007. 南の草原と、小兎と、初めての狩り
残暑お見舞い申し上げます。 m(_ _)m
???「お残しは許しまへんえ~!? ヽ(゜Д゜)ノ」
◆
始まりの街「アインツ」南側の草原。駆け寄ってきた、茶色い小兎の、頭を撫でる。
「よしよし、なかなか可愛いyい゛っっっ !! ……コイツ噛むんか !? 」
「「お前アホやろ……」」
は~い、アホで~す。
Lv.3、て俺より上……懐くわけないやんけ。それ見落としたらアカンやつ……。
何しとんじゃ俺ェ~ ??
◇
どうも~、こちらジンジュ。
友達のボーゼ・えすとっきゅーと、3人1組で動いてます。
いよいよ、人生初の検問です。
門番のおっちゃんが、前の一団を見送っとる。
「次! ……は君らか」
2人の知り合いやったか~。
まあ、目立つ狼獣人と森人やし、嫌でも覚えてまうやろな~……
「「「お願いします!」」」
一礼してから、それぞれの冒険者組合員証を提出する。
3人分確かめてから、おっちゃんがこっち見た。
「君は新入りかい?」
「はい、異人の冒険者です」
「そうか、頑張れよ。 ……ご協力、感謝する」
そう言うて、おっちゃんは組合員証を返してきた。
「問題なし、通ってヨシ !! ……気をつけてな~」
「「「ありがとうございます !!」」」
ほな出よか、アインツ市。
大門をくぐると、反対側にも門番のおっちゃんがおる。
「「「こんにちは~」」」
「おう、気を付けてな!」
知り合い多いな ???
で、その先も街道が延びとる。清々(すがすが)しいほど、まっすぐ南へ。
「お~、ええ風やな~……」
「せやなー……」
道の両側は草原。左へ。
草原の奥に、森が見える。街道の上に、伸び放題な木の枝が被さっとる。
道ついてない所は鬱蒼としとるな~。
んで、草原よ~さんおってや……異人と、足元の毛玉。
白・黒・茶色……て、結構彩り豊かやな~。
たぶん兎……やねん。跳ねとるし、草食うとるし。
けど、体小っちゃいし、耳も短い。天竺鼠て言われても違和感ないぐらいや。
「……【斬りつけ】! おっしゃー、倒せた!」
「食らえ新技、【火の破魔矢】!」
「……一発だ。 ……」
…………………
……………
……
異人たちの剣とか、弓矢とか魔法とかで、小兎がガンガン倒されとる。
異人側は半分実験……みたいなノリの人、多そうやな。
対する小兎のほうは、逃げ回るか体当たりするか、て感じ。
……やけど、その体当たり食ろて転けとる人も、ちょこちょこおってやな~。
「……ヒャッハーする前に、観察に徹するその姿勢。嫌いやないでー」
「割り込む余地がなかった、とも言う」
「誰目線で何言うとんの、お前ら~ ?? 」
合うとるから別にええけど……ど~でも。
ほな、大盾出しといて。まずは……
「お、放りやすそ~な石ゲット。あとその辺の草~、【鑑定】」
「「安定のマイペース」」
―――――
ウィード
平原に自生する草。
どこにでもあると言えるし、そうでもないとも言えるね。
HP:― MP:―
―――――
ツッコミ所が多すぎる。とりあえず……
「“ウィード”て、英語で“雑草”やんけ! せめて“草”にしたれよ……」
「「そこツッコむん?」」
「はい。世の中に雑草という草はございません」
「昔の天皇か!」
ボーゼのツッコミに、えすとはポカーンとしとる。
「植物学者かもよ?」
「「そういう問題違うねん」」
ツッコミが心地ええな。
……んで、この草をむしって、【鑑定】。
「なんか約1名、面倒くさい検証しだしたでー?」
「はい、ですね」
「「お前や」」
えすとにガンガンツッコませるの巻、with B。
「手短にな?」
「りょ~か~い、すぐ終わる」
―――――
ウィードの葉(極小)
平原に自生するウィードの葉。用途不明。
葉の途中でちぎれており、素材としてはいまいち。
―――――
……でしょうね。ほな次行こ。
「お待たせしました~」
「おうお疲れー」
とか言うとったら、茶色い小兎が駆け寄ってきた。思わず頭を撫でる。
「よしよし、なかなか可愛いyい゛っっっ !! ……コイツ噛むんか!」
「「お前アホやろ……」」
は~い、アホで~す。
Lv.3、て俺より上……懐くわけないやんけ。それ見落としたらアカンやつ……。
何しとんじゃ俺ェ~ ??
《「ミニラビット」1羽と交戦中です》
ご丁寧に、通知まで来た。
ほなやろ。
「【受け流し】、からの【ガード】」
左手の親指を噛まれたら、右手の親指を差し出す……わけもなく。
体当たりしてくる小兎を、大盾で受け止めとく。
……この子相手やったら、【ガード】も要らんかな? 一応使とくけど。
「【洗浄】、【応急処置】」
「あざ~っす!」
指はえすとに処置してもろた。両方〈生活魔法〉の技らしい。便利やな~。
んでこの子、俺よりダメージ受けてない? いつの間にか、残りHPが3割減っとる……。
でもまだ向かってくる。またまた盾に体当たり。
退いてくれんな~……しゃ~ない、とりあえず鼻先狙て……
「【火の魔球】! 押してダメなら引いてみろ、それが人生……あ、兎やから畜生か。【鑑定】」
「言うとぉ場合か」
「呑気やなー」
―――――
ミニラビット(♂) Lv.3[交戦中]
草原や森に棲む、小型の魔物。大人でもこのサイズ。草食。
草があればどこにでもいると言えるし、そうでもないとも言えるね。
HP:48% MP:―
―――――
あ~、オスか~……。
ほな「おい怪しいヤツ! ここボクの縄張りだぞ !! 」てとこかな? そら噛まれるわ……。
で、体当たりしすぎて、ちょっと血ぃ出とるらしい。どこか分からんけど。
あと、MPがないから、魔法とか技も使えん。つまり治しようもない、と。
……にしても、けったいな説明文やな~。誰が書いてん……?
「ジンジュ? いつまでやっとんねん ?? 」
「そうそう、その子そろそろ可哀想やでー?」
「あ~、それもそうか~……【着火】、【叩きつけ】、ヌンッ!」
大盾の底に魔法ひっつけて、振りかぶって殴る。
盾の底にある角っこが、怯んだ小兎の脳天に直撃する。
“ゴッ”て鈍い音と一緒に、魔法の火花が散った。
で、その脇に橙色の「CRITICAL!」て文字が浮かんで、彼のHPは0になった。
「えっ、一撃~ !? 」
「いやお前、致命傷やぞー?」
「むしろオーバーキルやろ、可哀想に……」
いやいや、俺よりレベル上やし。手こずるかな~? て……あっ通知。
《「ミニラビット(♂)」1羽を討伐しました。以下の条件が満たされています》
《Lv.3になりました》
《〈鈍器〉〈防御〉の両スキルが、それぞれLv.2になりました》
まずは手ぇ合わせて。なむなむ……。
で、ありがた~いボーゼの説教。
「お前、何であんなに時間かけたん?」
「逃げるんやったら逃がそ……て思とったから。“殺しまくってハッピーエンド”とか、ありえんやろ……?」
「なるほど、気持ちは分かった。けど判断が遅すぎる。この先命取りになるぞ? その前に何とかせぇ」
「了解ッス……」
まったくその通りやんな……。
フタ開けてみたら、手ぇ噛んでくるぐらい好戦的なヤツやったし。逃げるわけない。
あと、よ~考えたら、「人の血の味を覚えた魔物」を生かしとく……て発想が、もうアカン。
次の誰かがやられてからでは遅い。その前に何とかせえ、て話やわ。
冷静さを欠いとった。気ぃつけな……
「まあまあ、その話は後にして……この子どうするー? 解体?」
「せやな、ほなジンジュ」
「へい」
今まで出番のなかった〈初めての短刀〉~、出てこいや~ !!
「えっ早…… !? 」
小兎の亡骸に、短刀の刃先を当てた瞬間。
その体は“青白く輝くサイコロの集まり”になった。そして、空中に吸い取られるかのように、ほぐれて消えてった。
……そのまんま、何とな~く空を見とったら、えすとが一言。
「HAHAHAHA、見たかジンジュ。これが【自動解体】なのだよ」
「何でお前が偉そうなんや」
即、ボーゼのツッコミが飛ぶ。
で、俺からは……
「えすとさ~ん、手ぇ合わせや~? “生臭坊主”言われたないやろ ?? 」
「ぐっ、痛いとこを……!」
「ホンマにやってないんか~い……」
「っ、カマかけられたー !? 」
……とか言うとったら、また通知が来た。
《以下のアイテムを入手しました。
・「ミニラビットの肉(小)」×2
・「ミニラビットの毛皮(小)」
・「ミニラビットの魔石(微小)」》
……とは何でしょう? 【鑑定】!
―――――
ミニラビットの肉(小)
小さなウサギの肉。大人でもこのサイズ。
臭みがなく美味。
―――――
ミニラビットの毛皮(小)
小さなウサギの毛皮。大人でもこのサイズ。
打撲痕が目立ち、頭部に焦げが見られるものの、使えなくはない。
―――――
ミニラビットの魔石(微小)
小さなウサギの腹部にある石。大人でもこのサイズ。
溜まっていた魔力がほぼ失われているが、使えなくはない。
―――――
……定型文が鬱陶しいな~。
で、これどうなんやろ? 2人に見せてみよか。
「どれどれー? ……肉2個はラッキーやなー。普通1個やし」
「せやな、あとは順当」
「そうなんや……?」
基準が分からん……
「サイズ考えてみ?」
「……確かに!」
言われてみたら……あのボコボコやった子から、この肉2個は採れすぎやな~。
「よし、ほな回復の時間や」
「「は~い」」
収納から、えすと特製:“中級(?)MP回復薬”(100ml、梅干し風味)を出して、一気飲み。
「オ~、キョ~レツ……」
「何でカタコトやねーん」
えすとのツッコミ入りやした~。
「っしゃ、次行くコ」
浜手の方言が漏れるボーゼ。“次に行こうか” 、て意味な。
「あ、ちょお待って~……また放りやすそ~な石!」
「「呑気やな……」」
「いやいや~、武器集めは大事やろ?」
街の南側の草原を、東へ東へ進む。結構森に近づいてったな~。
途中、寄ってった小兎は、ボーゼに
「Shit, shit!」
されて追っ払われた。
……いや、1羽だけ、まだついてくる子おるわ。頭の上に、「▽ミニラビット(♀) Lv.5」って文字列が出とる。
この子、白い体のあちこちに、デカめのぶち模様が入っとる。この模様が、青みがかった薄い灰色で、なかなか可愛らしい。
「何が目当てなんや~?」
「「さあ?」」
……ってなわけで、3人バラけて歩いてみたら、俺についてきた。ほんで、腰の収納袋を見てくる。
見とるだけで、暴れる気配はない。おとなしい子やな~。
……ん !?
あ~、やっぱり
収納から“ウィードの葉”を出したら、ぴょこぴょこ寄ってきたで。
「あぁ~、これ狙いか。鼻ええな~」
分けたったら、その場でもぐもぐ食いだした。かわいいね。
そのまま置いてったら、途中でバレた。草咥え直した小兎が、こっちに駆け寄ってくる。
ボーゼが一言。
「食い意地張ってて草」
「「何うまいこと言うとんねん……」」
で、こっち来たら、またもぐもぐし始めた。
「しっしっ……仕方ないなぁ」
ボーゼ は あきらめた !
そのまま彼は、何か仕込みはじめました。何事?
「えすと、この石に属性付与して」
「りょーかーい。何重視でいく?」
「弾速」
「おっけー、ほな【光属性付与】!」
えすとが唱えたら、石が白く光りだした。
「ありがと。 ……ほなジンジュ、あっちの茂みに石放ってみ?」
「は~い……アチッ!」
熱がるフリして、石を落とす。 ……光は消えん。
「彷徨う亡者か!」
「んな熱ないやろー?」
「ごめんごめん……」
2人からツッコまれたとこで、石を拾い直した。言われたとこ狙て……
「おりゃッ! ……入った~」
その時、不思議なことが起こった。
まず、茂みの上に赤い逆三角形の印が出た。何かおる……!
で、急に通知が来た。
《条件が満たされたため、〈採取〉が開放されました。SP:3で取得できます》
《〈鑑定〉の技【看破】を取得しました》
何それ、て思う間もなく。赤い▽が4つに増えた。
茂みがガサガサ……て揺れて、周りの小兎らが逃げだした。さっきの子も、また草を咥え直して逃げ……まだ食うんかワレェ ??
……あと、茂みの音デカない?
「……まさか、狼?」
えすとが言うと同時に、茶色い影が4つ、茂みから飛び出した。
菱形に並び直したそれは……
「マジか~、狼の群れ……」
「すまんお前ら、これは予想外や」
謝るボーゼはこっちを向かん。当然やな。
《「ブラウンウルフ」4頭と交戦中です》
俺らの戦いは、始まったとこやから――
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
……なんか最終回っぽくなりましたが、序盤です。続きます、ご安心ください。
来週はお盆ということで……次回更新は8/16(金)頃の予定です。
【追記】一部加筆/修正しました
(2025/06/27)
――【おまけ】ジンジュくんの現状――
ジンジュ Lv.3
種族:ミニゴブリン (幼鬼/下位鬼族) 男
属性:土
職業:【正業】冒険者(闘士) 【副業】―
所持金:470マニ
SP:4
HP:98%
MP:86%
状態:正常
スキル:8
〈鈍器 Lv.2〉〈防御 Lv.2〉〈受け流し Lv.2〉〈火魔法 Lv.1〉
〈生活魔法 Lv.1〉〈従魔法 Lv.1〉〈解体 Lv.1〉〈鑑定 Lv.1〉
(控え:3)
〈危機察知 Lv.1〉〈体力強化 Lv.2〉〈筋力強化 Lv.1〉
(種族:2)
〈投石 Lv.1〉〈幼鬼〉
称号:4
〈駆けだしの冒険者〉
住民からの信頼度が微増する。
〈副神シトリーの祝福〉
幸運のステータス値が微増する。
また、知力と精神の取得経験値が微増する。
〈果敢な挑戦者〉
レベル差が「10以上かつ倍以上」の、格上の相手と戦う際、全ステータス値が1%増加する。
〈生還者〉
HPが0になる攻撃を受けた際、HP残り1%で耐える確率を微増させる。