四話 聞いてた話とちょと違う
真っ白な視界から一面緑な視界へ一瞬にしてと変わった。葛葉達は『不帰の森』にテレポートしたのだ。
「周囲を警戒しつつ散開!」
一人の冒険者がそう指示を飛ばすと冒険者達はその通りに動いた。
普通ならば我が強い冒険者達が従うことなどあり得ないのだが、今回のような確実に自分の命が危うくなるような戦闘においてはキチンと指示通りに動くのだ。
「……居ない、のか?」
「気配がねぇな」
「……」
何も起きない状況に冒険者達の警戒が緩んだその一瞬、
「え?」
一人の冒険者の身体に何かが巻き付いた。
「……っ、おい! 今すぐそれを切れッ‼︎」
その声に近くに居た葛葉が律が、ベテラン冒険者三名が剣を斧をナイフを刀をモルゲンシュテルンを構え駆け出した。
がそれよりも早く、何かが巻き付いた冒険者の身体が宙に浮いた。
「葛葉さん!!」
「っ!」
律が葛葉の名を呼ぶ。それと同時に葛葉は地面に片膝をつき、ホルスターから銃を抜いた。
森に三回乾いた音が鳴り響いた。
硝煙の向こう側で、三発全て命中し出血した何かが冒険者を放し森の闇に消えていった。
ドサッと落とされた冒険者は苦鳴をあげていた。
「がっああ‼︎ いてぇ! いてぇ!!」
葛葉と律が駆けつけ冒険者を手当てしようとして、息を呑んだ。
「火傷、これが……?」
何かが巻き付いていた胴の部分は爛れ見るに堪えない様だった。人体の焼ける匂いもしており、今すぐにでも立ち去りたくなるほどだった。
「律っ、ポーション!」
「っ、はい!」
後ろにいる律がアイテムポーチからポーションを取り出した。
それを受け取った葛葉はポーションの蓋を開け爛れている皮膚に掛けた。
すぐさま再生が始まるが、それはさらなる苦痛の始まりだった。冒険者が苦鳴を上げたジタバタと暴れ始めたのだ。
「っ! ポーションじゃ完治しない……っ。律! 回復魔法使える人のところに運んであげて!」
ポーションでは力不足だと気付き、葛葉は律に頼んでナイフを手に、駆け出した。
律が冒険者を抱えて後方に駆け出すのを尻目に、葛葉は先のベテラン冒険者達の居る前方へ進んだ。
バッと茂みを抜けると、周囲を警戒しているベテラン冒険者達と合流した。
足下には先程の何かがあった。
「おぉっと英雄の嬢ちゃんか!」
「アイツはどうなった?」
葛葉に気がついた冒険者が警戒を解き、先程の冒険者について尋ねてきた。
「致命傷ではないですが、ポーションでは回復出来ませんでした。なので、回復魔法が使える人の下に」
「賢明だな、ありゃかなりの火傷だったろ?」
葛葉の話を聞き指を弾きまた尋ねてくる冒険者。
頷いて葛葉はナイフを構えた。
「あれ食らったら不味いですよ」
「ちげぇねぇ」
周囲を警戒し、葛葉はベテラン冒険者三名と行動を共にするのだった。
足下にあった何かは、よくよく見れば舌だった。
「っ」
葛葉達が移動しようとして、目の前の木が薙ぎ倒された。
「おいでなすったなぁ!」
全長三メートルと言う情報だったはずが、葛葉の前に現れたそれはまるでトラックのように巨大だった。
「バカっ! 避けろ!」
呑気なのことを言う明るい冒険者だったが、今まで無口だった女性冒険者の言葉に、それぞれ好きな場所へと避けるのだった。
葛葉達がいた場所は断割し土煙が上がっていた。
「クソが、コイツは骨が折れる相手だな」
斧を持った冒険者が荒い口調で愚痴を吐く。
葛葉もそれには同感だった。
「まぁまぁ、やるっきゃないだろ!」
先ほどから明るい冒険者がモルゲンシュテルンを振り回して構えた。
葛葉もナイフを構え、その隣にいた女性冒険者も武器を構えた。
「行くぞぉ!!」
明るい冒険者の掛け声と同時に葛葉達は走り出した。
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