十四話 物は大切に
本当に序盤に持つ武器じゃないですよね。
ドヤ顔がイラッと来るが、この仕事っぷりだ、怒りを抑えるのが筋ってもんだろう。しかもこんな時間が掛かる武具を、半日も掛からず作った点も高い。
「かなり硬度の高い鉱石と、魔物の鱗を使ったよ。ここらの魔物じゃ傷一つ付けれないだろうね」
「序盤ならではですねー」
よくゲームでもあるわ。と序盤によくゲット出来る、圧倒的序盤キャラにこれはオーバーキルだろって装備だなこの盾の性能に、葛葉は空笑いしか出ないのだ。
「そして、魔力を込めることで、刃が出て来るから。敵と戦う時とかに、魔力を流し込めば直ぐに使えるように出来るよ」
千佳は話しながら、純白の盾を手に取り掲げると同時に、盾から刃が出てきた。今、千佳はこの盾に魔力を流し込んだのだろう。
この世界の武器や防具は魔力を使ったりする物が多いらしい。防具は楽に身を守れるし、武器は場に応じて形を変え魔物との戦いに余裕を与えてくれる。それに、魔力を使うと言っても少量なのだ。証拠に、魔力量数が極めて少ない葛葉でも、防具に魔力を流しっぱなしでも問題なく、魔物と戦えているのだから。
「……見るに、君の魔力の量はかなり多いからね。魔法なんかを覚えれば、この盾を使いながら攻撃も出来るだろうね」
「す、凄いです……」
「本当に攻守共に最強の盾を作るなんて……」
若干引くわーと思いつつも、唯一無二の本当に最強の盾だ。序盤だけだが。これでパーティーの役割極めが楽になる。
スピード特化の葛葉、オールランダーの律、鬼族の五十鈴。前衛に五十鈴を置き、中衛に葛葉。必要となれば葛葉は前衛に出る。そして律を後ろに置けば、前衛への支援と共に後ろからの奇襲も防げると言う、バランスの取れたパーティーになれるのだ。
「じゃ、私はこれで」
盾を五十鈴に渡すと、千佳はそそくさと盾を包んでいた毛布をグルグルにし虚空庫へしまうと、手を振りながら陽が沈む方へ歩いて行ってしまった。盾は淡く、夕日に照らされる。五十鈴は慈しむように盾を指でなぞるのだった。
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流石に防具とか武器とか強すぎですかね?