列が、来たときより延びとる。危なかった~。
まあでも、アインツに比べたらだいぶマシ。あと皆さん、強そうな格好しとってや。
余裕で1m超えとる大剣とか大斧とかゴムタイヤとか、背負とる人おるで……ゴムタイヤ ??
ちょお待て、なんか黄色いトラックの着ぐるみの人おるで !? 何者 ???
本体は可愛らしくデフォルメされとる。やからかえって、タイヤのリアルさが際立っとる。
どないして拵えたんや……? 特にその、内側の金属のとこ !!
「……May I help you?」
「の~、せんきゅ~。そ~り~」
アカンアカン、ガン見しすぎて話しかけられた! 「何か用?」て。えらいすんません !!
てか英語上手いっすね !? ホンマに何者…… ???
あ、先行っとったボーゼが戻ってきた。
「お前また人間観察しとったやろ。ほどほどにしとけよ?」
「うっ……すまん」
俺の悪い癖や、気ぃつけよ……
アインツと違て、個性的な格好の人多いからな~。
今にも「ヒャッハー!」とか言いそうな半裸モヒカンさんに、「野郎、ぶっコ□してやる!」とか言いそうな軍服の人もおる。
……あれ? 元ネタありそうなんばっかりやな。そんなに個性的でもないんか……?
「フランクフルト如何ですか~」
「の~、せんきゅ~」
超低音の売り子おる! どこの学園祭やねん。
しかも猫耳メイド服で、段ボールの手書き看板前後に提げて、ギター弾きながr……レ○ポールやと !? ガチやったら値ぇ張るやつ~ !!
「にゃーん」
クセ強いていうより、詰め込みすぎやろ……
はい終了。俺はツッコミをやめるぞ、ジ○ジョ~ッ !!
◇
「じゃ、お先に失礼するぜ。またな!」
「カァ!」
「「「はーい、気ぃつけてー !! 」」」
お化け退治を続けるらしい、はったさん・クロウくんと別れたとこで。
このイースの街を、もうちょい見とこ。
現在地は街の中心部、その名も「中公園」。て言うても、遊具はない。
ほぼ石と花壇だけの、シンプルな広場や。
そのど真ん中に、デカい石膏像がある。組合行く前にも見た、2柱の女神像や。
雪のように真っ白、超真っ白。ほんでデカい。台座だけで、今の俺より高いから……全長3~4mぐらいあるんちゃう?
で、台座に見たことない文字列が……
「……読める、読めるど~ !? 何でや阪○」
「「関係ないやろ」」
ツッコミありがとう。ちなみに内容はこんな感じ。
―――――
副神:シトリー様と、我らが主の2尊像
畏れ多くも、向かって左はシトリー様、右は我らが主の立像である。この商都イースにおいて、欠くことのできぬ方々であらせられる。
主は、この世界を1からお造りになられた「万物の母」であらせられる。我らの今日あるは、主のご恩によるのだ。
今も世界を維持すべく、主は不眠不休で励まれておられるとの由。
斯様に気高き主をお支えすべく、光闇の間より生まれ出でたのが、シトリー様である。
真実、信用を司り、精励されるそのお姿は、我ら商人が深く尊ぶべきものであろう。
―――――
長い。んで鼻につく言い回しやな。以上。
……え、中身? 黙秘で。I'm B*ddist……
「これが経産婦だと……?」
……よろしいか、私は何も聞かなかった。ボーゼ? 知らない子ですね。
「……取り消しますサーセンした」
「「ほな端から言うな~」」
えすとと2人で言うとく。俺が失言王やとしたら、ボーゼは失言大臣。
配信とかせえへん俺と違て、彼のは信用にかかわる。よくない。
……いやいや、街の話やったな。
始まりの街と比べて、人少ない、鳥少ない、猫少ない、ポツンとスライムや。
幅50cm、高さ30cmぐらいかな? 水色に輝く、半透明の巨大まんじゅうが1匹。ぽよぽよ跳ねとる。
……あら、後ろからもう1匹。そら失礼。
それぞれ頭の上に“▽スライム(♂) Lv.18”、“スライム(♀) Lv.17”て出とる。
……ん !?
「お2人さんお2人さん、スライムに性別あるんですけど……」
「「せやな」」
「図鑑には『性別はない』て書いとったよな。ど~いうこと?」
そもそもファンタジーやと、“スライムに性別はない”て設定が普通らしい。
何これ。どないしたら見分けつく、て言うん……?
「それが分からんねん。街の人に聞いてまわっても“スライムに性別はないでしょ、何言ってんの?”て言われるだけやし」
「そーそー。てかそもそも、“レベルとか称号って何? 意味分からん……”て言われるよなー」
「あ~、せやろな~……」
俺ら異人と違て、こっちの住民や魔物は“ステータス見れん”のが普通らしい。
曰く、
「〈鑑定〉はレアスキル。異人は神々に感謝すべき」
やて。
で、運良く〈鑑定〉を手に入れても、“○○、Lv.1”みたいな数値化はされんねんて。
やからたとえば、「俺はLv.20だぞ、もっと褒めろ!」とか言うて組合で暴れたら、“頭おかしい人”て噂が住民に広まって、あちこち出禁にされるんやて。
あ痛た……
「最近あった実話や、受け取れ」
「そんな汚い物、要らんわい……」
で~、例のスライム2匹は……
「……きゅえ?」
「きゅえ~」
「「……きゅえ~~い !! 」」
……はい次。
烏とか雀とか鳩とか、色々鳥がおる。
その中に1羽、地べたを早歩きしとるやつがおる。
たぶん鶺鴒てやつ。顔とか腹が白うて、背中側が黒い鳥や。
基本は砂利っぽい河原におるけど、意外と街中でも見かける。そんな鳥。
ところが、目の前のセキレイ(?)は白黒が逆。腹側が黒で、背中は白。そういう加工したみたいに、きれいに逆。
あ、でも目は黒いまんまやな~。
「お2人さんお2人さ~ん、あのセキレイ何?」
「は? セキレイて何ー ?? 美味いん ??? 」
「あそこで這いずりまわっとぉ鳥やけど……食う?」
「うーん……パス。不味そう」
「「んなホンマのこと言うたらアカン……」」
えすとはともかく、ボーゼは何か知ってそうやな?
「ボーゼ相談員は、どうお考えでっか~」
「「古いネタやのー?」」
「何で分かんねんお前ら……」
閑話休題。ボーゼ相談員の答えは……?
「はいはい、“ハラグロセキレイ”か。最近掲示板で見たわ」
「……お前それ、ギャグで言うとる?」
「いや。マジ」
「……マジか運営ー?」
「イ~ヤまさかの駄洒落オチ !! 」
……はい、解散解散。ツッコむん面倒くさいし、アインツ戻ろか~。
◇
ほな、おさらい。女神像に転移させてもらうには?
像にお供え物して、行き先を選んで、手ぇ合わせる。 ……でしたね。
3人揃て、今度は“ブラウンウルフの皮”1個ずつ。なむなむ……
《「アインツ・中央広場」への転移ができます。転移しますか?》
はい、お願いしま~す。
◇
《「アインツ・中央広場」に転移しました》
はい、戻りました~。見慣れた噴水や。なむなむ……
ほなログアウt……
「お、そろそろスライムがアインツ来るらしいで」
「ホンマかー」
「え~と……たしか西やっけ?」
「そうそう。行くコ?」
そらお前、ここまで来て「行かん」とか無しやろ~。
「行こ行こ~」
「俺も行くわー」
「よしよし、ほな早速……」
向かうは街の西……やない。検問待っとる間に時間切れや。やからアインツで一番高い建物に行く。
その名は「アインツ大聖堂・鐘楼」……目の前の教会や。
「あの展望室まで、階段ぐるぐる5分間や。行けるな?」
「「来いやワレェ…… !! 」」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は1/20(月)頃の予定です。そろそろ終わりたい、作中2日目……
今年もこの『関西人とツッコむVRMMO ~ここでは……』いや長いな。
略して『かんぶい』、よろしくお願いします。ぬるぬる見守っていただければ幸いです。
……スライムだけに。
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/28)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.7
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:420マニ
SP:5
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.4〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.2〉
〈生活魔法 Lv.2〉〈従魔法 Lv.2〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.4〉〈筋力強化 Lv.3〉〈敏捷強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:2)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
従者:1名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.8
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―