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TS化転生っ娘は、ちょっとHな日常と共に英雄になるため、世知辛い異世界で成り上がりたいと思います!  作者: んぷぁ
第六部 五章——少し過激な過激バトルスターティン!——
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十六話 生殺与奪は誰が握っている?

「私の先輩だったんですよ、その人。でも、もう薬以外を考えることも出来なくなって、ずっと薬薬言ってるんです」

「……」

「だから殺して下さい」


 澱みのない言葉に葛葉は振り返った。少女の顔は何の感情も無かった。無感情という言葉を体現したような顔。

 葛葉が数秒時間を置き、口を開いた。


「本当に、いいの?」

「はい。四肢を切断されて、ヤク漬け、さらには純潔すら奪われて、生きていきたいと思いますか?」


 個人的な考えではそう思うが、それは本人の意思ではない。少女の情けだ。分かった、と簡単にしていい行為ではないのだ。


「私に、この人の生殺与奪を握る資格はない。あなたにも」

「じゃあ、誰が!」


 少女がそこで初めて憤りを露わにした瞬間、パァンッ‼︎ という音が響き、ドサッと物が倒れる音がした。


「戦闘中の流れ弾に当たっただけ」

「……」


 少女は目を点にして床を見た。こめかみから血を流し目を開けたまま横たわっているエミリエ。

 何が起きたのか理解はしていないが、リノはエミリエは死んだのと理解した。


「……ありがとうございます」

「私は先に行くから、ゆっくりで平気だよ」


 葛葉は少女の頬に伝う涙を見やって、一言言い残して殲滅の続きをしに行くのだった。

 ―――幾重も醜く汚い断末魔が耳朶に響く。その度に葛葉の『正義』と言うペラッペラの薄っぺらい物が揺らぐ。

 『正義』。【英雄】としての『正義』か、人として当然の『正義』か。所詮、『正義』はその人の立場で掌を返すものなのだ。

 これ以上無いほど薄っぺらく、嘘の塊で出来ている。

 怒りで身が焦がれそうだと言うのに、葛葉の耳朶に響く断末魔がその怒りを揺らがせてくるのだ。


(緋月さんは、どう思うかな……。律は、五十鈴はどう思うかな……)


 葛葉は戦いの最中、そんなことを思っていた。

 撃っては裂き、撃っては裂きと同じことの繰り返しだった。故に葛葉からしたら消化試合のような物だった。


「ん」


 走っていた足を止めて葛葉は真横の扉に顔を向けた。その時だった、バァンッ‼︎ という音と共に銃弾が扉を突き破って葛葉に襲い掛かってきたのだ。

 葛葉は咄嗟に扉の前から退避したため銃弾は当たる事はなかった。


「……相手もショットガンか。無策では行けない、か」


 無策の場合、頭が吹っ飛ぶか四肢が吹っ飛ぶか、胸か腹に大きな風穴を開けられるかのどれかだろう。

 葛葉はスキル『創造』を使い、手榴弾を二個生成した。うち一つはダミーではあるが。


(まず、扉を破壊する!)


 手榴弾のピンを外し扉の前へと投げつけた。するとすぐに爆発して扉は、既にボロボロになっていたため無事に破壊することができた。

 そしてすかさず部屋の中にダミーを投げ入れた。

 新米だろうが熟練だろうが見境なく兵士ならば、戦場で手榴弾が転がってきた場合は遮蔽物の裏に隠れる。

 ダミーを投げ入れてすぐに葛葉は部屋の中に入っていた。そしてまた二つの手榴弾を生成しており、一つを兵士達が隠れているだろう遮蔽物の裏へ投げた。

 そして兵士達がこちら側に退避し始めるよりも早く、二つ目の手榴弾をボウリングのように転がした。

 ドンッ‼︎ ドンッ‼︎ という二回の爆発音と共に無数の死体が積み上がった。

 まだ息がある者、多少なりとも動ける者に止めを刺そうと葛葉が動き出した時だった。


「―――Don't move,girl.」


 後頭部に突きつけられる冷たい物と、カチャという音。そして本場のペラペラ英語。


「……S&Wですか、それ」

「っ、日本語っ⁉︎」


 知ってて英語で言ってきたんじゃ無いんだ、と葛葉は思い、思わず笑みが漏れてしまった。二人はすぐにこの世界の標準言語で話し始めた。


「……日本人なのにえらく戦い慣れしてるな」

「場数が違いますよ」

「そりゃあ参ったな、俺らよりもか?」

「はい」


 葛葉はゆっくりと振り向きながら、銃を突きつけていた男と会話をする。が油断は生まれない、隙がない。

 相手をよくよく見てみれば、黒人の巨漢で、顔は険しかった。


「……さて、どうする? 俺は子供を何十人と殺してる。君みたいな子でも、俺は容赦なく殺せるぞ」

「……じゃあ何故殺さないんですか? 戦場でもそうやって引き金に指を置いたまま眺めてるだけだったんですか?」


 男からの脅しを受け止め、葛葉は揺さぶり掛けるもやはり隙は生まれなかった。


「猶予は与える主義でね。さ、手を挙げろ」

「……」


 葛葉は黙って従う、フリをした。手をゆっくりと上げ初めて、そして顔の位置まで来た瞬間、スキルを発動させた。

 光の粒子が手に現れるが目の前の男は構わず葛葉に狙いを定めていた。それが男の最後の過ちだった。

 光の粒子が消えると同時に銃声が響いた。


「……な」


 葛葉の作り出した銃は男の心臓に見事命中、男は驚愕の顔を浮かべながら倒れるのだった。

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