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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第七部 一章——帰ってきた我が家、安らぎの日々——
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十一話 寂しがりやは私だ

十話が昨日の文で、十一話が今日の文になります!

そして一章はこれにて終わりです!

次は第二章!

一の旅立ちから始まります!

 カッポンと何処からか鳴る音を聞きつつ、葛葉は肩まで湯に浸かっていた。

 葛葉達は横並びで全員湯船に浸かっていた。

 はぁ〜と吐息を漏らし葛葉達は目を瞑り湯船を堪能するのだった。


「ああそだ、葛っちゃん」


 ほけーと呆けていた緋月が正気になり隣の葛葉へ向き直って、


「今回の護衛依頼の報酬金だけど、色々と加味して……だぁいぶお金は多くなっております」


 ニコッと最後に微笑み緋月は突き立てていた人差し指を揺らすのだった。


「そ、そうなんですか?」

「そうなんだおー、悪魔に山賊と暗殺ギルドの刺客と戦ったんだからさ。君に至っては誘拐されてんだよ?」


 「ま、その後壊滅させてたけど」と聞いた時は耳を疑ったことを口にし緋月は苦笑を浮かべた。

 誘拐された側が誘拐した側を壊滅させるなんてギャグ漫画でしか聞いたことがないからだった。


「だからだぁいぶ、お高くなっておりまぁす」

「ど、どのくらいなんですか?」


 緋月の強調に気になったのか律が恐る恐る緋尋ねると、緋月はスススと律に近寄り耳元で口を隠しながら囁くのだった。


「―――サンビャッ⁉︎ あひゅっ……」

 金額を聞いた律が驚き短な断末魔を上げて気を失ってしまった。

 ブクブクと口が湯に浸かり呼吸によって泡立ち、五十鈴が慌てて介抱しに向かうのだった。


「……葛っちゃん?」


 そんな光景をただ眺めているだけだった葛葉を見て、緋月は小首を傾げて声を掛けるが、


「……」


 葛葉は反応を示さなかった。

 そんな葛葉の肩をちょんちょんと指で突くと、葛葉は顔を上げて覚悟した表情を浮かべ、


「律、五十鈴、鬼丸。話があるの……」


 話し始めた。

 近いうちに、一日後にこの街から旅立ってしまう少女のことを―――。




 ギラギラ、燦々と輝き恵の光を放つ太陽が真上に鎮座する頃。真っ白な髪の少女は着々と旅立ちの準備を進めていた。

 必要なものとそうでないものを選んで。

「ふぅ……にしても暑いなぁ〜」


 カンカン照りの太陽は無慈悲に熱を届けてきていて、少女―――(にのまえ)をじわじわと焼いている。

 汗も止まらず薄着はもうすでにびしょびしょで、身体にピッタリとくっついてしまい、身体のラインが浮き出ていた。

 が、ここには他に人が居るような場所ではないので、一は安心して作業を続けることができたのだ。

 なんなら裸体でも問題ないほどでもあ……、


「―――一さ〜んっ‼︎」

「ぴっ⁉︎」


 煩わしい服を握り沸騰した頭でとんでもないことを考えていた時、遠くから聞こえてきた声によって正気に戻った。

 が同時に、こんな僻地に人が来たことによる驚きに変な声が出てしまったのだった。


「……って、葛葉ちゃんやん」


 振り返ると、葛葉と葛葉のパーティーメンバー。その隣には欠伸をしながら歩くギルド長様も居た。


「しゃあないやっちゃなぁ、いいって言うたろに……」


 笑顔の葛葉を見つめ、目を細めて呆れるように愚痴を吐くような口調でボソッと呟くが、一の口角は自然と上がっていた。

 しんみりしたのも、悲しいの門出も。一は嫌いなのだ。

 だが来てしまったものは仕方がない。仕方がないから一は笑顔で接するようにするのだった―――。




「―――え、来んでええよって」


 それは昨日の宴会の席のこと。あのギルドに行くのも最後だろうと、最後の宴会の席に参加した時のこと。

 葛葉を見つめ、葛葉と葉加瀬と共に飲んでいる時のことだ。


「どうして嫌なんですかー」

「言うてるやろー、うちはしんみりしたのとは嫌いなんよね。やっぱり嫌になったんよ」


 と言う一の発言は、


「そんなの関係ないです! どんなに嫌がっても行きますからね‼︎」


 葛葉は聞き入れることなく笑みと共にそう言い返した。

 一は「ダメだこりゃ」とやや諦めモードに入った時だった。


「しんみりしたのが嫌い……なんて、言わないでください。そのしんみりは、みんな。一さんが好きで好きで大好きだから、だから悲しいんです。だからしんみりするんです。だからそんなこと言わないで下さい……」


 酒の席の所為だろう、一はそう思った。と同時に本音が溢れやすくなっていない状態でも葛葉は同じことを言うだろうか。


(言うやろなぁ)


 鬼代葛葉とはそう言う人間だった。


「安心しい、うちも言うたやろ? うちもみんなのことが大好きやでって」


 グラスを手に取り、一はニコッと笑みを浮かべた。

 もう、どうにでもなれと。

 それに嫌がっていた理由も、これ以上隠すのは恥ずかしいだけだろうから―――。

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