十六話 よくある世界
こういう光景の世界に気付いたら居たっての多いですよね。
肩にタオルを掛け、火照った顔を手で仰ぎ冷ましながら、暗い廊下を歩いていく。
「は〜明日は楽しみだな〜」
廊下に点々とある窓が、月明かりを差し込む。葛葉は、あははーと自分の見つけた一握りのチート保有者なり得る可能性を、明日試せるのだ。ワクワクしない訳がないだろう。
「……チート持ちか」
今思えば、自分は何故こうもチート能力を欲するのか、この世界で生きていくためなのか、楽したいからなのか。自分はなんで能力を欲するのか。
「チート能力持ったら、私は何すんだ?」
チート能力を持って、俺TUeee! がしたいのか。というか、この世界で何をすれば良いんだ? 成り上がるだけで良いのか? 一体何すれば……。瞬間、世界の色が反転し真っ白な世界が元の世界を飲み込んでいく。そしてあっという間に、世界は真っ白く、どこまでも続く果てしない地平線が広がる世界へと変貌した。
「……は?」
一瞬のことに、葛葉は飲み込めず唖然と呟く。真っ白く以外に何もなく、特筆すべきはあの地平線のみだろう。360度全方位が、あの地平線に続いる。
「――っ! 体が戻ってる……!?」
ふと、下に目を向けるといつもは必ずある、小振りな双丘が無く、前世の男の時に鍛えた胸筋しかない。下にも長らく家出をしていた息子が帰ってき、安堵と共にあの体に慣れていた自分を凄えと思うのだった。
『――誰?』
「――っ?」
そうしていると、後ろから声が掛けられ、二つの意味で葛葉は驚愕する。一つはこんなところに誰か人が居たということ。二つはその声が、女体化時の時の葛葉の声だったのだ。振り返り、葛葉は目を見張った。地平線しか無いはずの世界に、たった一本。たった一つの真っ白な大樹が聳え立っていたのだ。
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