011. 報告と、小兎と、武具屋
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◇
ジンジュです。東の森からアインツの街へ、戻りやした~。
冒険者組合、アインツ総支部の前。また3人で、順番待ちの列に並んどる。
「……あ、ミニゴブだ」
「うわ本物じゃん」
「動画で見るより声大きいんだね……」
人混みの中から、こんな会話が聞こえてくる。
知らんよ~怖いよ~、何の話~ ??
「ぴすぴすぴす……!」
「痛たたた……ちょ、やめぇやレティ !! 」
狼獣人の頭に乗っかる、黒っぽい兎。“レティシア”さんです。
……名前、略すんかい。
さっきからずっと、ボーゼの後ろ頭にポコポコ蹴り入れとる。
ご機嫌斜めやな……周りうるさいから?
「……ぷう」
「ちょお、落ち着けってー」
森人に抱えられとる、橙色の小兎。“ダイス”くんです。
落ち着かん様子で、周りをキョロキョロ見回しとる。
「……ふす」
腕の中から呼吸音。温かい毛玉がおる。
白と灰色の牛柄。ミニラビットの“とがの”さんです。
覚えてね、テストには出んけど。
耳寝かせとるけど、それだけ。めっちゃ大人しい。
逆に怖いで~す……異議は認める。
「せやお前ら、今のうちに見るもん見とけよ。その子らのステータスとか」
「りょ~か~い」
ほな早速……
―――――
とがの Lv.5
種族:ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
属性:―
SP:4
HP:100%
MP:―
状態:正常/友好/待機
スキル:1
〈回避 Lv.3〉
※「初期スキル」欄より、あと7つ取得できます
(控え:2)
〈闇魔法 Lv.1〉〈生活魔法 Lv.1〉
(種族:3)
〈噛みつき Lv.2〉〈蹴り Lv.4〉〈小兎〉
称号:1
〈小鬼の従者〉
物理攻撃、および土属性の与ダメージが微増する。
(控え:―)
―――――
……出たな、ツッコミ所。
まず、〈蹴り〉スキルのレベル高ッ! 何そんなに蹴飛ばいたん……?
で、魔法持っとるでこの子。MPないから、使えんみたいやけど。
使えんスキルは取れんはずやから……もしかして、魔法を“生まれ持っとる”て話なんかな?
「へぇ~……なんか末恐ろしい子やな」
「ふす?」
んで、種族スキル〈小兎〉。何すかこれは~?
説明見よう……
―――――
〈小兎〉
草原に現れる、小さな兎。大人だがこのサイズ。
器用ですばしっこい。魔法は使えない。
○種族特性
【夏毛/冬毛】高い保温性を誇る
・暑さや濡れにやや弱い
【その他】
・視覚:視野は広いがド近眼
・聴覚:鋭い
・嗅覚:やや鋭い
○個体特性
・特になし
―――――
兎て目ぇ悪いんや……そら知らなんだ。気ぃつけとこ。
「お、どないや?」
レティシアさんを抱えたボーゼが、声かけてきた。
「どないて~……レティシアちゃんはええんか?」
「よそ様の手ぇ入っとったからな、どこの誰か知らんけど」
「ぴすぅ」
兎やのにスキル15個も持っとって、〈解体〉〈鑑定〉〈人類共通語〉が揃とるんやて。
「たまたまにしては出来すぎちゃう?」
「いや~知らん、俺に聞かれてもな~……」
今日始めたばっかりの素人やぞ、俺……
てかレティシアさん、あの足で〈解体〉使えるん?
それとも、生まれ持っとるパターン ??
とりあえず、とがのさんのステータスを、ボーゼにも見せとく。
「こんな感じやねんけど~」
「ふす?」
「……なるほど。えらい武闘派やな?」
「やっぱり~?」
「そらな。レティは〈回避〉のほうがレベル高いし」
「ぴすぴす!」
意外やな。レティシアさんのほうが活発そうやのに。
「で、この足で武器とか〈拳〉は無理あるな。やからこの辺を……」
「……おぉ~、ありがと~」
彼に言われた通りに、タッチパネルを操作した。
結果こうなった。
―――――
スキル:3
〈回避 Lv.3〉〈採取 Lv.1〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:6)
〈闇魔法 Lv.1〉〈生活魔法 Lv.1〉〈器用強化 Lv.1〉〈体力強化 Lv.1〉〈敏捷強化 Lv.1〉〈人類共通語 Lv.1〉
(種族:4)
〈噛みつき Lv.2〉〈蹴り Lv.4〉〈危機察知 Lv.1〉〈小兎〉
―――――
「ふんす! ふすふす」
なんか気合い入っとんな~、とがのさん。
……ま~そんなわけで、強化系スキル中心に追加しました。
あと、〈人類共通語〉。これは言葉を“読める/聞き取れる”ようになるスキルや。
他は〈テレパシー ※未発見やとよ〉とか〈書写〉みたいな、別のスキルが要るらしい。
◇
やっと組合の建物に入れた……と思とったら、窓口からこっちに歩いてくる人らがおる。
あ~、この人らは……
「よおボーゼ、さっきぶりだな!」
「どーしたのその兎? テイマーに転身すんの ?? 」
「まさか兎にテイムされたとか ??? 」
「そっちの子は噂の新入りくんかい?」
さっき安全地帯の前で会うた人らやな。4人組やったんか~。
賑やかやね、ボーゼが青筋立てるくらいには。
……えすとと顔を見合わせて、一言。
「「あっキレてる……」」
「アンタらさあ。毎回毎回、一方的にブワーッ喋るんやめてくれへん? 答える暇ないんやけど ?? 」
「「「「すみませんでした !! 」」」」
はぁ……てため息ついたボーゼが、もう1個何か言おうとした、そん時やった。
「……次の方、どうz」
「助けてくれ! 西の迷宮で配信してたら、たまたま映りこんでた異人が殺し屋にやられて! 俺の動画チャンネル、BANされちまって……」
窓口で、早口でまくし立てる男の大声が響く。
思わずそっち見たら……
「お客様。申し訳ありませんが、冒険者組合では対応いたしかねます。お手数ですが、そのお話は教会のほうで……」
男がカウンターテーブルを、ダン! て叩いた。
「もう行ったさ! あっちでも無理だ、って言われたんだよ !! こ、この世の中を……この世の中をぉ……あ゛あ゛ー゛ッ゛!! ……」
……とりあえず、県民と府民のトラウマほじくり返すん、やめてもろて。何十年前の話やねん……
んで~……ピロピロピロピロ、何の音?
「……どーもー、クワッセふじこでーす! 今日は【緊急生配信】ってことでねー、……」
黙って見とるんが気に入らんかったんか、配信おっ始める強者が……もう1人おったわ。
他にも、録画しとるっぽい人が十数名。なるほど、カメラ機能の起動音か~……
……いや、そんなん撮ってどないすんねん!哀すべき現代人の性?
許可取ってないやろ ?? どう見てもアウトです、本当にありがとうございました。
「……やっと配信者になったんです !! 」
迷惑系異人さんの迷演説が終わって、広がる沈黙。それを察してか、彼はすぐに付け足した。
「I can't f*ckin' stand up fu*kin' song!」
ぜいたくに“f*ckin'”を2度づけした英文。親父にも言われたことないのに。
ってか2度づけ禁止! 1回でも禁止ワード !! ……とか言うとる場合ちゃうな。
はいDoubt! もうそれわざと言うたやろ ??
ほんで~……
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? 」」
「き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛配゛信゛停゛止゛い゛い゛い゛い゛い゛ !! 」
「「「嘘゛お゛お゛お゛お゛お゛何゛て゛え゛え゛え゛え゛え゛ !? 」」」
轟く10人ぐらいの悲鳴。効きすぎやろ、可哀想に……
えぇ……この期におよんで、まだ完全生配信やっとんの ??
いやまあ、Web小説の“ダンジョン配信モノ”が、そんなノリらしいけど……ボーゼが言うには、ン十年たった今でも、な。
……人間て学習せえへん生き物なん?
◇
順番は来た、それだけだ。
……はい、報告してったで~。
《継続クエスト「小兎を狩ろう!」他2題の報酬として、合計:20マニを獲得しました》
《日刊クエスト「複数の魔物を狩ろう!」をクリアしました。初回クリアボーナス:10マニを獲得》
《所持金残高:500マニ》
んで、『継続依頼:薬草の採取』を追加受注しといた。
とがのさんの〈採取〉スキルが火を噴く……かもな。知らんけど。
次は武具屋に行くらしい。
それも、高レベル異人御用達、て所。店長さんが“異人最高の鍛治師”て言われとるそうで。
なお、ペット禁止。まあ、草もクソもないか……
てなわけで、とがのさん達とは一旦お別れ。草原に戻ってもらおか~。
「「ほなまた」」
「ぴすぴす」
「ふんす」
「ほなじっとしといてなー。【送還】、ダイス!」
えすとが唱えたら、ダイスくんを真ん中にした3羽が、そのまんま光に包まれて、帰っていった。
「ほな、俺らも行くコ~」
「「はーい」」
◇
「はいここ」
「早 !? も~着いたんか !! 」
中央広場から東の大通りに出て、2つ目の交差点を左に折れてすぐ、やった。
で、店の中から手足の短いおっちゃんが出てきた。髭濃ゆいな~。
あと展開が早い……
「お? ボーゼじゃねぇか、よく来たな」
「おはようオッちゃん。早速これ頼むわ」
「はいはい、どれどれ……」
流れるように、短刀の検分が始まった。 ……間違いない、これは顔見知りの犯行(殴
「お前また手入れサボったな? ちゃんと【洗浄】かけろってあれほど……」
「……はい……はい……」
んで始まるお説教タイム。
……て思とったらすぐ終わって、おっちゃんがこっち見た。
ていねいな標準語、発動。
「で、オメーさんが噂の新入りくんか」
「はい、ミニゴブリンの“ジンジュ”です」
「工人の“オレーキー”だ。“オッちゃん”って呼んでくれ。よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
早速、検分のお時間です。出でよ〈初めての大盾〉!
……うわぁ。改めてよ~見たら……底が抉れて、焦げついとる。扱い悪うてゴメンよ~……!
「……ログイン初日でこの耐久値 !? どんな使い方したんだお前は ?? 」
「まほうつけて殴りました !! 」
「おぉ……それはなっとくです」
おっちゃん、ノリええな……小学校低学年ぐらいの滑舌に、合わせてきたった……。
「ええ歳こいて、何しとんねんアンタら」
ボーゼにツッコまれた。えすとは黙っとる。
……ボケを重ねるチャンスやな?
「おっちゃんおっちゃ~ん、これが“本場のツッコミ”っすわ」
「ふむ……流石の職人芸だ」
腕組んで、ふんふん、と頷くオレーキーさん。
カッコええな、画になる……
「仲ええのはいいんすよー、ボケ倒すんやめてもろて……」
「「嫌だ」」
「嫌だじゃねーですよ !! 」
えすとのツッコミ入りやした~。
閑話休題。
「お前ら、他あるか?」
「いや、大丈夫ッス!」
オレーキーさんの問いかけに、ボーゼが応える。
お代は50マニ。初めて、てことでまけてもろた。
《所持金残高:450マニ》
「よし、じゃあこいつらは預かる。修復と強化……じゃ無粋だな、治療と育成は任せとけ!」
「「「あざ~っす」」」
◇
店出て、思わず一言。
「……眠い!」
「やろなー、色々あったし」
「初っ端からな。ほな夜の部はパス?」
「せやな~。また明日」
「おっけー」
「「「ほな、お疲れ~」」」
今日はこの辺にしといたろか~。
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は9/20(金)頃の予定です。
あと念のため。
この作品に、作者の代弁者はおりません。すべて彼らが勝手にやったことです。
ご了承ください……
……いやマジで! 何あのウサちゃんズ!?
聞いてないよぉ??
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/27)
――【おまけ】――
PT「お城と……横顔新○線や~」メンバー一覧
○リーダー
ボーゼ Lv.22
ウルフ・ビースター(獣人族) 男
HP:100% MP:100%
従者:1名
レティシア Lv.12
ラビット(兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
○サブ・リーダー
えすとっきゅー Lv.21
エルフ(森人族) 男
HP:100% MP:100%
従者:1名
ダイス Lv.5
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♂
HP:100% MP:―
○その他のメンバー
ジンジュ Lv.5
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
HP:100% MP:100%
従者:1名
とがの Lv.5
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:100% MP:―
計6名/定員7