五話 鬼丸の一日は早い
これが昨日の分になります!
〜鬼丸のday routine〜
鬼丸は目が覚めるとすぐに葛葉の部屋へと赴いた。
葛葉の部屋の扉を開け中に顔だけを入れる。チラチラと部屋の中に自分以外の誰もいないことを確認し、サササと忍び足で葛葉のベッド横まで侵入していく。
この時少しでも物音を立てれば『|対緋月用やけど侵入者殲滅最終決戦兵器《AHAF》』が作動するため絶対に立ててはいけない。
ベッドの中に入ればあとは安心。葛葉のいい匂いと感触、やらない胸に顔を押し付け眠りつくのみ。
葛葉が起床するまであと二時間ほどはあるため、長い間葛葉のことを堪能することが出来るのだ。
これが鬼丸にとって毎朝の楽しみなのだ。
そして二時間後、葛葉が起き出す頃、鬼丸は爆睡をかましていた。
ゴロンと寝返りを打った先にいた鬼丸に葛葉は驚くことなく起き上がった。そう、葛葉も毎日のことで慣れてしまったのだ。
欠伸をしつつベッドから降りる前に、手元のスイッチをポチッと人差し指で軽く押す。すると、地面に張り巡らされていた小さな魔法陣が無効された。
それを確認した葛葉は気兼ねなくベットから降りて、鬼丸が眠るベッドの傍、また欠伸をしつつ着替えを手に部屋を後にしてしまった。
それから一時間後、ガチャっと葛葉の部屋が開けられ、爆睡をかましている鬼丸の下に、
「鬼丸様」
五十鈴がやって来た。朝食の準備が整い鬼丸を起こしに来たのだ。毎朝決まってこの時間に起こしにくる五十鈴によって、寝起きが悪いはずの鬼丸は、
「んみゃ……葛葉は」
「リビングに居ます、鬼丸様も」
「んじゃ……」
ぱちっと目が覚めることが出来るようになったのだ。
眠気眼を擦りながら鬼丸は五十鈴に連れられ部屋を後にするのだった。
そしてリビングにて、ソファに座り太腿までの丈がある靴下をいっぺんに履く葛葉と、五十鈴の手伝いとして盛り付けられた料理を食卓に運ぶ律が鬼丸に気付き微笑んだ。
「はよー」
「おはようございますっ!」
抑揚のない声と元気溌剌な声を聞きつつ、鬼丸は食卓に着いた。葛葉も靴下を履き終えると、鬼丸の隣の席に着席し、準備が整うのを待つのだった。
「鬼丸〜、頭すごいよ?」
「んじゃ〜……んん、五十鈴よ〜」
「はい、お任せ下さい」
葛葉が鬼丸の跳ねまくっている髪をちょんちょんと触りつつ伝えると、鬼丸は忙しなく動いている五十鈴の服の裾を掴んでジャスチャーで頼むのを、五十鈴は意図を汲み取り、承知し準備をパパッと終わらせるのだった。
食卓に全員が座り、葛葉がそれを確認すると、
「じゃ、いただきまーす!」
「いただきます!」
「いただきます……じゃ」
「いただきます」
葛葉が手を合わせ言うのに合わせ、全員がきちんと「いただきます」といい朝食を迎えるのだった。
「はい、鬼丸。あ〜ん」
そんな中、鬼丸は眠気が取れていないのか自分だけでは食事はままならず、葛葉が鬼丸に食べさせるのも毎日の光景だった。
ガツガツと律が超スピードで朝食を食べ終えるのもその一つだ。
「今朝も鍛錬を?」
「んっ……はい! 日々の鍛錬を怠ることは出来ませんから!」
バクバクと食べていた律が五十鈴の問い掛けに胸を張り叩いて、自信満々に答えたのだった。
「律は偉いねー」
「いえ、そんな。葛葉さんの方が大変なんじゃないですか?」
「ん〜、特訓自体はそこまでじゃないんだけどね。けど〜」
自信満々の律を偉いと言う葛葉に、律は謙遜しつつ実際に思っていることを口にすると、葛葉含みのある言い方をして、最後には苦笑をして、
「けど?」
小首を傾げる律に、
「セクハラが酷いんだよね……」
と緋月との特訓に対する評価を口にするのだった。
こればかりは実際に緋月と特訓しなければ分からないことだが、特訓中でも平気でパンツを見て来たり、スカートの中に入って来たりするため色々な意味で疲れるのだ。
「むぅ、許さんのじゃ〜」
と葛葉達の会話を聞いていた鬼丸が、葛葉の言葉を聞きむすっと不服そうに眉を顰めたるのだった。
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