二十五話 血の海で踊りあそばせ
―――息を切らし、辿り着いた屋敷の正面入り口。そこには大量の荒くれ者達がいた。
「おいおい、なんで後ろからこいつが!」
葛葉の存在に気が付いた荒くれ者の一人が得物をこちらに向けながら振り向いた。
他の襲撃者達も遅れて葛葉の存在に気付き武器を構えた。
「まぁいい、お前ら! こいつを殺るぞ‼︎」
襲撃者はたった一人の葛葉を見てドス黒い笑みを浮かべた。
数は圧倒的に襲撃者達に利があるが、今の葛葉にそれは関係ない。
葛葉は手に持っていたM1897をハンドクリップのみを持って、空中でハンドクリップを前後させた。
「掛かれぇ‼︎」
その号令と共に男達は一斉に動き出した。
だが同時に銃声が轟いた。
「―――ひ、怯むなぁ‼︎」
散弾をモロに喰らった襲撃者の一人が頭を吹き飛ばされ即死。
その両隣にいた襲撃者たちは顔半分がズタズタやグチャグチャにされた。
その出来事に怯んだ襲撃者達だったが。
再び号令が出たことで、立ち止まってしまった襲撃者達は走り始めた。
ガチャっとコッキングし、葛葉は躊躇なくまた引き金を引いた。次々と頭が吹き飛んでいくが男達の足は止まらなかった。
距離が近くなると、葛葉はM1897の銃剣を使い次々と襲撃者達を斬り、突き、裂き、掻っ切っていった。
「な、何だこいつ‼︎」
ショットガンを捨て葛葉はナイフを取り出した。
すると近くに居た襲撃者達の首から一斉に血が吹き出しドタバタと次々に倒れていった。
何処からともなく降り立った葛葉に、襲撃者が剣を振るうが葛葉はそこに居ない。
襲撃者が肩に違和感を覚え見やると、その肩に手を置きながら飛び上がり背後に着地する葛葉。
ザシッと、一瞬にして襲撃者の命を刈り取った。
「ば、バケモンが‼︎」
襲撃者達が大勢で斬り掛かるものの、葛葉はのらりくらりと華麗にその剣撃を避けながら、襲撃者達に確かに近付いて切り裂いていく。
明らかな実力差がそこにはあった。
首が飛ぶと、次には手首とさらに首が、次には両足の腱と首が。とにかく地面には大量に襲撃者達の頭が落ちていた。
「……なんだ、こりゃあ」
血の海の中で舞う少女。華やかに舞い踊り、飛び散る血でさえ美しく見間違えてしまうほどの舞い。
無数の頭が転がる地面を見つめながら襲撃者の一人の男は決意した。
(俺は死にたくねぇ!)
ダッと怪物過ぎる少女から逃げようと脱兎の如く素早く走って逃げようとするが。
逃げている最中にガツンッと後頭部を硬い物か何かで殴られてしまった。
「いっつ⁉︎」
その衝撃に思わず倒れてしまい男は後頭部を摩りながら後ろを振り返ると。
「……なっ」
何かを蹴り付けたであろう姿勢の血塗れの葛葉と、ゴロンと転がる仲間の頭。
「は、はは……。血も涙もねぇ血に飢えた怪物か……?」
その呟きのあと男の眉間に大きな風間穴が空くのだった。
三十人ほどいた襲撃者達は一瞬にして葛葉たった一人によって制圧されてしまった。
「……ん〜みんな無事かな」
血の海の中を襲撃者達の死体を足蹴にしながら葛葉は屋敷にいる皆んなの事を案じながら歩くのだった。
「クロエも、大丈夫かな……?」
護衛対象の顔も思い浮かべて足取りを早くした。
葛葉の足音が響く屋敷の中の廊下も外と変わりないくらいの様相を呈していた。
武器を持ったまま地面に倒れるメイドと襲撃者達。
血みどろの激戦が繰り広げられたことは容易に想像出来てしまう。
ただ死体が汚されていないだけマシである。
「おし、さっさと終わらせよう」
真っ赤な廊下を歩きながら葛葉は呟くと首を鳴らし、ふぅ〜と深く息を吐いた。
そしてキッと葛葉の目は、一瞬にして殺気に満ち溢れた恐ろしい目へと変わった。
この襲撃者達をを殺める事を是とする、そんな目に。
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