九話 お礼参りだ
「―――ひっ、ひぃ‼︎ な、なんで! なんで生きてやがんだよ‼︎」
仲間の身体が肉壁となりボロボロだが死に損なった男が、大爆発を起こした部屋の入り口で尻餅を付いて怯えながら後退していっていた。部屋の中は真っ赤でゴロゴロと人体の一部や、ドロドロの臓物が大量に散乱していた。
そんな部屋の中で、ゆっくりと立ち上がり吹き飛んだ自身の腕を手に、男を見ている人物。
「あ〜もう、うるさいよ。ピーピーさぁ」
腕を傷口にくっ付けて葛葉は『想像』を発動。千切れた腕は綺麗さっぱり元の状態へと戻っていた。
それは葛葉の全身の傷も同じだった。
「……あぁ、よかった、無事だった」
死体や臓物の中、葛葉は爆発の瞬間にありったけの魔力で作った簡易魔力結界に守られていたリーニヤの遺体を見つけた。
既にゴミ共によって汚されてしまい見るに耐えない姿だった。ただ葛葉は眠る場所くらいは別の場所にしたいのだ。
「ごめんね……守れなくて。ごめんね……私が弱くて。……ごめんね」
届くことのない謝罪をしながら葛葉はリーニヤの遺体を持ち上げた。
―――私が選択を間違えたから―――。
そして切断された部位も全て集め、一纏めに一ヶ所に集めたのだ。
「―――動くな!」
「こ、このガキィ‼︎ やってくれんじゃねぇかぁ‼︎」
たった二人の男が剣を構えながら部屋の中に入ってきた。そして部屋の中の光景を見て葛葉を見る目を変えた。
歳下の孅い少女から、未知の何かへ。
「容赦はしないから。思う存分、殺り合お」
しゃがみ込んでいた葛葉が起き上がり、血だらけだったメイド服が一瞬にして戦闘服へと変わった。
葛葉のいつも通りの戦闘服。もはや愛着が出来てしまった、あの戦闘服だ。
「い、行くぞぉッ‼︎」
葛葉の醸し出す異様な雰囲気に怖気付く男達だったが、葛葉が戦う意志を見せてきたが為に、雄叫びを上げ斬り掛かるのだった。
だが次に目にしたのは何かを構える少女の姿だった。
パンッ、そんな音共に隣にいた仲間が頭から血を吹き出して力なく倒れてしまった。
「お、おま、お前! それッ―――」
発言すら許されず、残りの男は眉間に風穴を開けられた。
ゴミを見るような目の葛葉はすぐに『創造』を用いて手榴弾を造り、この部屋唯一の入り口に投げつけた。
手榴弾は壁に当たり跳ね返って通路の奥へ転がっていき爆発。すかさず反対の通路にも同じように手榴弾を投げつけた。
(もう魔力はない、魔法は使えない。スキルはまだ使える、ここから脱出は……出来る)
戦闘の際は常に使用していた、あの身体強化系魔法が今回は使えない。だがそんなことは今の葛葉には瑣末なことだった。
闇落ちもなし覚醒もなし、ただ単純に葛葉は奴らへお礼参りに行くのだ。
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