017. 俺らと、偉大な森のヌシ
掲示板回はまた今度(またそれか
その前にしておきたい話です。よろしくお願いします……!
◆
“アインツ東郊・獣の森”の中。安全地帯からさらに東へ、50分ぐらい歩いた所。
白っぽい光の壁をすり抜けると、木々と光に囲まれた、四角い荒れ地に出た。
……と思たら、あぁ~っ……体が勝手に、歩いていくよ ??
「……あっ止まった……びっくりした~!」
「2回目やけど焦ったわー……」
えすとと喋っとったら、ドスドスドス……って重低音とともに、地面が揺れだした。揺れも音も、段々大きなってくる。
えらいデカいの来ょんな~……
「ぴすぴす!」
「ふす !? ふす ?? 」
「……ぷう ??? 」
虎柄の黒兎、橙色の小兎、牛柄の小兎……3羽の兎らも落ち着かんみたいやな。
……とか思とったら、音が止んだ。
で、向かいの壁にヌッ……て、黒い影が写る。影が光をすり抜けて来て――
《アインツ東郊・“獣の森”の主「レッサー・ファイティングボア(♂)」と交戦中です》
「えぇ~……」
控え目に言うとく。二足歩行のボス猪、高さ2m超え。
器用に右の前足を曲げて、「かかって来い!」のポーズ。
……着ぐるみか? おちょくっとんけお前ェ ???
◇
安全地帯から、もう四~五十分ぐらい歩いたかな?
「へっへっへ、集めた集めた~!」
麻袋を1つ、収納袋に押し込みながら言うた。中身は拳大の半分ぐらいの石、20個。
ゾンビ猪の後、ブラウンウルフ1頭と戦って、ここまで来た。4人と4羽で叩きのめしてもたから、ちょっと気の毒……
その間に、結構ゴロゴロ転がっとったんよな~、石。
……まあ、形が悪うて放りにくそうなんしか集めてないけど。
妙に多かったから、「ザいけ」さん被害者の遺物かも? て思て。
「ブラジルの人?」
「……へ?」
ボーゼがまた、訳分からんこと言いだした。
「いやほら、ブラジルのネットスラングで“HUEHUEHUE”て笑い声あるやん?」
「「お前は何を言っているんだ……?」」
「知るかそんなも~ん !? 」
ボーゼの言い訳に、まずえすととはったさんがツッコんで、俺も一言。
何やそれ? どこで何しようとしたら出会えるん、そんな言葉……?
んな話は置いといて。森の中をもうちょい進んだら、なんか半透明に光る壁がある。
「ん~……何やこれ~?」
そこに右手を近づけた。
指先が壁に触れた瞬間、いつもの通知音が鳴る。ぴろーん! ていう、能天気そうな音や。
《アインツ東郊「獣の森」のボスエリアです。ボスと戦いますか?
▶️戦う
やめておく
※ボスに勝てば、この先へ進めます》
「ボス戦やて、どないしよ~?」
「保留しとけ、回復が先や」
「りょ~か~い」
「ほなー、【光の癒し】」
「「「あざ~っす」」」
で、えすと特製「中級(?)MP回復薬」100mlを一気飲み……めちゃ酸っぱ! 安定の梅干し味……
……はい、ほなやろか~。
「カァ !? 」
「……あっゴメン、俺ら入れねえわ!」
「「「マジっすか……」」」
はったさんと小烏が、光の壁にぶつかった。
ボスへの挑戦権、“3勝するまで”て回数制限があるんやて。それ使いきったんすね……
「あっちで待ってるぜ。頑張れよ !! 」
「カァ !! 」
「「「は~い」」」
◇
白っぽい光の壁をすり抜けると、木々と光に囲まれた、四角い荒れ地に出た。
……と思たら、あぁ~っ……体が勝手に、歩いていくよ !? ゲームか !!
……ゲームやったわ。
「……あっ止まった、びっくりした~!」
「2回目やけど焦ったわー……」
えすとと喋っとったら、ドスドスドス……って重低音とともに、地面が揺れだした。揺れも音も、段々大きなってくる。
えらいデカいの来ょんな~……
「ぴすぴす!」
「ふす !? ふす ?? 」
「……ぷう ??? 」
3羽の兎も落ち着かんみたいやな。
……とか思とったら、音が止む。この間、約10秒。
で、向かいの壁にヌッ……て、黒い影が写る。影が光をすり抜けて来て――
《アインツ東郊・獣の森のボス「レッサーファイティングボア(♂)」と交戦中です》
「ブゴォォォォォ !! 」
「えぇ~……」
現れた二足歩行の猪、高さ2m超え。泥と獣臭さを合わせた匂いがする。
割と不快。
で、ボス猪は雄叫びを上げながら、器用に右の前足を曲げて、「かかって来い!」のポーズ。
たしか猪って、体重1t超えてくるねん、デカいやつやと。それをあの、細い後ろ足2本で……頑丈やな!
しかも空手の“型”っぽい動きしとる。な~な~、俺にその身体能力分けて~ ???
「……着ぐるみか? おちょくっとんけワレェ ??? 」
「「口悪ぅ……」」
声に出とった……
あと、【鑑定】結果が出た。【鑑定】してないけど。
……知ら~ん……何それ~……怖~……
―――――
レッサー・ファイティングボア(♂) Lv.18[交戦中]
(分類)魔物/動物型
アインツ東郊“獣の森”の主。異常成長した猪。
戦えないなら、遠ざけるべき相手である。体格と重量を活かした格闘に優れる。
HP:100% MP:100%
―――――
とりあえず、まずは大盾構えて、向こうの攻撃を受け止め……れるわけない!
「【着火】、【受け流……っぎゃ !? 」
ドゴゴシャアッ !! みたいなエグい音立てながら、ボス猪は右へ。
さすがやな、受け流しきれん。
それとありがとう、〈下剋上〉。おかげで踏ん張れる。
でもそれはそれ、これはこれ。
「喧しいわ~! 加減せえボケ~ !! 」
「「理不尽な物言い……」」
何か言うたか? まあ後でな。
猪はずっ転けて、兎3羽に殴る・蹴る・噛むなどの暴行を受けとる。
「足や~! 後ろ足を狙えッ !! 」
「ぴすぴす!」
「……ふす」
あれ、とがのが飛び退いて、毛繕い……?
……あ、匂い付けとんか! いや何で ??
「……ぴすぴす !? 」
「ブルルルルル、フンッ !! 」
残る2羽を振り払って、ボス猪が今立ち上がる。戻ってくる……いや走ってきたな~。
てなわけで、出ました麻袋。足元狙て、石放ったらぁ~!
「でや~ッ !! 」
「ブゴォォォォォ !? 」
避けれんと石に当たったボス猪が、前につんのめる。その鼻先めがけて、また石を放る。
「フンッ! 【着火】」
焼け石を食らえ……!
あの動物図鑑によると、猪の弱点は鼻と足。これに、獣としての急所:首とか胸元(心臓)なんかが加わるとか。
「ブゴォォォォォ !! 」
「ぴすぴす!」
「ふす!」
ボス猪が、まさにのたうち回っとる。転けた鼻先に焼け石を食ろたら、まあそうなるわな……
そこにまた、3羽が飛びかかって……今度は橙色の小兎が飛び退いた。匂い付けや。
「ふす! ふす !! 」
「ぴすぴす……」
遅れて、2羽も飛び退く。ってことは、大盾構えて……
「ブオォォォォォ!」
「もう1回、【着火】、【受け流し】……っぎ!」
ゴゲシャア! みたいなエラい音を立てながら、ボス猪は左へ。
……さっきより近いからかな? ギリ受け流せる重さやった。
あっ、木に当たって……木ごと向こうに倒れた。光の壁、通れるまんまなんや……
「ッシャア! どつき回せ~ !! 【ガード】、【叩きつけ】……っごぉッ!」
「ブゴォッ !? 」
倒れたボス猪を追っかけて、その上に、盾ごと倒れこむ。
でもあっさり押し退けられた。向こうのHPはあと3割強……強い。
……ってとこに、3羽が来た。
「ぴすぴす!」
「ふす! ふんす!」
「ブォォォ……!」
ボス猪の後ろ足に、またまた殴る蹴る噛むの暴力が加わる。振り払おうとする後ろ足の動きは、もう弱々しい。
……ん? 口開けた、ほな石詰めたろ。
「ボガ !? バゴゴガ……」
「【火の魔球】、【叩きつけ】、だあぁ~ッ !! 」
大盾の底に魔法つけて、さっきの石を殴る。“CRITICAL!”、いただきました。
「うわー……えげつなー……」
「あぁ……必殺の【咆哮】が……」
……何か言うた?
《……の主「レッサー・ファイティングボア(♂)」を討伐しました。以下の条件が……》
《“獣の森”以東との行き来が可能になりました》
《討伐報酬として、SP:3を獲得しました》
《Lv.7になりました》
《〈防御〉〈受け流し〉〈下剋上〉〈筋力強化〉以上4スキルのレベルが上がりました》
《従者「とがの」がLv.7になりました》
《「とがの」の〈噛みつき〉〈蹴り〉〈下剋上〉以上3スキルのレベルが上がりました》
《「とがの」が〈蹴り〉の技【回し蹴り】を取得しました》
通知の山は置いといて……まずは気をつけ、礼……!
◇
「お疲れー、俺ら出番なかったな」
「……あれ? 祈らんの?」
「せやな。彼にはまだ役目があるっぽい」
「「……はて?」」
「あれ見てみ」
今は亡き、ボス猪のほうを指さした。すぐそばで、3羽が毛繕いしとる。ここで仮説が1つ。ボーゼに聞いてみy……
「げぇ臭っっさ !? 【洗浄】したらな……」
「待て落ち着け~! あれも関係あるから !! 」
えすとの腕引っ張って止める。危な……
ほな2人に聞こか~。
「“ボス猪の毛皮を身につけたら、魔物除けになる”とかって話ある~?」
「あー、あるある」
「やっぱり~?」
「せやな、掲示板で見た……あ、同しことしとんか?」
「そうそう、あの子ら賢いよな~」
「あぁ……まあな」
「なるほどなー……」
あれぇ? 反応悪いな……
「……魔物除け、なんか裏でもあるん?」
「アレここのボスやろ? ほなボスの座を狙う“ライバル”がおるよな」
「やろな~……あ、強いのがケンカ売ってくる、てか?」
「せやな」
一旦そこで言葉を切って、ボーゼが面倒くさそうに吐き捨てる。
「しかも猪だけやない。熊とか狼とかも来るで」
「うわマジか~、邪魔くさ……」
「まあその代わり、数は減るし、鈴とかでさらに追っ払えるからな。正解っちゃ正解やねん」
「そーそー、ただ”ボス倒して疲れとるとこ”狙たみたいに、群れで来やがるからな。特に狼」
「ホンマか~、えげつな~……」
つくづく思う。難儀なゲームやな~……
◇
あとはいっつも通り、【光の癒し】かけてもろて、解体して……
「どわ~ッ血 !? 」
「「またこれか……」」
《以下のアイテムを入手しました。
○レッサー・ファイティングボアの肉(中)×2
○レッサー・ファイティングボアの首(中)
○レッサー・ファイティングボアの皮(中)
○レッサー・ファイティングボアの魔石(微小)》
……はい? 生首ぃ~ ???
「「レアアイテムや…… !?」」
「えぇ~……ホンマけ……?」
誰ひとり、1mmも喜べん。どないしよ……?
「……あ、とりあえず【鑑定】」
「「せやな」」
―――――
レッサー・ファイティングボアの首
(分類)食材/素材
異常成長した、猪の生首。
―――――
説明そんだけ !? 怖いよ~、助けて !!
「これ、埋めなアカンやつ?」
「いや~……多分その前に、アレせなあかんやつ……」
“道”て漢字の由来、知っとぉ?
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は12/1(日)頃の予定です。
作中と真逆の季節になってきましたね。
どうしよう……?
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/30)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.7
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:385マニ
SP:8
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.3〉〈防御 Lv.3〉〈受け流し Lv.4〉〈火魔法 Lv.2〉
〈生活魔法 Lv.2〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:4)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.3〉〈体力強化 Lv.3〉〈筋力強化 Lv.3〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
従者:1名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.7
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―