二話 届いたのは招待状でした
少し過ぎちゃいましたが堪忍して頂ければなと……
野菜を食べやすいように適切な大きさにカットしていく。トントンと包丁がまな板と当たり音を鳴らす。
グツグツと水が沸騰し、葛葉は慌てて火の強さを弱めた。
カットした野菜をザッといれ、程よく柔らかくなるまで煮込む。
その間に別の物を作り始めた。
今日買ってきたばかりの肉を切り分けていく。
―――葉加瀬が律の容体を診にきた日から一週間。律は未だ目を覚ますことはなかった。
討伐作戦の日から合計で約二週間も経っていた
「鬼丸、お皿の準備手伝って」
「しゃーないの〜」
リビングのソファに寝そべっていた鬼丸に声を掛けると、鬼丸はゆっくりと動いた。
踏み台を使い食器棚から三人分の皿を取り出しダイニングテーブルへと並べていく。
「む? そういや五十鈴はどうしたのじゃ?」
ふと鬼丸がこの場に居ない五十鈴に気が付き、料理中の葛葉へ尋ねてきた。
そんな鬼丸に対して葛葉は呆れたような顔で、
「五十鈴にずっと負担かけてたから、今日はゆっくりさせてあげようって決めたでしょ?」
「ん? そうじゃったか?」
はぁとため息を吐き葛葉はやはりかと肩を落とした。そう話していた時は夜も遅く、鬼丸はウトウトとしていた。聞いていないだろうなと思っていたが、案の定だった。
「でも、もうそろそろ帰ってくると思うよ」
「ほう、迷子になっとらんと良いのう」
「自分のこと言ってる?」
トンチンカンな寝言を言っているのかと思い、鬼丸を見やるも本気で言ってそうだった。
葛葉は今回短く息を吐き諭すように言った。
「ご飯ができるまでゆっくりしてていいよ」
と。鬼丸はそれを聞くとすかさずソファの下へ向かい、寛ぐのだった。
そして葛葉は止まっていた料理の手を再開させるのだった。
―――暫くして、葛葉が出来上がった料理をダイニングテーブルに運んでいる時に、五十鈴が帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「おっかえり〜」
「腹が減ったのじゃ〜」
葛葉が湯気を立たせる料理を置いて、リビングの扉の前にいる五十鈴に声を掛ける。
「手洗って食べよ。私もお腹すいちゃった」
そう言って微笑んだ。
「迅速に手を洗ってきます」
それを受けて五十鈴はそう言って洗面所へと向かうのだった。
それを見送っている葛葉の隣で、うむうむと首肯をする鬼丸。葛葉はそんな鬼丸の頭を優しく叩いた。
「鬼丸も手洗ってきて」
「……バレとったか」
「隠せてなかったけどね?」
鬼丸の苦しい言い訳に事実を述べてやり、背中を押して洗面所へ向かわせた。
そして戻ってきたら五十鈴と共に席に着いた。
あとは鬼丸のことを待つだけだった。
「あ、葛葉様。こちら、葛葉様当ての文が届いていたそうです」
そこで五十鈴が思い出したように一枚の手紙を取り出した。
葛葉はそれを受け取って、裏表を見た。
なんの変哲もないただの紙だ。ただ醸しでる高級感。
「……なんだろ」
『創造』でナイフを造り、手紙を開けた。
そして中に入っていた紙を取り出し文面を読んだ。
かなり長い文章を読み進めていくと、気になる一文があった。
「貴殿の今までの行いに対して、我々王都中央ギルド長並びに、国王はそれに見合った名を授ける。……」
「……」
黙りこくる二人。
葛葉はどうにか次なる文章も読み進めた。
「それにあたって、鬼代葛葉殿を王宮へと招待する。……これって」
「招待状、ですよね……」
それも王宮への。
二人が書かれていた内容に戦慄し、固まっている中、バンとリビングの扉を開けて、
「手洗ったから早う食べるのじゃ‼︎」
と何も知らない鬼丸が元気にそう言うのだった。
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