2023年10月24日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和之の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#107 隙間
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
フラワーラジオを選局して、お気に入り登録
②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
サイト投稿回数 第60回目の今回は………
2023年10月24日放送。
妄想【愛の劇場】#107 隙間
チャボと呼ばれた男が居た。
チャボという男の印象を、誰もが陽気で気さくな男だと口を揃える。
チャボは、安アパートの角部屋に住んでいた。
このアパートは壁も薄く、隣からも上からもドタバタと音がうるさい。隙間風も入り込む安普請のアパートだった。
チャボには苦手な事があった。
隣に住んでいる男、男の名前は八巻といった。
お世辞にも痩せているとはいえない巨漢の体躯を揺らしながら、いつも眉間にシワを寄せていた。
八巻と顔を合わせる度に、チャボは笑顔であいさつをした。
八巻は眉間にシワを寄せたまま、ジロリと視線だけをチャボに向けて無言のままその場から姿を消した。
その様子がチャボは苦手だった。
ある日の夜、部屋でひとり眠りについていたチャボは、破裂音の様な大きな音で目を覚ました。
壁の薄い安普請のアパートなので、他の部屋からの耳触りな生活音が聞こえる事も不思議ではない。
しかし、今聞こえた破裂音の様な大きな音は初めて聞いた。
上掛け布団を勢いよく剥がし、真っ暗な部屋の中で音の出どころを探す。
ふと、窓際の壁の隙間から鈍い灯りが漏れているのを見付けた。
隣の灯りがチャボの部屋に漏れているのだ。
隣の灯り、つまり八巻の部屋の灯りが漏れているという事だ。
チャボは灯りに近づいた。
八巻の部屋の様子を伺う様に、窓に左耳をあてた。
この隙間から八巻の部屋の様子が見えないかと思ったのだ。
隙間からぼんやりと見えるのは、2つの塊だった。
隙間からの灯りがあまりにも眩しくて、明確な体を成していない。
しかし、一つは大きな塊で、もう一つはかなり小ぶりな塊だという事だけは理解できた。
うねうねと動き回る2つの塊を不思議に思いながら見ていたその時、再び破裂音の様な大きな音がした。
チャボの心臓は握り潰される様な強い痛みを感じた。
チャボは恐怖に震え、慌てて布団に潜り込んだ。
次の朝、寝不足気味のチャボは仕事に行くために玄関を開けた。
同じタイミングで隣の八巻の部屋の玄関が開いた。
チャボはその音にビクリとした。
部屋から出てきたのは、スラリとした妖艶な女性だった。
女性はチャボにニコリとしてからあいさつをした。
チャボは女性の存在に呆気にとられたが、昨夜のもう一つの塊がこの女性なのだろうかと、ぼんやりと考えていた。
仕事を終え、友人との飲み会に参加して気持ちの良い気分でチャボはアパートに戻った。
玄関を開けると、真っ暗な部屋の窓際の隙間から今夜も灯りが漏れていた。
チャボはフラフラと吸い込まれる様にその灯りに近づいた。
昨夜と同じ様に、隙間から八巻の部屋を覗き込む。
やはり、大きな塊と小さな塊がうねうねと動いていた。
チャボは夢中になって、塊の正体を暴こうと八巻の部屋を覗き込んでいた。
そして、昨夜と同じ様に突然破裂音が発せられた。
チャボは酔っていたので、破裂音に対する恐怖は薄れていた。恐怖よりも好奇心が勝った。
そして、その音は一度や二度ではなかった。
しかもその音の後には、鈴の音の様な涼やかな音が聞こえる事にも気が付いた。
チャボは大きな塊が八巻であり、小さな塊があの妖艶な女性である事を理解した。
しかし、八巻の部屋からは眩しい灯りが強く差し込んでくる。
しっかりと様子を見る事ができないのでそれが確かな事なのか、チャボには今夜も明確な答えは分からなかった。
それから、毎日ではないがチャボの部屋には窓際の隙間から光が差し込んでくる。
吸い込まれる様に、その眩しい灯りを覗き込む。
大きな塊と小さな塊が、光の中でうねうねと動き回りながら破裂音を撒き散らす。
その様子を覗き見る事で、チャボは苦手な八巻への溜飲を下げていた。
チャボは今夜も隙間から覗き見える光の先の世界を想像する。
心を囚えて逃れられることのできない想像の先の世界を。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。
妄想【愛の劇場】#109「ライブ」
※10月31日放送 #108 マラカス 不参加