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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第七部 一章——帰ってきた我が家、安らぎの日々——
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二話 ただいま我が家

 聴診器のイヤーピースを耳から外し頷いてから、上げていた葛葉の服を手放した。


「問題はなさそうだね」

「はい……っ」


 服をきちんと着直した葛葉は真隣でまじまじと葛葉の背を見ていた緋月に忌まわしい目で睨んだ。


「……それで、君には話したいことがあるのだが」

「……す、スキルの、連発……ですよね?」

「あぁ」


 葉加瀬のいつも通りの落ち着いた口調。だが今はそれが背筋が凍りそうなほどに冷たく感じてしまった。

 緋月はいつでも葛葉が怒られた時、その時に味方になれるように身を乗り出しているが、葉加瀬の顔は至って普通だった。


「君のスキルはかなり強力なことは知っているね?」

「は、はい」

「……常人ならばそのスキルを一度でも使えば脳味噌が沸騰し廃人となる。それ度に強力だ。それを君は……戦闘中何度も連発した」


 椅子の肘掛けに肘を置き、目頭を押さえる葉加瀬の一挙手一投足に葛葉はビビり散らかす。


「君は特殊だから何度連発しようが平気だが、流石に三つは負担が大きい……。君の謎だった最後のスキル……『英雄』。どうやらこれは歴代―――いや、古今東西あらゆる時代、可能性の先にある未来、時空を越えた先に存在する全ての『時の人物(英雄)』の存在を擬似的に模倣するスキルだ」


 葛葉も緋月も初耳のそのスキルの内容に言葉を失った。歴代ならばまだ理解はできる。

 だが『可能性の未来』や『時空を越えた』などと言う突拍子もない言葉には理解し難かった。

 想像が出来ないからだ。


「君があの戦いで模倣したのは【閃光の黎明(アルバ)】アダルバート・アリステア・ソフィア。違わないかい?」

「……はい。ソフィアさんの……力を……」


 まさかあの力がスキルだとは葛葉は思ってもいなかった。


「君の身体の限界としては、どうやらスキルの同時発動は二つまでのようだね」

「二つ……」


 あの悪魔戦の力は絶大だった。魔法を使わなくてもあの悪魔と互角以上にやり合えていた。

 普段通りならば劣っていた。

 三つの同時使用ができないのなら、この先あの悪魔をよりも強力な敵が出てきた時、葛葉はあのスキルなくして対抗できるのか。

 そんな思いが顔に出ていたのか、緋月が葛葉の肩にそっと手を触れさせた。


「ボクが居る。君の師匠はボクだよ。任せて、君の力になるって決めてるんだから!」

「……っ、緋月さんっ」


 普段の言動からは思えないような頼もしさを見せる緋月に、葛葉の瞳はついつい潤んでしまった。


「危険なことには変わりない、それだけは留意してくれ」


 葛葉と緋月のやり取りを眺めていた葉加瀬は咳払いをしてから、大切なことだと言わんばかりの顔で葛葉に伝えた。


「は、はい!」


 葉加瀬の顔を一瞥し身を引きしてめて、葛葉は威勢のいい返事を葉加瀬にするのだった。




 ―――ザッザッと立ち止まった葛葉は手に持っていた荷物を地面に落として背伸びをした。


「ん〜っ我が家だぁ〜……‼︎」


 数週間振りか一ヶ月振りか、懐かしいと感じる目の前の建物は葛葉達のホームだった。

「たしか、みんなはもう帰ってんだっけ」


 律や五十鈴、鬼丸達とは違い、葛葉だけ怪我や検査等で目覚めてから二日遅くホームに帰ってきたのだ。

 律もまぁまぁな怪我だったらしいが葛葉ほどではなかったらしい。

 五十鈴と鬼丸は鬼の力で自然治癒したため、運ばれて即退院だったらしい。


「よいしょ」


 地面に落ちたボストンバッグを持ち直して玄関扉へと向かった。

 ガチャッと玄関扉を開けると、すぐ真ん前に見慣れた顔があった。


「……ぁ、く、葛葉さん!」


 頭に包帯を巻いた薄着の律がいたのだ。

 ひょこひょことアホ毛が動き、律と葛葉は数秒見つめあった。


「ただいま、律」


「はい! おかえりなさいです! 葛葉さんっ!!」

 見慣れているであろうはずの律の顔は、なぜか物凄く久しぶりといった感覚がして、律の顔をジーッと見てしまうのだった。

 すると律の顔は次第に赤くなっていった。薄着なのもあるのだろうが。


「―――ぬっ? 葛葉よ〜っ!」


 そんな時だった、葛葉の真上から鬼丸の声がしたと同時に、上から何かが降ってきたのだ。

 音を立てて葛葉はその何かと共に倒れてしまった。

 「いてて」と床にぶつけた場所を摩りながら葛葉は上体を起こした。そんな葛葉の腹部の上には二マーッと満面の笑みの鬼丸が乗っかっていた。


「お、鬼丸ぅ、重いぃ」

「久しいのう久しいのう!」

 ズカズカと葛葉の顔に近付いてきた鬼丸はすりすりと、葛葉の頬と自信の頬を擦り始めた。


「あ、うぅ……犬かな?」


 身体はトイプードルなのに行動はゴールデンレトリバー過ぎる鬼丸をどうにか押し退け、葛葉は立ち上がった。


「もうっ……ただいま、鬼丸」

「うむ! よくぞ帰ったのじゃ‼︎」


 そんな葛葉の隣では、腰に手を当てて鬼丸は「むふーっ!」となぜか自慢げに息を吐いたのだった。


「―――葛葉様?」


 そんなやり取りをしているとリビングから五十鈴が顔を出してきた。玄関が騒がしいから見にきたのだろう。

 葛葉の姿を見て時が止まったかのように驚き固まっていた。


「ただいま、五十鈴」

「……。おかえりなさいませ、葛葉様」


 護衛依頼で身に付いた完璧なメイドの作法で五十鈴は葛葉に一礼するのだった。

 再びパーティー全員が一緒のところで生活する。

 楽しい日々が待っている。葛葉は鬼丸に連れられリビングに向かうのだった。

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