表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2023年10月24日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和之の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#107 隙間


 サクソフォン奏者八巻和行(やまきかずゆき)さんのラジオ番組

 こうのすFM フラワーラジオ

 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)

   八巻和行の七転び八巻

 

 というラジオ番組の投稿コーナー

  妄想【愛の劇場】

 毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。


 小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。

 そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。


 妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!! 

 こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです! 

 《番組への参加方法》

 ①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioリスラジのアプリをダウンロード

 フラワーラジオを選局して、お気に入り登録

 ②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー

 ③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表

 ④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿

 ※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。

 ※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。



 サイト投稿回数 第60回目の今回は………

 2023年10月24日放送。

 妄想【愛の劇場】#107 隙間



 チャボと呼ばれた男が居た。

 チャボという男の印象を、誰もが陽気で気さくな男だと口を(せろ)える。

 チャボは、安アパートの角部屋(かどべや)に住んでいた。

 このアパートは壁も薄く、隣からも上からもドタバタと音がうるさい。隙間風も入り込む安普請(やすぶしん)のアパートだった。


 チャボには苦手な事があった。

 隣に住んでいる男、男の名前は八巻(やまき)といった。

 お世辞にも痩せているとはいえない巨漢の体躯(たいく)を揺らしながら、いつも眉間にシワを寄せていた。

 八巻(やまき)と顔を合わせる(たび)に、チャボは笑顔であいさつをした。

 八巻(やまき)は眉間にシワを寄せたまま、ジロリと視線だけをチャボに向けて無言のままその場から姿を消した。

 その様子がチャボは苦手だった。


 ある日の夜、部屋でひとり眠りについていたチャボは、破裂音の様な大きな音で目を覚ました。

 壁の薄い安普請(やすぶしん)のアパートなので、(ほか)の部屋からの耳触(みみざわ)りな生活音(せいかつおん)が聞こえる事も不思議ではない。

 しかし、今聞こえた破裂音の様な大きな音は初めて聞いた。

 上掛け布団を勢いよく()がし、真っ暗な部屋の中で音の出どころを探す。

 ふと、窓際の壁の隙間から(にぶ)い灯りが漏れているのを見付けた。

 隣の灯りがチャボの部屋に漏れているのだ。

 隣の灯り、つまり八巻(やまき)の部屋の灯りが漏れているという事だ。

 チャボは灯りに近づいた。

 八巻(やまき)の部屋の様子を伺う様に、窓に左耳をあてた。

 この隙間から八巻(やまき)の部屋の様子が見えないかと思ったのだ。

 隙間からぼんやりと見えるのは、2つの(かたまり)だった。

 隙間からの灯りがあまりにも眩しくて、明確(めいかく)(てい)()していない。

 しかし、一つは大きな(かたまり)で、もう一つはかなり小ぶりな(かたまり)だという事だけは理解できた。

 うねうねと動き回る2つの(かたまり)を不思議に思いながら見ていたその時、再び破裂音の様な大きな音がした。

 チャボの心臓は握り潰される様な強い痛みを感じた。

 チャボは恐怖に震え、慌てて布団に潜り込んだ。


 次の朝、寝不足気味のチャボは仕事に行くために玄関を()けた。

 同じタイミングで隣の八巻(やまき)の部屋の玄関が(ひら)いた。

 チャボはその音にビクリとした。

 部屋から出てきたのは、スラリとした妖艶(ようえん)な女性だった。

 女性はチャボにニコリとしてからあいさつをした。

 チャボは女性の存在に呆気(あっけ)にとられたが、昨夜のもう一つの(かたまり)がこの女性なのだろうかと、ぼんやりと考えていた。


 仕事を終え、友人との飲み会に参加して気持ちの良い気分でチャボはアパートに戻った。

 玄関を開けると、真っ暗な部屋の窓際の隙間から今夜も灯りが漏れていた。

 チャボはフラフラと吸い込まれる様にその灯りに近づいた。

 昨夜と同じ様に、隙間から八巻(やまき)の部屋を(のぞ)き込む。

 やはり、大きな(かたまり)と小さな(かたまり)がうねうねと動いていた。

 チャボは夢中になって、(かたまり)の正体を暴こうと八巻(やまき)の部屋を(のぞ)き込んでいた。

 そして、昨夜と同じ様に突然破裂音が発せられた。

 チャボは酔っていたので、破裂音に対する恐怖は薄れていた。恐怖よりも好奇心が(まさ)った。

 そして、その音は一度や二度ではなかった。

 しかもその音の後には、鈴の()の様な涼やかな(おと)が聞こえる事にも気が付いた。

 チャボは大きな(かたまり)八巻(やまき)であり、小さな(かたまり)があの妖艶(ようえん)な女性である事を理解した。

 しかし、八巻(やまき)の部屋からは眩しい灯りが強く差し込んでくる。

 しっかりと様子を見る事ができないのでそれが確かな事なのか、チャボには今夜も明確(めいかく)な答えは分からなかった。


 それから、毎日ではないがチャボの部屋には窓際の隙間から光が差し込んでくる。

 吸い込まれる様に、その眩しい灯りを(のぞ)き込む。

 大きな(かたまり)と小さな(かたまり)が、光の中でうねうねと動き回りながら破裂音を()()らす。

 その様子を(のぞ)き見る事で、チャボは苦手な八巻(やまき)への溜飲(りゅういん)()げていた。


 チャボは今夜も隙間から(のぞ)き見える光の先の世界を想像する。

 心を(とら)えて(のが)れられることのできない想像の先の世界を。


 ありがとうございました。

 次回もラジオ番組の投稿コーナー

 妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。


 妄想【愛の劇場】#109「ライブ」

 ※10月31日放送 #108 マラカス 不参加

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ