三話 素晴らしい提案をしよう
すみません、遅ればせながら投稿いたします。
色々と面倒ごとが起きてしまい、その対応で……。投稿できない日が最近多いですが、どうか何卒これからも読んでいただけると、投稿する気力が湧きますのでよろしくお願いします!!
―――翌日―――
葛葉達が朝食を摂っている食卓の席のうち一つに、普段なら座っていない人物が座っていた。
「ねーねー、葛っちゃーん」
葛葉の左隣に座り何も食べずただそこに居るだけの人物、緋月だ。
葛葉は、
「朝からどうしてこの人は居るんだろう」
という目で緋月を見やった。
「あの、全然口に出てるよ?」
目どころか自然と口に出ていた葛葉は緋月の指摘にぽーっと口を開けたまま上の空になったかと思うと、すぐに微笑んで誤魔化すのだった。
「なんの用ですか、緋月さん」
「あ、誤魔化した。……まぁいいけどさ」
とよさそうではない顔をしつつそっぽを向く緋月だったが、用を言うためにすぐに顔を葛葉へと向けた。
無駄の動きが多いなぁと眺める葛葉の顔を見つめる緋月。そのいつもより全然真剣な顔の緋月に、葛葉はもしかしたらと変な期待をしてしまった。
「……葉加瀬の普段の生活って気にならない?」
期待が膨れ上がっていた葛葉は思わずドリフのコントのようにすっ転けたくなったが、口をモニョモニョさせて我慢し、はぁとため息を吐いた。
「生活も何も、何処かの無能さんが仕事をしないせいで、二倍になった仕事をしてるに決まってますよ?」
決まりきった答え、分かりきっていること、そして自分が原因だと理解しているはずだという思い。それら全ての思いを載せた言葉は
「その無能許せないね!」
緋月には届かなかった。
その上、てめーだよと思わず言いたくなる緋月の言葉と首肯に、肩をすくめるのだった。
「ですねー」
「ま、でも仕事好きな葉加瀬でも今日という休日は休んでるよ! 多分!」
葉加瀬が聞いたら高威力の攻撃魔法を放ちそうな緋月の言葉に、葛葉は目頭を抑えた。
この人には何言っても無駄なんだろうなと思いこれからは適当に話を聞こうと思った矢先、
「わしも気になるのう」
鬼丸が食いついてしまったのだ。
バッと鬼丸の顔に目を向ける葛葉に、鬼丸は口元にパンに塗るジャムを付けた状態の顔のまま首を傾げた。
いつもと今のギャップで可愛いと思ってしまう葛葉だが、食い付いた内容が内容で、絶対にダメと横に顔を振った。
「なんじゃ、別に良かろう? 奴も人間じゃ、休みに働く訳がなかろう?」
「良くないから駄目っ」
鬼丸が緋月と似通ったことを言い出し始め、葛葉は語気を強めて否定した。
けちーと威嚇するようににーっと口を広げる鬼丸だが、葛葉にそれは通用されず無視されてしまうのだった。
そんな鬼丸の口元を五十鈴が横から布巾でゴシゴシと拭い取るのだった。
「とにかく、絶対にダメですよ! 仮に仕事をしていなかったとしても、葉加瀬さんには心身共に休めてあげないとなんですから!」
と説得を込めた葛葉の言葉は緋月に、
「大丈夫だよ〜」
やっぱり届かなかった。
ダメだこれと頭を抱えて葛葉ははぁとため息を吐いた。
葉加瀬が仕事三昧になってしまう原因だと理解していない緋月と、面白そうという思いだけで食いついてきた鬼丸。
なぜこうも自分を悩ませてくる者達が二人も身近にいるんだと、葛葉はふと思ってしまった。
「でもでも、葛っちゃんも実は気になってるんじゃないのー? あの、あの! 葉加瀬の休日だよ?」
そんな緋月の悪魔の囁きとも取れる囁きに、葛葉はピクっと肩を跳ねさせた。
悪魔の囁きはとても的を得ていた。
あの葉加瀬の休日。それは葉加瀬という人物と接していれば絶対に気になる事だ。
誰かさんの仕事をしてるのもそうだが、元々多い仕事で休みなんてまともに取れない、あの葉加瀬の滅多にないの休日。
どんな休日をしていればあの仕事の量と向き合えるのか、気になるのは必然。
「……迷惑ですよ」
「ふっ、大丈夫だよバレなきゃ」
「Lv.8の元冒険者にバレないようにするなんて不可能なんですが?」
若干乗り気になってきた葛葉だったが、緋月の言葉に、よくよく考えれば不可能だったことを思い出した。
Lv.8は人外であり、Lv.4という葉加瀬からしたらまだまだ未熟な葛葉では余裕で見つかってしまう。
そんな状態で丸一日、葉加瀬の生活を観察するなんて、たとえ天地がひっくり返ったとしてもありえない。
「あぁ大丈夫大丈夫。僕のポケットマネーで、絶対に、てかボクですら気付けないような性能の隠密魔道具を買ったんだから!」
と自信満々に取り出すのは五枚のワッペンだった。
「……遂にドラ○もんでも送り込まれたんですか、この世界」
「何言ってんの葛っちゃん」
魔道具の時点で秘密道具なのだが、なおのこと秘密道具な物が出てきてしまい、葛葉は可能性の一つを口にしたが普通に違ったらしい。
「このワッペンを服に着ければ気配が百パーセント消えてね、ボクですら、なんなら鬼丸ですら気が付かない魔法が発動するんだ!」
自信満々に言う緋月を見てるとますます秘密道具になってきてしまうが、葛葉は普通にすごいなと感心していた。
「ねね、これならどう?」
「……え、あ。いや、ダメですよ!」
「もぉ〜素直じゃないなぁ」
ツンツンと葛葉の頬を突く緋月に、葛葉は鋼の意志だと言うように腕を組んで断るのだった。
「絶対のぜーったいに! 私は一緒に行きませんからね―――」
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