十五話 救うことはできても
キンッと金属の音が響くと爆音が鳴り、黒煙の中からやってくる銃弾を避けた後に銃声が聞こえた。
ほんの誤差とも言えるその音の遅れに気がつく程、葛葉はゾーンに入っているのだろう。
「くそッ、異世界人の奴ら使えねぇ!」
ドタバタと倒れていく荒くれ者達に、武装兵が悪態を吐く。銃で葛葉と応戦する武装兵の射線上に入ってくるため、武装兵にとっては戦いにくいにも程があったのだ。
その点、葛葉は容赦無く異世界人も武装兵も皆殺しにしてしまうため、葛葉無双が繰り広げられていた。
(まだ来るか……)
既に何十と屍を積み上げた葛葉はまだまだやってくる増援に目を細めた。
増援も葛葉の前では即お陀仏で、またまた屍が積み上がってしまった。
グロック26のマガジンリリースボタンを押しすかさず装填済みマガジンを挿入。スライドストップを押し戻し、引き金を引く。
たった数瞬で幾多の死体ができてしまった。
「―――っ。はぁ〜……」
ドッと来る疲労感に葛葉は思わず片膝を突いてしまった。ドクンドクンと動悸がし、葛葉は自身の胸を片手で強く抑えた。
今までの反動が来たのだろう。
「……ハッ、はっ、は……っ。……ふぅ」
呼吸を落ち着かせて葛葉は数秒固まった。そして意気込んでは立ち上がり、さらに奥へと目指し始めるのだった―――。
―――暫くの間歩き続けた葛葉はある一室の前で足を止めていた。
「……」
「…………どちら様ですか」
殺風景な部屋の中は所々に古くなった血と跡が残っており、その部屋の中央には色々な物騒な道具が置かれていた。
そしてそんな部屋の中、奥の壁から伸びた鎖によって両手首、両足首を枷に繋がれたメイド服の少女がいた。
それを葛葉は見つけ固まっていた。
「背格好にその服装、そして武器。あなたがあの英雄ですか?」
「……うん」
至って冷静な少女は澄まし顔で葛葉の正体を見抜いたことに、葛葉は少しだけ驚いてしまった。
だがよくよく考えれば目立つ服装に、武器だなと。自分でもら納得してしまった。
「……隣の部屋の中は見ましたか?」
突然葛葉に訊いてきた少女に葛葉首を振って答えた。
「なら……その武器で楽にしてあげて下さい」
「……それは」
少女のその突然な懇願に葛葉が疑問符を浮かべて首を傾げた時だった、ガダンッと隣の部屋の扉が叩かれたのだ。
「……」
葛葉は少女を一瞥してからグロックを手に隣の部屋へと向かった。
ダンっダンドンと叩かれる扉に葛葉ら恐る恐る近付いていった。そして扉のドアの部を捻った。
その瞬間、扉が勢いよく開き、何かの影が倒れ込むように部屋の中から出て来たのだ。
「ぐず……くずりぃ〜、はや、はやく〜……!」
出てきたのは先の少女とは変わって、両手両足首を切断された女性が血を這い蹲りながら、何かを連呼しながら踠いていた。
「……シャブ痕」
真っ先に葛葉の目が言ったのは両腕の変色した部分の刺し傷。全身傷だらけだが、特にそちらに目が行ってしまう。
慰み者にされた形跡もあり、どうやらこの女性はキ○セクされたようだった。
「本当、酷い……」
おおよそ人のやることでは無い、今日で何度、葛葉はそう思っただろう。
血も涙もない下衆共にさらなる怒りが湧いてくるのだった。
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