010. 転移と、魔物と、東の森(後編)
ここで言うのもなんですが……
最近聴きだした某バンドが、急に再結成した……??
どうも、ジンジュです。
初めてのおつかい、猪狩り編。このあとすぐ!
……てわけで、静かに素早く、バレる前にええとこ押さえよか~。
……着いた~ッ!
ほなここで、大盾と石を用意。
「……ぬんッ、【火の魔球】」
茂みの奥、猪の尻めがけて石を放る。 あと、魔法もおまけしとくわ。お得やね~。
……で、ご機嫌いかが?
「プゴォォ、ピャアァー !! 」
両方当たった。HPゲージが出て、1割ぐらい減った。
で、悲鳴上げた猪がこっち向く。目ぇ血走っとるとか、毛ぇ逆立っとるとかは分からん。この距離やど~ ??
「……フーッ、フン!」
でも鼻息は荒そう。お怒りやね~、当然ですが。
……え? “仲間にしますか” ?? 無理無理、それを決めるのは私ではない。
《「ブラウンボア」1頭と交戦中です》
やっぱアカンな~。
……お、力湧いてきた。これがバフ?
大盾を両手で持って、構え直すうちに、猪は走りだしとった。もちろん、俺めがけて一直線。
やっぱり、もう1個石放るヒマはなかったな~。
……はい、ぶつかる前に【鑑定】。
―――――
ブラウンボア(♀) Lv.16[交戦中]
北の大陸で最も一般的な猪。雑食。
森に棲むが、エサを求めて平地に現れることも多い。
HP:89% MP:―
―――――
あとで読む。まずは勝負 !!
「【ガード】、【着火】!」
猪の鼻先に火魔法出して、怯ませる。でも猪も、急には止まれん。
結果……スドーン !!
「ぐおぉ~ッ !! 」
「プゴォォッ !!」
真っ正面から、盾に突っ込んできた。轟音とともに、10mぐらい後ろに俺は吹っ飛ばされた。
痛ったあ~……
転けたり、宙に浮いたりはせんで済んだけど。盾をちょっとだけ上に向けといたおかげかな?
あと、木ぃ当たったりもしてない。けどHP2割減。
【ガード】使てこれか、流石やな。パワー !!
受け流したほうがええけど、できるかな~~?
……いや、やれ !!
即、盾を構え直して、猪を見る。
「フーッ、フーッ……!」
あんな音して、俺でもこれや。盾も何もない猪が、無事なわけない。
けど、残り6割強か~。しぶとい。
ほんで、向こうも俺を警戒してか、様子見しとる。
え~と、木ぃそこか。ほな……
「おら来いや! 【受け流、っと !! 」
ズガーンッ !! ワシャワシャワシャ……
……えらい音やな~。
ぶつかる直前に、左に避けて受け流した。ちょっと持ってかれたけど。ほんで、気ぃつけろ、猪も急には止まれない。
で、そのまま木にぶつかった、と。
……あ、猪倒れた。気絶か。ほな回復……梅干し味キツい !!
よし、魔法つけて殴る!
「【火の魔球】、【叩きつけ】、だぁ~ッ !!」
これでもまだ4割弱か~。マジでしぶとい。
……しゃ~ない、盾立てといて。
持ち替えた〈初めての棍棒〉で、頭10回どつく !!
「【火の魔球】、【叩きつけ】、おりゃ~ッ!」
…………………
……………
……
◇
「……【着火】、10! ……だは~ッ」
あ゛~しんど !! 息切れる……
10回どついて、HPは……まだ2割強。
3回に1回ぐらい復活しとったけど、また気絶しとる。
ほな、もう短刀使おか……。
「心臓を捧げよ! ……どわ~ッち !? 」
猪の胸元に短刀を刺したら、茜色のサイコロの集まりがブシュッ、て飛んできた。
生温いんが、べちゃ~っ……と。
んで、猪の全身がポリゴンの塊に変わって、さらさら~、て消えてった。
《「ブラウンボア(♀)」1頭を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《Lv.5になりました》
《〈鈍器〉〈挑戦者〉両スキルのレベルが上がりました》
《称号〈果敢な挑戦者〉が〈大物を喰らいし者〉に更新されました》
《以下のアイテムを入手しました。
・「ブラウンボアの肉(中)」×4
・「ブラウンボアの毛皮(中)」
・「ブラウンボアの魔石(微小)」》
《〈挑戦者〉が〈大物喰らい〉に変更されました》
《〈大物喰らい〉が〈下剋上〉に変更されました》
また通知祭りか~。
で、力が抜ける~ !! これがデバフ……?
いやいや、まずは手ぇ合わせて。なむなむ……。
「はい【洗浄】、お疲れー」
いつの間にか、ボーゼとえすとが寄ってきとった。
「あざ~っす!」
「どーも。 ……焼き鳥?」
「立体機動でもするんかお前?」
色々ありすぎて、何にツッコまれたんか分からん……
ほな、諸々(もろもろ)見とこか~。
―――――
ブラウンボアの肉(中)
イノシシの肉。食あたりの恐れや、特有の臭みがあるため、処理と加熱が要る。
―――――
まずは猪肉。肉自体の説明は「でしょうね」て感じ。その先が知りたい、調理法とか。
ま~、レベル低いからしゃ~ない。
それより、ここの森の名前が出とるみたいやけど。ええんかな……?
ほな次、新しい称号とスキルを……
―――――
〈大物を喰らいし者〉
レベル差が「10以上かつ倍以上」の格上相手に、単独で勝利した。
その際、戦闘開始から終了まで、味方の援護を一切受けないこと。
※統率系スキルによる付与効果を除く
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
―――――
〈下剋上 Lv.2/50〉
格上を相手取ろうとする者の、全力を引き出す技能。
その分反動も大きい。気を付けろ。
技一覧
【大物喰らい】
格上の相手と戦う際、レベル差に応じてステータス値を増幅する。
この効果は状況に応じて、その都度強化される。また、戦闘終了まで継続する。
なお、効果が切れると、反動でステータス値が下がる。その間は再使用もできない。
―――――
よ~分からんけど、なんか強そうやね。ありがたい。
無茶苦茶なこと言うたのに、止めてくれんかったわけやわ。
「お、やっぱええの出とるな」
後ろからボーゼが一言。他人事かお前……
「……やっぱ謀ったな~ ?? 」
「チッ、バレたか」
「「そらバレるわ~」」
閑話休題。
◇
「さ~て、片付けて帰るまでが、ホンマの狩りですよ~」
「遠足か」
「何でお前が先生側やねーん!」
ツッコミありがとう。
「あと正確には、“冒険者組合で報告するまで”やからな?」
「へい、気ぃつけま~す」
ほな撤収~ !!
◇
ん~? 茂みの向こうに……鹿か。コンにニチハ!
ツノないからメスやな。こっち向いて~、
「キュ゛ーン!」
鳴いて逃げだした。ほな【鑑定】。
結果は~……の前に、奥からも足音が。もう2~3匹おったみたいや。
―――――
ブラウンディア(♀) Lv.17
北の大陸で最も一般的な鹿。草食。
警戒心が強く、群れをなす者が多い。
HP:95% MP:―
―――――
さよか。ほな元気でな~!
森の中にも、安全地帯の候ぞ……。
なんか不思議な力で、敵性の魔物が入ってけえへんねんて。街なかと同し理屈。
で~、前になんかおったわ。
「ふんす」
「……ぷう」
「ぴすぴす!」
色素の薄い牛柄と、鮮やかな橙色、そして黒っぽい虎柄。3羽の小兎や。
……あぁいや、虎柄ちゃん(仮称)だけは兎やったか。
「「「えぇ……?」」」
こんな所おったん?
何 事 ??
3羽揃た。 ……て言うてもこの子ら、まとまりがない。
もぐもぐ草を食む牛柄ちゃん。ええ加減にせぇ……
向かって左側の目を閉じて、動かんオレンジくん。寝とる?
で、飛んできた謎の紙くずを、追い回す虎柄ちゃん。
平和やな。だがそれがいい……。
「「「げえ! ボーゼ !? 」」」
「お、一丁やるか?」
急に、左後ろから男複数人の声がした。ボーゼがそれに応える。
「「「お断りッ !! 」」」
「はいはい。いっつもありがとうな」
足早に安全地帯へと駆け込む男たち。驚いたらしいオレンジくんが、慌てて飛び退いた。
「知り合い~?」
「せやな、ウチの視聴者」
そこまで仲ええってわけでもないらしい。さよか……
話逸れてもた……
「お2人さんお2人さん、ちょっとご相談なんですけど~」
「「何や何やー?」」
「この子ら、連れてってええ?」
「「んー……」」
ちょっとボケてみる。将棋の記録員さん風に……
「10秒~」
「「喧っしゃ」」
失礼しました。
「結論から言うと、1人1匹ずつかなー」
「「言い方よ」」
えすとのボケは置いといて。
「【テイム】と【召喚】て、契約できる頭数が決まっとってさー。スキルレベルが1桁やと、【テイム】は“2体まで”やったかなー」
「そうそう。で、お前は最低1体“魔法使える子が欲しい”って話しとったやろ? そのぶん枠1つ空けとかなアカン。つまり……?」
俺に振るんかい。
「この子ら全員は連れてけん、か。1羽だけやな~?」
「「そゆこっちゃ」」
なるほど。ほな答えは決まっとる。
「……一緒に来る?」
「ふんす」
牛柄ちゃんに声かけた。いや即答……前のめりやな~。分かりやした。
ほな、やり方は……
「【テイム】!」
牛柄ちゃんの頭の上に手ぇ翳して、言うた。
彼女の首らへんに、黄色い光の首輪みたいなんが出てきて、3秒ほどで消えた。
《「ミニラビット(♀)」1羽の【テイム】に成功しました。名付けやステータスの確認ができます》
「ほなよろしゅう」
「ふす、ふんす」
で、名前な~……保留で。ええの浮かばん……
2人と2羽は~?
「名前かー……“トラッ○ー”とか?」
「「おい」」
オレンジくんにプイ、てそっぽ向かれた□人ファンがおった……
あと、肩に虎柄ちゃんを乗せたボーゼも。 ……重たないん?
「名付けは安全地帯でやれ、って話ちゃうかった?」
「せやった。危ねー」
「あ、そ~なんや」
魔力切れで気絶するかも、なんやて。特に俺。
……はい、ほな移動~。
◇
歩くこと数分、やった。
安全地帯に入ったら、体力が回復しだした。
ど真ん中に、あんなんあるから? 【鑑定】。
―――――
女神シトリーの立像(中)
時空を司る女神:シトリーの立ち姿を象る石像。移動・破壊不可。
置かれた地点を簡易的な安全地帯、および転移地点とする。
その性能は、立地や台座に左右される。転移が機能しないことも。
―――――
神像の台座(大)
巨石でできた、神像の台座。移動・破壊不可。
神像とともに置かれた地点を、簡易的な安全地帯とする。転移機能を兼ね備えることもある。
その性能は、立地や神像に左右される。
―――――
ここから、あの中央広場に戻れるらしい。へぇ~。
にしても……なんか神様絡みやと、説明細かいな~。
あ、手ぇ合わせとこ。なむなむ……
「ふんす、ふすふす」
牛柄ちゃんが急かしてきた。名前ね~。
“ウサちゃん”とか“ラビィ”とか? ……ベタでおもろないな。
兎……『鳥獣戯画』……ギガ? いや~、ないかな~?
「“ギガ”とかどう?」
……反応がない、没。
ん~……『鳥獣戯画』……高山寺……京都・栂尾……ん !?
「ほな、“とがの”てどう?」
「……ふんす!」
お、ええ反応やな~。ほなそれで。
……あれ? なんか視界が白なってきた?
……ヤバい、しゃがんでもアカン !!
《名付けに成功しました。以下の条件が満たされています》
《称号〈毛玉の主〉を取得しました》
《MP不足により、状態異常【気絶】になりました。回復まで約59秒……》
《従者「とがの」が、称号〈鬼族の従者〉を取得しました》
通知来たけど、な~んも出来ん……
「あーやっぱり……起きろジンジュー」
えすとに肩を揺すられて、秒数が減ってった。
「……ハッ !? お早うございました~」
「「おうお疲れー」」
飛び起きたら、2人と3羽が集合しとった。
オレンジくんは“ダイス”、虎柄ちゃんは“レティシア”て名前になったみたい。
「俺はツッコミをやめるぞ、ジ○ジ○ーッ !! 」
「同意見だなぁ……」
えすとと2人でボケとったら、ボーゼが一言。
「はいはい後でな。街戻るぞ」
「「あいよ~」」
ほな、女神像による転移のやり方です。割と簡単。
像にお供え物して、行き先を選んで祈るだけ。
……やそうです。
3人揃て、“ブラウンウルフの肉”を1個ずつ。
《「アインツ・中央広場」への転移ができます。転移しますか?》
はい、お願いしま~す。
◇
《「アインツ・中央広場」に転移しました》
恥ずかしながら、帰ってまいりました! ……一瞬で、アインツの中心部にな。
ヤバい技術やな~。
で、まずは報告。冒険者組合へ……
「あ~、また並んどる……」
「「 せ や ろ な 」」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は9/9(月)頃の予定です。
……まだ初日なんだ?(おい
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/08/19)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.5
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:470マニ
SP:3
HP:100%
MP:100%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.3〉〈防御 Lv.2〉〈受け流し Lv.3〉〈火魔法 Lv.1〉
〈生活魔法 Lv.1〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.2〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:4)
〈危機察知 Lv.1〉〈下剋上 Lv.2〉〈体力強化 Lv.2〉〈筋力強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.2〉〈幼鬼〉
称号:5
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈大物を喰らいし者〉
人類NPC、および同族NPCからの信頼度が少し上がる。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。
〈毛玉の主〉
物理攻撃の被ダメージが微減する。
従者:1名(定数2/〈従魔法〉)
とがの Lv.5
ミニラビット(小兎/下位兎族) ♀
HP:99% MP:―