019. 東の平原と、魔物と、お邪魔虫
ジンジュです。アインツ市から東へ。
猫獣人さん、狼獣人、森人、小鬼の4人と、兎3羽、小烏1羽。合わせて8名で進んでます。
で、いつの間にか次の街「イース市」に向ことる。
森の獣道を進んだら、石畳の街道に合流して、森を出た。
……ほなな、街へ続く平原やったわ。
視界が開けたから、思わず周り見た。牛、豚、鶏、牛・牛・牛、豚、鶏・鶏……
「ここ、牧場かなんかか~……?」
ん~いや、それっぽい首輪とかタグとかなさそうやしな~……
「飼い主おってなんかな~?」
「おってやないらしいわー」
「そうそう、“逃げて野生化した元家畜”なんだとよ」
はは~ん、そんな話もあるんか~。
で、牛・豚・鶏か。一番デカい牛が一番危なそう……て思たやろ?
「ここ、一番気ぃつけなアカンのは……やっぱ鶏?」
「せやなー」
「あと“他の異人”な」
せやったわ、このゲーム……
この辺の住民は、軽率に魔物と戦う、てことはせえへん。逝んだら終わりやからな。
なるべく戦わんで済むように、もし戦うても生き残れるように、念入りに準備してから街出るんやて。
当然、人のほうから戦いを仕掛けることもほぼない。んなアホやらかすんは、基本俺ら異人や。
……「ちょっとだけならあるじゃん!」?
初っ端から、例外をお手本にするバカがあるか !! て話やけど?
まあとにかく、“ここでは異人がお邪魔虫”ってわけや。
「おっ、黒毛の牛! 今夜はご馳走だ、やるぞ !! 」
「おっけー、【光の破魔矢】!」
そうそう、あんな感じ……で……?
「ン゛モ゛ー !! 」
「【鑑定】、っしゃあ、来た來たキタ !! 【ガード】……ふぐえッ !!? 」
「ソンくん !!? 」
前におる男女2人組に向こて、黒毛の牛が突っ込む。
角あるから雄やな。
牛は盾持ちの男をあっさりはね飛ばすと、聖職者の女のほうを見た。
「……モ゛ー?」
「い、嫌っ! 来ないで !! 来なヒゲェッ」
へたりこんで命乞いしても、もう遅い。彼女もはね飛ばされた。
2人は順に、白く光るサイコロに変換されて消えて……いや、最後の2粒が俺らの頭を飛び越えて、獣の森へと向かう。
……アインツ市からやり直しか~。合掌。
あ、そうそう。牛は基本、おとなしい生き物や。理由は色々あるけど、その1つは“強いから”やで?
根性あって力持ちなんやわ。
……んな能書きは置いといて。牛が今度はこっち見とる。
んで、ボーゼが朱塗りの大盾を構えながら、俺に言う。
「下がっとけ、【鑑定】・【テイム】頼むわ」
「りょ~か~い」
俺よりは強そうな人らが、あっさりやられた。まして俺には止めれんやろ。〈下剋上〉スキルも万能やないし。
ほんなら、後ろから援護・妨害に徹するべし……ボーゼはいつでも合理的やな。
「……やだイケメン♥️」
「オ゛エ゛ーッ」
後ろから、えすとの裏声と、はったさんのえずき声がした……呑気やな?
「「しばいたろかワレぇ ?? 」」
「「すみませんでした」」
「カァ~……」
「……モ゛ッ!」
俺らの声に反応したか、牛がこっちに走ってきた。
《「ブラックブル(♂)」1頭と交戦中です》
「【鑑定】、【テイム】! ……とがのもお願い」
「ふんす、【鑑定】!」
「ありがと~」
《「ブラックブル(♂)」1頭の【テイム】に失敗しました》
―――――
ブラックブル(♂) Lv.16[交戦中]
(分類)魔物/動物型
野生化した肉牛、もしくはその子孫。草食。大人しい個体が多い。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。特に蹴りと、体格などを活かした突進に要注意。
HP:95% MP:―
―――――
結果は~? さんはい、後で読む~ !!
……ネタはさておきコイツ、とがのとか全然気にしてないな? まだボス猪の匂いするはずなんやけど。
怒りでど~でもよぉなっとるんか? それとも“何それ ?? 誰の匂い ??? ”なんか……どっちやろな?
「……【光属性付与】、【光の魔球】!」
「Thanks! 【ガード】!」
アカンアカン、要らんこと考えとった……て気ぃついたとこに、ドーン! て音が響く。
ボーゼの盾に、牛が正面衝突したとこや。
「ン゛モ゛ー !? 」
「や、相変わらず重たいわ」
「余裕か?」
黒牛が悲鳴を上げて、後ずさる。んで、その場に座りこんだ。
さすがのボーゼも、無傷とはいかん。50cmぐらい後ろに押されたし。
けど何回も戦うた相手らしいし、レベルもこっちが上や。そら余裕あるわな。
「食らえー、【光の破魔槍】!」
「【風の魔球】! クロウ、【光の破魔矢】を !! 」
「カァ、【光の破魔矢】!」
んで、黒牛に魔法が襲いかかる。
「ン゛モ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!? 」
気の毒なぐらいの集中放火を、耐え抜いた黒牛。しぶといな~。
この調子で落ち着いてもろて、て所やけど……
「モ゛ーッ!」
まあ無理やんな~、また突っ込んで来よるわ。
放る用の石出しといて……
「あっちに逸らすから、尻狙え孫市」
「「「了解」」……誰や孫市~?」
「……来たな、フンッ !! 」
「ン゛モ゛ッ゛!? 」
ボーゼが黒牛を、左斜め後ろに受け流す。街道の石畳から、草原に出た牛の尻に……
「だあッ!」
「ン゛モ゛ー !! 」
石ぶつけて、さらに追いたてる。その先には、こちらを窺う雄鶏が1羽。
「¿Qué? ……ケーッ ! コケッ !! 」
「モーッ !? モッ、モッ……」
案の定、鶏は牛に飛び掛かった。
真っ赤な鶏冠を振り回し、蹴り入れたり嘴でつついたりしながら、牛の突進や踏みつけをかわしていく。
小回り利いてすばしっこいから、意外と強い。牛・豚より危ない理由、よぉ~分かるやろ?
とはいえ、しぶとい黒牛くんに止め刺せてはない。
ほな漁夫の利、頂きましょか~。
「まだやッ、まだ、Stay, stay, stay, stay……Go! 今や、Go !! 」
「「【鑑定】!! 」」
「【鑑定】!」
「【鑑定】、【テイム】!」
「【鑑定】!」
ボーゼの合図で、俺らは一斉に駆け出した。各自、走りながら挑発。
速いのには速いのを。はったさん、クロウくん、ボーゼ、レティシアちゃんは雄鶏に飛び掛かる。
俺らが狙うは牛の首、ただ1~つ !!
《「コッケ(♂)」1羽の【テイム】に失敗しました》
それはそれとして、貰える情報は貰とこ。あとで読む。
―――――
コッケ(♂) Lv.19[交戦中]
(分類)魔物/動物型
野生化した鶏、もしくはその子孫。オスは勇敢で、体の大きな相手にも臆せず挑む。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。特に蹴りと、嘴を活かした突進に要注意。
HP:100% MP:100%
―――――
「ふんす!」
「ぷう……!」
「モ゛ッ !? 」
「【光の魔球】!」
「ン゛モ゛ーッ !! 」
先行するとがの・ダイスが黒牛の尻に噛みついて、後ろのえすとが魔法を放る。
顔面に光球を食らって、牛の足が止まった。
「【叩きつけ】、【火の魔球】! ……往生せぇやぁ~ッ !! 」
「モ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ゛!! 」
牛の左側に回り込んで、頭上の大盾を振り下ろす。赤い光球をつけた角っこが、牛の首根っこに当たる。
“CRITICAL!”、頂きました。
《「ブラックブル(♂)」1頭を討伐しました。以下の条件が……》
《〈鈍器〉〈敏捷強化〉両スキルのレベルが上がりました》
《称号〈邪道〉〈処刑人〉を獲得しました》
《従者「とがの」の〈筋力強化〉がLv.2になりました》
変な称号出た。何それ?
……まあ、その前にまず、手ぇ合わせて。なむなむ……
「こっちも終わったでー! あとどないしよー?」
えすとがはったさんらに呼びかけた。鶏もう終わったんか、早~。
◇
4人で相談中。俺は牛の【自動解体】して、出た物全部貰えることになった。そこで、はったさんが聞いてくる。
「ジンジュ、お前鶏も持ってくか?」
「や~、やめときます。挑発しかしてないんで……」
「そうか。えすとは?」
「俺も遠慮します。聖職者が肉ばっか持ってんのはちょっと……」
「おぉ、そうだったな。じゃボーゼ、俺らで分けるか」
「ほなそれで」
……てわけで、結果発表~!
《以下のアイテムを入手しました。
・ブラックブルの肉(中)×2
・ブラックブルの皮(中)
・ブラックブルの頭部(中)
・ブラックブルの魔石(微小)》
「ま~た生首ぃ~……」
「お、おう……」
えすとと2人でドン引き。マジか運営。
……収納に入れて、持ってくしかなさそうやな~。
罪もないのに晒し首……にはできんし、やからってすぐ埋めたる所もない。
……え? 「人殺しとるやん!」? あれは返り討ち。
人食い牛とか聞いたことないし……雑に仕掛けたほうが悪いやろ ???
「でー、安定の肉+1」
「ありがたいですね~、はぁ~い」
「情緒不安定か」
ネタはさておき、こっちはそんなもんかな。
お、あっちも終わったみたい。こっち来たはったさんが一言。
「そろそろ出るか?」
「「「はーい」」」
ほな、街行きましょ~。
◇
イースの街に向かって、5分ほど歩いとる。この辺おもろいな~。
“作画が違う”て言うん? 周りと絵面が違う牛・豚・鶏がおるんやわ……
挙げだしたらキリないし、鶏から2種類をご紹介。普通の鶏「コッケ」に混じって、こんなんが……
片方は、妙に堂々としとる。周りより陰影も、体の色も濃ゆい。
水墨画か米国のヒーロー漫画に出てきそうな風格がある。
その名は、“コケイ”。
……鶏に「渋い」て言うたん、人生初やと思う。
で、 もう片方は……
「コケコケコケコ、コケ―ッ !! コケコケコケコケ……」
ちょっと向こうで、元気に駆け回っとる。こっちは逆に、着ぐるみみたいな明るい絵面。
でも可愛くはない。何でアメコミ風やねん……
ほんでうるさい。とにかくうるさい。その名も“コケコケ☆コッケ”。
……名前までうるさい。何やその、けったいな☆は?
名前の意味? 察してください……いや俺も知らんけど。
……とか言うとったら、いつの間にか、豚が1頭ついて来とる。
「……ふんす?」
「プゴプゴ! プゴ !! 」
とがの、また後ろ足で立っとる……
対する豚さん、元気よく反論しとる。俺らを怖がる気配もない。
なんか人馴れしとぉ子やな……あ、もしかして。
「【鑑定】」
「プゴ~?」
やっぱ大丈夫やな。何でやろ……誰か餌付けでもしとる?
―――――
ホワイトボア(♂) Lv.18
(分類)魔物/動物型
野生化した豚、もしくはその子孫。雑食。人懐っこい個体が多い。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。特に突進と、鋭い牙を活かした噛みつきに要注意。
HP:100% MP:―
―――――
猪を家畜化したんが豚で、牙はその名残らしい。噛まれたらヤバい。
てなわけで、餌付けはやめとこ。撫でるだけ撫でるだk……
《抵抗に失敗しました》
《抵抗に成功しました》
……えっ?
「退けよザコ !! 」
「ばへぇ !? 」
突然、後ろから飛んできた罵声。と同時に、背中の右側に激痛が走る。
そのまんま吹っ飛んで、草原に放り出された。
「プゴ !? プゴォォォォォ !! 」
「オウェーイ、一丁上がり~!」
「ウェーイ、晩飯はしゃぶしゃぶだな !! 」
「「「経験値、最高! フゥ~ !!! 」」」
何や急に……まさか!
……ハッ、豚くん~ !!
「ヒューヒュ……ボ、ボスぅ !? 」
聞こえてくる、大声のトーンが変わった。なんか慌ただしい。
……ん? 通知 ??
《クラン「とうとう○ベンジャーズ」と交戦中です》
《従者「とがの」が異人「ボス・ザ・グレート」を討伐しました》
《「とがの」が称号〈人間不信〉を獲得しました》
「は゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~ ッ ??? 」
これ、どないせえ……て………… ???
お読みいただき、ありがとうございます。
次回更新は12/30(月)頃の予定です。次の街はまだか……
書きたい話が、どんどん後ろにずれていくよ………スライムちゃ~ん!! (/T0T)/
【追記】
・都合により、更新予定日を変更しました。
年末ナメてました、すみません!! m(_ _)m
(2024/12/28)
・一部加筆/修正しました(2025/06/30)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.7
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:385マニ
SP:5
HP:89%
MP:55%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.4〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.2〉
〈生活魔法 Lv.2〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:5)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.3〉〈筋力強化 Lv.3〉
〈敏捷強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
(控え:2)
〈邪道〉
現在は無効。相手への急所・弱点攻撃の与ダメージが微増する。
〈処刑人〉
現在は無効。急所攻撃の命中率が微増する。
従者:1名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.7
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:93% MP:―