prologue
長編、初投稿です。
よろしくお願いします m(_ _)m
◇
息できんまんま、頭と体が熱なる。
でも手足は指先から冷えよる。
ヤバい、溺れる! ……て所で、左腕を引っ張られた。
「【洗浄】! 大丈夫ですか !? 」
「ゲホゲホ……ありがとうございます、大丈夫です」
あるゲームの中。
ここはスタート地点、いわゆる“始まりの街”の都心や。
その広場の噴水に、俺は頭から突っ込んだ。ほんで、近くにおった兄ちゃんに助けてもろた所や。
そこに、「ぴろーん!」て間抜けな音がして、通知が来た。
《Lv.2になりました》
《〈体力強化〉がLv.2になりました》
etc……
……え?
そんなんでレベル上がるん !? ええの? 偉いさん ???
……「お問い合わせ」しとこ~。
◆
時を戻そう、1か月半ぐらい。
梅雨時の朝。県立高校の教室で、俺は友達と話しとった。
30人学級の廊下側、後ろから3列目。その机を囲む男3人。その1人、席の主が聞いてきた。
「なあ北条、お前も“ファンフリ”やらへん?」
「ふぁんふり? ゲームやっけ……?」
「そうそう、フルダイブ型VRMMOゲーム」
「フルダイブ型バーチャルリアリティー……何て?」
席の主、山本洋希。島出身の変態的ゲーマーや。
格闘ゲーム上手すぎて、県内やと敵う者が……北部に1人だけ、おってらしい。
……うん。世界、広いな。
数学研究部て名前の、実質ゲーム部員でもある。
あと、ゲーム配信もやっとるんやて。見たことないけど。
1本2時間? 苦行か ??
ほな聞こか、山本のありがた~い説明。まず、フルダイブ型VRMMOとは……
ざっくり言うとVR、つまり仮想現実の世界に、大人数が同時に飛び込んで遊べるゲームやぞ~……てのを、短くまとめてそう言うんやて。
100人来ても大丈夫! どころか、目指せ同時に1,000万人! て話らしい。
桁やば……
「オ~……ニホンゴ、難シイネ~。“マッシブリー”トカ初メテ聞クワ~……」
「何でカタコトやねん?」
「ソンナン、気分ヤデ?」
「はいはい……」
もうやめとこ。
「オー、俺モ初メテ聞クネ、“マッシブリー”」
「お前もかい。てかあんな一緒にやっといて……?」
割り込んできた3人目、徳久駿平の一言に、引き気味の山本。
……1個ツッコんどこ。
「徳久、取扱説明書読んだ?」
「HAHAHAHA、失礼やな研志、俺がそんなん読むと思うか?」
「「どや顔で言うことか……」」
山本と2人でツッコむ。
はい、こういうヤツです。自覚があってよろし……いや良くはない。
取説は読め、さすがに。
もっと言うと、野球部の細マッチョ。自他共に認める脳筋やったりもする。
やからって舐めたらアカンで? これでも世間的には“文武両道を地で行く優等生”や。
“頭でっかちのヘボ北条”な俺より、よっぽど凄いから。
「出来へんまんまとか嫌や、できるまでやったる !! 」
て言うて、脳筋を勉強にも向けた結果がこれや。
偉い。あと体力は正義。
あ、そうそう。ウチの学校は市内有数の進学校や。一応、俺ら全員バカではない、てことで。
アホなことは大好物やけどな!
で、また山本の説明。“ファンフリ”は、最近話題のゲームや。
正式には「FANTASIA OF FREEDOM:Online」て言うねんて。
ちょくちょく広告見かけるわ。
“中世ヨーロッパ「風」の世界で、気ままな第2の人生を!”てのが売りらしい。
魔物を狩るもよし、よそ様と戦うもよし、旅に出るもよし、ものづくりや趣味に没頭するのもいいね……
「“よし”で揃えろやそこは……」
「知るか。文句は運営に言え」
「まさかの公式!」
ちなみに、運営会社は「ファンタジア・インテリジェンス本舗」てとこ。
某大企業の子会社らしい。
「……そこ、元祖とか本家とか総本家とかあるん?」
「和菓子屋か! さすがにそらないやろ。知らんけど」
「「知らんのかい……」」
いやまあ、知っとるほうが怖いか。その高校生、何者?
身内か…… ??
閑話休題。
「まだ今月中やったら、第2陣の抽選に間に合うからな。さあ始めよう!」
おや ?
やまもと の ようす が …… ?
「な~徳久、明日雪やっけ?」
「研志、マジレスすると快晴」
それはそれで……梅雨て何やっけ?
「だうんろーどなーう!」
「「“飛ばせない広告ごっこ”やめい !! 」」
山本、壊れる。
……話戻そか。
「そんなにおもろいんか~……ほな親に聞いてみるわ」
万単位のカネが絡むし、未成年の自己判断では決めれんわ。
あと電気代とか、要相談やろ?
「それがええ」
「……誰目線なん?」
うんうん……て、腕組んで頷く徳久に一言。
「ヤター」
「「お前は早よ帰ってこい」」
山本には2人でツッコミ入れといた。日本製は諭せば直る……?
◇
家帰って親に聞いたら、あっさりOKが出た。
抽選当たったら……本体は早めの誕生日プレゼント、VRゴーグルはおまけ。ソフト代だけは小遣いから出してや~、て話でまとまった。
ええんかそれで~……て思うやん? さすがに母が条件つけてきたわ。
「この先の定期試験で、もし1科目でも赤点取ったら、ゲーム機本体は没収~!」
やて。
ゴーグル? ソフト? 本体なければただの箱……ですが、何か ??
ほんで、その次以降、赤点なくなるまで返さん、とのこと。
まあ高校やからな、赤点続いたら最悪退学やし……
「てな感じで……あなたの、ゲームを、没収します。理由は、お分かりですね?」
「学生の本分はあくまで勉強、て話よな。それすっぽかして遊び呆けるぐらいやったら、学校やめて働けや……てとこ?」
中学の先輩方とか、同級生に一定数おるんよな、そういう人……
「せやな。覚悟の準備を、しといてください」
「「「「何段階前やねん ?? 」」」」
ツッコミに、急に父と弟妹が乗っかってきた。ビックリした~……
「まあ、“働けや”いうても、理想論やけどな。今日び中卒で就職とか、だいぶ厳しいらしいし……」
ちなみに、「没収はキツくね?」て思た人、大丈夫っす。残念ながら当然の理由が、俺にはあります。
小学校の頃の話です。お恥ずかしいことに、あの頃俺はアホでした。
特にゲームとか、勝負が絡むとやらかしまくりで……。「父のノートPCで半日間、延々ソリテ○アしてた事件」とか、「友達とのバトルに負けてキレて、徳久家のコントローラーを1台ぶっ壊した事件」とか……とにかく酷い北条、な話がゴロゴロと。
安心してください、クソガキですよ……
徳久家の件はホンマに申し訳ない。俺のキレっぷりを見て笑い転げとった徳久本人が、俺よりボコボコに怒られとったし……。
そんな感じで、信頼度上げすぎてん……アカンほうにな!
結果、徳久家の件から中学卒業まで、6年半ぐらい、俺はゲーム禁止されてました……。
まあでも、いざ中学上がったら、俺らは“ゲームより部活とか塾”って感じで。「友達ん家集まってゲーム」みたいな時間、そもそもなかったな~。
……てなわけで、数年ぶりのゲーム、しかも初めてのフルダイブ。一体どうなるやら?
たのしみやな~……
◇
とりあえず、期末試験は無事クリア。物理のベクトルがギリギリやったけど、セーフ!
その後、生徒会選挙とか、台風で臨時休校とか、色々あった。
バタバタしとるうちに夏休みになって、補習が始まった。実質、7月いっぱい午前中授業で~す。
しかも赤点とか関係ない、進学校やから全員強制や。
いや、夏“休み”の意味よ……
で、抽選当たって、ゲームも届いた。あざ~っす。
そんな7月末の朝、補習前の教室。
「お2人さんお2人さん、おすすめのプレースタイルとかある~?」
「ググれカ○」
山本、今日も辛口。
「“検索結果がありません”やったけど、何か?」
「「でしょうね……」」
はいDoubt! 公式情報がないだけで、検索結果はあったで? 10件ぐらい。
まあ怪しい攻略サイトか、胡散臭いブログやったけどな。
そして私は、見るのをやめた……
「んー……ほな“タンク”にせぇ。デカい盾持って、守りに徹するんや」
ありがた~いお言葉……に、1個質問です。
「それ、だいぶ我慢せなアカンやつ違うん?」
「やからまず“我慢を覚えろ”て」
「アッはい、たしかに」
あとはこう、
「ほな人間か“ドワーフ”って種族がおすすめ」
「この辺のスキル取っとけ」
みたいな話して、メモも貰た。
ありがと~。
◇
補習終わって、昼過ぎ。家帰って、エアコン点けた、着替えた、飯食った。
ほなゲームやろか、初期設定。
……て言うても、“ファンフリ”の初期設定は明日から。今日は本体の設定だけやな。
とりあえず……水よし、トイレよし、戸締まりヨシ!
……VRの三方よし(?)を確かめて、2階の自室へ。
まずは箱開けて、中身を見る。本体、ゴーグル、ソフト……揃とる、ヨシ!
取説読んでから、電源入れて、ゴーグルして寝っ転がる。
『初期設「うわぁッ !? 」定を……めます。まず、以下の必要事項を入力してください』
あわてて音量下げ……すぎたから、ちょっと戻す。
音デカいな~、びっくりしたわ……。
さっそく身長・体重を入力。あと、“性別:男”も。これ地味に重要、たま~に間違われるから。
なんか俺、“女顔”ってよ~言われる。で、喋ったら「声低っ!」てビックリされる所までがお約束。
失礼なセットやな~……
あと、VRの異性分身て“地味に動かしにくい”そうで。俺はやめとく。
他の項目は~……別にええか。座高て何やっけ? 腰回りとかいちいち覚えてない……。
『身体スキャンが完了しました。身長168.2cm、体重54.6kg。座高……』
春からちょっと増えたな、ええ事や。
徳久には毎回心配されるけど、これでも1日3食、ちゃんと食うとるし。親戚筋では一番背ぇ高いからな?
んな話、今どうでもええか。それよりソフト入れな。えーっと、これで……
『読み込みに2時間程度かかります。電源を切らないでください』
おぉ、そんなかかるんかい。気合入っとんな~……宿題やっとこ。
◇
で、2時間後。
『読み込み中です。残り約20分……』
お~う、まだかかるか。ほな頑張れ。
……今朝のメモ見とこ~。
◇
さらに20分。どないや?
『読み込みが完了しました』
お疲れ~、ドーモアリガトウナノダ……
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
こんな感じで、緩~く(?)進めたいと思います。よろしくお願いします。
【追記】
・ブクマ、リアクション等ありがとうございます! m(_ _)m
・一部加筆/修正しました
(2025/08/03)