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七話 歩む道

読もうと思っていただき、ありがとうございます。

結構題名等、設定を変えました!


三十分後


「はーい、それでは採寸は終わりましたので、あちらでお待ち下さーい」

「は、はい。わかりました」

 あのあと店員に声を掛け、ちゃんとサイズを確認してもらった。

「いや〜良いもの見れましたな〜」

「……」


隣では何故か満足気の緋月が二パァっと笑顔で座っている。


(こういうところは、もう二度とギルド長とは来ない。てか、来たくない)


そう誓うのだった。




ランジェリーショップから、ギルドへの帰路の途中。空が朱色に染まり、大通りの街灯が一つ、また一つと光が灯っていく。


「なんか、異世界感が……」

「あははー、まぁでも安心してね。この街が唯一発展してるだけだからさ、他の街とか国に行けば、異世界感満載の風景が広がっているよ」

「じゃないと困るんですが?」

  

葛葉だって異世界を旅したいのだ。あっち行ってこっち行ってと、パーティーメンバーと面白おかしく、楽しい旅をしたいのだ。


「あと、これからどうすんだい?」

「……どういう意味ですか?」

「まぁこの異世界での今後やその体について。その体になったからには色々と考えることがあんるじゃないかい?」

「そう……ですね」


緋月の言う通りだ、この先一生このままなんだ。これからどうするべきか……。


「とりあえず、一人称は私で行きますね」

「へ〜何故だい?」

「俺っ娘もいいには良いんですけど、多分この容姿には合わないんで」

「ははは、確かにそうだね〜」


一人称が俺が合うのは、褐色系獣人だとか魔王軍の女幹部だとか、そんな感じのキャラだろう。今の葛葉には合わない。


「一人称なんて、何でも良いと思うけどなぁ〜」


確かにその通りだが、自分に合うのでも良いと思うのだ。葛葉は店の窓ガラスの前で立ち止まり、ガラスに映る自分を見つめる。

やはり前世と全く一緒じゃない。どちらかと言うと妹に似ている。血は繋がっていないのにだ。目は死んだ魚のようで、まるでやる気が感じられない。髪も少々ボサボサだ。


「……やっぱり性転換したんだな」

「……落ち込んでいるのかい?」

「いや、そうですね。落ち込み半分、嬉しさ半分ですね」

「……? 葛っちゃんは女の子になれて嬉しいのかい?」

「えっ? 違いますよ!? 異世界に来れたのが嬉しさ半分ですよ!」


 変な誤解されるとこだったー。危ねぇー! 葛葉は内心で額の汗を拭い、一息付く。


「……まぁ、性転換して、落ち込んでるってわけじゃないですし。多少は思うところもありますよ?」

「例えば?」

「ブラの違和感とか、肩が凝るとか、髪が鬱陶しいだとか」


膝まで届く髪はかなり鬱陶しい。それに、この身体になってからやけに肩が凝るのだ。対して重いものも持ってないのに……。

と葛葉は自然に緋月の地雷を踏んでいた。


「へ、へぇ〜」


緋月は怒りが半分入った声で相槌を打つ。それに葛葉は気付かない。


「まぁそれでも、結局は自分な訳ですし。誰かに手取り足取り教えて貰いながら過ごすしかないですよ」


そう表では微笑むが、裏ではいっつも他力本願の自分に反吐が出そうだった。

前世でもそうだった。自分は何もせず、部屋に引きこもり、妹や義母に面倒をかけ続け、そして何も返せず死んだ。葛葉は自分を許せない。


「ボクは気ままに異世界を楽しんだら? って思うけどねー」

「気ままにですか?」

「そ。せっかく異世界に来たんだよ? 社会性だ社交性だなんてない異世界だよ? 自分が満足するまで、自由気ままに過ごせる世界なんだから!」


緋月は葛葉に振り向き微笑む。その笑顔は前世なら、一発で惚れてしまいそうな、そんな美しく可愛らしい笑顔だ。


「あーだこうだ言っても仕方ないよ。そんなこと言ってる方が損しちゃうし、人生で失った時間は戻ってこないんだから。今を、この一瞬を、刹那でも楽しまなくっちゃね!」


葛葉は心中で、この人だからこそ言えるのだろう、とそう思ってしまった。誰よりも、きっと世界で一番この世界を思う存分楽しんで、気ままに生きてきいる人だから。


「……そうですね」


葛葉は迷いを断ち切り自分がどうなろうと好きなように、この世界を謳歌する。そう決めたのだ。

読んでいただき、ありがとうございます‼︎


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