016. 森と、お化けと、謎の異人(後編)
前回(015)に加筆しました。
まだ見てない! って人は、先に読んできてください。よろしくお願いします m(_ _)m
ジンジュです。また死んだとです。
ジンジュです。しかも、死に戻ったアインツの都心で、族に絡まれたとです。
ジンジュです。ジンジュです。ジンジュです……
「お前のせいで……お前のせいで、俺たちまで死んじまったじゃねえか !! どぉしてくれんだよ !? 」
「そうだそうだ !! 責任取れよ !!! 」
「おうおう誠意見せろよ。土下座じゃ済まねぇからな?」
唾飛ばすなや、汚いのぉ !!
あと声! そんな大声出さんでも聞こえるわ !!
……これを柔らかい言い方で、
「……あ゛? ワレ何どい ?? しばき回すぞ ??? 」
…… あ゛~ ッ 、 や っ て も た ~ !!
うわどないしよ、丸腰でケンカ売ってもたで俺……あれ? 距離取られた ??
「……ガチの関西弁 !? 」
「てか何この殺気 !? ヘボゴブのくせに !!? 」
「……〈大物喰らい〉でも持ってんのか? 面倒くせぇなコイツ……」
めっちゃ警戒されとる……あっえすとや。PTチャットか。
『ご愁傷さまです。 ……また召喚してええ?』
「はい、お願いしま~す」
『りょーかーい。【召喚】、ジンジュ!』
《異人「えすとっきゅー」に【召喚】されました……》
ほな行ってきま~す……
◇
ここは……東の森の安全地帯か~。移動早~……。
で、まず牛柄の小兎が寄ってきた。
「ふす!」
「ただいま~。 ……心配かけてすまん」
友達のほうを見る。えすととはったさんが、仰向けでぐた~っ、てしとる。
それぞれに、橙色の小兎と小柄な烏が寄り添……ダイスくん寝とるわ。
その横で、様子のおかしいボーゼ。1人だけ盛り上がっとる……?
ほんで、構わず草を食う黒い兎。君そんなキャラやっけ……?
「ぴすぴす……」
「フゥーッ危な、逃げて正解やったわ !! 」
「「ん、そうだな……」」
「カァ……」
あの喪服の女、そっちにも行ったんか。めっちゃ早うて強かったもんな……
「お疲れ~っす。 ……あの喪服さん、何者? 向こうで“キル数1位”がどうとか聞こえてんけど……?」
「あれはヤバいでー……今んとこ“ファンフリ最強”て言われとる、PKerや」
「1日平均30人ぐらい殺ってるらしいぜ。ついた渾名が“千人斬り”」
えすととはったさんが答えた。“千人斬り”さんのキル数はまだ500人台らしい。
けど、2位の倍以上やし、そのうち実現しそうやな。怖……
……んでボーゼ、えらい静かやな?
「そうそう、あの人“ザいけ”て名前らしいねんけど。強いだけやのうて頭も相当キレるみたいでな。子どもは襲わん、殺った相手の持ち物も盗らん。さっきは殺った相手がぶち撒けた物で、次の異人を誘き寄せとったみたいやねん。ええ性根の腐り方しとぉよな」
「うわぁ !? 急に早口になるなよ~ !! 」
情報多いねん、整理が追っつかん……
「……んー? 異議あり、ジンジュは子どもでは ?? 」
「誰がガキじゃ !? お子ちゃんは足軽装備選ばんやろ~ ?? 」
「それもあるけど、喋り方か何かじゃねぇの? あの女、木の上から様子見してたみてぇだし」
「同意見やな。あと何か、見破る系のスキルも持ってそう」
過大評価かもしれんけど、とにかく訳分からん人、らしい。
派手な行動に反して、何の主張もせえへん。やのに、一部の生産職プレーヤーさんにご縁があるそうで。
オレーキーさんとかに話振ったら、何か知ってそうな苦笑いされるけど、何も言ってやないねんて。
「……ここの異人、なんか変な人多ない?」
「「それお前が言うん ?? 」」
「ええやんそれぐらい。“てめぇの口で、世界中に拡散しやがれ”とかって話違うんやし。ミイラやミイラ」
「「“故人の乾燥”やのうて“個人の感想”やろ」」
ツッコミありがとう。
んで、やっぱこういう実体験って大事よな~。
ゲーム物の小説、なんぼか読んだけど。ああいうの、“最強(と化す)主人公”まわりの話しかせえへんからさ。
で、今度ははったさんが静かやn……
「これが、本場のボケ・ツッコミ……」
「アンタまでそれ言うんか……」
絞り出された感想に、ボーゼが嫌そうな顔をする。
「やめてください大阪人にコ□される…… !! 」
「そんな大事なの !? 」
ないない。大阪人は寛容やからな。
けど、えすとの一言に、はったさんが引いとる。
……ちょっと補足しとこ。
「たぶん大丈夫っすよ~。せいぜい肛門から手ぇ突っ込まれて、奥歯ガタガタ言わされるぐらいです」
「死んじまうだろ、そんなことされたら !? 」
……うん。言われてみたら、アカン気ぃしかせぇへんな ??
「おっとぉ~、若い人には刺激が強すぎたか……?」
「「「黙れクソガキ」」」
「サーセンした……」
閑話休題。
◇
東の森の安全地帯から、さらに奥を目指す。
……わけやけど、1つ問題が。
来たほう以外にも、5方向に狭い道が伸びとる。周りは草木がボーボボ。獣道てやつやな。
で、なんかこう……点々と落ちとるんやわ。〈初めての両手剣〉っぽい剣とか、茶色い小瓶とか、よぉ分からん装飾品? とか。
「どっち見ても、散らかってんなオイ」
「……例の喪服さん、まだその辺おってやな?」
「縄張り広いんか~……実に興味深い」
「……お前図鑑でも作るんかー?」
アリかも。本人の許可取れたら、やけど。まあ無理やろ……んな話どうでもええねん!
とりあえず、丸腰のまんまはマズい。鎧と大盾を装備して……
「……で、どないするんすか~?」
「じゃあこっちでどうだ? 一番人通りが多そうだぜ」
「今誰もおれへんけどな……」
5方向で一番太い道を指すはったさんに、ボーゼがツッコむ。
「……訂正、骨兎がおったわ」
「要らねぇ……」
たしかに、小っちゃい白いのが跳ねとる。カラ、カラ……て音も、微かに聞こえる。
「で、他に意見ある人?」
「特になし」
「「ありませ~ん」」
「よし、じゃあ行こうぜ!」
◇
安全地帯を出たとたん、骨兎がこっちに来た。
嫌~ね~、先頭俺やねんけど?
《「スケルトン・ミニラビット(♂)」1羽と交戦中です》
「……“彷徨う亡者”ってさ~、避けるとか逃げるとかって発想ないん?」
「【光属性付与】! ……みたいやなー」
「【鑑定】、【叩きつけ】、でぇ~いッ!」
さっきよりも小っちゃい骨兎に、白く光る大盾をぶつける。
痛ったあ! ……まあでも、結果は見えとる。
《「スケルトン・ミニラビット(♂)」1羽を討伐しました》
―――――
スケルトン・ミニラビット(♂) Lv.6[討伐済]
(分類)魔物/動物型
草原や森に現れる、白骨化した小兎。彷徨う亡者の一種。
通常のミニラビットより身軽だが、物理的な衝撃に弱い。
HP:0% MP:9%
―――――
一瞬やったな。なむなむ……
……とか思とったら、ボーゼがえずきだした。
「オ゛エ゛ッ」
「「「大丈夫か?」」」
……うわ臭あ !? 何これ腐敗臭 ?? どっから ???
「……ふす、ふす!」
足元でとがのさんが、一方を見ながら震えとる。視線の先には……茂みを揺らす黒い影。デカいな、猪か……?
あ、出てきた……げぇ !!
《「ゾンビ・ブラウンボア(♀)」1頭、および「ゾンビ・リトルボア」3頭と交戦中です》
《抵抗に成功しました》
《従者「とがの」が抵抗に失敗しました。状態異常【恐怖】が付与されます》
「「「「子連れかよォォォォォ !!?
」」」」
ゲームやろうがゾンビやろうが、子連れの獣は凶暴らしい。ホンマに親子か知らんけど。
俺らそんなに悪いこと……しとるかも。ほなしゃ~ないか~……
で、兎3羽は恐怖で動けんなっとる。俺らで何とかするしかないな。
……とりあえず、助言と承認プリーズ。
「……ゾンビの強みと弱点教えて!」
「馬鹿力でしぶとい、光と火が効く。あとトロい。倒すなら親から」
「りょ~か~い、ありがと~」
えすとに感謝。
……馬鹿力か~、生身の猪でも力強かったのに。まともにぶつかったらヤバそう。
ほな【鑑定】は後やな。何か放る物……おっ。
「……ほなすんません、フンッ! 【着火】!」
「……プggggg、ピャワワワ! Boooom、フンッ !! 」
手ぇ届くとこに落ちとった、持ち主不明の〈初めての短剣〉を放って、火ぃつける。
母猪ゾンビ(推定)の鼻先に当たった。
HPは1割弱しか減ってない。けど体毛に燃え移ったりして、結構効いとるみたい。
ところで鳴き声よ……音潰れすぎやろ。んで高速カッティングぅ? ギタリストの腕自慢か!
そんなに上手いんやったら、たまには一音一音、丁寧に弾いてぇな……
「【三重詠唱】、【光属性付与】、【光の破魔矢】×2!」
「【|光の破魔矢(カァ、カァカァ)】」
「【光の魔球】」
えすと、はったさん、クロウくんが〈光魔法〉をバラまく。子猪にも容赦なし。まあゾンビやし……
で、そっか。“弱点4倍”でめちゃくちゃ効くんやな……。
「フンッ、おら【着火】来い!」
「「「言い方ァ」」」
ボーゼはその辺の紙と石を拾とった。石に紙巻いて、投げて【着火】。
ってどっかの元市長か! また危ないネタを……
「【光の破魔槍】……あっやべ、ヘイト来た」
「フshooooッ」
「「「プgプgプg」」」
ゾンビ猪らが一斉に、えすとの方を向く。こんな時は……みんなで挑発!
「「【鑑定】」」
「【鑑定】、【テイム】……とがのさん、【鑑定】お願い!」
「……【鑑定】……!」
「ありがと~……!」
震えながら、【鑑定】してくれたっぽい。ホンマありがとう……
で、3人も、それぞれの従者に指示出しとる。
《「ゾンビ・ブラウンボア(♀)」1頭の【テイム】に失敗しました》
あ、ご丁寧にどうも。
「プgwア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! 」
お~怖、えらい混乱しとってや。効いとる効いとる。ほな次は……
「【火の魔球】!」
おし、当たった~! さらにえすとの【光の破魔矢】が当たって……“CRITICAL!”
《「ゾンビ・ブラウンボア(♀)」1頭を討伐しました……》
《〈投石〉〈危機察知〉のレベルが上がりました》
子猪のほうも、はったんさんらが倒してった。
なむなむ……
「ゾンビ猪は生ゴミだ。生ゴミの割にはよく燃えたよ……」
「何ちゅうこと言うねん。心にもないくせにさー」
「あっバレた……?」
「バレるわ !! 」
えすとに即ツッコまれた。さらにはったさんが一言。
「お前マメだよな。神官の異人でもそんなに祈んねぇぞ?」
「マジっすか !? 」
いやたしかに、その辺で手ぇ合わせとる人、見たことないけどさ~。
「聖職者は祈るんが仕事ちゃうん? ゲームやからってどうよそれ……」
「知らねえからやらねえんじゃね? 東京とか住んでたら、坊さん知らなくても生きていけるからな」
俺も中学上がるまで知らなかったし、て付け足すはったさん。
「あと“僧兵”も聖職者扱いやし。口悪いん多いでーホンマ」
「そうそう、さすがに俺でもF*ck! とGod d*mmit! はええんか……? て思う」
「Oh……」
酷い話が聞けた所で、さっきの【鑑定】結果を。
―――――
ゾンビ・ブラウンボア(♀) Lv.14[討伐済]
(分類)魔物/動物型
森を徘徊する、猪の腐乱死体。彷徨う亡者の一種。
怪力で、生前よりしぶとい。だが動きは遅い。
HP:0% MP:―
―――――
ゾンビ・リトルボア(♂) Lv.6[討伐済]
(分類)魔物/動物型
森を徘徊する、瓜坊の腐乱死体。彷徨う亡者の一種。
生前より力強くしぶとい。だが動きは遅い。
HP:0% MP:―
―――――
同しアンデッドでも、骨や幽霊と違て、MPないんやな。物理特化なんかな?
ほな【自動解体】のお時間です。結果は……
《〈解体〉がLv.3になりました》
《従者「とがの」の状態異常【恐怖】が解消されました》
《以下のアイテムを入手しました。
・「腐った肉(中)」
・「腐った毛皮(中)」
・「ブラウンボアの魔石(微小)」》
とがのさん治ったか……良かった~!
で、ん~……こらあきまへんな~…………
レベル上がりにくなったな~。ほんでアイテムよ。“腐った○○”て何やねん……?
―――――
腐った肉(中)
(分類)食材?/素材?
長期にわたって熟成され、芳ばしい香りを放つ、何かの肉。原則、食用には向かない。
―――――
毛皮の説明? 見る気失せたわ……
最後まで建前貫けや! てぐらい、嫌味ったらしい説明。何が「長期にわたって熟成され……」や、“腐った肉”て書いといて……
「“原則、食用には向かない”て……誰か食う前提なんか?」
「あーそれ、スライムは案外食うらしいんよな」
「……へぇ~」
“蓼食う虫も好き好き”やっけ? 物好きはいる、悔しいが。
「ほな次行こか」
「「「は~い」」」
あっ、その前に。
「石ゲット~!」
「「元気やな……」」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
祭り終わったし、もう年末ですね~。 ……え、クリスマス? 何それ美味いんすか??
次回更新は11/20(水)頃の予定です。久々に掲示板回かも……?
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/27)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.6
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:385マニ
SP:4
HP:97%
MP:52%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.3〉〈防御 Lv.2〉〈受け流し Lv.3〉〈火魔法 Lv.2〉
〈生活魔法 Lv.2〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.3〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:4)
〈危機察知 Lv.2〉〈下剋上 Lv.2〉〈体力強化 Lv.3〉〈筋力強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.3〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
従者:1名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.6
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:95% MP:―