十四話 はやしき
激しい銃撃の音が狭い廊下に響いていた。そんな銃弾の雨霰の中防弾シールドもなしに突っ切っていく葛葉。
あのファーストなリ○リスならば問題ないが、葛葉は勿論ただの冒険者。
銃弾の嵐を突き進む身体には無数の風穴が出来ていく。普通ならば死ぬが葛葉はスキルで傷付いては直してを繰り返し繰り返し行っていた。
「化け物か⁉︎」
「怪物めッ‼︎」
撃てども撃てども倒れず突っ込んでくる葛葉に武装兵達は驚き戦々恐々としていた。
それを助長させるのが、無数に枝分かれしている通路の脇道に位置取りをして撃っている武装兵達が次々と、頭を夏のスイカ割のごとく吹っ飛ばしてされていっていた。
「ぐ、グレネードだ‼︎ グレネードを使え‼︎」
足が止まらない葛葉に危機感を覚えた武装兵が隣の仲間へそう声を掛けた。
その指示に従い仲間は手榴弾を取り出し葛葉の足下へと投げつけた。偏差を考慮しかなり前に落とされた手榴弾。
だが葛葉は止まることなく手榴弾を蹴り上げ、宙に浮いた手榴弾を蹴った。
その手榴弾は脇道の中に飛んでいき、応援の荒くれ者達が爆発に巻き込まれた。
「くっ、おい! もっとグレネードを‼︎」
「お、おいッ‼︎ 後ろ‼︎」
効果の無い手榴弾に武装兵が手振りと共にもっとと言うが、そんな武装兵の背後には、
「パン」
ブッシャ。武装兵の頭蓋を砕き割り、脳味噌をグチャグチャに食い破り、後頭部から入っていった弾丸はそのまま額から飛び出した。
脳漿と共に血が吹き出し、飛び出した弾丸はそのまま対面にいた武装兵の額を食い破っていった。
「……。―――ッ」
白銀の大型拳銃をしまうと、葛葉は左脚の太腿のホルダーからグロックを抜き去っては、駆け付けてきていた荒くれ者を撃ち殺した。
そしてすかさずホルスターに仕舞い、M1897のハンドグリップを前後に往復させた。
立ち上がり走り出す。
葛葉はもう戻れないところまで来てしまっていた。
足下に広がる無数の屍、そしてこれから積み上がっていく無数の屍。
(目標は殲滅。それが私の贖罪!)
照準を合わせる、引き金を引く、突き進む。
痛みに堪えて。
前方に現れる五人の荒くれ者達。タッタッとジグザグなステップを踏み速度を上げ、M1897を突き出した。ドスンッと銃の先に取り付けた剣が男の腹部に深く刺さった。
葛葉はそのままの勢いで目の前の男を乗り越える。ひらりと宙を舞うように翻り、そのまま他の男の顔面を靴底で踏み付けた。
そして壁ジャンのようにその左右にいた男二人を蹴り付ける。またホルスターから拳銃を抜き蹴り付けた三人に二回ずつ引き金を引いた。
そしてM1897を突き刺した男の背中を蹴り男は前に倒れる。が、それは剣銃が突き刺さっている状態でだ。
もちろん男の身体を貫通し銃剣の剣先が突き出してきた。まだ残っている最後の一人が、一瞬で四人を制圧した少女に怯え逃走しようとするが、葛葉が今度はナイフを抜きそれを投げた。
クルクルと回りながら飛んでいったナイフは逃走しようとした男の脹脛へと見事に命中。ドサッと男は顔面から倒れ込んでしまった。
それを尻目に、葛葉は踏み付けていた男をさらに踏み付けてはM1897を取り出した。血塗れだが問題なく動作し動くことを確認した葛葉は、顔面から倒れた男へ歩み寄っていき、後頭部に銃口を突きつけた。
「……ゆ、許してくだ―――」
「ごめん」
最後まで言わせることなく引き金を引いた葛葉はたった一言呟いた。ごめんと。
今は無き顔を見れば若者であることは誰もがわかる。だが、葛葉はもう戻れないのだ。だから一人も怯えている相手だろうと逃さないのだ。
「……次」
ハンドグリップをスライドさせ使用済みの空薬莢を排莢し新しい薬莢を装填し、葛葉は敵を求めて奥へ続くこの道を歩んでいくのだった。
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