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六話 日々は楽しくて

 注文したメニューが届き早速食べ始める鬼丸の横で、葛葉は鬼丸の口周りに大量に付いたタレを拭き取っていた。


「うんまいのじゃ〜」

「鬼丸、ほっぺ! なんでこんなに付いてるの!?」


 口周りどころか頬にまで付いているタレに驚きつつも葛葉はゴシゴシと拭き取るのだった。


「葛っちゃんはママが似合うね〜」

「変なこと言ったら冷や水掛けますからね?」

「あはっ、気付かれちった?」


 葛葉にママみを感じる緋月が正直な感想を言い、その後願望を口にしようとして、冷たい水の入ったコップに手を添える葛葉に阻止されるのだった。


「わしが居るのも忘れるでないぞ」

「……とほほ、ボクに発言の自由ってないのー?」

「「ない」」


 キッパリと同時に揃って言われてしまい緋月は目端に涙を湛えながら肩を落とすのだった。


「んー、ん?」


 発言の自由がないことを知った緋月が嘆息しつつ新聞に目を落とすと、そこに気になる文言を見つけたのだった。


「ねね、葛っちゃん」

「なんですかー?」


 鬼丸の世話をしつつ緋月に返事を返す葛葉に、緋月はさらっとなんでことないふうに言った。


「なんか連邦の端っこでキノコ雲が観測されたってー」

「へーそうですか。? ……?」


 緋月のなんてこともないふうな口調で語られる話に、葛葉もなんてこともないふうに返事を返したが、喉に突っかかる小骨のような、何がモヤっとした感覚に、緋月の話を頭の中で反芻させて、はたと気がついた。


「キノコ雲⁉︎」

「わ、どったのー?」


 葛葉の驚愕の声に、緋月がビクッと驚き、隣でバーガーを頬張っていた鬼丸も疑問符を浮かべながら葛葉を見た。

 立ち上がって大きな声をあげてしまった葛葉は、ハッと気が付いて口元を抑えて座り込んだ。

 そしてヒソヒソと緋月へ話の詳細を聞くのだった。


「キノコ雲ってどういうことですかキノコ雲って」

「やー、ボクは知らないよ? ただ観測されたんだって」

「……この世界、原爆か水爆でもあるんですか?」

「まっさかー。あったとしたらね停戦なんてやってないでしょ?」


 葛葉の疑問によくよく考えればそうだという回答をする緋月。

 葛葉はじゃあと、キノコ雲原因はなんなのか思考を巡らせ始めた。


「んー、そんな気にしなくていいんじゃなーい? 魔法でもキノコ雲を発生させることはできるしぃ」


 そんな葛葉に気にしても無駄だと緋月が納得させようとするが、葛葉はでもと言いたげな顔で緋月を見てきた。

 そこで緋月はどこからともなく伊達メガネを取り出して、スチャッとスマートに掛けた。


「大体キノコ雲ってぇのはさ、局所的に強烈な熱源が解放されて、そこんとこで強烈な上昇気流が発生して外気を巻き込みながら上昇・成長しぃ、ある程度上昇すると対流して生ずる雲っしょー? 全然、自然でも起きるよー。火山の噴煙とかもそうでしょ? それに小規模のなら特殊撮影の爆発効果でも再現できるし」

「……急にどうしたのだこやつ?」

「緋月さん、怖いです」


 急に解説をし始めた緋月に、普段とのギャップが凄すぎてもはや怖くなってしまった葛葉と鬼丸。

 うぇ!? と逆に緋月が驚き。二人の予想外な反応に緋月はおよよと、涙をちょちょ切らせるのだった。


「うぅ……。ん、お腹すいたお」

「切り替え早いですねー」


 泣き真似をしていた緋月だったが、お腹の虫が鳴いたことでスッと切り替えて、メニュー表を手に取ったのだ。

 葛葉が苦笑しつつそういうと緋月は自慢気にドヤ顔で、


「切り替え早くしないと嫌なことばっか考えちゃうからね!」

「つまり逃げ、ですか」


 緋月の言葉を聞きつつ葛葉はじーっと緋月を見て、ぼそっと今の言葉を聞いて思ったことを口にした。

 すると緋月は動揺しながらも、


「ちょ、に、逃げてないやい! このボクが何から逃げるってんでい!」

「動揺しすぎて江戸っ子になることってあります!?」


 葛葉の言い分を否定するはずが、口調が江戸っ子になり酷いどころではなくなってしまうのだった。

 そんな緋月に葛葉はクスクスと笑った。


「……楽しいかい?」

「……? ―――はい! とっても」


 そんな葛葉を見て緋月は満足そうに尋ねた。

 葛葉は急な緋月の言葉に疑問符を浮かべつつも笑みを浮かべて返事をするのだった。

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