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十二話 弱い敵には強お!

あっぶぇねぇ‼︎

晴れ渡る空、燦々と輝き肌を焦がしてくる太陽。そよ風が吹き、服が靡く。草花が揺れ、睡眠導入の曲に使えそうな自然の音が、絶え間無く全方向から聞こえてくる。そんな中、異質な音も混じっていた。


「――っ!」


ドンッ! という打撃の音と、プシャァァァと溢れる血。五十鈴が放った拳が――盾を装着したままの拳が――コボルトの鼻っ柱を折り、鼻血を大量にぶち撒けながらタタラを踏み間合いをとるコボルト。次の瞬間、黒い影が物凄い速さで通過したと思ったと同時に、目の前や律が相対していたコボルトまでが、胴を切断されズレ落ちる。


「五十鈴ー! ナイス〜!」


コボルト達を通り魔のように殺した葛葉は、作戦通りに動いてくれた五十鈴を褒める。

葛葉が刀に着いた血を振り払い、結局最後は布で拭き取り鞘に収めると、律が「私も褒めて下さいよぉ〜」と葛葉に抱き着いたのだ。


「あーはいはい。偉いよー偉い偉い」


葛葉の腰に腕を回し抱き着いてる律の頭を撫でて、半笑いのまま褒める葛葉。それでも律は嬉しそうにしている。葛葉が頭を撫でるのから、顎をコショコショするのに変えると、


「ん〜……ゴロゴロ」

「猫かっ」


と気持ち良さそうな表情をする律にツッコむのだった。五十鈴は遠目で二人のその戯れ合いを眺めながら、モンスターの素材を剥ぎ取る作業の準備を進める。手に持っている盾を外し、準備し終わり剥ぎ取りの作業を始めようとした時。


「――っ!?」


気配を感じると共に、後ろへと地面を蹴り飛び退る。すると地面が膨れ上がり、大きな地響きと太陽の光を遮る程の巨躯が現れた。辺り一帯砂埃が舞い、視界が悪くなり、現れた巨躯の正体も分からない状態の五十鈴は、警戒心を高め、現れた巨躯が攻撃を仕掛けてくるのか待った。


「――ずっ‼︎」


そんな切羽詰まった声が微かに聞こえた――と同時に、グンっ! と視界が揺れ腰に何かが触れている感覚が伝わってきた。


「五十鈴っ‼︎ 大丈夫⁉︎」


声の主は、葛葉だった。葛葉は五十鈴を強く掴み、猛スピードで走っている。何かから逃げるように。そして状況についてけず、何が起こってるの? 状態のまま砂煙の方を見ていると、左右から砂埃へと矢が飛んでいった。


「葛葉さんっ‼︎」


矢を打った人物――律は矢を放ち直ぐに葛葉の名を叫ぶように呼び、葛葉も返事を返す。葛葉が返事を返すと同時に、五十鈴を強く掴んでいた手の力を緩め、葛葉からみて前方にいる律へと、五十鈴を投げ渡した。


「――今っ!」


投げ渡し、五十鈴のことを律がちゃんとキャッチしたか見届けて、葛葉は走っていた方向とは逆の方向に脚先を向ける。そしてまたしても、凄まじい速度でさらに加速する。最早一般人やLv.1〜2の冒険者は絶対に見えないような速度だ。


「早い……」


五十鈴にはそんなことしか言えなかった。無駄に何かを付け足す必要がない。


(いきなり現れて、いきなり攻撃とか……ここらのモンスターには知性があんのか!?)


全速力で走る葛葉は、突如現れた植物型魔物や先月の魔物に文句をぶつけていた。本来、魔物は知性なき獣。本能だけで人を殺し、他の生物を殺す。要するに、ただの気まぐれで人を殺すのだ。気まぐれで、人の、その人の人生が無くなるなんて……あってはならない!


「これで……――っ!?」


刀を構え魔物へと斬りかかろうとした時、葛葉は土煙の中で蠢く何かを視認した。

くねくねと軌道が読めない攻撃を、魔物が放ったのだ。速度は今の葛葉と同等と言った所、もろに脇腹や四肢に食らえば……恐らく粉砕骨折。


(肋骨が粉砕って……助からねーな。――なら!)


死の間際に時間が遅くなる現象が、はたまたただの錯覚か、それかアドレナリンの放出か……。だが、遅くなった時間で、出来ることは……、


「スキル『想像』」


華麗に避ける自分を想像することだ。

横に一閃。物凄いスピードで触手が、葛葉の避けた場所を薙ぎ払った。それをマジかで見た葛葉は、宙に浮いたまま回転し姿勢を正し、五点着地の構えに入る。待つ必要なく直ぐに地面が迫り、葛葉は見事に着地を成功させ、直ぐに走り出す。刀の刀身を横にし、腕に力を込めて溜めさせる。放つ瞬間のは一瞬――。


「これで本当にっ! 終わりだっ‼︎」


振るった刀が土煙を払う。既に一般人ではなくなった葛葉の渾身の力は、魔物を両断し風をも産み出す。並大抵のLv.1ならまず無理だろう。だが、死闘を経験した葛葉はかなりの経験を得ている。つまり、成長したのだ。


「……ふぅ。はい、終わり」


土煙が晴れ、現れた魔物を仕留めたことを確認し、葛葉一息吐くと同時にそう呟いた。

読んで頂き、ありがとうございます!

ぎ、ギリギリですいません!

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