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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第七部 一章——帰ってきた我が家、安らぎの日々——
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五話 同時レベルアップ

「―――Lv.4⁉︎」


 律のそんな驚嘆の声がリビングに児玉した。Lv.4。今回の任務で葛葉は見事レベルアップを果たしたのだ。


「……」

「それにっ、五十鈴さんもLv.3なんてっ……」


 そしてそれは葛葉と共にレベルアップした五十鈴も同じで、そのことに律は大変驚いていていた。


「いや〜早いねー」


 レベルアップの報告を告げに来た緋月はなんてことなさそうに呑気にアホ毛を動かしていた。

 葛葉のレベルアップの速度は中々に早い。

 五十鈴や律もそれに劣らないほどには早い。

 経験していることが常人とは違うのが主な原因だろうが。


「レベルアップおめでとう、二人とも」


 そして緋月の後ろでは葉加瀬が微笑んでいた。


 ―――葉加瀬は緋月と葛葉がイチャイチャしている時に、遅れてやってきた。

 書類仕事はまだ残っているのだそうが、息抜きも必要とのことで。(ギルド職員に休んでくれと切願されたのもあった)。


「あ、ありがとうございます……」

「ん〜? 葛っちゃん嬉しくないの〜ぉ?」

「え、あ、いえ。その、実感が湧かなくて……」


 Lv.4と言えば、ラグスと同じだ。今のラグスのレベルは葛葉には全く検討はつかないが、それでもあの日々のラグスと肩を並べれたのだ。

 実感が湧くわけがなかった。


「……てことで、今夜は宴だ〜‼︎ ギルドで飲み明かそうよ!」

「―――宴会じゃとな⁉︎」


 緋月が手を掲げそう高らかに宣言すると、廊下の外で不貞腐(ふてくさ)れていた鬼丸が嬉々としてリビングに入ってきた。

 葛葉と酒のことになると鬼丸は物凄くがっつくのだ。


「ふっふっふっ、喜びなよ鬼丸ぅ。普段ならば好敵手(ライバル)だけど、酒の席では友だからね。君が好きって言っていた清酒を取り寄せておいたさ」

「なんとっ⁉︎」


 がっつくのと、それと酒の席になると緋月と鬼丸は仲が良くなる。

 肩を組んではしゃぐほどに。


「……葉加瀬さん、大丈夫なんですか?」


 そんな二人を不安気に眺めていた葛葉は、ギルドの内情を思い出し、葛葉同様二人を見ていた葉加瀬へと声を掛けた。

 葉加瀬はゆっくりと静かに首肯した。


「裏方は裏で頑張るさ。気兼ねなく飲むと良い」


 葉加瀬のその言葉を聞き葛葉は渋々ながらも、じゃあ……と今夜の宴に参加することにするのだった。


「緋月さんは」

「あぁ、今度泣くまで仕事させるから平気さ」


 暗い顔で緋月のことを一瞥した葉加瀬の顔に葛葉は全身をゾワっとさせた。

 未だ怖い顔を浮かべる葉加瀬に愛想笑いで返していた葛葉は、部屋全体を一瞥してから違和感に気がついた。

 1人居ないのだ、1人それは報告を聞いた時いの一番に驚いていた、律がいないのだった。


「あはは……ん」


 五十鈴に目配せするも、五十鈴も気付かなかったのか首を横に振った。


「……」


 葛葉は席を立ち廊下へ向かった。

 廊下に出るが律の痕跡はもちろんない。ゆっくりと階段に向かい二階に登っていくと、微かに物音がした。

 何かを置くような物音が。


「部屋か」


 律の部屋に向かうと、部屋の扉は微かに開いていた。

 そっと扉に近付き扉を開けると、部屋の中には、床に家宝の刀を置き一切の身じろぎをせずに正座する律がいた。

 何をしてるんだろう、とそっと扉をもっと開き、もう部屋の中へ入った。

 それでも律は葛葉の存在に気が付かない。

 否、気が付かないのではなく、他のことに極限まで集中しているからだった。


「……ん」


 瞼を瞑り微動だにせずただ何かをしている律。

 いつもの物腰穏やかな律とは真反対な、キリッとしたかっこいい顔に葛葉は少しだけ驚いてしまった。


 ―――それから五分後。やっと律の身体が動き始め、ゆっくりと瞼が開いた。

 そしてすぐにいつの間にか目の前にいた葛葉に瞠目し、律は大きく仰け反り姿勢を崩して背後に手をついた。


「ど、どどどどうしたんですか⁉︎ 葛葉さんっ⁉︎」

「あ、ごめん。驚かせちゃった?」


 椅子の背もたれに顔を乗せ座って待っていた葛葉は、律の驚きように「おぉ……」と声を漏らしながらも、手を合わせて律に謝った。


「い、いえ、その急に前に居たもので……」

「ごめんね、律が居なくなってて……探しに来たらなんか、精神統一? してて話しかけちゃいけなさそうだったから待ってたんだ」

「あ、そ、そうでしたか。すみません、少し悩みをこの刀に打ち明けていたのです……」


 律の表情が曇り、葛葉は首を傾げながら疑問を馬鹿正直に尋ねた。


「悩み? それ……刀に?」

「はい! お祖父ちゃんの教えです。悩みは自分の半身となるものにだけ打ち明けろ……と」


 急に元気よく懐かしむように語り出した律に、葛葉は刀に悩みを打ち明けるという疑問と、悩みが何か察してしまった。


「……律、その悩み聞かせてれる?」

「っ! そ、それは……っ」


 葛葉の唐突で意地悪な質問に律は悲しそうな表情をして口篭ってしまった。

 尋ねてきた葛葉には全く悪意はない、ただ少しだけ悲しそうではあった。


「私は……律の好きな私は、律の半身に……なれない?」

「―――っ」


 そう言われハッと律は葛葉がなぜ意地悪な質問をしてきたのかを察した。

 意地悪に思える質問も、葛葉にとっては違う。

 あの一世一代の告白を思い出して、律は自然と涙を流した。葛葉への申し訳なさと、自分の愚かさに悔し涙が溢れたのだ。


「っ。……葛葉さん、私っ、私の悩みはですね」


 涙を手の甲で拭い、律は悩みを葛葉へ打ち明けた。

 律が好きな―――大好きな葛葉へ。自身の半身とも言える存在に。


「私だけが、皆さんに……置いてかれている、と言うことですっ」


 律は未だLv.2。五十鈴はLv.3に、そして葛葉は倍のLv.4に。自分だけが取り残されている、律はそう感じたのだ。


「ううん。違うよ律。レベルなんてのはただの目安だよ。私達が戦ってきた敵はさ、圧倒的に理不尽なくらい強かった。でも、みんなの力を合わせて勝てた。レベルなんて関係ない、律はずっと私達と肩を並べて、戦ってるでしょ?」


 震える律の手を取って葛葉は律へ優しく語りかけた。

 今まで戦ってきた強敵達。須らくパーティー全員がいなければ、戦いになどなっていなかった。

 だから今の言葉は葛葉の心からの本音だった。


「っ、ほんと、ですか……? 私は、葛葉さん達の隣で、戦えて、ますか……っ?」


 葛葉は律の震えた声に優しい微笑みと共に首を縦に振って答えた。

 1人でも欠けていたら変わっていた。

 でも誰でも良いわけじゃない、葛葉達と生活を共にしてきた律だからこそなのだから。

 葛葉の答えに律は嬉し涙を流しながら、葛葉に抱きついた。そしてぎゅーっと強く力を込め、葛葉から絶対に離れないと言う気概を感じさせたきた。

 そんな律に苦笑しながら葛葉は、律のサラサラヘアーの上から頭をを優しく撫でるのだった―――。

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