008. 狼の群れと、面倒な人たち
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夏休み前やったかな……山本がこんなこと言うとった。
「ファンフリで戦いたい? ほな、肉食系の魔物がええぞ! 倒さな自分が食われる。やから遠慮せんと倒せる。なかでも、狼は最高。肉美味いからな !! 匂いキツいとか、クセ強いとかいわれる肉食系で、一番さっぱりしとぉ。兎や牛なんかに比べたら硬いけど、十分おいしく頂けるで。繰り返す。ファンフリで戦いたいんやったら、肉食系の魔物を狩れ! 特に狼や !! 」
一息でよぉ~そんなに喋れるな~……
世界よ、これが狼獣人のセリフや。
……犬の心とかないんか?
◇
ど~も、ジンジュです。
ボーゼに言われて石放ったら、茶狼が4頭も出てったで~?
菱形の隊列を組んで、群れがこっちに駆けてくる。レベルは6から8。
「バウ、バウバウ!」
「「「ボウ!」」」
一番奥のヤツが指示役っぽい。
あと、右のヤツだけHPが少ない。石当たったヤツか……?
対するこっちはレベル21、20、3の3人。3が俺や。
大盾を構える俺の左に、ボーゼ。
朱塗りの大盾を出して、後ろの地面に刺して。革の鎧で胴だけ守って、右手に短剣1本……出る気満々やな。
さらに左にえすとっきゅー。略してえすと。長杖を斜めに構えとる。
神官は“後ろで待機”が基本らしいけど……出る気満々やな ??
2人とも、余裕の笑み。頼もしいな~。
4対3で、俺らが不利やと思われたんか、ただ横取りしに来たんか――俺ら以外の異人の矢や魔法が、狼らに襲いかかる。
……走りながら体ひねって避けた !?
何それ怖い……猫か? 猫なんか !?
「お前ら狼やめたんか ?? 」
「「何言うとんねん……」」
いやいや落ち着け……深呼吸や。ボーゼに比べたら、奴ら遅い。
今の俺には、心強い仲間がおる。足軽装備に大盾もある。怖いけど、怖がるほどやない。
で、俺の仕事は妨害や。狼らの気ぃ引いて、隙を作れ。
〈顕示〉スキル? 多分そんなん要らんで。相手は動物や。
音、火、匂い。これだけで十分気ぃ引ける。
あと【鑑定】・【テイム】あたりの技も、挑発に使えるらしい。どっかで食ろた謎の通知が、多分それ。
《抵抗に失敗しました》
《抵抗に成功しました》
そうそうこれこれ……って誰じゃボケぇ !?
……まあええわ。収納から「ウィードの葉」をちょっと出して、足元に。それと、石も1個出しといて。
「【着火】……おらクソ犬ぅ、こっちやどぉ !? 早よ来いや、かったるいのぉ !! 」
足元に撒いた葉だけ、魔法で焦がしてから、大声で威嚇する。
狼らの走りがちょっと遅なった。
さらにダメ押し。大盾の端っこを、出しといた石で叩く。
ガガガガガッガガッ、ガガガガガッ……て、変拍子にしとくとなおよろs……あれ、止まった……?
「お前何しとん ?? 」
味方の手ぇまで止めてもた ??
「何ということでしょう……」
「「こっちのセリフや !! 」」
閑話休題。
……色々やり過ぎたっぽい。狼の群れに様子見されとる。
よそ様の遠距離攻撃をかわしながら、奴らめっちゃこっち見とる~。
「しゃーない、魔法当てて引きつけよか! 手前はボーゼ、右はジンジュで。左と奥は俺がやる」
「「了解!」」
即、早口なえすとの意見に乗る。
「【五重詠唱】、【光の破魔槍】×2!」
「【光の破魔矢】!」
「【火の魔球】!」
えすとの前には、白く光る槍2本。ボーゼのは白く光る矢。俺のは赤い火の玉。
それぞれの魔法が狼らに向かう。
……やっぱ俺のだけ、遅いし小っちゃいな。やから一捻りしといた。
「キャイン!」
「バウ!」
「ガウ!」
2人の魔法が、まっすぐ敵の頭に当たった。吠える3頭。
遅れて、俺のはまっすぐ敵の頭……を通りすぎる。ハズレ……と思たやろ? そこで急カーブ。
「ギャン !? 」
狙た通り、後ろ頭に当てれた。
MPヤバいけど、向こうのHPはあと7割。これはデカい。
驚いて、後ろ向いたな? ここで石放る。
「うらッ!」
「だあぁっ !! 」
待てボーゼ、 今 何 放 っ た ??
……大盾! 朱塗りの大盾ほかしとる !! 何しとんねん !?
どう見ても“きょうき”です、本当にありがとうございました……
「ギャフッ……」
「っしゃ、ほな次!」
まあそら、頭に当たったら一発やろな。南無~……
解体とかは後回し。ボーゼは2頭目に向かった。
「ギャウ!」
……で、俺の石も当たった! ラッキー !!
HPは……これで半分か。
ほな、最後の石を出しといて……
「【鑑定】、おら来いやワレェ!」
挑発しとこ。結果はあとで読む。
―――――
ブラウンウルフ(♂) Lv.6[交戦中]
北の大陸で、最もよく見られる魔物。肉食。
森に棲んでいるが、餌を求めて平原に出てくることもある。
HP:52% MP:―
―――――
来た来た、ほなタイミング合わせて……
「【ガード】! ……うおっ !! 」
「ギャウッ !! 」
何とか弾き飛ばせた。
……さすがに重たい! けど後ろに受け流すわけにもいかんし、ボーゼもえすとも1対1やしな~。
「……【風の破魔矢】!」
「フンッ! ……っしゃ、次!」
2頭目を倒したボーゼが来る……前に、もう1回当たるな、これ。
「ヴ~……」
今度は受け流そか。
挟みうち? 2対3やぞ、やってみろや。
「【受け流し】、よいさ~!」
「ギャウッ !? 」
……よし1本!
左後ろに飛んでった狼を、ボーゼが追う。
「ジンジュ、アレとどめ刺しといて!!」
「了解……?」
左手の親指でボーゼが指したほうを見たら……リーダー狼、まだギリHPあった!
大盾を地面に刺して、走る。
棍棒出す……んは邪魔くさいな。石を……念のため左手で。
「【風の破魔刃】!」
「ガフッ……」
えすとと3頭目、勝負あり。
……の横を駆け抜けて、うつ伏せのリーダー狼に殴りかかった。
「ぅらあ~……あっ痛ぁ !? 」
……ら、こいつ手首噛みよった !!
「た゛あ゛あ゛、このッ、このッ…… !! 」
石を右手に戻して、ガンガン殴る。 ……“CRITICAL!”、いただきました。
「【光の癒し】……大丈夫かー?」
「あざ~っす……何とか」
「……おうジンジュ、これも頼むわ」
またえすとに治してもろた……とこに、ボーゼも来た。
気絶した4頭目の頭を掴んで、ズルズル引きずりながら。
「……了解ッス。ぬんッ、ふんッ !! 」
また後頭部を狙て……“CRITICAL!”
で、通知がくる。
《「ブラウンウルフ(♂)」2頭を討伐しました。これにより、以下の条件が満たされています》
《Lv.4になりました》
《〈投石〉〈筋力強化〉以上のスキルがLv.2になりました》
あ~、疲れた~ッ……
けど、まずは手ぇ合わせて……なむなむ。
で、えすとが言うには……
「解体の時間じゃおらー !! 」
……なるほど。
「自分がとどめ刺したヤツを、解体するよーに」
「りょ~か~い。 ……その前にリーダー【鑑定】してええ?」
「「どうぞどうぞ」」
―――――
ブラウンウルフ(♂) Lv.6 コマンダー
北の大陸で、最もよく見られる魔物。肉食。
森に棲んでいるが、餌を求めて平原に出てくることもある。
HP:0% MP:―
―――――
“リーダー”改め“コマンダー”でした。で、短剣相手やとそうなるよな……
「ほな、大盾先に片付けて……」
2頭の亡骸に、短刀の刃を当てる。
……また通知やな。
《〈解体〉がLv.2になりました》
《以下のアイテムを入手しました。
・「ブラウンウルフの肉」×3
・「ブラウンウルフの毛皮」×2
・「ブラウンウルフの魔石」×2》
肉の二束三文感よ……
「やっぱ肉の出がええよなー」
「何でやろな。器用補正?」
ボーゼとえすとが話しかけてくる。けど……
「分から~ん、な~んにも分から~ん」
「「 せ や ろ な 」」
安定の初心者1名!
「てか、短刀切れ味ええなー。俺も大盾にしときゃよかった……」
「「お前が盾持つ意味よ」」
えすとが変なこと言い出した。
短刀だけ、武器屋かどっかで買うたらええん違うん……?
あとアレ、兎と狼で、どんな違いが? ……【鑑定】。
―――――
ブラウンウルフの肉(中)
一般的な狼の肉。
臭みが少なく美味。だが少々硬い。
―――――
ブラウンウルフの毛皮(中)
一般的な狼の毛皮。
裂傷・刺傷が目立つものの、使えなくはない。
―――――
ブラウンウルフの魔石(微小)
一般的な狼の腹部にある石。
溜まっていた魔力がかなり失われているが、使えなくはない。
―――――
大きさ中心に、そんな違いが……へぇ~。
◇
こうして、狼は倒された。
狼は倒され、世界に平和が訪れた。
……けど、ここらにおった小兎は戻って来ぇへん。なぜか?
「ん~……Smoky!」
「「黙れ犯人……」」
はい、そういうことです……多分な。
「草焼く奴は、いずれ兎を焼く……て思われたか~?」
「打撃音忘れてて草」
「言うとぉ場合かー? お前ら ?? 」
えすとにツッコませるの会、任務完了。
……いや、物好きがおったわ。
白地に、灰色のぶち模様――あっせや、“牛柄”て言うたらええんや――そんな小兎が1羽、こっちを見とる。
お? 草咥えてこっちに来る……
「もうええわ。太るぞワレェ~……」
「いや草」
さっきのレベル5の子や。牛柄ちゃん(仮称)て呼ぼか。
……とか言うとったら、背後で急にグツグツグツ……て音がしだした。
たしか、えすとの魔法食ろた時も聞こえたな。
後ろから来る !? て、慌てて振り向いたら……
「【風の魔球】!」
「ちょ、殺意高すぎぃ !! ヒャハハハ……」
10mくらい向こうかな? 知らん兄ちゃんが、魔法ぶっ放すとこやった……
《異人「ハノレトマン」「ゾルゲマニア」と交戦中です》
「こぬたむの仇ー! 逝ってヨシッ !! 」
誰それ? 関西弁喋れや ??
「しもたー! 回復してない !! 」
えすとがぼやく。
まっすぐ俺に飛んでくる。避けるんも間に合わん。詰んだ……いや待て!
◆
「土属性は風属性に弱い。風属性は火属性に弱い。やから〈火魔法〉や」
「弱 点 4 倍」
◇
ほなこうじゃ!
「【着火】!! 」
緑色の、魔法の球が燃える。燃えて、軸がぶれた。
向かって左にぶれた魔球は、俺の左耳の先っぽをかすって、飛んでった。判定は……
「……バカな!」
「耐えた、だと……?」
知らん2人組が騒いどる。
ギリギリで耐えた、助かった……と思た、次の瞬間。
俺のHPは、0になった――
ばたん……て倒れた、特徴的な緑色。それを、俺は見下ろしとる。
「「「『……は?』」」」
場が凍りつく。
《HPが失われ、行動不能になりました。10秒以内に蘇生が確認できない場合、復活転移を始めます》
「へ? えっあっ、はい !? 」
何でや…… ??
……あ゛ッ゛! 忘せとった、“個体特性” !!
―――――
・色白:日光で継続ダメージ(極小、日陰では0)
―――――
日焼けにやられた! 日焼けにやられたッ !! バカ~ッ !!!
《蘇生が確認できません。「アインツ・中央広場」への復活転移を始めます》
俺はまた、見慣れん光に包まれていく――
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は8/24(土)頃の予定です。
妙ですね? ゆる~い話を書いてたはずが……
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/29)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.4
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:470マニ
SP:5
HP:0%
MP:8%
状態:行動不能/転送中
スキル:8
〈鈍器 Lv.2〉〈防御 Lv.2〉〈受け流し Lv.2〉〈火魔法 Lv.1〉
〈生活魔法 Lv.1〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.2〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:3)
〈危機察知 Lv.1〉〈体力強化 Lv.2〉〈筋力強化 Lv.2〉
(種族:2)
〈投石 Lv.2〉〈幼鬼〉
称号:4
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈果敢な挑戦者〉
レベル差が「10以上かつ倍以上」の、格上の相手と戦う際、全ステータス値が1%増加する。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。