014. 南の草原と、愚かな人びと(俺含む)
祭りの季節ですね!
なお作中……
アインツに、昼が~来た~。
……てなわけで、ジンジュです。コンニチハ!
リアルで昼飯食って、戻って来ました。で、またまた混みあう中央広場です。もはや見慣れた光景だ……
ま~、昨日よりはだいぶマシやけど。
『【夏の風物詩「スライムの大移動」情報】
スライムの大群がアインツ公国に接近中です』
ほんで、またログアウト中に通知来とる。
知らん……何それ……私、気になります……。
とりあえず、まずは女神像に手ぇ合わせて……なむなむ。
で、次は~……ボーゼ・えすとと合流せな。友達欄友達欄……。
もうログインしとるよな~。え~と、どこや……噴水の反対側 !!
うわ~面倒くさ! ぐるっと回ってかなアカン。しゃ~ないな~……
「待たせたな~」
「おーっす、俺も今来たとこ」
「俺はリアル100日前」
「「早過ぎ~……」」
イケメンえすとっきゅーと、すぐボケるボーゼ。 ……それサービス始まる前やん。
まあ、ネタは置いといて。
「で~、今日はどこ行くん?」
「また南大門から東の森かな。レティら拾て」
「「りょーかーい」」
ほな早速行こか~。
◇
まずはオレーキーさんとこの武具屋へ。復活した大盾を受け取った。あざ~っす!
そこから、また30分ほど小走りして、検問の順番待ち。その間に軽く昼飯。携帯食料・レーズン味、旨……。
あと、とがのさんにスキルを追加。
《従者「とがの」が〈下剋上〉を取得しました。残りSP:2》
んで、検問クリアして、南大門から街を出た。
「「「こんにちは~」」」
「こんにちは、気をつけてね」
ど~でもええけど、門番のおっちゃん全員、前とは別の人やった。 ……たぶん。
「……【闇の破魔矢・3連】……フッ、ちょろいぜ」
「……【跳弾】! ……やったあ! 当たったよリッくん !! 」
「すごいよマーちゃん! 弓道やってた !? 」
「……かきーんッ! 【葬ラン】!! 」
「「「口で言うな……」」」
ほんで今日も、南の平原は大盛況。野生の小兎たちが、ガンガン狩られていく。
そんな平原に出て、左に曲がる前。2人が右向いて、なんか遠くのほうを見ようとしとる。
「……何しとん?」
「スライム来ょるらしいから、つい……な」
「んなすぐ見えんけどさー……つい、な」
「何ですかそれは……?」
思わず質問を重ねてもた。東へ歩きながら喋る。
「なんかこの世界、スライムの一大繁殖地があるみたいさー」
「そうそう、西にある“ラ・ボスケ魔導国・出水の森”てとこやねんけど」
何かで“見た”名前やな~。
……あっ。
「……その国、さっきの『基礎魔法学概説』の表紙にあった?」
「それそれー。森人の国らしいから、いっぺんノリノリで行ってん。ほなエラい顔で睨まれてさー」
「何で? て思たら俺やった。森人と獣人、仲悪いらしい。ファンタジーあるある」
「へぇ~……嫌なあるあるやな~」
「せやなー。人種問題はいつも面倒だ……」
“ファンフリ”さあ、変なとこ生々しいんやめてもろて……いや待て、スライムの話 !!
「……で~、スライムの大発生が何やっけ?」
「あーせやった。その繁殖地がパンクするぐらい、スライムて増えるみたいで。毎年夏になったら、半分ぐらいがそこ出て移動するんやて」
あれぇ? その話どっかで……?
「……もしかして、動物図鑑に書いとった~?」
「「せやな」」
2人とも即頷いた。で、えすとが一言。
「お前でも一発では覚えれんかー…」
「あれパッと覚えれるヤツ、おったら凄いわ~」
「同感やな……」
◇
とか言うとるうちに、あの茶色い小兎に噛まれた辺りに来た。
あれから3日経つらしい。
実感はない。日本時間やと、まだ昨日のことやから。
……とか思とったら、とがのさん達3羽が駆け寄ってきた。今度は無事そうで何より。
「ふすふす」
「ぷぴ!」
口元に緑……コイツいっつも草食うとんな ???
そんなとがのの後ろから、別の小兎が1羽、ぴょこぴょこ寄ってきた。レベル4のオスらしい。全身、冬場の青空みたいな色の毛並み。
……変な色やの、ハ○゛タコぉ !?
対するとがのさんは、左後ろ足を前に上げてから、一気に後ろに振り上げた。
「ふんす!」
「ぷぴぃ !? 」
抱きつこうとした空色の子の鼻先に、その足が直撃した。
痛そう……てだけの話やない。人間で言うたら、目潰し食ろたようなもんや。
彼は脇目も振らず、ぴょこぴょこ走り去った。
「「「えげつな~……」」」
「ふんす!」
足癖悪すぎて、反応に困るわ。バンドのドラマーかよ……いや知らんけど。
◇
特に邪魔が入らんまんま、東の森の端まで来た。ちょっと曇ってきたな~。
ほな大盾出して~。森入ろ……て思とったら、
《抵抗に失敗しました》
《抵抗に成功しました》
《従者「とがの」が抵抗に失敗しました》
《「とがの」が抵抗に成功しました》
また通知。ほんで、“誰?”て思う間もなく、森の中から、白い塊が飛び出してきた。
「……ッ、【受け流し】! …… ?? 」
こっち来たから、咄嗟に盾で受け流した。
着地したそれをよう見たら……何かの骨が、動いとる ???
「……カタカタ」
大きさはレティシアぐらい。お、こっち向いt……顔怖ッ !? 何その、ごっつい前歯……あっ跳ねた。
森から飛んでった、緑色の光の玉を避けた……【風の魔球】やなそれ!
《「スケルトンラビット」1体と交戦中です》
で、森から猫耳の男が1人、走ってくる。
「クロウ、【光の魔球】頼む!」
「カァ!」
「サンキュー! ……よぉボーゼ、サッカーしようぜ !? ボールそいつなァッ !! 」
「はぁ ?? そんなん蹴飛ばいたらケガするわ !! 」
猫耳さんは誰かに指示出して、ボーゼに話しかけた……烏や! 小ぶりな烏が、魔法使とる !!
逃げ惑う骨っ子に、白い光の玉が直撃した。彼? はそのまま、カラカラ……て崩れ落ちた。
《戦闘を終了しました》
手ぇ合わせとこ。なむなむ……
◇
はい、詰問があります。
「何ですか今のは~ ?? 何で骨格標本が動いとんの ??? 」
「そらアレ標本ちゃうからな。“スケルトンラビット”て、れっきとした魔物や」
俺の疑問に、ボーゼが答えた。
スケルトンは“彷徨う亡者”の一種。生き物としては1回お亡くなりになって、本来はバラバラの骨らしい。
やのに不思議な力でまとまって、動いとる魔法生物や。別に接着剤とかで接いどるわけやないねんて。
もちろん、兎以外のスケルトンもおる。人型と狼は3人とも見たらしい。
「……しっかし珍しな、こんな真っ昼間から“彷徨う亡者”て。また変なん湧いとんか?」
「みてぇだな。倒すだけ倒して、そのまま捨ててくヤベーやつが」
「ランダムスタートの露出仮面か?」
「ハハハ、いたなそんなヤツ。初日から配信停止食らってたっけ? そいつかは知らねえけど……まあでも異人だろ、“効率重視”とやらの」
ボーゼと猫耳さんが話しだした。仲ええな~、何つながりやろ?
俺はもちろん、えすとも空気になっとるからな。格ゲーで知り合うた、とか?
……ど~でもええけど。
話の中身? ツッコんだら負けかと。何にも分からん……。
「……で、彼が噂の新入りくん?」
「そうそう。 ……要らんこと言うなよ?」
「そりゃ当然だろ、信用ねえなぁ」
……こっち来てやな。ほな丁寧な標準語で……
「“はった・むさし”だ。よろしく!」
「“ジンジュ”いいます。こちらこそよろしゅうお願いします」
いか~ん、関西弁が漏れた。誠に遺憾。
……ダジャレは置いといて、や。なんか妙に視線を感じるんよな、遠くのほうから。
んで、はったさんがボーゼを指しながら一言。
「話は色々聞いてるぜ、アイツから」
「……どこまで聞きました?」
「某SNSで某作家の裏アカに“ファンです!”ってDMした話までは」
……やったなぁ、そんなこと。その節は本当にすみませんでした!
“若気の至り”て言うん? 怖いわ~……。
当然、お叱りを受けました。
「あなたは本アカウントの存在を、だれに聞きましたか。」
て。何で夏目○石なんだ……
あ、健康面はご心配なく。『こ○ろ』? 訳分からん……。
……いや違う! どこまでバラしとんねん !!
「……よぉボーゼ、マ○棒に竹串刺してええ?」
「やめろ! 色んな意味でやめろぉ !! 」
凶悪なボケに、沈黙が広がる……ことはなかった。
「は? 配信停止 !? 」
「嘘、何で !!? 」
とか何とか、周りから聞こえとる。
やからさぁ、何で勝手に撮っとんかなぁ~……?
「じっちゃんが言ってた単語だ。何で知ってんの、“○ラ棒”……?」
「ネットで見たことあって、なんか忘れられなかったんです。知りとうなかった……」
忘れたいけど忘れられん……てこと、ありますよね~?
閑話休題。
ふと見たら、足元で小兎と、小ぶりな烏が一礼しとった。とがのさんと……え~と?
「お、そうだ。こっちは“クロウ”ってんだ」
「カァ」
「そうなんすか。 ……よろしくね~」
かわいい……さらば“丁寧な標準語”……
“とにかく小っちゃいのはかわいい”、古代から変わらん真理やねんて。
……ん !? □゛キブリ? 今は忘れなさい。
「ふす、ふんす!」
「あ~すまんすまん。 ……この子は“とがの”いいます」
「“とがの”……?」
……ですよね~。
「京都の地名から取りました。『鳥獣戯画』のお寺があるとこです」
「……あぁー、兎と蛙のやつか!」
知っとる人でよかった~。次からは「気分で付けた」て言おかな……?
「ふんす!」
「あ痛ッ !? 」
左の膝裏を蹴られました。
やめとこ……
◇
「ってなわけで、今だけお化け退治業者やってんだけどよ、数が多くてな。お前らもどうだ?」
「……もしかして、幽霊とか出ます?」
「お、出るぜ。興味あっか?」
どうも、質問に質問で返す無礼者です。お互い様、ヨシ!
あと、今にも「げえ……」とか言いそうな友達2人は無視します。
仲間は捨てるものDA……!
「げえ……よりによって趣味悪いの同士が」
「はーおうち帰りたーい」
「……聞こえてんぞ ?? 」
「お前らさ~、“そんなホンマのこと言うたらアカン”て日本語分かる ??? 」
「「認めるな否定しろ」」
ま、ネタはその辺にしといて。森のお化け退治、やります。
ほなPT組もか~、てとこで、問題が1つ。1PTの定員は7名です。ここには4人と4匹、合わせて8名おります。
……はい、枠が足らぬ。こんなときどうすれば……?
「てってれぇ! “レイドPT” !! 」
「……何ですか今のは~ ?? 」
せっかちボーゼ、ネタの効果音も端折りがち……んな話ど~でもええな。
枠足らん? なら増やせ。
……て理屈で、1段上の枠組み「レイド(PT)」の出番です。
基本は“複数PTの同盟”て感じらしい。やから定員は8~25名。
ただ、リーダーが許可したら、ソロの人も入れるらしい。
ちなみに、レイドで足らんかったら、現地の役場に届け出て「ギルド」。
それでも足らんかったら、国の許可取って「ユニオン」なんやて。
……そこまで行ったら、手続きとか面倒くさそう。“冒険者組合”の偉大さよ。
さらに余談。ギルド~ユニオン級の違法な団体は「クラン」て言うそうで。
暗殺クランとか邪教徒クランとか、色々あるらしい。
くわばらくわばら……
《レイドPT「お化けとは何か!? その答えを求め文字数」が結成されました》
……あんま人のこと言えんけど、にしてもボーゼのネーミング・センスは酷い。ネタでも見切れんの早すぎる。ガチやったら引くわ……
友達やからこそ、どついてでも止めなアカン時は、あると思います。
……まあ、今回はそこまでやないし、何より対案がない。やから黙ります。ドーモ、○ホウナノダ!
ところで、何か忘れとるような……?
「……あっせや! さっきの骨兎、【鑑定】さしてもろてええっすか?」
「別にいいけどよ…… ?? 」
「「安定のマイペース」」
お読みいただき、ありがとうございます。
あとブクマ・いいね等も。励みになります m(_ _)m
次回更新は10/20(日)頃の予定です。突撃! お化け退治 !!
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/20)
――【おまけ】――
レイドPT「お化けとは何か? その答えを求め文字数」の現状
【PT「お城と……横顔新○線や~」メンバー】
○リーダー
ボーゼ Lv.22
ウルフ・ビースター(狼獣人/獣人族) 男
HP:100% MP:99%
従者:1名
レティシア Lv.12
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:98% MP:―
○サブ・リーダー
えすとっきゅー Lv.21
エルフ(森人族) 男
HP:99% MP:100%
従者:1名
ダイス Lv.5
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♂
HP:97% MP:―
○その他のメンバー
ジンジュ Lv.5
ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
HP:98% MP:99%
従者:1名
とがの Lv.6
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:98% MP:―
以上6名/定員7
【その他のメンバー】
はった・むさし Lv.22
ヒューマン(人間族) 男
HP:96% MP:92%
従者:1名
クロウ Lv.16
ジャックドー(小烏/下位鳥族) ♂
HP:98% MP:75%
計8名/定員25