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讐ノ眼  作者: 歌月 琉
〈第一章〉
8/16

第七話 開戦

 飛警団に入隊して数日が経った。結局、心を開いてくれた隊員はルイカと新だけであり、ほとんど……特にカロには全くと言っていいほど信用されていないようだ。だが、そんなことで悩んではいられない。明日、いよいよ《アクラスナイン》との戦闘が始まる。初めての戦闘の仕事であり、大きな作戦である。


 作戦前日、昼。


 作戦に参加する幹部との顔合わせの時間だ。


 (緊張する……)


 部隊を率いるということは責任を持つということ。つまり、隊員の死は隊長の責任である。他人を死を背負うということは18歳の少女にはあまりにも重すぎる。


(ふぅ……落ち着け、私。今まで通り戦うだけ……)

 


 部屋にはこの作戦に参加する幹部3名と隊長4名がいた。


「よし、全員揃ったな」


 そう言ったのはディクトーだった。


「一人づつ軽く挨拶をしよう。本作戦の総司令を務める、幹部のディクトー・ハッドマンだ。よろしく」


 次に話し始めたのは、前回の会議で初めて見た女性だった。


「幹部のサシア・ロイドだ。よろしく」


 大人びていて整った顔立ちをしている。サイバースーツを着ており、見たところ若そうである。


「おい、水蘭。」


 と言われて水蘭と呼ばれた男はゆっくり話し始める。


「水蘭……よろしく……」


 と言ったっきり寝てしまった。


「……ねぇ、あの人大丈夫なの?」


 と朧に小さい声で聞く。すっかり朧とは打ち解けていた。


「まぁ、あの人は大丈夫だ。実際、飛警団最強との呼び声も高いし、実力は本物だ」


 あんなやる気のなさそうな人が……?信じられないなぁ


「リーサ。お前の番だ」


 とディクトーに言われ


「え、えっと、第一部隊隊長リーサ・レインメアです。よろしくお願いします」


「第二部隊隊長の月谷朧。よろしく」


 そしてまた、前回の会議で顔だけ見たことある人たちの番になった。


「第六部隊隊長のヤザト・テルミアよ。よろしく」


 そう言ったのは赤褐色の髪をしており、キセルを持っている大人の女性だった。


「俺が第八部隊隊長の、ヒーキック・ノーレイク。ヨロシク!」


 と、挨拶をしたのは、サングラス金髪アフロ金衣装の男性だった。


「ということで、このメンバーと隊員たちで本作戦は行われる」


 ディクトーは地図を広げ、会議は進んでいき、いつの間にか終わってしまった。


「……以上だ。質問はあるか?……では、解散。朧は《偵察部隊》としての件で少し話があるので残ってくれ」

 

「あの、偵察部隊って?」


「あぁ、話してなかったな。第一から第十までの主力部隊の他にある偵察専門の部隊だ。俺は幹部だけでなく、その部隊の隊長も兼任している」


「俺もその部隊の一員って訳だ。機動能力が高かったり、情報収集能力に長けている者の一部は、所属部隊と兼任してる。お前の隊にも数人兼任している者がいる。正式書類の名簿には明記されてるはずだから確認しておくといい」


◇◆◇◆◇◆


 朧との話を終え、部屋を出たディクトーの前には、ヘロイックが待っていた。


「ヤア、待ってたヨ」


「ちっ、何の用だ」


「おやおや、キミはわかってるはずダヨ」


 ヘロイックは不気味な含み笑いをし、ディクトーの耳元で話す。


「《彼女》の戦闘データ、しっかりと集めてきてくれたまえヨ。まだ全然足りナイ」


「……あぁ。わかってる」


 ディクトーは足早にその場を後にした。


◇◆◇◆◇◆


 夜。


 簡単に寝られるはずもなく、ひたすら時間が流れてゆく。


(寝れない……こんなんじゃダメだ……)


 剣を振れば気が落ち着くと思い、剣を持ちベッドから出て寮の外へ出る。


(あれは……)


 そこにいたのは、自身の体ほどの巨大な剣をひたすら振るカロの姿があった。


「やあカロ君。いつもここで?」


 と相手にされないだろうと思いながらも話しかけた。しかし意外な返答が返ってきた。


「……まあな。何の用だ」


 きょとんとする。そんな返しをされると思っていなかったからだ。


「なんだその顔。質問に答える気はねぇってか?」


「あ、ごめん。まさか相手にされるとは思ってなくて」


「なのに話しかけてきたのか?変な奴だな」


 ふふっと笑みがこぼれる。


「なんだお前……気持ちわりぃな」


「ちょ、ちょっと!そんな言い方ないでしょ!?」


「知るか。用がないなら失せろ」


 別に用があったわけじゃない。だが、もう少しだけ話していたかった。


「明日、同じ小隊だし、少しはお互いのこと知っておきたいなって思ってさ」


 作戦は基本、三名の実働小隊に一名の情報支援で一組の小隊を組み、行動する。リーサの小隊はリーサ、ルイカ、新、カロの四名で構成されている。まだ慣れていないリーサの代わりにルイカが第一部隊全体の小隊を考えてくれたのだ。


「あぁ……そうだったな。ったく、なんで俺がお前らと」


 リーサは決心した顔で、剣を振り続けているカロの方を向く。


「私のこと、信用できないのはわかってる。だから、信用してとは言わない。けれど、私は必ず成果を出す。あなたたちに信用される隊長になってみせる」


「だったらなんだ?」


 え?


「お前のことなんか知らねぇよ。俺は俺のやり方でやるだけだ。隊で仲良くやりたいならそうすればいい」


 剣を背負い、寮へ戻ろうとするカロを引き留める。


「ま、待ってよ!どうしてそんなに反発するの?」


 こちらを振り向いたカロは、極めて冷酷な、だがどこか悲しさを感じるような眼でこちらを視る。


「ぬるいんだよ。そんなんじゃ《お前も》早死にするぞ。まぁ俺には関係ないがな」


 (ぬるい、か…………ただの理想主義なのかな、私は)


「安心しろ、戦わねぇって言ってんじゃねぇ。俺が相手全員ぶっ倒してとっ捕まえる。明日起こるのはそれだけだ」


 カロのその言葉は本気で言ってるように思えた。それだけの決意があることは容易に感じることができた。


(私だって本気だ……やるしかない)


 夜風が普段より肌寒い気がした。自分なりの決意をし、寮に戻った。


◇◆◇◆◇◆


 朝を迎えた。結局あの後あまり寝ることはできなかった。だが、作戦の決行時刻は迫っていた。


 ザーク山。ここの洞窟の奥底にはアクラスナインの本拠地があるとされ、これから大規模な戦闘が起こることになる山だ。各部隊の小隊は配置につき、隊長と幹部は通信機にて最終確認をしていた。


「では、健闘を祈る」


 とディクトーの言葉を最後に、通信は切れ、今度は第一部隊全員に通信をする。


「みんな、よく聞いてほしい。信用に足らない隊長だけど、今は私についてきてほしい。隊長として全員の生還を、健闘を祈ります。」


「準備はできた?G1、G2、G3」


 情報支援としてナビゲーションをするルイカの声が通信機から聞こえる。ここから先は通信を盗聴される恐れがあるため、各小隊にランダムで振り割られた小隊名と番号で呼ぶことになっている。この小隊はG小隊で、G1がリーサ、G2が新、G3がカロ、G4がルイカである。


「こちらG1、全員問題なし」


 二人の顔を見る。新はいつもと変わらない笑顔を見せてくれた。それだけでホッとする。カロはなにか考えている様子だった。


「緊張してるんスか?大丈夫っスよ、僕らが一緒っスから!」


 今は新の笑顔が心の支えになっている。おかげで少し落ち着くことができた。


「うん。ありがと、新君。少し落ち着いたよ」


「おい、お喋りはそこら辺にしとけ、もうすぐ合図がくる」


(……いよいよ本当に始まる)


 飛警団に入団してから初めての命を懸けた戦い。いつ殺されてもおかしくない戦場。今日、このザーク山が血で染まることは明白だった。


(父さんのためにも、こんなところで死ぬわけにはいかない……!)


 通信機に連絡がきた。開戦の合図だ。


「よし……行くよ、二人とも。ルイカちゃん、情報支援よろしくね」


 新、カロの二人とともに洞窟の中へと足を踏み入れた。

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