001. 初期設定と、特徴的な緑色
いきなりですが、長めです(当社比)
◇
次の日、正午。“ファンフリ”2陣開放――から、30分ぐらい待ってログインした。
……えらい時間要ったな。まだ混んどんか~。
ぽつぽつ白い雲が浮かぶ青空と、その下に広がる草原。
風が気持ちええ、これが最先端……コラそこ、「見飽きた光景だ」とか言うな。
その草原の中に、ポツンと建つ一軒家。その玄関前。お邪魔してええんやろか……誰か教えて~?
……お、メモ帳あるやん? 何か書こ~……“Hello, world!”、っと。
『“FANTASIA OF FREEDOM:Online”の世界へようこそ!』
わお……字幕と音声ガイドなんすね。
『初期キャラクター設定を始めます。建物の中へどうぞ、お入りください』
了解です。
中性的で威厳のある女声。けどそんなに歳いった感じやなさそう。誰やろな……?
まあええか、早よ入ろ。
「お邪魔しまんにゃわ……」
ツッコミ不在のボケかましつつ、中へ。
◇
言われた通りに一軒家の中を進んで、居間らしい部屋に来た。高さ1mちょいぐらいの鏡の前に立つ。
で、今更やけど服を見た。「……っぽいな~、知らんけど」て感じのシャツと長ズボンや。
……とか思とったら、目の前に半透明のタッチパネルが出てきた。ぬるっと出てきた。急にハイテクやな! ……いや近未来?
まあ、これ使て設定しなさい、てことらしい。ではでは……
まずは分身をいじる。身長・体重なんかをちょっとずつ変えれるんやて。さすがに現状維持はヤバいよな~。
……やからってヘタにいじると、バランス悪い合成獣になります。いや気っ色悪う~……
しゃ~ない、元に戻して。
【美形補正】、ドン! ……アカン、気味悪い。“不気味の谷” 突いてくるCG感よ。やめやめ……。
ほなもう、色味と髪型だけでええか、変えるん。
先に髪型。今は刈り上げ……いっつも通りやな。
……色々選べるんやな~。丸坊主……リアルでやったほうがおもろい。いつになるか知らんけど。
モヒカン、アフロ、ロン毛、リーゼント……合わんし邪魔やな! ツーブロックがええ感じか。
ん? ポニーテールとかも選べるんや……嘘やろ、おかっぱが違和感ない…… !?
試すんやなかった……
はい、ツーブロック決定。
で、髪色は灰色で……眉毛も変わった。
あとは黒目の色。この並びやと赤か紺か……赤で行こ。
……お~、これだけでだいぶ印象ちゃうな~。
◇
分身が出来たら、次は種族選び。終わり次第、装備やスキルを選んでスタート、て流れらしい。
ただし人外を選ぶと、装備選びは端折られる。最悪ボロ布1枚でスタートなんやて。
えげつな~……
で、“ファンフリ”は選べる初期種族が、30以上あるらしい。多すぎる。
ほなこれで! て種族はあるけど……一応ぜんぶ見とこか。後々戦うかもやし、情報は大事やろ?
まずは【人類】。人間のほか、ファンタジー物で定番の亜人が並んどる。ドワーフ、エルフ、巨人、獣人、ドロイド……待て、最後何や?
―――――
・ドロイド(機人族):人類で最も総合力が高い。魔力ではない、未知のエネルギーで動く。
―――――
アンドロイドの“ドロイド”か~、ふ~ん……。
ほな次、【人型の魔物】……人の形しとるけど、人外扱いな皆様。妖精、小鬼、悪魔、ゾンビ、骸骨、幽霊……わりと悪役寄りな顔ぶれやな。
多いね~。これでまだ12種、半分いってないからな。
面倒くさなってきた……
最後は【動物型・その他の魔物】。説明文が怖い。いわく……
―――――
明らかに人じゃないからね。慣れるところから始めたい、マッドなあなたは是非……
――――――
で、顔ぶれは……犬、猫、熊、猪、鼠、馬、猿、鳥、蜥蜴、魚、貝、芋虫、飛蝗、蜘蛛、スライム、泥人形、コンジョーダイコン……またや、何やこれ……?
―――――
・コンジョーダイコン(根菜族):二股に分かれた根っこを脚にして、動き回る魔法のダイコン。おら根性見せんかい、道端の穴からの脱出スタートじゃい! よ~いやさ~ !!
―――――
何この、ツッコミ所の塊……?
とりあえず、多方面から怒られろ。特に海沿いの播州人、怒らせたら怖いからな?
情報源は俺。キレた山本は、マジで怖かった……
……違う違う、そんな話どうでもええわ。
◇
ほな、ステータス画面開けて、種族決めよか~。
―――――
名前未設定 Lv.1
種族:ヒューマン (人間族) 男
属性:―
職業:―
所持金:1,000マニ
SP:―
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:―
※「初期スキル」タブから、あと10個選べます
(控え:―)
(種族:2)
〈投石 Lv.1〉〈人体〉
装備:―
―――――
初期設定、人間なんやな~。
で、金とかスキルとか色々気になるけど……後で。
【人型モンスター】から……選ばれたのは、“ミニゴブリン”でした。略してミニゴブ。
じわ~……て、2割ぐらい背ぇ縮んだな~。
……てことは?
「あ~……声高っ! 懐かし、この感じ……」
いっつもの低音ボソボソやない、子どもっぽい声になっとる。
小学5年生ぐらいに戻ったかのようだ……てとこか。
やのに鏡見たら、悪そうなにやけ顔。 ……これ真顔か! 口元ゆる過ぎる。
鼻は丸い。よかった、まだ愛嬌はある。
おでこの両脇に尖ったこぶ、これが角なんか。
あと、耳も尖って、そのぶん長なった。
……というわけで。特徴的な緑色の体に、短いモヒカン……て格好になりました。
いや、キャラクリおじゃんやんけ~。“人間やめました”感、半端ないし。
種族補正、おそるべし……!
―――――
・ミニゴブリン(鬼族):器用ですばしっこい。ただ魔法はイマイチ。
―――――
ミニゴブで始めたプレーヤーは、“ゴブリン”や“レッサートロール”に進化する。そこからさらに“ボブゴブリン”とか“トロール”とかに進化するらしい。
まとめて“鬼族”て言うんやて。
この鬼族、身体能力が高い上に、成長も早いとか。
特にミニゴブは“体力と器用”の能力値が高いそうで。あと敏捷性も。
「たしかに、あの頃よりもさらに体が軽い気が、する……?」
体感、“人間アバターから3割減”ぐらいの軽さ。
こ、これが……身を切る改革…… !?
……しょうもないネタは置いといて、や。
筋力はこれからに期待。小柄で、まだ未成年扱いらしい。
あと“知力と精神”が低いし、魔法も苦手なんやて。頭悪うて感情的……てとこ?
……さっきから「素数を数えるのだ」より難しいこと、考えれてないな。
で、素数て何やっけ?
1?
……ネタは置いといて。ミニゴブは人気ないねんて。「野蛮でバカでブス、T大へ行け!」てイメージらしいわ。
でも俺、運動神経アカンからな~。結構おもろそう。
ま~、どうせ息抜きやし、ゲーム自体初心者みたいなもんや。
アカンかったらやり直しゃええ、ネタに走ったれ。
あ、せや。ネタで行くんやったら、“健康で文化的なゴブリン”とか狙てみるか。
上手いこと行ったらええな~……
◇
種族選んで、次は……装備選べるんかミニゴブ、人外やのに。
ほな、ありがたく選ばせてもらおか~!
さて、初期設定……つまり運営さんのおすすめは? いざ、装備!
……がしゃーん !!
「ぐへっ……ん~、重い~ !! 」
西洋風の隙間ない鎧、〈初めての全身鎧一式〉。その右手に〈初めての片手剣〉。左手に〈初めての円盾〉。
う~ん、ファンタジー……。
でも重い、重たすぎるわッ !! 転けてもて、起き上がれんやんけ……!
いやまあ、大半の人はこれでええんか。
でもミニゴブにこれは……拷問か虐待やん? せっかくの素早さも逝んでもたし……南無~。
あとこれ、ガチャガチャ重たい音鳴るんやな~。全身すっぽりやから、音が内側でよ~響く。
耳痛い……
ほな防具、変えましょ。せめて足軽になれんかな?
って装備多っ……あ、“絞り込み”使える、“防具”で……
……あった~!
〈初めての全身鎧一式〉を〈初めての足軽装備一式〉に入れ換える。
簡単な黒い鎧。その下に、白地の服。上が着物風、下は長ズボンやから、たぶん作務衣ってやつ。黒い模様が入っとる。
……服の色、変えれる! ほな青地にして、どっかの今○軍っぽく……
頭には黒塗りの陣笠。履き物は草履か……軽いけど痛ない! ほんで雨具は、藁の隠れ蓑 !!
……ええやん、これで行こ~。
で、武器が勝手に〈初めての竹槍〉に変わっとる。いや、「足軽といえば槍」、てイメージは分かるけどさ~……
長い長い、めっちゃ曲がるし重たいし、邪魔~。
あと、そもそも「盾持て」て話やったしな。
変えよ。たしか、〈初めての大盾セット〉……これか。
地面から俺のアゴまである、縦長の盾。それと短剣のセット。 ……お~、やっぱ重い。けど動けるな、ヨシ!
で、短剣は他の小型武器に変えれるらしい。短刀、出刃包丁、くない、手裏剣、撒き菱……妙に忍者っぽい並びやな?
あと、包丁で戦おうとすな! 料理せぇ……
まあ、それはおいとこ。大盾セットの〈初めての短剣〉を〈初めての短刀〉に変えといて……ん~? 予備でもう1個、武器選べるんか~。
やったら……片手で使える鈍器が欲しいな~。剣筋とか、ややこしいこと考えんでええし。
あと、昨日貰たメモから一言。
―――――
鈍器は正義。あと、初心者に刀剣は無理ゲー。
理由? バットやラケット振るみたいに、刃物振り回したことある ??
―――――
リアルで刃物、ねぇ。そういう伝統芸能か、危ない人ですね~、はぁ~い……
てなわけで~……これにしよ、〈初めての片手用棍棒〉!
で、大盾セットも棍棒も、収納にしまう。
武器出しっぱで街行く、てどうよ……? てろりすと ???
◇
装備の次は、いよいよスキル選び。緊張の一瞬……
なんせ“ファンフリ”、ステータス値が公開されてないから。体力に20、筋力に10……みたいな割り振りも出来ん。
……へ~、そんなんあるんや、他所やと。なんか面倒くさそうやね……
俺こういうゲーム初めてやし。
他所はどうでもええか。つまりこのゲーム、スキル選びがすべてを左右する! ……ねんて。
ほな、初期スキルを10個まで選b……もう何か入っとんな。どれどれ……
―――――
スキル:3
〈刀剣 Lv.1〉〈鈍器 Lv.1〉〈防御 Lv.1〉
※「初期スキル」タブから、あと7個選べます
(控え:―)
(種族:2)
〈投石 Lv.1〉〈幼鬼〉
―――――
はいはい、種族や装備に合わせて、スキルが変わるんか。便利~。
……それで、か~。なんか読み込みに変な間あるな~……て思たわ。
短刀で〈刀剣〉、棍棒と大盾で〈鈍器〉、大盾と足軽装備で〈防御〉やな。分かりやすい。
盾も振り回したら、立派な鈍器やろ? 今の俺には無理やけど……。
で、要らんスキルは外せる。ほな……〈刀剣〉はええか、多分使わん。
あとは置いとこ~。
種族由来のスキルは別扱いなんや……。
〈投石〉……片手で持てたら、石以外も投げれるんか。遠くの敵にはこれ、やな。
もう1個の〈幼鬼〉、これは何やろ?
……説明見よう!
―――――
〈幼鬼〉
若く未熟な小鬼。
これからの成長に期待。
○種族特性
【土属性】火、水、風とならぶ、4大元素の1つ
・被土属性ダメージ:1/2
・被風系統ダメージ:4倍
・土魔法:強化(小)
【暗視】夜間・洞窟などの暗所でも、物の見分けがつく
【下位鬼族】
・嗅覚:少し鈍い
・不器量:人類からの信頼度が減少
○個体特性
【体質:虚弱気味】他者からの信頼度が減少
・色白:日光で継続ダメージ(極小、日陰では0)
・やせ型:知力・器用の成長率が微増、筋力・敏捷の成長率は微減
【その他】
・聴覚:やや鋭い
―――――
種族特性と個体特性やて。なるほど、そらレベル付かんわな。
で、“不器量”てか……。ざっくりこんな意味。
①ブサイク
②無能
……悪口やんけ !! 余計なお世話じゃ……。
あとは~……げっ、「日光で継続ダメージ」!?
……いや、この説明やと日焼けみたいなもんか。この目と髪色で、“色素薄い”って扱いみたいや。
それと「聴覚:やや鋭い」、こっちは音量設定小さめのまんまやからかな。
ほな、スキル貰おか。まずは体力増えそうなヤツを……〈体力強化〉、これ足しとこ。
それから、友達おすすめのヤツを3つ。
先に〈鑑定〉。山本のおすすめ。
「取れるうちに絶対取っとけ! なスキル代表」
なんやて。ないと不便……なだけやない。
後回しにしたら、開放条件が全部、超絶面倒くさいらしい。
それと〈危機察知〉。これは徳久の一言が効いた。
「お前、放っといたら“ハッ殺気 !? ”やのうて“はぁ? 殺気ぃ ?? ”やし……」
はい、ですね。
で、最後に〈光魔法〉。6種類ある“初期属性魔法”で、回復技が一番強いらしい。
魔法か~……せっかくのゲームやし、使てみたいよな~!
どれどれ……ん~?
―――――
……〈乗馬〉〈火魔法〉〈水魔法〉〈土魔法〉〈召喚魔法〉……
―――――
……やっぱ 火”・水・土の3種類だけやな~。
ないな、〈光魔法〉。種族によって使える魔法が変わる、てとこか?
しゃ~ない、ほな保留やな……。
◇
さあできt……名前要るんか。しかも漢字はアカンの……。
えぇ~邪魔くさ、どないしよ~?
ん~……近場の山とか?
……“ひめやま”とか ??
『確認中……重複が確認されました。お名前を変えてください』
あ~、カブりもアカンのか! てことは、“しろやま”とか“おとこやま”とかもボツやな。もう誰か使とるやろ……。
ほな“なごやま”……は墓地やし。 “てがら”!
『………重複が確認されました』
……これもカブるんか~。
んん~……なら“ジンジュ”は?
『確認中……重複なし。このまま進めてもよろしいですか?』
はい、お願いしま~す。
……行けたな。ほな最終確認や。
―――――
ジンジュ Lv.1
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:―
所持金:1,480マニ
SP:0
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:5
〈鈍器 Lv.1〉〈防御 Lv.1〉〈危機察知 Lv.1〉〈体力強化 Lv.1〉
〈鑑定 Lv.1〉
※「初期スキル」タブから、あと5個選べます
(控え:―)
(種族:2)
〈投石 Lv.1〉〈幼鬼〉
装備:1
・頭~胴~足:〈初めての足軽装備一式〉 ……耐久100%
―――――
なんかカネ増えたな~。装備いじったから?
……まあええか。
『この内容で、初期キャラクター設定を完了します。よろしいですか?』
はい。
『以上で、初期キャラクター設定を終わります。お疲れ様でした~』
はい、ありがとうございました~。
よ~し、これで行けるやr……また何か出た。世界地図? と……
『以下からスタート地点・方法を選んでください。
▶️【通常スタート】いわゆる始まりの街(アインツ・中央広場)から開始
【種族スタート】ミニゴブリン専用のスタート地点(????)から開始
※以上のどちらかをオススメします
【ランダムスタート】ランダムに選ばれた地点(????)から開始
※こちらを選ぶ場合は、自己責任でお願いします』
最後怖いな! 何それ……?
まあ、待ち合わせしとるから“アインツ”1択やけど。たしかドイツ語で「1番」やったか……分かりやすうて、ええな。
で、【種族スタート】ねぇ~……何かあるな? 場所メモっとこ。南の森、東のほう……っと。
『【通常スタート】「アインツ・中央広場」が選ばれました。転移を始めます』
お願いしま~す。
……で、何か映像と音楽が流れだした。
『この世には、実に多くの「不思議」が満ちあふれています。見たことない風景に、初めて聞く言葉や、謎多き生き物たち。そして、知る人ぞ知る秘術……なんてものも』
何かええな、こういうの。“始まった~”て感じで。
『そんな新たな世界で生きていくための、最大の鍵。それはあなたの心、好奇心です。“これは何だろう?” “知りたい” “気になる”……その気持ちを大事にしてください』
部屋の扉が開いて、その向こうが白く光りだした。
……ん? 待て、このBGMは!
『あ、やりすぎて周りの迷惑にならないようにだけ、気をつけてくださいね。それでは、よき第2の人生を!』
「ちょお待った~! そのベース、シュピーゲルの『生存競技』ですよね !? 」
思わず大声出してもた。
で、白い光に全身すっぽり……と思たら、元の部屋に戻っとる。
――いや、 拒 否 れ る ん か い 。
……ヤバい、固まった。どないしよ、これ…… ??
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
この調子で、ゆる~く進めていきたいと思います。よろしくお願いします m(_ _)m
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/08/18)