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十三話 危機一髪

「い、いえ! 私には、これくらいしか……」


 あははと渇いた笑みを浮かべ謙遜するシスター。謙遜のはずが、どうして謙遜に聞こえないことを疑問に思い、葉加瀬は首を傾げた。


(絶対防御の再構築には……魔力が足りないか。あと二発打てば、私は使えない木偶の坊に)


 冷静に状況を把握し、葉加瀬もまた渇いた笑みを浮かべた。

 その時だった、ドンッと葉加瀬のもたれ掛かっていた木に鬼丸が着地したのだ。

 いつになく真剣な顔付きで。


「……なんなんじゃ彼奴(あやつ)


 と信じられないと言った、驚愕の顔をしていた。


「十と三度(みたび)、殺したはずじゃが?」


 あの短時間で十三回殺したのもそうだが、鬼丸が押されているということも、葉加瀬を驚かせた。

 眉を顰めもう一度飛び掛かろうと鬼丸が足に力を込めた瞬間、目の前に尻尾があった。

 鬼丸の顔から血の気が引き咄嗟に金棒で防御した。

 次の瞬間、鼓膜を突き破るような轟音が鳴り響き、ブワッと葉加瀬たちの身体が揺らいだ。


「……っ」


 木の幹ごと飛ばされた鬼丸のことよりも、葉加瀬は目の前の存在に目が釘付けになっていた。

 音速を越える尻尾に、鬼丸相手に善戦する様、何もかもがおかしい目の前の個体。

 変異個体と言って片付けるにはおかしいが過ぎるのだ。

 ふと横を見れば、シスターがガクブルと震え今にも気を失ってしまいそうだった。

 なす術なし。

 ギロっと目を向け、顔をゆっくりと向けてくるサラマンダー。この窮地を脱することはできない。

 死を覚悟した、その時だった。

 目の前に炎が現れたのだ。


「―――やっとっ………追いついたぁっ‼︎」


 その炎はサラマンダーの前に立ち威圧した。

 そして炎の中から聞こえてきた声と、その背格好は、たった一人。


「葛葉、ちゃん……」


 傷こそないけれど、滝のように大粒の汗を流して、その上息を切らしている葛葉だった。


「っ、葉加瀬さん……。鬼丸ーッ‼︎ 五十鈴ーッ‼︎」


 葛葉は葉加瀬の姿を確認すると、最初は安堵の表情を浮かべたが、次には申し訳なさそうに表情を歪めた。

 そして大声で二人の名を叫んだ。

 葛葉が叫んでから数秒後、ドゴンッと大木を殴り飛ばし、額に血管を浮き上がらせた鬼丸が姿を現した。

 次にパッと葛葉の横に突如として現れた五十鈴。既に盾を構えていた。


「私達を全力で守って」

『……』


 葛葉の予想外な言葉に二人が顔を見合わせるが、葛葉に何故かは尋ねず、二人は歩みをサラマンダーへと向けた。


「リベンジマッチじゃあ、次から本気で行ったるからのお?」

「全力でサポートします、鬼丸様」


 二人はそう言いながら歩いて行き、パッと姿を掻き消したかと思えば、サラマンダーの巨躯が空へ打ち上げられた。

 次の瞬間、上空に現れた影が踵落としで地面に戻した。

 そんな激しい戦闘の音を背に、葛葉は傷だらけの葉加瀬の下へやってきた。


「……」

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