十一話 異世界に本当にこの世界の武器とか持ってったらどうなるんでしょうかね
題名なっが。
「……んー、物によるなぁ今回は」
無機質な声の千佳のその発言に、ほっと胸を撫で下ろす葛葉。やばい時は平気で百万フェル吹っ掛けてくる人なのだ。(まぁその時は冗談で言っていたが……)
「五十鈴は、さっき私が熱く語ってたのでいいの?」
「はい。途中からは聞こえませんでしたけど、最初の説明を聞いてましたから」
「……五十鈴がそう言うなら別に良いけど……」
渋々葛葉は、先程五十鈴へ説明した盾の概要を、千佳へ懇切丁寧に説明し始める。スキルをも活用して、ミニチュア版のもの例に挙げ、説明していく。終始頷いてばかりだった千佳もかなり、葛葉の語る盾のシルエットが掴めてきたようで。その間、律と五十鈴の二人は店内の武器やら防具やらを見ては素振りしたり、まじまじと見たりとしていた。
「……なるほど。攻撃できる盾……ね。面白いね〜、そうだなーそれなら……ざっと十万フェルで良いいよー」
「……――っ。安いですね」
いつもの葛葉の武器の修理代は約十五万フェル。このナイフ自体レアで、かなりの業物らしいからだが。言うてそんな使ってないので、月に一回の大出費感覚だ。いつもの値段より、四〜五万安いのだ。今の手持ちでも全然払える。
「盾だし……うーん、今日中には作れるかなぁ」
「す、凄いですね……」
提案した盾はかなり大きめだ。作るのに一週間は掛かりそうと危惧していたが、どうやらそんな必要は無かったようだ。緋月から聞いた話では、千佳はかなりの腕利き鍛治師なようで、オーダーメイド品や修理品など、本来時間が掛かるであろう仕事を、その日のうちにこなせれるそうだ。
「その間は何かするの?」
「……特には考えてなかったですね。何しましょうか……」
そういえば注文するだけで、後のことは何も考えて無かったな〜。と葛葉は今更ながらに思い出したのだ。何をしようかと、顎に手を当てて身体をのらりくらりと揺らし、うーむと唸る。
「……――ぁ。そうじゃん、五十鈴ー!」
「はい……? 何ですか?」
声を掛けられ、剣の刀身を――何か理解しているような顔で――まじまじと見ていた五十鈴が、はてな顔で葛葉へと振り向く。
「盾の武器作るって言っても、盾で戦闘したことないでしょー?」
「はい、そうですね」
まず盾で戦うと言う時点でどうかしている。本来盾とは、片手剣と共に装備をする武具だ。盾で攻撃を弾き、片手剣で攻撃を繰り出す。典型的な前衛職の、本来あるべき戦い方だ。
ただ、この世界での盾は殆どが、木と鉄で出来たありきたりな盾であり、木が大部分を占めていると言ってもやはり重いのだ。
元の世界の盾は、まず殆どが防弾で透明で……と地面から肩よりちょっと下の所まで届く大きさなのに、片手に警棒を装備でき、軽い為移動が制限されることもない。とまぁ、この世界で盾を使うのは重戦士等の前衛職のみなのだ。
「んなら、今から盾で戦ってみる?」
「えっ――?」
読んで頂き、ありがとうございます!
今回ちょっと少ないです。