十話 攻略本があったなら
―――机の上の物をどかし、葛葉は一冊の古本を開いた。
パラパラと捲っていき先ほどの魔獣『ゼノ・サラマンダー』のページを探す。
葛葉が開いた古本は、大体の魔獣・魔物の情報が載った図鑑だった。
パラパラと、パラパラと、そしてだいぶ捲ったころ、クエストに書かれていた絵と同じ絵を一瞬目にした。
ページを戻していき一枚一枚見ながら捲っていくと、遂に目的のページを開くことができた。
「ゼノ・サラマンダー。基本的に魔族領の奥地『黄金の大地』に生息している……魔族領の奥地?」
思いがけ無い生息地に疑問符が浮かぶが、気にせず情報に目を通した。
「硬い鱗に鋭い牙と爪、全長三メートル、体重150キロ……ね」
のしかかられたら一巻の終わりだろう体重と、絵を見るに長い前足と後ろ足。
絵からわかるのは他にも、引っ掻かれたら腕がスパンといきそうな確かに鋭利な爪や鞭のように細くしなやかそうな長い尻尾、あとはゴツい頭部だった。
だが図体だけ見ればもはや背びれのないディメトロドンにしか見えず、葛葉はここはペルム紀だった? と苦笑するのだった。
「調べれば調べるほど勝ち目がない気がする……」
まず十兆度の炎が問題なのだ。
この古本は図鑑な訳で、攻略法が書いてるわけなく、十兆度の炎の対処法は謎だった。
「敵意を持った……魔力の籠った攻撃はダメなわけだから。魔法使いは囮にしかならないんだよね」
鬼丸の言っていたことが正しければそうなる。
判定が分からないが、だがそれが本当なら。
「良いのがあるじゃん」
1.5キロメートル先の人間の胴体を両断したという記録を有する対物ライフル。
今の葛葉では『創造』で部品を造り、それを組み立てないといけないが、そんなのは今までで嫌と言うほどやってきた。
その上葉加瀬によって銃器の殆どの内部構造は頭の中に叩き込まれた。故に作る事は可能なのだ。
「あとは誰に撃たせるか……ん〜」
鬼丸と五十鈴には荷が重すぎる。異世界人で、自分専用の武器しか扱っていないからだ。
すると残りは葛葉と律。だが葛葉はきっと前線に出ないといけない。
「いや、出ないと」
それが【英雄】の使命だからだ。
故に残された選択肢は律。
スキル【千器万器】。どのような武器でも達人級に扱うことができる、かなりのレアスキルらしく、あの葉加瀬が驚くほどらしい。
「ドラグノフも律に持たせて正解だったし……律には悪いけどやってもらおう」
今は鍛錬で掻いたであろう汗を風呂に入り流している律を思い浮かべながら、葛葉は早速作業に取り掛かるのだった。
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