四十三話 説明は後日に
えと、本日5日分はお休みします。
たぶん、リズムを整えないと延々と同じことを繰り返すと思いますので……。おバカな作者ですみません!
戦いは終わった。
悪魔の身体が完全に消滅し、死者の魂が天に帰っていく。幾つもの魂の光球が天に昇っている、そんな光景が広がっていた。
そんな空の下、葛葉達が疲労困憊で座り込んでいると、屋敷の庭から悲鳴が聞こえて来たのだ。
その悲鳴に葛葉は咄嗟に動き下を覗いた。
そこには魂を抜かれた空っぽの状態のはずの、戦場で死んだ人々が歩く、光景があった。
「あちゃ〜まずいね。空っぽの肉体に霊が乗り移ったみたいだね」
驚き固まっていた葛葉の隣に唐突にやって来た緋月が、何か知ってるふうに呟いた。
「ひ、緋月さん……あれって」
「中途半端な生者、ゾンビだよ」
屋敷の下でフラフラと歩く屍を指し緋月は説明した。
「まぁでも、感染力は皆無だから、どちらかというとグールなんだけどね」
とどうでもいい事をベラベラと語る緋月にじっと目を向け、葛葉はナイフを『創造』しグールの討伐をしようとした時だった。
ヴィィィンという一瞬の駆動音がすると、次には耳を劈く連続した音が響いたのだ。そして次の瞬間にはグールの身体が細かな肉片となっていた。
葛葉の緋月が目を点にさせ何が起きたと、そう思っていたその時、コツコツと靴音を鳴らしながら人影がやって来た。
どでかいM134を片手で待つ人影、そんなのはたった一人。
「一さんっ‼︎」
葛葉は思わず声を上げて喜んでいた。
「お久やね、葛葉ちゃん。……んで、久々の再会に水を指すアイツら、うちが片付けたる」
一は後ろでズラズラと大量にやってくるグールを指差しミニガンを構えた。
そして躊躇なくスイッチを押した。するととてつもない速さで目の前の敵が肉塊へと変わっていった。
ただでさえ口径も大きいというのに、ミニガンの異常な連射速度で、気持ちいいくらいにグールは倒れていった。
葛葉と緋月が「はぇ〜すっごい」と呆けた面をしていると、また人影が落ち着いた足取りでやって来たのだ。
その人影は葛葉達の下に着くなり、
「―――後は任せるといいよ」
と葉加瀬は口にした。
するとそれを聞いた緋月が脱力し仰向けに寝転がった。葛葉は突然なことに戸惑いキョロキョロしていると、緋月が葛葉のことを引っ張ったのだ。
「葉加瀬が後は任せとけ、って言ったら、もうボク達の出る幕はないよ〜ってこと」
人差し指を左右に振りそう教えてくれる緋月だが、葛葉はこの状況にも戸惑っていた。
「だからぁ葛っちゃん、少し、身体を貸して……ボク、もう限界だぁ」
「え、ちょっと⁉︎」
何をする気だ、と叫びそうになった瞬間、緋月は葛葉の胸の中で寝息を立て始めたのだ。
「……」
まるで赤ん坊のように。すやすやと気持ちよさそうに、葛葉の温もりを感じつつ寝ていた。
「……ありがとうございました、緋月さん」
1番の功労者かもしれない緋月の頭を撫で、葛葉は感謝の気持ちを伝えるのだった―――。
―――そしてその後、葛葉はギルドの病室で目を覚ました。
そして隣で眠っていた緋月に、何があったのかを尋ねると緋月は語り始めた。
緋月が葛葉の胸の中で眠った後、すぐに葛葉も気を失ったらしい。
五十鈴が避難させたメイド達は無事に保護され、傷だらけだった律は今も目は覚ましたが、完治はしておらず引き続き入院となった。
アイシュリングは過度な精神汚染の跡が検査の結果明らかになり、当分は入院とのこと。
クロエは大した怪我はなく、入院等はせずに普通に過ごしているとのこと。
五十鈴は鬼の力で自然と傷は完治しており、クロエ同様なんなく過ごしているらしい。が葛葉の身を案じ毎日部屋に来ているらしい。
鬼丸は今もベッドの下で会話を盗み聞きしていて、葉加瀬は書類整理等の仕事のせいで眠れていないらしい。
一はあの後、屋敷周辺の残党捜索に参加して何人かを捕まえたらしい。
色々と問題は特にはないらしく、葛葉が競うことは何一つないと、緋月は言った。
「私はどれくらい寝てたんですか?」
「一週間だよ。……君はスキルを使い過ぎたみたいだね。前みたいに出血等は無かったけど、脳が爆発寸前だったって、ボクも詳しい話は分からないからよくは言えないけど」
さらっと怖いことを言う緋月に葛葉は苦笑した。
「君は君を大事にするべきだよ……」
「っ……すみません」
泣きそうな顔を浮かべる緋月に葛葉は口を噤み、ほんの少しの間を開けて緋月の手を取った。
「葉加瀬が言うには、あの時の君はスキルを三つ同時に使用していたって……」
「三つ……?」
「うん、そうだよ。……三つ同時にスキルを使えるなんて前例は一つしかないけど、あれは当てにならない。だから君がもしもの時、ボク達が対応できるかどうか分からないんだ……だから、本当に、君は君を……」
「―――しゃらくせぇのう!」
ポカっと本当にベッドの下で話を盗み聞きしていた鬼丸が、不安げな顔の緋月の頭を拳で叩いたのだ。
あいてっ、と緋月が呟くが鬼丸は無視して、葛葉へ目線を合わせた。
「葛葉よ、うぬは好きなように戦うが良いのじゃ。前例がないからどうにも出来ないなどと、腑抜けたことを言う此奴は無視せい。……戦わんといかんときに、戦わない英雄なぞいるものか」
と鬼丸は緋月の言葉を全否定し、葛葉の肩を叩く。
「じゃから戦え」
「あ、う、うん……」
鬼丸の言葉に歯切れ悪く葛葉は返事をした。その歯切れの悪さに鬼丸は葛葉の目線の先を追い見やった。
するとそこには緋月が不服そうな憤怒の顔で鬼丸を見ていた。
ちゃっかりと鬼丸は緋月の頭の上に腕を置き体重を預けていたのだ。
ムカムカっと盛大に膨れっ面を浮かべた緋月に、鬼丸は襲い掛かられるのだった
そんな二人を眺めて、葛葉は「相変わらずだなぁ」と呟き笑みを浮かべるのだった―――。
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